2022年上半期における最高のミステリー小説とも言われる、「爆弾」(著:呉勝浩)。今回は本作のあらすじを紹介し、ラストにくるどんでん返しや爆弾の在り処発覚に至るまでの伏線などを解説(ただしネタバレ部分は隠しています)。筆者の感想や読者の評価、直木賞の受賞予想などもまとめたので、最後までぜひ読んでみてください。
呉勝浩の小説『爆弾』とは
書名 | 爆弾 |
作者 | 呉勝浩 |
出版社 | 講談社 |
発売日 | 2022年4月20日 |
ページ数 | 416ページ |
第167回直木賞の候補作となった小説「爆弾」。作者の呉勝浩さんは骨太のミステリー小説の書き手で、江戸川乱歩賞を受賞してデビューしました。これまでに『スワン』、『おれたちの歌をうたえ』で、二度の直木賞候補にもなりました。
「爆弾」は、暴力沙汰で連行された男が都内に仕掛けられた爆弾の爆破予告をしていく物語。威信をかけて捜索する警察と、クイズと称して爆破をほのめかす男との心理戦を楽しめるミステリーとなっています。
初出の『オール讀物 2022年3月号』掲載時には、書評家の大森望さんや瀧井朝世さんのレビューも併せて寄せられ、絶賛されていました。またクイズ系YouTuber集団のクイズノックのメンバーが「爆弾」についてインタビューされるなど、大々的に特集されています。
※「爆弾」は以下に当てはまる人におすすめ!
・緊張感のある骨太ミステリーを読みたい人
・謎解きや心理クイズが好きな人
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3分で分かる「爆弾」のあらすじ【※ネタバレなし※】
酔って自販機と店員に暴行を働いた男が、連行された。その男は「スズキタゴサク」と名乗り、霊感が働くと称して都内に仕掛けられた爆弾が爆発するのを予告していく。警察からの質問をのらりくらりと交わしながら、男はやがて爆弾についてクイズを出すようになる。
爆弾が仕掛けられたのはどこなのか?爆弾を仕掛けたのはスズキタゴサクなのか?男の真の狙いとは…?男がクイズ中に発言した、ある元刑事の名前。それはある不祥事を起こし警察を辞め、その後に自殺した者の名だった。そこから事態は急展開し出す…。
「爆弾」のネタバレ解説&考察まとめ
ここからは「爆弾」の魅力をさらに深掘りするために、クイズに隠された伏線やラストの場面についての解説などを行います。ネタバレ部分は隠しているので、一読した方だけクリックして中身をチェックするようにしてください。
スズキタゴサクと刑事の心理戦が面白い!
何より面白いのはスズキタゴサクと刑事の取り調べシーンです。物語の約半分がこの取調室で展開されます。「事件は現場で起こっているのではない、取調室で起こっているんだ!」と言いたくなるようなシチュエーションですね。
スズキタゴサクと名乗る男は、あくまで「霊感」として爆破予告をほのめかす供述をします。刑事は男の本心を掴めないまま、やりとりを交わします。焦ったい時間帯が続きますが、時折的を射た質問をすると男が真顔になる場面が出てきます。そういった男の本心を探るための、心理戦に引き込まれるのです。
やがて男は爆弾のありかについて、クイズを出して答えを誘導させようとします。このクイズがなかなか難しいのですが…。次の章で、そのクイズに隠された伏線を考察します。
爆弾に関するクイズに隠された伏線を考察
爆弾のありかをほのめかすクイズ。そこに隠された伏線をまとめましょう。ネタバレとなるので、中身を確認してもいい人だけ見るようにしてください。
ネタバレしていいから伏線回収部分をさらに詳しく知りたい方はこちらをクリック!
スズキタゴサクが出題するクイズにより、爆弾の箇所が暗示されます。九段下の新聞屋、代々木の子どもが関係する場所、というのが答えで、これは本文でも出題後にすぐに判明します。最後の重要な問題となったのが、山手線の各駅を爆破した件です。
取り調べにあたっていた刑事・類家は、これまでのスズキタゴサクとの会話を振り返り合点します。
なるほど、円か。ドームと九段は円の中だし、秋葉原と代々木は山手線。新大久保、品川、あんたが会話のなかで挙げた駅も山手線だった
引用:「爆弾」本文より
このように、本文中にこれまでの伏線は回収されます。ただし本文で直接指摘していないものの、実際はこれも伏線ではないかというところを見つけました。スズキタゴサクが射撃について語るシーンです。
たしか、ずっと先にある機械からフリスビーのような円盤が飛び出して、それをバーンて撃ち抜くんでしたっけ
引用:「爆弾」本文より
この後、その時に取り調べをしていた清宮刑事が「それはクレー射撃」だと指摘します。筆者はここがやや不自然なやりとりだと、違和感を抱いていました。深読みかもしれませんが、これも円を想起させる伏線だったのかもしれませんね。
結末のどんでん返しと、ラスト一文の意味を考察
「爆弾」はミステリー作品王道のどんでん返しの仕掛けをラストに持ってきていました。その点を振り返り、余韻を残すラスト一文の意味を考察しましょう。
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実は犯人はスズキタゴサクではなく、石川明日香でした。石川明日香は、かつて「お恥ずかしい不祥事」を起こし、その後に自殺した長谷部有孔の元伴侶。スズキタゴサクは彼女の罪をかぶっていただけでした。
ラストの爆弾は石川明日香自身が持っていると仄めかされましたが、実際は嘘で爆発しません。これが以下に紹介する、ラストの一文に繋がるのです。
最後の爆弾は見つかっていない。
引用:「爆弾」本文より
この最後の爆弾については、本文中で具体的にどこにあるかは明らかにされません。寧ろ仕掛けてない可能性すらあります。読者の想像に委ねているのでしょう。
筆者が敢えて想像するのであれば、それは皆さんの心の中に仕掛けられていると言ってもいいのかもしれません。というのも、今作の大きなテーマの一つに「命の尊さの順番」というものがありました。
作中に大切なひとの命を優先して守ろうと思い、他の者の命を蔑ろにしてしまおうとしている自分の恐怖に気づいたある警察官がいました。このようにかけがえのない命に、「命の尊さの順番」をつけようとしてしまう人々の恐ろしい感情こそが爆弾だと筆者は言いたいのかもしれません。
「爆弾」を読んでみた感想
ここからは「爆弾」を読んでみた筆者の感想を綴ります。また読者がSNSやレビューサイトにあげた感想や評価についてもまとめました。
【筆者の感想】緊張感のある心理戦に痺れた
小説のほとんどが取調室のシーンで、刑事と謎の男のやりとりに緊張感がありました。心理戦になったため、筆者もどこかで不自然なところが出ないか必死に探り探り読んでいる感覚になったのです。
今回のやりとりの中での面白い企みに、クイズ形式で爆弾の在り処を探すというものがありましたが、そこは少々不満でした。クイズが難しすぎたからです。というか言い訳っぽくなりますが、ややこじつけている感じがあってどうとでも解釈できるのではと感じてしまいました。それに東京の土地勘がある程度解けないというのも、んーという感じで…。
まぁでもクイズが抽象的なのも、ある意味ではラストの犯人の心理につながっている大きな伏線と言えるので、しょうがないですね。ただやはりクイズというからには、だんだんヒントが増えてきて答えに近づける構成にした方が、より入り込めたとは思います。
【みんなの感想や評価】タゴサクの気持ちが分かってしまう不思議な感覚
#読了#爆弾#呉勝浩 先生
書名と表紙に惹かれて、購入。そのまま一気読みでした。冒頭から惜しげもなく展開されるストーリーに、癖のある登場人物。
あっー、面白かった。と、読み終えました。
最後の言葉の現実感にゾクリとしました。 pic.twitter.com/PROuakhkgh— ゆみ (@mado0234) July 14, 2022
ラストの一文に注目です!
警察とスズキタゴサク(犯人)の掛け合いが息をのむほど緊張感があり、後半にかけてスピード感が増していく作品です
登場人物全員の背景や想いを弄ぶ様は異様に思えるものの、誰しもタゴサクのような「爆弾(最後の)」を心の何処かに抱えているのではないでしょうか.. pic.twitter.com/ja8KpL8peU— もりひろ@読書垢📚 (@H060202) July 15, 2022
のらりくらりと交わされながらも、いつの間にかタゴサクの気持ちが少し分かってしまう感じが不思議でした。
『爆弾』 #読了
心情的に共感度が
高いのは
沙良ちゃんかな楽しかったです!#読書好きと繋がりたい #ほんタメ #ハードカバー#パンの耳 pic.twitter.com/sCrEJNDV3d
— T.Masa-T (@TMt28345324) July 9, 2022
それぞれの登場人物が何かしらの爆弾を心に抱えているように思います。あなたはどの登場人物に共感しますか?
一見ありがちなストーリーっぽいが、中盤からのストーリーの急加速と、様々な登場人物も描き方が秀逸で、途中から本を置くことができなくなるくらいの内容でした。
呉氏の作品の中では、今までで1番強烈で面白かったと思います。
引用:Amazon
筆者も呉氏の作品は何作か読んだことがありますが、インパクトでいうとこの作品がナンバーワンです。
読んでいると、自分の中にも知らないうちに、命の選別をしてしまっていることに気付かされます。
このレビューは直木賞発表前に書いていますが、もうこれが直木賞でも全然おかしくありません。
引用:Amazon
直木賞の発表前に、本作を直木賞にふさわしい作品だと推す声もありました。
「爆弾」は直木賞を受賞できる?ズバリ大予想!
読者の感想の中で「爆弾」は直木賞を受賞してもおかしくないという声がありましたが、実際にこの作品は受賞作に選ばれるのでしょうか?本記事を書いている段階ではまだ受賞作発表前なので、ズバリ予想してみましょう。
「爆弾」は緊張感のある男と刑事のやりとりと、それぞれの登場人物が抱えている爆弾に誰もが共感しそうになるところが魅力です。この点は大きく評価されるでしょう。また命の尊さに順番があるというテーマはとても重く、読者に迫ってくるものがありました。
スズキタゴサクという人物のまどろっこしい発言は、彼のキャラクターを造詣する上で必要だったのかもしれませんが、やや冗長だという意見も生まれるでしょう。その辺りが最終的な評価の分かれ目になると言えます。
⇒受賞予想:○(対抗)
まとめ:「爆弾」は緊張感のある心理戦が見所のミステリ小説だった
いかがでしたか?「爆弾」の特徴を以下にまとめました。
・爆破をほのめかす男と刑事のやりとりに緊張感がある
・爆弾の在り処をクイズで示す面白い試み
・犯人はスズキタゴサク?結末のどんでん返しに驚がく
・ラストの一文に注目!
・第167回直木賞候補作(受賞予想は◯:対抗)
以上です。まだチェックしていない方は、ぜひ読んでみてください!
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