今回は小説『ともぐい』(著:河﨑秋子さん)のあらすじや感想をご紹介します。第170回直木賞を受賞した本作。タイトルの意味、ラストシーンについてのネタバレ考察なども行います。ぜひ最後まで読んでみてください。
【第170回直木賞受賞作】河﨑秋子の小説『ともぐい』とは
書名 | ともぐい |
作者 | 河﨑秋子 |
出版社 | 新潮社 |
発売日 | 2023年11月20日 |
ページ数 | 304ページ |
著者の河﨑秋子さんは北海道出身の小説家。これまで『肉弾』で第21回大藪春彦賞を、『土に贖う』で第39回新田次郎文学賞をそれぞれ受賞しています。また、『絞め殺しの樹』は第167回直木賞の候補作に選ばれ、本作が二度目の直木賞候補作となりました。
新刊『ともぐい』(新潮社)発売中です。熊とか鹿とかいろいろ出ます。よろしくお願いしますʕ•ᴥ•ʔ
ニコ\…(ともぐい…つまりササミがササミをたべるの…? それとも、ちゅーるがちゅーるをたべるの…?)/ pic.twitter.com/OnqAfyWo7L
— カワサキ (@kawasakicheese) November 21, 2023
『ともぐい』は山の中で熊や鹿を狩りながら暮らす男・熊爪が主人公。特に熊と対峙するシーンには緊張感があるほか、集落の人々と接していく中で熊爪が変化していくところも読みどころです。
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3分で分かる『ともぐい』のあらすじ【※ネタバレなし※】
明治中期の北海道・白糠。人里離れた山の中で、熊爪は狩りをしながら日々を過ごしていた。鹿や熊を狩り、自分で食べたり、集落で売ったりしている。
人付き合いを極端に疎んじる熊爪だったが、集落では良輔という男が、常に熊爪の肉を買い続け、気にかけてくれていた。彼の屋敷には不思議な魅力を持つ少女・陽子がおり、熊爪はどこかその存在が気になっていた。
山で満ち足りた生活をしていた中、怪我を負った男が熊爪に助けを求めてきた。穴持たずと呼ばれる熊に追いかけられてここまで来て、襲われたという。熊爪は男を助けたいというよりかは、自分の領土を荒らした熊にこれ以上好き勝手にさせないために、渋々男を助ける。
男を助けたあとに、山へ戻った熊爪は、穴持たずを自分の手で殺そうと決意する。熊爪は穴持たずの熊を倒せるのか?そして、集落にいた謎の少女・陽子との間に訪れた運命とは……。
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『ともぐい』のネタバレ解説&考察まとめ
ここからは『ともぐい』の魅力を深掘りするために、タイトルの意味、作品の魅力、ラストシーンの考察などを行います。なお、ネタバレを含む解説部分は隠しているので、安心してお読みください。
タイトル「ともぐい」の意味とは
主人公の熊爪は、山で狩りをしながら生きる人物。動物も懸命に生きており、熊爪は動物が生き生きと生きている瞬間を狙おうとしています。やせ細ったときはおいしくなく、生き生きとしている時こそおいしいと思えるからです。
次の章にも書きますが、熊との対決は、どちらが食うか食われるかの大勝負。この闘いがひとつ、タイトルの「ともぐい」を象徴している場面だといえます。
また、本作の最後の章(十二章)は、「とも喰らい」というタイトルが付いています。ラストシーンも大きな展開があるのですが、ネタバレを含むので、そこの詳しい解説を読みたい人は「衝撃のラストシーンをネタバレ考察」の章を読んでみてください。
なお、過去に芥川賞を受賞した田中慎弥さんの著書も「共喰い」という書名でしたが、本作とは何の関係もありません。
緊張感みなぎる熊との対峙シーンに注目!
本作最大の読みどころは、やはり熊との対峙シーンにあるといっていいでしょう。前半では凶暴な性格の穴持たずをどう倒すかがひとつの焦点となります。熊爪は連れている犬とともに、穴持たずの痕跡を探していきます。
また、穴持たず以外にも物語後半にも別の熊との闘いのシーンが描かれます。こちらは王者の貫禄をまとった熊で、まさに最強の敵との闘いとなります。どちらも苦戦を強いられる熊爪で命の危険性を感じさせるスリリングな場面となっています。
ぜひ、この闘いのシーンに注目してみてください。
衝撃のラストシーンをネタバレ考察
物語後半は、山での場面に加え、集落の人物との交流も出てきます。ここではまさかの結末となった、ラストシーンを考察します。ネタバレを含むので、一度最後まで作品を読んだ人だけ、下記をクリックして中身を確認してみてください。
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【ラストシーン】
集落から攫うようにして陽子を山へ連れてきて、小屋でお腹の子(熊爪の子ではない)を産ませ、三人で暮らしていた熊爪。時期が落ち着いたら次は熊爪の子を産んでもいいと言っており、ついに妊娠をしたという。
そんな中、発情した熊爪は陽子に襲いかかるが、お腹の子に危険が及ぶかもしれないと拒む。それでも無理やり最後までした熊爪に対し、陽子は毒を飲ませ、刃を付きたてた。熊爪は自分に向けられた殺意を静かに受け入れ、そのまま絶命した。
【考察】
最後は熊爪が死ぬという悲しいラストでした。ただし、最後まで人間らしい生活ができなかった熊爪が、受け入れなければならなかった宿命なのかもしれません。安易にかわいそうな話だと結論付けてはいけない気がします。
熊爪は動物たちが生き生きと生きる絶頂の場面を射止めて、喰らう人物でした。そう考えると、逆に熊爪は愛するパートナーを得て、そのパートナーが自分の子どもを授かったという人生絶頂の瞬間に命を落とすというのは、必然のタイミングだったといえるのではないでしょうか。
最後に熊爪が「俺は、生き果たしたのだ」と頷くフレーズが、心に残りました。
『ともぐい』を読んでみた感想
ここからは『ともぐい』を読んでみた感想を書いていきます。また読者のレビューも合わせてまとめました。
【筆者の感想】逞しさと傲慢さを同時に見た
俗世界を離れて自然とともに生きる男の逞しさと、傲慢さを同時に見た気がしました。自分が狩った獲物を食べる瞬間は、その人にしか分からない達成感があるのだろうなと感じます。
男と女の物語はこれまで数あれど、これほど女性が野蛮的に描かれた作品は珍しいと思います。なるほど陽子のこの逞しさがあってこそ、熊爪との生活があったのだなと実感させられました。
終始重苦しい空気だった前作『絞め殺しの樹』に比べ、今作は読みやすく、それでいて良い緊張感をもって作品を楽しめました。前作と同様に直木賞候補に選ばれましたが、今作での受賞はあるのでしょうか。
山での暮らしぶりなど、この作者にしか書けない世界観があり、その点は高く評価されると思います。あとは相対的な評価で受賞に至るかどうかといったところです。現時点で候補作5作を読んでいるのですが、今のところ加藤シゲアキさんの『なれのはて』も高水準の作品なので、そのあたりと争うのではないかと思います。
受賞予想は対抗(〇)にしておきます。
→【追記1・17】
本作が見事第170回直木賞を受賞しました。対抗には予想していたので、まぁ予想としてはぼちぼちといった感じでしょうか。おめでとうございます!
【みんなの感想や評価】
続いて読者がSNSやレビューサイトに投稿した感想や評価をいくつか紹介します。
#読了 #河﨑秋子 著#ともぐい
言葉が出なかった
『颶風の王』の時も『肉弾』の時も
迫り来る生き物の魂を感じたけど
更に更にその上をいく重厚さに
「熊爪」(主人公)が夢に出てきたほどだ
帯の作家たちのコメントにも震えた
私は胸の内を言葉に出来なかった
読み終えてもう一度
帯を眺めている pic.twitter.com/14DlJzPNp0— 大津洋子(愛称ももやん) (@YEbNs55MGcxGdN3) January 14, 2024
今年は何度となく熊出没のニュースを見たけどついに”熊文学”なるものを読む。熊と格闘したら避けられない恐ろしやな描写に縮みあがる。熊に一番近い男熊爪の次第に炙り出される人間らしさの感情、同時に顔を覗かせる獣じみた本能。怖いのは獣か人間か。手に汗握る読書体験。#読了 #ともぐい pic.twitter.com/Hw9sUXPbN2
— あられ (@a_ra_re_no_re) December 26, 2023
熊との闘いの臨場感やこの先どうなるのだろうという興味はつきなかった。
最後は空恐ろしいとしか思えなった。
引用:Amazon
ともぐい/河﨑秋子 #読了
時代は明治後期。北海道の山の奥で犬と共に生きる猟師熊爪の物語。
大自然に生きる獣と人。生と死。
熊と対峙する場面は迫力満点で手に汗握りながら読みました。初めて読む「熊文学」なるものは凄まじかった。
己は獣なのか人なのか… pic.twitter.com/fapFv4Rgyt— 凛子@読書垢 (@RiN_nemurihime) January 6, 2024
まとめ:『ともぐい』は熊との対峙シーンに迫力がある小説だった
いかがでしたか?『ともぐい』の特徴を以下にまとめました。
・第170回直木賞受賞作
・熊との対峙シーンに迫力がある
・主人公が集落で暮らす女性とつながりを持つシーンにも注目
以上です。まだチェックしていない方は、ぜひ読んでみてください!
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