第168回直木賞の候補作となった『クロコダイル・ティアーズ』(著:雫井脩介)。今回はこの小説のあらすじや感想を紹介。さらに作品の魅力をより深掘りするためにタイトルの意味やラストのネタバレ考察なども行います。最後まで緊張感が続くサスペンス!未読の方はぜひチェックしてみてください。
雫井脩介の小説『クロコダイル・ティアーズ』とは
書名 | クロコダイル・ティアーズ |
作者 | 雫井脩介 |
出版社 | 文藝春秋 |
発売日 | 2022年9月26日 |
ページ数 | 331ページ |
『クロコダイル・ティアーズ』は、雫井脩介さんによるミステリー小説。『犯人に告ぐ』や『クローズド・ノート』がヒットし、既に人気作家と言える雫井さんですが、意外にも直木賞候補となるのは今回が初めてです。
『クロコダイル・ティアーズ』は、家族間で広がる疑心暗鬼がラストまで続くサスペンス風ミステリー。息子を殺害された熟年夫婦の視点がメインで物語が進み、同居する息子の嫁が殺害に関わっているかどうかが、今作を楽しむ大きな鍵の一つとなります。
※『クロコダイル・ティアーズ』は以下に当てはまる人におすすめ!
・『犯人に告ぐ』や『クローズド・ノート』とはまた違った雫井作品を楽しみたい人
・新感覚のサスペンス風ミステリーを味わいたい人
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3分で分かる『クロコダイル・ティアーズ』のあらすじ【※ネタバレなし※】
陶磁器店を営む久野貞彦の息子が殺害された。逮捕された犯人は、息子の妻である想代子の元交際相手だった。貞彦は夫を亡くした想代子とその息子の那由太を家におき、共に生活することにした。
そんな中、裁判で犯人が「想代子に殺すように頼まれた」と喚いた。本当に想代子が殺しを依頼したのか?貞彦は想代子を信じようとする一方で、貞彦の妻・暁美は疑いを募らせていく…。
『クロコダイル・ティアーズ』の主な登場人物まとめ
ここで『クロコダイル・ティアーズ』に登場する主な人物についてまとめましょう。先に貞彦の親族をあげて、後にその他の主要人物を記します。
・久野貞彦(くのさだひこ):陶磁器店【土岐屋吉平】の店主
・暁美(あきみ):貞彦の妻。想代子のことを疑っている。
・康平(こうへい):貞彦の息子。殺害される。
・想代子(そよこ):康平の妻。殺害を強要したのではと疑われる。
・那由太(なゆた):想代子の息子
・塚田東子(つかだはるこ):暁美の実姉
・塚田辰也(つかだたつや):東子の夫
・山中祥子(やまなかしょうこ):【土岐屋吉平】のパートナースタッフ
・隈本重邦(くまもとしげくに):想代子の元交際相手。康平を殺害した。
・大西(おおにし):大西呉服店の店主
・米村(よねむら):「東西」の記者
『クロコダイル・ティアーズ』のネタバレ解説&考察まとめ
ここからは『クロコダイル・ティアーズ』の魅力をさらに深掘りするために、タイトルの意味や、ラストについての考察を行います。ネタバレ部分は隠しているので、読んで大丈夫な方だけクリックしてチェックするようにしてください。
『クロコダイル・ティアーズ』は実話?作者インタビューで明かされた事実
『クロコダイル・ティアーズ』は実在する事件をモチーフにしているのでしょうか?これについては作者の雫井脩介さんがインタビューで以下のように語っています。
数年前に新聞を読んでいて、ある裁判をめぐる小さな記事が気になっていました。〈ある男性が殺された。殺人罪に問われた被告人は、未亡人となった妻の友人であり、裁判で『その妻にそそのかされた』と証言した〉というものでした。
(中略)
殺された男性の両親は、どう感じるんだろうか。もしかしたら、小説になるのではないか、と数年間、温めていたんです
引用:〈特別インタビュー〉雫井脩介は、なぜ家族の希望と闇を描くのか。 『クロコダイル・ティアーズ』(雫井 脩介) | インタビュー・対談 – 本の話
この事件自体がどうなったかまでは追いかけてないそうですが、ある事件にインスピレショーンを受けて本作が生まれたというのは事実のようです。
タイトル「クロコダイル・ティアーズ」の意味は「嘘泣き」
タイトル「クロコダイル・ティアーズ」を直訳すると「ワニの涙」。古代ローマ時代の表現で、嘘泣きという意味があるそうです。その嘘泣きとは物語の中で登場する、あるシーンのことを表しています。
それは、康平が亡くなった際に想代子が嘘泣きしていたのではと疑われている場面のこと。暁美はこの場面を回想する度に、想代子が怪しいとの疑念を膨らませていきます。
実はラストでタイトルの意味にもなっている、嘘泣きシーンの真実について語られる箇所があります。ネタバレとなるのでここでは書けませんが、次章のネタバレ考察部分で少し触れますね。
『クロコダイル・ティアーズ』のラストの場面をネタバレ考察
はたして想代子は本当に殺害に関与していたのでしょうか?終盤までは想代子視点で語られることがほとんどなく、読者はモヤモヤした気持ちで読み進めることになります。ようやく真実が分かってきだすのは、物語の終盤です。ラストの場面について考察してみましょう。
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結論からいうと、想代子は殺害には関与していませんでした。そして前述した「嘘泣き」の意味もこう明かされます。想代子の気丈な一面が垣間見えた場面でした。
被害者の妻として悲しみに暮れる姿を見せなければと思いながら、その思いが高じるあまり、涙が出なくなってしまった。最初こそ何とか絞り出していたが、周囲の目を気にすれば気にするほど、本来あるべき感情が手からこぼれていくようにして逃げていった。
引用:『クロコダイル・ティアーズ』323ページより
病気で亡くなった貞彦や暁美を引き継ぎ、最後は想代子が前向きに生きようとするハッピーエンドと捉えられそうな一方で、結果的に久野家を乗っ取ったような形になったことにどこか釈然としない気持ちが残る読者もいるかもしれません。
暁美側だった読者の目線だと「乗っ取られた」、貞彦側だった読者の目線だと「引き継いでくれた」という気持ちが芽生えるのだと思います。立場の違いでいろんな終わり方にできてしまうのが、うまいなぁと感心させられました。
『クロコダイル・ティアーズ』を読んでみた感想
ここからは『クロコダイル・ティアーズ』を読んだ筆者の感想を書き、さらに読者のレビューや評価をまとめます。
【筆者の感想】男女の考え方の差が如実に出ている
おもしろいなと思ったのは、貞彦が男性的な考え方、暁美が女性的な考え方をしていると感じた点です。貞彦は想代子を信じたいと、どこか楽観的な考え方。対して、暁美は想代子を終始疑っており、悲観的な考え方をしています。
筆者は少し前にTwitterで見たあるツイートを思い出しました。それは「夫」と検索すると、追加キーワードとして「死ね」「死んでほしい」などのネガティブな言葉が並ぶ一方で、「妻」と検索すると、「プレゼント」「喜ぶこと」などのポジティブな言葉が並ぶというもの。こういった、家族に対する潜在的な気持ちが、本作にも如実に出ているなと感じました。
雫井さんの作品を読んだのは初めてだったのですが、もっとハードボイルドな作風だと勝手に思っていました(実際どうなんでしょう)。失礼ながらこんなに繊細な心情を書ける人だとは思っていなかったので、他の作品もこれを機に読んでみようと思いました。
【みんなの感想や評価】読むほどに疑心暗鬼に陥ってしまう
雫井脩介「クロコダイル・ティアーズ」#読了
読めば読むほど疑心暗鬼になるミステリ📚!「誰かを疑う」心情がこれでもかと描かれていました!疑う人。信じたい人。信じるといっても何らかの利害があったりなかったり…。人の心の動きが(ハラハラで怖いけど!!)面白かったです…😱!#パンの耳 pic.twitter.com/od93suj5yD— あべしぃ📚ブックチューバー (@honjituno) January 15, 2023
老舗陶器店の跡取り息子の死を巡って、その妻にたいして義父母が抱く期待と疑惑の交錯がメインストリームである。
くどいほどの感情描写が続き、半ばまでは期待が裏切られるかもしれないと、半分、気持ちを引きながら読み進めた。
が、終盤の落とし込みはさすがで、くどいほどの感情描写こそがこの作品をある意味では成立させていることが明らかになる。
引用:Amazon
もしかしたら、事件の真相、結末には賛否あるかもしれません。
しかし、物語の軸は、姑目線からは嫁の関与の容疑は相当真っ黒なのに、逆に窮地に追い込まれそうになっていく恐ろしさ、スリリングさにある気がしました。
引用:Amazon
『クロコダイル・ティアーズ』雫井脩介
家庭内のドロドロを描いたミステリー。映像化も有りそうな内容です。
リアルな心情描写がくどいほど続きますが、これを名優が演じると面白いかも。
・DV
・義両親と同居
・血縁者が家業を継ぐことに固執
この3つはしたらあかんと強く思わせてくれました。#読了 pic.twitter.com/BW4wcQ6EtV— Partition (@partiti660) January 8, 2023
まとめ:『クロコダイル・ティアーズ』は家族への疑いが募るサスペンス風ミステリーだった
いかがでしたか?『クロコダイル・ティアーズ』の特徴を以下にまとめました。
・第168回直木賞候補作
・家族への疑いが募るサスペンス風ミステリー
・ラストの終わり方がおもしろい!
以上です。まだチェックしていない方は、ぜひ読んでみてください!
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