原田マハの真骨頂でもある、アート史を基にしたミステリの傑作が登場!アート史上最大の謎とされる「ゴッホの死」をテーマにした小説『リボルバー』を特集します。簡単なあらすじや感想をご紹介。ネタバレ含むラストシーンも解説していますが、まだ読んでない方は出来るだけその部分は読み飛ばしてくださいね!
原田マハの小説『リボルバー』はゴッホの死を巡るアートミステリー
書名 | リボルバー |
作者 | 原田マハ |
出版社 | 幻冬舎 |
発売日 | 2021年5月26日 |
ページ数 | 336ページ |
原田マハさんの新刊『リボルバー』は、アート史上最大の謎とも言われる「ゴッホの死」を題材にしたアートミステリーです。ゴッホはピストル自殺をしたとされていますが、本当なのか?誰かが引き金を引いたのではないか?晩年を共にしたゴーギャンとの生活に迫りながら、その謎に迫っていきます。
史実を基にしたフィクションですが、作者の原田マハさん自身がキュレーターやカルチャーライターとして活躍されていることもあり、膨大な資料や取材を基に書かれています。作者本人は「真実とは?」という書き方を嫌っているのでそうは紹介しませんが、史実を入念に調べた上での物語なので、かなり読み応えがあります。
原田マハさんはこれまでにもアートにまつわる小説を多く刊行してきました。
『楽園のカンヴァス』:ルソー
『ジヴェルニーの食卓』:モネ
『暗幕のゲルニカ』:ピカソ
上記三作は全て直木賞の候補になり、『楽園のカンヴァス』は第25回山本周五郎賞を受賞しています。さらに今回のようにゴッホを扱った小説は、過去に『たゆたえども沈まず』があります。
原田マハさんは特にゴッホについての思い入れが強いようで、今回紹介する『リボルバー』も彼女の気持ちが入った力作になっています。
【ネタバレなし】『リボルバー』の簡単なあらすじ
幼い頃にゴッホの「ひまわり」やゴーギャンの絵に魅せられた高遠冴(たかとおさえ)は、彼らの世界を深く知るためにパリへと行った。美術史の博士号を取得した後に、フランスの小さなオークションハウス・CDCで働くことに。いずれゴッホとゴーギャンについてまとめた博士論文を発表する予定だ。
ある日冴のもとへ、一人の女性・サラが「見ていただきものがある」と訪ねてきた。茶色い紙袋の中から出てきたのは一丁の拳銃(リボルバー)。それはゴッホの自殺に使われた代物だと彼女は言う。
冴はそのリボルバーが本物かどうか調査を始める。かつてそのリボルバーを所有していた食堂を訪れたり、ゴーギャンとゴッホの過去を調べたりしていく内に、冴はある仮説へとたどり着く…。
【※ネタバレあり※】『リボルバー』の詳しいあらすじ
※この章はネタバレを含みます。ネタバレしたくない方は読み飛ばしてください。※
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サラはリボルバーが本物だという証拠について、かつて展覧会で展示されていた際のカタログを提示する。しかし調査していく内に、明らかにそれとは別物だと判明する。ただしその一方で、かつてリボルバーを所持していた食堂の主人の証言とサラの発言に食い違いがあることなどから、冴はさらに調査を続けるように。
やがて冴は、以下の仮説へと思い至る。
・リボルバーの持ち主はゴッホではなくゴーギャンだった
・ゴッホは自殺したのではなく、ゴーギャンに殺された
・サラはゴーギャンの子孫である
サラ本人にそのことを告げると、サラはそのことを認めて追想を始めた。ただし、上記の仮説は一部が過ちだったと次第に明らかになる。リボルバーを所持していたのは確かにゴーギャンであったが、他殺ではなくあくまで事故だった。
自殺を仄かしていたゴッホを嗜めるために、ゴーギャンがリボルバーを胸に当てて狂言自殺を試みたのだった。ゴーギャンはリボルバーに弾が装着されていないと思っていたが、実は一発だけ弾が込められていた。そのことを密かに知っていたゴッホはゴーギャンが誤って死なないように、止めに入る。その際揉み合いになり、誤射した銃弾がゴッホの腹に当たったのだった。
【※ネタバレあり※】『リボルバー』のラスト(結末)を紹介
※この章はネタバレを含みます。ネタバレしたくない方は読み飛ばしてください。※
ネタバレしていいからラストを知りたい方はこちらをクリック!
ゴッホが自殺に用いたとされる拳銃がオークションに出展された。専門家の確証はないままだったが、幾らかの説得力はあると見なされ、実際に高値で落札された。
ゴッホが事故で亡くなった際に使われた、本物のリボルバーはサラが所持したままで、オークションには出さないようにした。ただしそこには付着している絵具があり、鑑定の結果「ひまわり」の一部だと判明した。
『リボルバー』の読みどころ(魅力)3つを解説
これから『リボルバー』を読んでみようという方へ向けて、本作の魅力や読みどころを解説します。
アート史上最大の謎とされる「ゴッホの死」の真相の追究
ゴッホの死は自殺とする見方が優勢ですが、不明な点が多くアート史上最大の謎とされています。
・現場を誰も目撃していない
・自殺にしては銃弾の入射角が不自然である
といまだに解明されておらず、2011年には地元の少年たちと小競り合いした末に銃が暴発した事故だという説も唱えられました。
本小説もその謎の真相を突き止めるために、冴がリボルバーを飾っていた食堂を訪ねたり、ゴーギャンの過去を遡ったりと探偵さながらの追究を続けます。謎が謎を呼びながらも、段々と真相へと近づいていく過程が面白いです。
孤高の芸術家・ゴッホとゴーギャンのやりとり
ゴッホは当時あまり高く評価されておらず、貧乏な生活を続けていました。当時の彼の作風は時代を先取っており、世間でまだ受け入れられていなかったのです。しかしゴーギャンが彼の才能を見出し、やがて共同生活へと至ります。
冴は彼らの当時の状況を調べるにあたり、ある共通点を見つけます。生まれ育った境遇や今の処遇などは正反対な点が多いものの、彼らだけにあるものを見つけていくのです。この辺りはゴッホに魅入られた作者・原田マハさんの並々ならぬ取材や調査が活かされています。原田マハさんのゴッホ、ゴーギャンに対する、情熱や愛情が多分に反映されていると感じます。
アートの良さを小説で表現しようと挑んでいる点
アートの良さを小説で表現するのはかなり困難な所業です。しかし最大限の敬意を払いつつ、原田マハさんは文字で表現しています。例えば少女時代の冴が「ひまわり」に魅せられるシーン。
まどろみの中で黄金色に輝く花々をみつめていると、話しかけてくるような、笑いかけてくるような気がした
子どもらしい視点でうまく表現されています。このようにアートは見る人のその時の年齢や状況によって、捉え方が変わるものです。「ひまわり」についてはその後大人になって、真相へとたどり着く冴の視点からもまた語られる場面があります。その時の描写の違いを意識しながら読むと、より楽しめるでしょう。
『リボルバー』の感想は?口コミ評価レビューまとめ
『リボルバー』の皆さんの評価や口コミをまとめてみました。
エピローグ前のエンディングは、少しウェルメイド過ぎる印象はありましたが、後期印象派のタブローへ寄せる原田マハの思いが彼方の「一枚の絵」に結実し、心の良きものがはじけ飛ぶような爽やかなものでした。
引用:Amazon
ゴッホ、ゴーギャンと広く知られている画家を題材にしており、比較的美術に縁のない人でも入りやすい。
引用:Amazon
記事執筆時はまだ『リボルバー』が刊行されたばかりでまだ感想が少ないので、また後日この章は皆さんの口コミやレビューを追記します。
まとめ:『リボルバー』は「ゴッホの死」を巡るハートフルなアートミステリー
いかがでしたか?『リボルバー』のあらすじ、ラストのネタバレ解説、感想などをまとめました。最後に原田マハさん本人のインタビューが聞ける動画を載せておきます。
2021年7月から行定勲・演出、安田章大・主演で舞台化も決定している本小説。まずは作品をぜひ読んでみてください。
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