2023年の本屋大賞の有力作?今回は小説『月の立つ林で』(著:青山美智子)のあらすじと感想を紹介し、作者インタビューを踏まえた物語の魅力、各章の登場人物のつながり、伏線回収部分の解説、ラストシーンのネタバレ考察などをまとめました。ぜひチェックしてみてください。
青山美智子の小説『月の立つ林で』とは
書名 | 月の立つ林で |
作者 | 青山美智子 |
出版社 | ポプラ社 |
発売日 | 2022年11月7日 |
ページ数 | 264ページ |
2023年の本屋大賞の候補作となった小説『月の立つ林で』。作者の青山美智子さんは、『お探し物は図書室まで』『赤と青とエスキース』に続いて、本作で3年連続の本屋大賞候補入り(過去2回はどちらも2位)しています。
『月の立つ林で』は、日常で悩みを抱えている5人の人物が、月に関する小噺をするポッドキャストを聞いて生活をする中で、それぞれに変化が訪れていく話。五章の短編からなりますが、各章の人物のつながりも読みどころの一つです。
※『月の立つ林で』は以下に当てはまる人におすすめ!
・青山美智子さんの過去の作品が好きだった人
・月について想像を巡らしたことがある人
・コロナ禍で希薄となった人同士のつながりを見つめ直したい人
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3分で分かる『月の立つ林で』のあらすじ【※ネタバレなし※】
『月の立つ林で』は5篇の章からなる連続短編集。それぞれの登場人物は異なりますが、全員が日常生活の中で、ある悩みを抱えています。
そんな5人はポッドキャストで配信されているラジオ番組を聞き、興味を持ちます。番組名は「ツキない話」。タケトリ・オキナという男性が、月に関する小噺を披露する内容です。月にまつわるエピソードは5人の日常生活にも少しずつ影響していきます。
ここからは各章のあらすじを簡単に紹介しましょう。
「一章 誰かの朔」のあらすじ
長年勤めていた総合病院を辞めた、元看護師の私(朔ヶ崎怜花)。ある日、お隣さんから、三日間ほど猫を預かることになった。弟の佑樹が安請け合いしたようだ。弟は今、「劇団ホルス」で劇団員をしている。
人のために役に立ちたいと、ずっとそう思ってきたけれど、「人」とはいったい誰のことなんだろう。
引用:『月の立つ林で』6ページより
ずっと悩んでいた私は、弟の劇団について調べている時に、ハンドメイドの通販サイトで「朔」と名付けられたアクセサリーが出品されているのを見つける。名字が朔ヶ崎である私は運命的なものを感じ、思わず出品者に連絡をとってみた…。
「二章 レゴリス」のあらすじ
ピン芸人のポン重太郎として活動しているが、全然売れていない僕(本田重太郎)。昔組んでいたコンビの相方は男前で人気があり、僕はいつも「じゃない方」と認識されていた。僕は配達の仕事もしており、最近はネタすら作らないでいた。
たとえば靴ずれひとつで、人はあっという間に絶望できる。(中略)
もうだめだ、歩けない。そう思っているのに足が動くのはなぜなんだろう。
引用:『月の立つ林で』60ページより
靴ずれができた僕は、それについてのツイートを投稿した。まだまだフォロワー数が少ないアカウントだが、いつも一人だけ「いいね」してくれるアカウントがある。そのアカウントが気になりながら過ごしていた時、ふと元相方と再会して…。
「三章 お天道様」のあらすじ
東京で二輪自動車整備工場の「高羽ガレージ」を構える俺(高羽)。ある日、24歳の娘が付き合っている男を家に連れてきた。娘はもう妊娠していて、結婚して男と一緒に福岡へ行くと言う。妻は素直に喜んでいたが、言う順番が違うだろう、と俺は困惑する。
すべてが打ち砕かれた。(中略)
せめて俺の想定した通りに段階を踏んでくれたら、いろいろ受け入れられたのに。
引用:『月の立つ林で』114ページより
出産間近の娘に付き添うために妻も福岡に行き、俺は一人で生活することになった。工場の取引先の従業員であるサクちゃんにiPadの使い方を教わり、通販生活をして過ごしていた。そんな折、娘の婚約者が東京出張のついでに俺の家に来ることになり…。
「四章 ウミガメ」のあらすじ
周囲に馴染めずに毎日を過ごす女子高生の私(逢坂那智)。そんな私の唯一の友達は、スクーターだけだ。私は高校を卒業してすぐに親から独立するために、親に内緒でウーバーイーツでお金を貯めている。今日も私はスクーターに乗って、働きに行く。
さびしいと思わずにすむ一番の方法は、人と関わらないことだ。そうわかってから、ずいぶんと心が楽になった。
引用:『月の立つ林で』158ページより
私は注文先の家にいた少年・神城迅とふとしたきっかけで仲良くなった。私は彼の内職を手伝うことになり、話す内に彼の家族のことを知る。そんな中、私の仕事のことが親にバレてしまう。親の元を飛び出した私は、スクーターで自損事故を起こしてしまい…。
「五章 針金の先」のあらすじ
ここ最近、仕事がかなり順調なアクセサリー作家の私(北島睦子)。しかし、私は家に夫がいると集中できず、おまけに義母の世話焼きも煩わしいと感じている。そこで私は仕事専用のアトリエを構えたのだった。
アトリエとして借りているワンルームは、まるでシェルターのようだ。どんなことからも邪魔されない、私だけの大切な守られた場所。(中略)
この孤独を、何よりも愛して。
引用:『月の立つ林で』212ページより
ある日、出版社から本を出版しないかと依頼が来た。編集者と会って打ち合わせをする中で、私は人気切り絵作家のリリカと話をする機会を得る。そこでリリカが家族を犠牲にして、仕事を優先したことを後悔していると知って…
『月の立つ林で』の主な登場人物まとめ
ここからは『月の立つ林で』に登場する人物をまとめました。ただ作品を読み進めるうちに、その人の詳しい情報や意外な関係性などが判明します。そこが作品を読む魅力の一つでもあるので、ここではネタバレにならない程度に紹介する形にしましょう。
「一章 誰かの朔」の主な登場人物
私=朔ヶ崎怜花:長年勤めた総合病院を辞めた元看護師。
樋口さん:お隣さん。朔ヶ崎家に猫を預ける。
佑樹:怜花の弟。劇団員をしている。
神城龍:佑樹が所属する「劇団ホルス」の主宰者。
「二章 レゴリス」の主な登場人物
僕=本田重太郎:現在は「ポン重太郎」でピンとして活動する芸人。
てっちゃん:僕が高校の時に組んだコンビの相方。
サク:重太郎が養成所に入って組んだコンビ「ポンサク」の相方。
夜風:ポン重太郎をフォローしているTwitterアカウント。
恵里佳:重太郎の妹。
「三章 お天道様」の主な登場人物
俺=高羽:東京に自分の店を構える二輪自動車整備士。
千代子:高羽の妻。俺の仕事を手伝っている。
亜弥:高羽のひとり娘。婚約者と実家を離れることに。
内川信彦:亜弥の婚約者。
「四章 ウミガメ」の主な登場人物
私=逢坂那智:ウーバーイーツの配達員もやっている女子高生。
那智の母:離婚後、娘を育てるために掛け持ちで仕事している。
ジンくん:那智が配達した注文先の家にいた少年。
「五章 針金の先」の主な登場人物
私=北島睦子:ここ最近仕事が順調なアクセサリー作家。
剛志:睦子の夫。
睦子の義母:世話焼きな性格。
篠宮:睦子の本の出版を担当する編集者。
リリカ:篠宮が担当した有名切り絵作家。
『月の立つ林で』のネタバレ解説&考察まとめ
『月の立つ林で』の魅力をさらに深掘りしていきましょう!タイトルの意味、各章のつながりと伏線、ラストシーンの考察などを行います。ネタバレとなる部分は隠しているので、作品を一度読んだ方だけ中身をチェックするのをおすすめします。
作者がインタビューで明かした、「月」がテーマである意味
『月の立つ林で』の5つの章には、共通してポッドキャスト番組「ツキない話」が登場します。タケトリ・オキナなる人物による、月にまつわる話。この番組を聞いた各章の主人公たちは、日常生活の中でそのエピソードを思い出します。
作者の青山美智子さんは、小さい頃から月が好きでよくいろいろなことを想像していたと、インタビューで語っています。今回、本作で月にまつわるエピソードを取り入れたのには、作者のある想いがあったのです。
月が自分を見てくれている、私のためにそこにいてくれているような気がして、すごく身近でした。だけど、月について知っていることは本当にごくわずかで、近いようで遠い存在。これって人間関係もそうだなと思って、月も物語に取り入れてみることにしました。
引用:青山美智子さん「月の立つ林で」インタビュー 月とポッドキャストが結ぶ「見えないつながり」の物語|好書好日
月がテーマになった背景には、人間関係を描写する上での心理も関係していたのですね。実際に「ツキない話」もただ月の話をしているわけではなく、人間関係を引き合いに出して語る場面がいくつもあります。そういった点も注目して読み進めてみましょう。
各章の登場人物のつながりとは?伏線回収部分を解説
青山美智子さんの作品では、短編に登場する人物たちが他の章で出てくる人物と重なったり、影響しあったりして、思わぬ展開になっていることが多々あります。作者が意図的に狙っているものですが、今回もそこでそうつながるのか!と何度も唸らされました。
先に登場人物をネタバレしない程度にまとめましたが、ここではネタバレ込みで登場人物の関係性について簡単にまとめてみます。大丈夫な方だけ、下記をクリックしてみましょう。
ネタバレしていいから登場人物の関係性やつながりをさらに詳しく知りたい方はこちらをクリック!
◯「一章 誰かの朔」朔ヶ崎怜花がメールのやりとりする「mina」さん
=「五章 針金の先」アクセサリー作家の北島睦子
◯「五章 針金の先」北島睦子が救急窓口に電話した際、対応した女性
=「一章 誰かの朔」元看護師の朔ヶ崎怜花
【仕掛け】
第一章でやりとりした際に、朔ヶ崎怜花は本名をメールに残していた。北島睦子が電話で聞いたことある名前だと感じたのはそのせい。
また朔ヶ崎怜花が無事新しい医療関係の仕事に就いたのだと分かる(一章では仕事を探すシーンで終わっていた)。さらに冒頭の「人の役に立ちたい」と語っていた朔ヶ崎怜花の想いが、意外な形で実現し、ここでも伏線回収している。
◯「一章 誰かの朔」朔ヶ崎怜花の弟・朔ヶ崎佑樹
=「二章 レゴリス」本田重太郎が元組んでいた相方・サク
=「三章 お天道様」高羽の取引先バイクショップの従業員・サクちゃん
=「四章 ウミガメ」ジンくんが紹介した俳優・佑樹さん
【仕掛け】
各章の主人公に大きくかかわってくる人物。作者の青山美智子さんは、それぞれの主人公が「月」のような存在の中、朔ヶ崎佑樹だけが「太陽」のような明るい存在だと述べている。
◯「二章 レゴリス」本田重太郎のTwitterに反応するアカウント「夜風」
=「四章 ウミガメ」愛車のスクーターを「夜風」と名付けた逢坂那智
【仕掛け】
「夜風」のTwitterアカウントは、青のスクーターのアイコンだった。また昔の投稿にあった「大嫌い。みんな、大嫌いだ」というコメントは、孤独を感じていた逢坂那智の心情をよく表している。
上記は一例です。他にも、各登場人物が他の章で出てきます。意外な登場の仕方に関心させられますね。
感動と驚きのラストシーンをネタバレ考察
『月の立つ林で』のラストシーンは、感動と驚きが入り混じって圧巻でした!以下に考察した内容を載せます。
ネタバレしていいからラストシーンの考察を読みたい方はこちらをクリック!
ラストシーンでは、「ツキない話」を配信していたタケトリ・オキナが誰なのか、明かされます。結論からいうと、タケトリ・オキナは神城迅でした。
神城迅は「四章 ウミガメ」でよく登場しており、その際に迅の声がタケトリ・オキナの声に似ているという描写もありました。
なぜ迅は「ツキない話」を配信していたのか、それには彼が毎回話すお決まりのフレーズ「かぐや姫は元気かな?」が鍵でした。
迅は離婚した母親のことをかぐや姫だと形容していました。母親は「五章 針金の先」で登場する切り絵作家のリリカ。幼い頃から好きだった月の話をすることで、彼女に気づいてほしいと思っていたのです。
最後の配信では、リリカが迅の演劇に来た話をしています。迅はアンケート用紙に書かれた名前が「かぐや姫」。そしてアンケートにはこんな文面が書かれていました。
タケトリ・オキナ様、あなたと夜ごとに見上げた月を、愛してくれてありがとう。
引用:『月の立つ林で』156ページより
ここからは筆者の感想ですが、いきなり感動のご対面という感じではなく、お互いにやさしく見守っているくらいの距離感がこの作品らしくていいなと思いました。普段はあまり喋らないけど、ポッドキャストのマイクの前だと話せると言った迅の心情もとても共感できましたね。
『月の立つ林で』は映画化・ドラマ化する?キャストを予想してみた
『月の立つ林で』はとても良い作品なので、映画化やドラマ化しても話題になるでしょう。もし映像化されたらキャストはどうなるか、妄想してみました。
朔ヶ崎佑樹:坂口健太郎
神城龍:西島秀俊
神城迅:藤原大祐
朔ヶ崎怜花:麻生久美子
本田重太郎:仲野太賀
高羽:田中哲司
逢坂那智:桜田ひより
北島睦子:臼田あさ美
リリカ:木村佳乃
いかがでしょうか?『月の立つ林で』は、主人公が異なる5つの短編からなる小説ですが、映画化された際には朔ヶ崎佑樹が主役になるのではと予想します。人物たちのつながりをどう表現するかは、映画監督の腕の見せどころですね。
『月の立つ林で』を読んでみた感想
『月の立つ林で』を読んだ上での筆者の感想と、読者がレビューサイトやSNSに投稿した評価や口コミをまとめました。
【筆者の感想】月の光が作品全体を照らしているかのよう
月をテーマにした小説はいくつか読んだことがありますが、中でも本作が一番ほっこりして感動する物語だと感じました。月に関するエピソードがそこかしこで影響しており、まるで作品全体を月の光が照らしているようだと思います。
青山美智子さんは本作で三年連続の本屋大賞候補入り。過去二作はどちらも2位と大賞受賞まで惜しかっただけに、今回の大賞受賞が期待されています。いやぁ、過去二作よりも良い点が多いので、いよいよ今年三度目の正直でいけるんじゃないでしょうか!
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凝った仕掛けが特徴の作品でもありますが、伏線をうまくミスリードさせている箇所があり、やられた!と思いました。
具体的には「四章 ウミガメ」の場面。那智がスクーターを買ったのが、てっきり高羽の店かなと思ってました。しかし事故をした際に、電話したら冷たい反応をされ、高羽さんの人が変わってしまったのかと一瞬不安にさせられます。
しかし、実はその人物は高羽ではありませんでした。その後、サクちゃんの紹介で高羽が登場してきて、しっかり良い人物として描かれていました。安心しましたね。
登場する人物が他の章でよく関連してくるので、私以外にも早とちりしちゃった人もいたのではないでしょうか?青山美智子さんの術中にハマってしまった感じでしたね。
【みんなの感想や評価】見えないつながりを信じていいんだ!
読者の感想も紹介します。
「月の立つ林で」青山美智子#読了
2023年の一冊目。
なんて素晴らしい小説✨見えない繋がりを信じていいんだって思わせてくれました✨新しいことを始める勇気をもらいました✨月を見ながら、この本を何度も思い出しそうです🌑#青山美智子#読書好きな人と繋がりたい pic.twitter.com/mBCwdfw94u— りか@読書垢 (@flmmiaSyUeTYOBz) January 3, 2023
登場人物それぞれの状況や気持ちは、よくある状況で派手さは無いですが、淡々と読めて、不意に涙が何度か出てきました。読み終わり、とても穏やかな暖かい気持ちになれました。
良い本です。
引用:Amazon
ささくれだった心で見えなくなった人の優しさに気づかせてくれる本です。世の中全体が後ろ向きな昨今、生きる喜びを伝えてくれます。
引用:Amazon
『月の立つ林で』青山美智子(ポプラ社)
“ついたち”に読みました。なんて滋養に満ちた本でしょうか。今までなにも意識してこなかった新月を待っています。 pic.twitter.com/mgH2AT5gTV
— muuugi (@muuugi4) February 1, 2023
まとめ:『月の立つ林で』は月を通じて人と人のつながりを感じられる小説だった
いかがでしたか?『月の立つ林で』の特徴を以下にまとめました。
・3年連続本屋大賞候補となった青山美智子さんによる小説
・月にまつわるエピソードが魅力的
・各章での登場人物のつながり方がおもしろい
・ラストシーンで驚きと感動を味わえる
以上です。まだチェックしていない方は、ぜひ読んでみてください!
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