小学校高学年の課題図書に選ばれた『ふたりのえびす』。今回はこの本をもとに読書感想文を書こうとしている小学生(の親)に向けて、作品のあらすじ(ネタバレ込み)と感想文を書くコツを紹介します。青森県八戸市の伝統芸能「えんぶり」をテーマにした小説。ぜひチェックしてみてください。
『ふたりのえびす』(小学校高学年の課題図書)の内容とは
書名 | ふたりのえびす |
作者 | 髙森美由紀 (著) |
出版社 | フレーベル館 |
発売日 | 2022年1月27日 |
ページ数 | 237ページ |
『ふたりのえびす』の主人公は、キャラをかぶりながら学校生活を送る小学生・太一。王子様キャラの転校生・優希と、青森県の伝統芸能である「えんぶり」を舞う練習をしていく中で、自分を見つめ直し、再生していく物語です。
第69回青少年読書感想文全国コンクール課題図書 ふたりのえびすの見本が届きました。
選定してくださいましてありがとうございます。
赤い課題図書マークが、金メダルに見えるんだよぃ😭😭。 pic.twitter.com/Indv263uUU— 髙森美由紀🐕高森美由紀「バカ塗りの娘」(原作ジャパン・ディグニティ)2023年映画化 (@takamorimiyuki1) April 30, 2023
↑作者の髙森美由紀さんのツイート
郷土行事を題材としており、昨年課題図書に選ばれた『風の神送れよ』とモチーフが重なる点があります。伝統芸能への理解が深まるほか、キャラをかぶって生きる少年たちの苦悩と再生を読め、さらに東北大震災についても考えるきっかけになる一冊です。
※『ふたりのえびす』は以下に当てはまる人におすすめ!
・読書感想文を書こうと思っている小学生
・青森県の伝統芸能「えんぶり」について興味がある人
・普段キャラをかぶって学校生活を送っている人
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3分で分かる『ふたりのえびす』のあらすじ要約【※ネタバレあり※】
オレ(内村太一)は学校で自分のキャラを作って、やり過ごしている。オレのキャラはお調子者キャラで、みんなを楽しませる。最近やってきた転校生は大路優希という名前の通り、王子様キャラがよく似合っていて、オレたちは「王子」と呼んでいた。
そんなオレと王子は青森県八戸市の伝統芸能「えんぶり」で、えびす舞のおどり手となった。えびす舞なんて不格好なおどりで、オレもやりたくないし、王子だってキャラに反している。でも、王子は自らやりたいと言うんだ。
おどりの練習が始まると、実は王子はリズム感が全くないことがわかった。なおさら王子キャラがくずれるんじゃないかと心配するが、王子は自ら王子キャラを破りたいと思っていると知る。だからオレは王子のことをこれから本名の優希と呼ぶことにした。
ある日、オレは優希と親方と釣りをしに行ったが、そこで優希と大ゲンカをしてしまう。優希にはオレがキャラをかぶっていることがバレていたのだ。それを指摘されムカついたオレは優希につかみかかったが、それを止めようとした親方を海に突き飛ばしてしまった。
親方は無事に助かったが、その後入院生活となった。オレと優希はお互いに素直な気持ちを話すことで仲直りし、改めてえんぶりの練習をがんばろうとなった。また、オレはキャラをかぶることをやめ、ありのままの自分で過ごすことにした。
キャラを演じて、オレはオレ自身を守ろうとしていた。
オレ自身を守れるのは、自分しかいないと思っていた。
(中略)
でも、自分を自分だけで守らなくてもいいんだ。
引用:『ふたりのえびす』180ページより
本番が近づいてきた。オレと優希は親方から、東日本大震災で友人が亡くなったことを聞かされていた。オレたちはその人の分までえびす舞の練習をがんばった。何度、失敗しても挑戦しようと決めたのだ。
ー何べん失敗したっていんだ。
親方の声がよみがえる。
ー何もやらねで死んじまうよっかずっとい。
引用:『ふたりのえびす』214ページより
また、オレは父さんが言った「みんなが主役だよ」という言葉が気になっていた。えんぶりにおいて、オレが演じるのは脇役だし、そもそもオレの人生はずっと脇役ばかりだった。でも今、オレはその考えを改める。
キャラをかぶっている時、本当のオレはそのかげで、息を殺して引っこんでいた。すっかり脇役だった。
でももう、交代だ。
(中略)
だって、オレの主役はキャラじゃない。
オレなんだ。
うそいつわりのキャラを取り去って、正真正銘の内村太一で挑戦してやるんだ。
引用:『ふたりのえびす』215ページより
そして、迎えた本番。無事復活した親方の指揮のもと、おどり手たちが舞う。オレたちは練習のかいもあって、真剣におどる。オレと優希は本物の笑みで、タイを高く空へつきあげた。まるで春を呼んでいるようだ。
『ふたりのえびす』の主な登場人物まとめ
『ふたりのえびす』に登場する主な人物をまとめました。
・内村太一(うちむらたいち):本作の主人公。おちゃらけたキャラを演じている。えびす舞のおどり手に他薦される。
・大路優希(おおじゆうき):転校生。あだ名は「王子」だが、実は不器用な一面も。自らえびす舞のおどり手に立候補する。
【クラスメイト】
・雪田友美(ゆきたともみ):大黒舞メンバー。
・土谷かおり(つちやかおり):大黒舞メンバー。
・遠藤(えんどう):いじられ役。あだ名は「豆」。
【太一や優希の親】
・太一の父:時折、太一に人生のアドバイスをする。
・太一の母:太一が学校に友だちがいるか心配している。
・優希の父:職を失い、家族で東京から転居してきた。
・優希の母:都会の人らしいあかぬけた雰囲気。
【七つ組のメンバー】
・岩田(いわた)じいさん:親方。80歳近い年齢
・細木(ほそき):太夫。6年生。ヒョロリとした体形。
・森(もり):太夫。6年生。もじゃもじゃ頭が特徴。
・小谷(こたに):太夫。6年生。ネズミに似ている。
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『ふたりのえびす』の読書感想文ガイド【例文つき】
『ふたりのえびす』は小学校高学年の課題図書に選ばれています。ここからは、この本を読んで読書感想文を書こうと思っている人向けに、感想文の書き方ガイドを行います。
読書感想文を書くコツは、本を読んであらすじをまとめるのではなく、読んでどう感じたかを自分の言葉で書くことです。今回は例文つきで解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
地元の伝統芸能を調べてみる
今回は八戸市の伝統芸能「えんぶり」を題材にしています。えんぶりは豊作を祈願する郷土芸能で「春をよぶ」お祭りだと言われています。作中では親方に連れられて太一と優希が釣りにいく場面も登場。大きな魚を釣り上げた達成感などが表現されています。
このような郷土芸能は、皆さんの土地にもあるのではないでしょうか。ただ、その土地に代々伝わる行事になんとなく参加している子たちも多いでしょう。この本をきっかけにその行事の由来を調べ、作中の行事や主人公たちの行動に照らし合わせてみましょう。
【例文】
太一は郷土芸能のえんぶりに最初はほとんど興味を示さず、おどり手もいやいや引き受けたという印象でした。それでも転校生の優希が下手ながら一生けんめいにおどりの練習をしたり、親方に連れられて釣りの経験をしたりする中で、だんだんと本気になっていきました。ぼくも似たような経験があり、地元の◯◯祭りに参加したときは、最初いやいやでした。なぜならその行事は3キロくらい重いものを持って歩くめんどくさい内容だったからです。しかし、地元の人から持ち歩くものにみんなの幸せを祝う気持ちがあると伝えられたり、近くに住んでいる農家の人の思いも背負っていると思うと誇らしくなりました。
太一が最後に真剣におどって、春をよんでいるように描かれる場面が好きでした。ぼくも地元の人たちが笑顔になるのを思って行事に参加したら、ぼく自身も楽しいし、みんなを楽しませることができると感じました。
キャラを演じることについて考察する
主人公の太一は自分のキャラを演じることで、学校で自分の居場所を見つけたものの、同時にきゅうくつさを感じていると描かれます。このような主人公の心境には少なからず共感するところがある人も多いのではないでしょうか。
終盤では太一がキャラを捨ててありのままの自分でいることで、自分らしさを取り戻す姿が描かれます。それまでのいきさつを丁寧に振り返ってみて、その上で考察した内容を書けると良いでしょう。
・キャラをかぶっている時の心境
→キャラ自体は防護服のような安心感があったが、同時に息苦しさも感じていた。 など
・キャラを捨てるきっかけになったできごと
→王子様キャラを抜け出そうとしている優希に、自分がキャラをかぶっていることを指摘されて、ケンカした。 など
・キャラを捨てた時の心境
→自分らしく生活できて開放感があった。ありのままの自分を受け入れてくれる人とだけつき合うのでいいと思えた。 など
【例文】
太一がキャラを捨てるきっかけになったのは、優希と大げんかしたことが大きかったと思います。ケンカ自体はよくないことだけど、本音を言ったことで初めて自分をさらけだすことができたのではないでしょうか。キャラをかぶっていると、本当の自分がなんだか分からなくなる気持ちにはとても共感しました。わたしも周囲に合わせて、自分の好きなものをうまく主張できずに、みんながいいというものに合わせてしまうところがあるからです。
だけど、この本を読んで、自分が好きなものをもっと主張して、自分らしさを出すことも大事だと思えました。そうすれば、周りのみんなもお互いに好きなものを言って、新しい発見があるかもしれません。まずは一度みんなで自分たちの本音を明かす機会を作れたらいいなと思います。
東北大震災について想ったことを書く
作中では東北大震災についても描かれます。親方の友人が津波に流され死んだのです。その上で、死んだ者ができなかったことを想い、その分までがんばろうと太一たちは奮起します。
多くの人の命を奪った東北大震災。『ふたりのえびす』は小学校高学年の課題図書となっているので、読者の小学生からするとちょうど生まれた頃のできごとなのでしょう。親や周囲の大人から当時の震災のことを聞いてみて、その上で感じたことを書くと良いでしょう。
【例文】
作中で東北大震災で亡くなった人がいると知らされた太一と優希。昨日まで普通に生きていた人たちが、いきなりその命をうばわれるというのは、本当にあったできごととは思えず、震災の恐ろしさを実感します。わたしの両親に聞いても、その時は当たり前だと思っていた生活がそうじゃないと分かって、命を大事にしようと思ったと話してました。太一と優希が亡くなった人の分までがんばっておどりの練習に励もうとする場面がありましたが、わたしも同じように今の命が当たり前だと思わずに、毎日を大切に生きることが大事だと感じました。
参考にしたい『ふたりのえびす』の感想や評価・レビューまとめ
ここからは『ふたりのえびす』について、参考にしたい読者の感想やレビューをまとめてみました。
気持ちを前向きにさせてくれる本ですね。絡まった糸が急速にほぐれていくような終盤はスカッとするほどの鮮やかさ。堂々と並び立ち、心を込めて舞う二人の少年の姿が目に浮かぶようでした。挑戦することのカッコよさを見せつけられて、私も何かやってみたくなりましたよ。
引用:『ふたりのえびす』|感想・レビュー・試し読み – 読書メーター
2人のやりとりから、そのままの自分を受け入れてくれる友だちの存在の大切さに気付かされます。話は東日本大震災にも触れられ、親方の「何べん失敗したっていんだ。何もやらねで死んじまうよっかずっとい」という言葉が心に響きます。
引用:『ふたりのえびす』|感想・レビュー・試し読み – 読書メーター
去年の『風の神送れよ』とモチーフがかぶるところはありつつ、コミカルで読みやすい。いろいろな要素がミルフィーユのように重なっているのでどんな子もある意味共感しやすいと思う。それでいて主題はぶれないので感想文は書きやすそう。
引用:『ふたりのえびす』|感想・レビュー・試し読み – 読書メーター
思春期を迎え自我に目覚めた少年たちの心もよう、八戸弁やえんぶりを繊細なまでに丁寧に表現している。
引用:『ふたりのえびす』|感想・レビュー・試し読み – 読書メーター
『ふたりのえびす』に登場した人物が出る『いっしょにアんべ!』も要チェック!
『ふたりのえびす』には、親方の友人として東日本大震災で亡くなった有田さんという人物が登場します。作中でこの有田さんの子どもは無事生活できているという記述がありましたが、この子がメインキャラとして登場する物語が別に出ています。
それが2014年に発表された児童文学『いっしょにアんべ!』。著者は『ふたりのえびす』と同じ高森美由紀さんです。高森さんにとってはこの作品が初めて出版した児童文学でした。
書名 | いっしょにアんべ! |
作者 | 髙森美由紀 (著)、ミロコ マチコ (イラスト) |
出版社 | フレーベル館 |
発売日 | 2014年2月1日 |
ページ数 | 221ページ |
『いっしょにアんべ!』は、第15回ちゅうでん児童文学賞大賞を受賞。あらすじをBOOKデータベースより引用します。
ひとりでいることはきゅうくつじゃない、自由だ―そう思って生きてきたノボル。あの日に起こった震災のせいで、日常が変わってしまった有田。デジカメを片時もはなさない有田の心の傷を知ったノボル、そして、クラスでういているノボルの心の悲しみに気づいた有田は…。
引用:Amazon
『ふたりのえびす』が好きだった人や、東日本大震災について深く考えたい人などは、ぜひ『いっしょにアんべ!』もチェックしてみてください。
まとめ:『ふたりのえびす』は伝統芸能のえんぶりを通して自分らしく生きる大事さを知れる児童文学だった
いかがでしたか?『ふたりのえびす』の特徴を以下にまとめました。
・2023年の課題図書(小学校高学年の部)
・青森県の伝統芸能えんぶりについて知れる
・自分らしく生きる大事さを考えさせられる
以上です。読書感想文の課題図書としてはもちろん、伝統芸能についての理解や自分らしく生きる大事さを知れる一冊としてもおすすめです。ぜひチェックしてみてください!
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