心温まる小説と話題の『宙ごはん』(読み方は「そらごはん」)。今回はこの小説のあらすじや感想を紹介し、さらに映画化やドラマ化の可能性(キャストの予想も)、ラストシーンのネタバレ考察、読書感想文を書く際のヒントなどをまとめました。本屋大賞を過去に受賞した町田そのこさんの最新作。ぜひチェックしてみてください。
町田そのこの小説『宙ごはん』とは
書名 | 宙ごはん |
作者 | 町田そのこ |
出版社 | 小学館 |
発売日 | 2022年5月27日 |
ページ数 | 369ページ |
『宙ごはん』の作者は町田そのこさん。2020年に発表した小説『52ヘルツのクジラたち』で2021年本屋大賞を受賞しており、『星を掬う』と本作で3年連続本屋大賞のTOP10に入るという偉業を達成しています。
『宙ごはん』は奔放に生きる親に振り回されながらも、成長していく子どもの姿を主人公の宙の視点で描いた長編小説。宙が小中高と進学していくにつれ、宙の心情や産みの母である花野と関係がどう変化していくかが読みどころの一つです。
※『宙ごはん』は以下に当てはまる人におすすめ!
・本屋大賞を受賞した『52ヘルツのクジラたち』が好きだった人
・親との関係に悩んだことがある人
・料理が好きな人
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3分で分かる『宙ごはん』のあらすじ【※ネタバレなし※】
宙は産みの母の花野と、育ての母の風海と共に同居し、幼少時代を過ごしてきた。宙は花野のことを、お母さんともママとも呼べず、「カノさん」と呼ぶ。花野は大人らしいことをまるでしない。
宙が小学校にあがる時に、風海は夫の海外赴任に同行し、宙のもとを離れていった。そこから始まった、宙と花野の共同生活。しかし花野は娘の宙に関心が無いのか、ごはんを作ることも、授業参観に来ることもしなかった。それよりも花野は、恋人の拓殖との時間を優先するのだ。
そんな宙に援助してくれたのが、花野の中学校からの友人である佐伯だった。佐伯はかつていじめられているのを花野に救ってもらった恩義があり、花野に好意を抱いているようだ。料理人でもある佐伯から、宙はパンケーキの作り方を教えてもらった。
自分勝手な花野に振り回されながらも、宙は中学生、高校生へと成長していく。その度に、自分と同じように身勝手な大人たちに翻弄される子たちと交流する。宙たちは自分たちの置かれた状況をどう打開し、成長していくのか。そして花野は変化していくのか。親子の関係性を紡ぐのは、おいしい手作りの料理だった…。
『宙ごはん』の主な登場人物まとめ
『宙ごはん』には登場人物が多く出てきますが、その中でも物語に関連性が強いキャラクターをまとめました。後半に登場する人物もいますが、少しネタバレを含んでしまうので、ここでは主に前半に登場する人物を中心に紹介します。
・川瀬宙(かわせそら):本作の主人公。幼少期は産みの母と育ての母と同居しながら育つ。佐伯と出会い、次第に料理に興味を持っていく。
・花野(かの):宙の産みの母だが、宙からは「カノさん」と呼ばれる。大人らしいことをまるでしない。イラストレーターとして活動。
・風海(ふみ):花野の妹で、宙の育ての母。宙からは「ママ」と呼ばれる。宙が小学生になる時、夫と共に海外へ移住する。
・日坂康太(ひさかこうた):風海の夫。宙からは「パパ」と呼ばれる。シンガポールへ海外赴任する。
・萠(もえ):康太と風海の子。
・佐伯恭弘(さえきやすひろ):花野の中学からの友人で、花野に好意がある。ビストロサエキの二代目オーナーになる。
・田本(たもと):川瀬家の家政婦。70歳の女性。宙に家事や出汁の引き方を教えた。
・柘植(つげ):花野の恋人。花野とは親子ほどの年齢差がある。
・桃子(ももこ):柘植の娘。花野に罵声を浴びせる。
・大崎マリー(おおさきまりー):宙の保育園からの同級生。きっぱりはっきりした性格。
・元町勇気(もとまちゆうき):宙の小学校のクラスメイト。食べ物の好き嫌いが激しい。
・葛西哲郎(かさいてつろう):宙の小学校のクラスメイト。寡黙な男子。
・北川依子(きたがわよりこ):小学校時代の宙の担任。おっとりした性格。
・神岡鉄太(かみおかてった):中学時代の宙の同級生。
・遠宮廻(とおみやめぐる):高校時代の宙の同級生。
・春川智美(はるかわともみ):佐伯の結婚相手。ビストロサエキにパートとして勤めていた。
・直子:佐伯の母。花野の存在を疎ましく思っていた。
『宙ごはん』のネタバレ解説&考察まとめ
ここからは『宙ごはん』の魅力や、気になることを大解剖していきます。ラストシーンの考察ではネタバレを含みますが、クリックしないと中身が見れないようにしているので、大丈夫な方だけチェックしてみてください。
【考察】おいしそうな料理の描写が魅力
タイトルの『宙ごはん』(読み方は「そらごはん」)が示すように、料理が作品を読み進める中での一つのキーワードとなっています。本作は5章からなりますが、どの章もタイトルに料理名が入っているのも特徴です。
第一話「ふわふわパンケーキのイチゴジャム添え」で、宙は佐伯からパンケーキの作り方を教わります。また、ラストの場面ではパンケーキを食べている時の心情が以下のように表現されています。
甘くて、ふわふわしてて、何て美味しいのだろうと思う。やっぱりパンケーキって元気の出る魔法なんだ。一緒に食べる、それだけで胸が温かくなる。もう大丈夫だ、そんな気持ちになる。
引用:『宙ごはん』66ページより
じんとくるシーンですね。ここは宙の心情が投影された場面ですが、他の場面では料理のおいしそうな描写が続いて、こちらも食べたくなるような気持ちにさせられます。ぜひ料理の描写や、料理がもたらす主人公の心情などに注意して、読み進めてみてください。
『宙ごはん』のラストシーンをネタバレ考察
『宙ごはん』では話が進むにつれて、宙が保育園、小学校、中学校、高校とだんだん成長していきます。ラストの場面ではどのような終わり方になったのでしょうか?振り返ってみましょう。
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最終章の第5話では、交通事故で佐伯が亡くなるという衝撃的な展開となります。事故の相手は飲酒運転をしていたどうしようもない男でしたが、その息子の少年が遺族に償いたいと、何度も佐伯家のもとへ訪れていました。
宙はその少年と母親を家へと招き、花野と一緒に食事をします。花野は少年に対して、謝罪はただの自己満足で遺族のためになってないと諭します。その際、花野は自分がいかに情けない人間だったか、そして周囲や我が子が支えてくれたことへの感謝を述べるのです。
このようにラストでは成長した姿を見せた、花野。本人はこう語ります。
あたし、自分が誰かのためにこんなにも動けるんだってことに驚いてんの。いままでだったら絶対にできなかった。ああ、あたしってまだ成長できるんだなって感動もした。ねえ宙、覚えておきな。世界ってあたしの年でも、どんどん広がって変化していくんだよ。すごいね
引用:『宙ごはん』361ページより
花野の成長の跡がうかがえますね。また宙は佐伯家へ行き、佐伯から教わったパンケーキを作ります。佐伯の味を再現したことに、妻や母親は感動。そして、宙がお店を開業するラストシーンへとつながっていきます。
料理の味が死者を蘇らせるというのは、最近始まったドラマ「100万回 言えばよかった」にも共通しています。亡くなった恋人が幽霊として現れ、作った料理の味で本人だと知る、という話がありました。
普段、何気なく食べている料理も、実はそこから生まれるコミュニケーションがあるのだと気づかされます。最後に『宙ごはん』ラストの一文を引用しましょう。
これからたくさんのごはんが、あなたたちを母娘として育んでくれるのだ、と。
引用:『宙ごはん』365ページより
『宙ごはん』はドラマ化・映画化される?キャストを大予想
『宙ごはん』はドラマや映画化されても、また人気が出そうな小説ですね。実は既に本作をPRするために、ショートドラマが制作されています。ただ、今は動画が削除されてしまっているようです。
こちらのキャストは
川瀬花野:永尾まりや
川瀬宙:板垣樹
佐伯恭弘:白戸達也
でした。
上記映像はあくまでプロモーションのために制作された短いショートストーリー。もし本作が長編映画や連続ドラマなどで制作されたらどうなりそうか、少し予想してみましょう。
ショートストーリーにもあるように、料理の映像が魅力的な作品になりそうですね。心温まる家族ドラマでありながら、グルメドラマとしても人気が出そうな気がします。
映像化された時のキャストも予想してみました。
川瀬宙(高校時代):當真あみ(幼少時代は子役)
川瀬花野:二階堂ふみ
佐伯恭弘:窪田正孝
日坂風海:大野いと
日坂康太:浅香航大
田本:松原智恵子
柘植:生瀬勝久
遠宮廻:藤原大祐
みなさんの予想はいかがでしょうか?ぜひ早くドラマ化・映画化された作品を見てみたいものですね。
『宙ごはん』を題材に読書感想文を書く際のヒント
『宙ごはん』は主人公が小学生〜高校生となる時代を中心に描いているので、読書感想文の図書として選ぶ学生もいるでしょう。しかし読書感想文はどこからどう書いていいか分からない…ここではそんな人に向けて、書く際のヒントを解説します。
そもそも読書感想文は、あらすじをまとめるよりも、自分がその作品を読んでどう感じたかを書くことが重要です。主人公や周囲の子どもたちが身勝手な大人に振り回されながらも成長する、という話が大筋なので、その辺りを簡単にまとめた上で、自分が主人公のどの部分に共感し、どう思ったかを自分の言葉で書いてみましょう。
ただ、作品に出てくる大人たちは、暴力を振るっていたり、いわゆるネグレクトのように育児放棄をしていたり、飲酒運転を起こしたり、とかなりダメな人間ばかり出てくるので、比較する大人が書きにくい、というのはあるかもしれません。自分の親や周囲の大人の悪口になってしまう恐れがありますね。
そういった心配がある人は、料理の重要性についてフォーカスしてみるのも良いです。ここでは料理が一つのコミュニケーションを円滑にするための役割として描かれています。例えば食事をする際に、ゲームやテレビばかり見てしまい、親や友人とうまく話せなかったことはありませんか?またいつも料理を作ってくれている親が、どんな気持ちで作ってくれているか想像したことはありますか?その辺りを記述してみましょう。以下は一例です。
(読書感想文の例)
「宙ごはん」では料理のシーンが印象的で、親と子が心を開いてコミュニケーションをとるための役割をしていると感じました。例えば〜〜(ここで作品の中で食事をしている場面について簡単にまとめる)僕自身も親とゆっくり話せるのは、夜ご飯を家族と一緒に共にしている時です。今日の部活で何があったか、学校でどんなことがあったかを、母は聞いてくれました。
しかしここ最近は携帯ゲームに夢中になって、食事でのコミュニケーションを疎かにしている部分もありました。この本を読んで、せっかく家族間で会話ができる時間を台無しにしてしまっていると気づいたので、反省し、もっと食事を味わいながら、家族と話をしてみようと思いました。
上記のように、作中の場面をまとめた上で、自分自身の気づきを書くようにしましょう。
『宙ごはん』を読んでみた感想
ここからは筆者が『宙ごはん』を読んだ上での感想を綴ります。また読者がSNSやレビューサイトに投稿した内容もまとめました。
【筆者の感想】重厚なテーマだが、重苦しくはない
町田そのこさんの作品は『52ヘルツのクジラたち』にも共通するが、どうしようもない身勝手な大人と、弱い立場にいる子どもの構図が成り立っている印象があります。その上で子どもたちがどう乗り越えるかが読みどころで、本作もどうにか健やかに成長してほしいと応援しながら読み進めました。
重厚なテーマですが、あまり重苦しくはならない雰囲気にならないのは、作者の力でしょう。そこには二つの工夫があると思います。
一つは、登場人物の死などの重苦しい事実をあっさりと先に呈示してしまうこと。例えば、誰かが死にそうな描写を延々とされると、それだけでかなり息苦しい展開になります。死んでしまうとしても先に事実として書いてしまうことで、読者としては身構えることなく受け入れやすくなるのでしょう。
もう一つが、救いとなるような描写を合間合間に挟むこと。今回でいうと、やはり料理の描写です。いかに人間関係で苦しんでいようとも、食事は毎日行うもの。そこで手料理が愛情の象徴として、作品に活力を与えてくれました。
【みんなの感想や評価】深い家族愛に感動した
「宙ごはん」町田そのこ
作った料理を「美味しい」って言ってくれるのって、「可愛い」とか「好きだ」って言われるのと同じくらいの温度で届く。
とにかく料理人のやっちゃんがイケメンすぎるのと、家族愛が綺麗すぎてもはやファンタジーです。
料理を通したコミュニケーション。素敵でした。#読了 pic.twitter.com/NoS8erYtp4
— 堀江圭子📚🎸 (@sherry93588845) February 6, 2023
『宙ごはん』町田そのこ #読了
感動して、落とされ、沈んだ気持ちがまた救われて、でもまた落とされ、の繰り返しでした。良い意味で小説に振り回された。読んでいる間は目頭が常に熱い感じ。最後はいろんな感情が押し寄せてきて涙が溢れた。
やっちゃんのパンケーキ、私も食べてみたい。 pic.twitter.com/gsuW0wEnNZ— たまき (@tamaaaaaabookl1) February 5, 2023
少しずつ、成長しながら自分の居場所を見つけていく主人公と周りの大人たちの人生観が、丁寧に描かれています。ほっこりと心が温かくなります。
引用:Amazon
町田そのこ『宙ごはん』#読了
めちゃいい本…普段ミステリとかサスペンスばっかり読んでいるからか、こういう話はグサグサ刺さります。後半はずっと泣いてた。
誰しもが「救われる側」でも「救う側」でもあって、家族はもちろん、たくさんの人に支えられながら今を生きているんだよなと感じました。 pic.twitter.com/BHqfLeLekN— 本を読みたいあしら (@ashira_books) February 5, 2023
まとめ:『宙ごはん』は深い家族愛とおいしい料理の描写が魅力の小説だった
いかがでしたか?『宙ごはん』の特徴を以下にまとめました。
・身勝手な大人に振り回される子どもの成長を描く
・親子の関係性を愛情溢れる料理の描写で丁寧につなぎとめる
・三年連続本屋大賞の候補入りした作家の実力作
以上です。まだチェックしていない方は、ぜひ読んでみてください!
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コメント
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「宙後ごはん」は、4分の1程で読めませんでした。
万人の心を動かさない、いらない描写が多く、ストーリーにも繋がっていません。
文章表現好みに合わなかったのだと想い、読むのをやめました。
「52ヘルツのくじら」は、いろんな人間がいるなか、一種の特定の方の価値観の世界観がステキでした。
「星を掬う」は自分と同じ主人公があったり、自分とは違う見え方感じ方をする主人公が、励みになったりもしました。
逆にいえば「宙ごはん」は、心の狭さが感じられ、登場人物の個性が強くて、宙の信念や心の成長が感じられません。