今回は『黄色い家』のあらすじや感想を紹介。ネタバレ部分は隠しつつ、作品の考察も行います。また、登場人物、タイトルの意味、映画化やドラマ化の可能性などについてもまとめました。川上未映子さんによる話題の本屋大賞候補作、ぜひチェックしてみてください!
【2024年本屋大賞候補作】川上未映子の小説『黄色い家』とは
書名 | 黄色い家 |
作者 | 川上未映子 |
出版社 | 中央公論新社 |
発売日 | 2023年2月20日 |
ページ数 | 608ページ |
作者の川上未映子さんは、「乳と卵」で芥川賞を受賞した作家。純文学作品のみならずエッセイや大衆向けの小説も発表しており、これまで『ヘブン』『夏物語』が本屋大賞の候補作に選ばれています。
『黄色い家』は1990年代後半を舞台に、貧困に苦しめられる若者の姿を描いたクライム・サスペンス。黄美子さんという女性と共同生活をすることになった主人公含む3人の未成年女性が、犯罪に手を染めていく様を丁寧に描いています。
※『黄色い家』は以下に当てはまる人におすすめ!
・平成中期の若者が抱えていた社会的課題を知りたい人
・犯罪に手を染める当事者の動機や心理的状況を知りたい人
・2024年本屋大賞の候補となった話題作をチェックしたい人
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3分で分かる『黄色い家』のあらすじ【※ネタバレなし※】
惣菜店の販売スタッフとして働いていたわたし(伊藤花)は、あるネット記事を見つけた。それは吉川黄美子という女性が20代女性を監禁して暴行した事件の裁判について書かれたものだった。わたしは約20年前に黄美子さんと過ごした時のことを思い出す。
わたしは15歳の頃、文化住宅に母と二人で暮らしていた。父はだいぶ前に家を出て行き、母にはトロスケという彼氏がいた。ある日、目を覚ますと母の代わりに知り合いだという女性が現れる。女性は「黄美子」と名乗り、自分のことをこう紹介した。
わたしの黄美子はね、黄色の黄に、美しい子で、黄美子
引用:『黄色い家』本文(37ページ)より
わたしは生活費を稼ぐために、ファミレスでバイトをしてコツコツお金を貯めていた。しかし、ある日その生活費が全て無くなっていることに気づく。わたしはトロスケが盗んだと確信し、母に問い詰めるも、うやむやな回答をされて終わる。
意気消沈したわたしは、黄美子についていき、新しい人生を始めることにした。そこで始めたのがスナック「れもん」だ。当時わたしは17歳だったが、20歳だと偽って接客する。ファミレスの給料より遥かに多く稼げることにわたしは驚がくする。
やがて、そのスナックで一緒に働くことになったのが、キャバ嬢を辞めた加藤蘭と、女子高生の玉森桃子だった。また、黄美子さんの知り合いでホステスをやっている琴美と、怪しげな事業をしている安映水(アン・ヨンス)とも親しくなる。
れもんの経営は順調で、黄美子さんとわたしたちは幸せな共同生活を送っていた。しかし、あるできごとをきっかけに平穏な生活に変化が訪れ、やがて3人はシノギで金を稼いでいくことになり……。
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『黄色い家』の主な登場人物まとめ
『黄色い家』の主な登場人物について、まとめました。
・伊藤花(いとうはな):本作の主人公。母のもとを去り、黄美子とともにスナックで働く
・吉川黄美子(よしかわきみこ):母の知り合い。17歳の花を連れ出してともに生活する
・加藤蘭(かとうらん):元キャバ嬢。花と共同生活を始める
・玉森桃子(たまもりももこ):女子高生。花と共同生活を始める
・琴美(ことみ):黄美子の知人。銀座のクラブでホステスをしている
・安映水(アン・ヨンス):黄美子の知人の在日コリアン男性。賭博などで生計を立てる
・ヴィヴィアン:映水の知人。花にカード詐欺(シノギ)の仕事を依頼する
『黄色い家』のネタバレ解説&考察まとめ
ここからは『黄色い家』の魅力を深掘りするために、タイトルの意味、作品の魅力、ラストシーンのネタバレ考察、映画化やドラマ化の可能性などについてまとめました。
タイトル「黄色い家」の意味とは?
タイトルの「黄色い家」に表されるように、本作には黄色のモチーフがたびたび登場します。
まずは、黄美子さんの存在。名前に黄色が入っており、わたしが最初に会ったときの自己紹介でも「黄色の黄に、美しい子で、黄美子」と紹介されます。次に、黄美子さんと一緒に働くことになるスナックの名前「れもん」。こちらも黄色い果実の名前です。
また、黄色は風水で金運に良いとされていることも作品におおいに関係しています。本作のテーマは「貧困」であり、そこからどう脱却するか、犯罪に手を染めても捕まらないでいられるか、といった部分で黄色いものにすがる描写が出てくるのです。
作品の終盤でも黄色は大きな意味を持ちます。こちらは「ラストシーンをネタバレ考察」の章で触れていきますね。
1990年代後半に若者たちが抱えていた課題について深く考えさせられる
本作は1990年代後半を舞台にしています。たまごっち、援助交際、ルーズソックス、hideの不審死など、当時の若者たちを取り巻く事柄やできごとが登場。当時を生きた人からすると、懐かしさが感じられるでしょう。
また、当時の社会の闇について深く切り込む作品でもあります。とりわけ貧困については、なぜ若者がここまで追いつめられるのかと考えさせられます。
特にカード詐欺を依頼する女性・ヴィヴィアンの達観した考えが読者の心に突き刺さってくるのではないでしょうか。貧乏なのにも金持ちなのにも理由がないといった考えなど、印象に残るセリフが多いので、注目してみてください。
ラストシーンをネタバレ考察!主人公や黄美子さんの運命は?
ここからはラストシーンについて考察した内容を記していきます。ネタバレとなるので、作品をすべて読んだ人だけ、下記をクリックしてみてください。
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若者たちで共同してシノギ(カード詐欺)を行っていましたが、花が他の2人を支配しているように感じた桃子が違和感を覚えたことで、結果的に仲間割れします。また親しくしていた琴美が亡くなり、その原因を作ったのが自分だと考えた花が、やや自暴自棄になったところで関係は決裂するのです。
このシーンの描写でも黄色が効果的に使われています。犯罪がばれないように運気をよくしようと家を黄色のペンキで塗るシーン、琴美が亡くなったあとに花がカッターナイフでその黄色を全て削ろうとするシーンなどが印象的です。
結末の場面では、現代に戻り、花が黄美子さんに出会いに行きます。裁判を乗り切った黄美子さんですが、やや認知症のような状態になっており、花と会っても何も覚えていないような素振りを見せます。花はそんな黄美子さんの面倒を見ようと決意するシーンで作品は終わります。
20年前、自分を母のもとから連れ去ってくれた黄美子さんに、恩を返そうとするラストには感動させられました。騒動後も地道に働いていた花が、今度は献身的に黄美子さんを支えていくんだろうなということを想像すると、どうかこれから二人には幸せが訪れてほしいと思わずにはいられませんでしたね。
『黄色い家』の映画化・ドラマ化の可能性は?キャストを予想してみた
『黄色い家』は、スリル満点のクライムサスペンスや、1990年代後半の社会風刺作品として、映像化しても優れたものができそうなイメージがあります。どちらかというとドラマ化というより映画化されて、大きなスクリーンで見たい気がしますが、皆さんはいかがでしょうか?
これまで川上未映子さんの作品はあまり映像化されてきませんでしたが、短編小説をもとにした「アイスクリームフィーバー」はアート要素強めな映画として高い評価を受けています。
今作も映像化されたらどうなるか楽しみですね。ここでは、あくまで妄想ですが、キャストを予想してみました。
・伊藤花(90年代):伊東蒼
・伊藤花(現代):山田真歩
・吉川黄美子:尾野真千子
・加藤蘭:白鳥玉季
・玉森桃子:畑芽育
・琴美:安達祐実
・安映水:高橋一生
・ヴィヴィアン:菊地凛子
皆さんはどう考えますか?
『黄色い家』を読んでみた感想
ここからは『黄色い家』を読んでみた感想を書いていきます。また読者のレビューも合わせてまとめました。
【筆者の感想】夏についての描写が秀逸
川上未映子さんの作品はほとんど読んできていますが、風景描写とりわけ夏についての描写が秀逸だなと感じます。かつて『夏物語』という作品もありましたが、今作も黄美子さんが序盤でサイダーを買いに行こうと誘うシーンなど、印象に残りました。
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ひとつお節介ながら懸念点があるとしたら、帯の触れ込みなどで「シノギに手を出して」「クライム・サスペンス」と描かれているので、主人公たちが犯罪に手を染めるシーンが序盤から出てくるかと思いきや、該当する部分は後半を過ぎてからというところです。
前半は、主人公たちが貧困に苦しめられる展開でただ重苦しく感じる人もいるかもしれません。特に中盤の映水のパーソナルな部分が語られる場面などで躓き、「つまらない」と判断して途中で辞めてしまう人もいそうです。
後半の特にシノギに手を染める場面からスリル満点の世界観で、400ページあたりから一気に読めるという感じなので、そこまで読者がしっかり読んでもらえたらなと思います。特に本屋大賞候補作で多くの人が手に取りそうな作品なので、お節介ながら思った次第です。
【みんなの感想や評価】遠いようで近い黄美子さんの存在
続いて読者がSNSやレビューサイトに投稿した感想や評価をまとめました。
『黄色い家』#読了
黄美子さんと蘭と桃子、そしてわたし花が4人で暮らした黄色い家。働いても働いても“貧困”へ、そしてヤバい方へ転がり落ち行く。花たちが両手を伸ばして親の愛情を求めているように見えて切なく哀しかった。圧倒的な筆致でアッという間に読ませるのは流石すぎた。 pic.twitter.com/IFAVeiq5TJ
— Min (@MILK96541030) April 8, 2024
川上未映子著『黄色い家』読了してた。
途中ガクガク震えながら読むようだった。親に頼れないどころか、逃げ場のない貧困。やがて狂気じみてくる花。
黄美子さんのような存在はなぜか遠くて近くにいた気がありありとする。
川上氏が少しでも似た環境を経験したとしたら、逆境は芸術を産むのだよなあ。 pic.twitter.com/LB6UvgbEZW— grownant (@grownant) June 18, 2023
『黄色い家』はたんなるノワール小説ではない。この小説が描いているのは「お金」と「家」という幻想であり、しかし単なる幻想としては片付けられない人間の心身を物質的なまでに支配する「リアル」である。
引用:Amazon
川上未映子『黄色い家』読了
花の人生を追体験したよう。
冷蔵庫をいっぱいにしてくれた黄美子さんのことを思うと涙が止まらない。
電車の中で窓一面に広がる美しい夕焼けを見たような気持ちです。
きっとこの作品も世界中でたくさんの人たちが読むんだろな、うれしい🌻 pic.twitter.com/3FGPL4S2MC— まこ (@too_see_lucy) March 6, 2023
まとめ:『黄色い家』は若者が犯罪に手を染める社会派青春小説だった
いかがでしたか?『黄色い家』の特徴を以下にまとめました。
・2024年本屋大賞候補作
・1990年代後半の社会的背景や貧困について深く考えさせられる
・主人公たちが犯罪に手を染めていくシーンにスリルが感じられる
以上です。まだチェックしていない方は、ぜひ読んでみてください!
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