朝井リョウさんの「正欲」は「多様性」の意味を問う問題作!今回はこの小説のあらすじ及び、全て読んだ上での感想や考察を紹介します。ネタバレ部分はクリックしないと読めないようにしているので、最後まで読んだ方だけチェックしてみてください。
朝井リョウの小説「正欲」とは
書名 | 正欲 |
作者 | 朝井リョウ |
出版社 | 新潮社 |
発売日 | 2021年3月26日 (Kindle版) |
ページ数 | 386ページ (Kindle版) |
「正欲」は朝井リョウさんの作家生活10周年を記念して出版された、書き下ろし小説。発売当初より話題にあがり、現代社会に痛烈なメッセージを投げかける問題作だと評価されました。
第34回柴田錬三郎賞を受賞し、2022年の本屋大賞の有力作としても期待の声があがっています。今回はそんな話題の小説「正欲」について、あらすじを紹介した後、著者の主張について考察する内容を記していきます。
※「正欲」は以下に当てはまる人におすすめ!
・自分がマイノリティーだと感じる人
・「多様性」という言葉に疑問を抱いている人
・朝井リョウさんの作品が好きな人
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3分で分かる「正欲」のあらすじ【※ネタバレなし※】
人として歩むべき道を外れた人間を嫌う、正義感の強い検事・寺井啓喜。不登校の息子・泰希に学校へ戻ってほしいと願うも、泰希は教育のあり方に疑問を抱く動画に触発され、自身も動画チャンネルを開設して動画投稿し出す。
寝具店の店員・桐生夏月は、「睡眠欲は私を裏切らないから」という理由で今の職に就いている。彼女はある秘密を抱えており、そんな秘密を共有できる同士・佐々木佳道とふとしたきっかけで再会した。
学祭実行委員の神戸八重子は、ミスコンのあり方に疑問を抱き、代わりに多様性を重視する「ダイバーシティフェス」を開くよう提案する。男の人から見られることに恐怖心を抱いていた八重子だったが、ミスコン出場者の諸橋大也からだけはそんな気持ちを感じないと気づく。
この三つの物語が、令和が始まる日に向けて動き出す。そして一つのある事件が起きる。事件の真相は?そこまで至った背景とは?多様性を重視する世の中に大きな疑問を投げかける問題作がここに生まれた…。
【※一部ネタバレあり※】「正欲」を読んだ筆者の感想・考察まとめ
「正欲」は多様性を重視する世の中へ問題提起している、衝撃作だと感じました。そもそも多様性とは何なのか?全てを受け入れようとする一方で、それでも排除してしまう価値観(今回でいうと特殊な性癖がメイン)があるのではないか?といった矛盾を指摘しています。
物語の末に起きた事件とは?概要や背景、その後の結末をネタバレ解説
まずは「正欲」の中で起きた、一つの事件について抑えておきましょう。どんな事件だったのか、またその事件はなぜ起こり、どのような結末を迎えていったのか、まとめました。なお、ネタバレになるので、まだ読んでない方のためにクリックしないと読めない仕様にしています。
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今回「正欲」の登場人物たち(桐生夏月、佐々木佳道、諸橋大也など)が共通して持っていた特殊な性癖は、噴出する水を見て快感を覚えるというもの。佳道と大也らは同じ性癖を持った人たちで繋がりを求めて出会うのですが、その際にある誤解が生じて逮捕に至ります。
・公園で水遊びをしている子どもたちが自然と裸になっていた
→蛇口から噴射する水を見たいだけで、子どもたちの裸に興味がある訳ではなかった
・自分たちのLINEトークグループ名を「パーティ」に設定していた
→「パーティ」とは、「共に綱を編む」という意味で名付けたものだったが、どうしても不埒な目的の集まりだという意味で捉えられてしまった
これらが児童ポルノを助長する集まりを開催していたと、誤解される原因になってしまいました。結果的に卑劣な児童ポルノ事件として報道され、社会的に大きな非難を浴びます。
登場人物を知る者たちは、その人をよく知らないのにもかかわらず、犯罪者としての横顔を一方的に指摘します。「多様性」が叫ばれる現代において、犯罪を起こした彼らのことは全て排除する声をあげていくのです。
タイトル「正欲」の意味とは?|小説が主張したかった本質が見えてくる
「正欲」の意味を知ると、この小説が主張したかったことの本質が見えてきます。こちらもネタバレを含むので、作品を全て読んだ方だけチェックしてみてください。
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前述した事件では、被疑者への理解者の声も出てきます。その一人が佳道と同じ性癖を理解しあって繋がった妻の夏月です。
しかし彼女の声は世間には届きません。取り調べの最中なので、本人にすら伝わりようがないのです。ただし調査にあたった検事の啓喜はそこで二人の会話に違和感を抱きます。自分は本当に事件の本質を捉えているのか?自分の確固とした「正義感」が揺らぐ瞬間が訪れます。
多様性と言いつつも、それは自分たちがまともな感覚であると肯定したいだけで、どうしようもない、対話すらできる余地のないものはやはり排除されてします…。そんな違和感や矛盾に啓喜は気づいたのです。
このように自分がまともな感覚だと思い込み、さらにはそれを主張したくなる気持ちをこの小説では「正欲」だと定義しています。「正欲」の正体に気づいた時、読者は自分の価値観や考え方を見つめ直し、思わずゾッとしてしまうことでしょう。
「多様性」を認める世の中への矛盾【「正欲」の考察まとめ】
しかし、なぜ今回のような事件や世間の認識が起きてしまうのか。作者の朝井リョウさんはその点をしっかり記述しています。
ネタバレしていいから「正欲」の詳しい考察について知りたい方はこちらをクリック!
みんな、不安だったのだ。(中略)
異物だと感じるものが周囲と一致するという事実をもって、自分が多数派、すなわちまとも側の人間だということを確認したかったから。
引用:「正欲」本文より
自分の気持ちが周囲から理解されずにいる、八重子と大也の本音のぶつけ合いはお互いの主張にエネルギーがあり、圧倒されました。
八重子→男性に恐怖心を抱いている。しかし恋はする。大也の良き理解者になりたいと接近する。
大也→蛇口から水が吹き出すのに興奮を覚える。押しつけのように過干渉してくる八重子の存在を疎ましく思う。
大也が
「多様性って言いながら一つの方向に俺らを導こうとするなよ」
引用:「正欲」本文より
と言えば、八重子は
「そうやって不幸でいるほうが、楽なんだよ」
引用:「正欲」本文より
と指摘します。
結局二人は理解しあえず、最終的には先に言ったような児童ポルノ報道に繋がっていきます。もしこの時、大也が八重子に向き合うことができれば、事件自体起こらなかったかもしれません。
根深い問題ですが、やはり必要なのは「対話」だと感じました。その一つのきっかけとして、この小説「正欲」が疑問を投げかけ、読者がこの作品と対話していくことで、世間の多様性の捉え方は変わってくるのではないでしょうか?
それだけ今から多種多様な人間が生きていく上で、考えるべき命題を投げかけてくれる意味のある小説だと思いました。
「正欲」を読んだ読者の感想まとめ
続いて、読者がSNSに投稿した「正欲」の感想をまとめました。
読後もう多様性という言葉を
安易に使うことが
できなくなった。マイノリティを包含するはずの
多様性が、
マイノリティを追い詰めていく。一頁一頁読む度に、
自分の記憶が呼び起こされた
作品。 pic.twitter.com/41krWsRpml— 城田仁美@読書 (@shi_rota) January 10, 2022
正欲/読了。劇薬の一冊。スゴイものを見てしまった!読み進める内に「繋ながる」行間。読了後、現実社会の欲と多様性、つながりの価値観がグワん、グワんと揺さぶられる。わかって欲しい。読めば世界が変わる!何?わかりあえない?それなら読んで欲しい#読書#読書好きと繋がりたい #朝井リョウ pic.twitter.com/aEBbmMG0Zc
— シゲ@読書で行動できる言葉を見つける人 (@shigetaka0021) January 9, 2022
『正欲』/朝井リョウ #読了
とても面白かった。本当はもっと適当な言葉があるのかもしれないけれど、小説としてとにかく面白かった。たくさん考えさせられた。もっと早く読んでおけば良かったと後悔したくらい。 pic.twitter.com/fcnOqjPinK— 徳川328 (@tokugawa328) January 13, 2022
複数人の視点から描かれた、マイノリティな性的指向に関する話。
多様性を受容しようとする社会で、マイノリティを理解しようといった内容ではなく、本当のマイノリティを理解出来るかって問われてるような内容。
いろいろ考えさせられる一冊です。#正欲#朝井リョウ#読了 pic.twitter.com/KfLL42WrIZ— よお@本の虫になりたい読書垢 (@2O4yo_bookworm) January 10, 2022
『正欲』読了
多様性という言葉の上っ面しか見えてなかった私は物語に殴られた
タイトルが秀逸正欲、正常な欲、生欲、性欲?すごい考えさせられる
ただこれを読んで考えは間違いなく変わるけども、だからといって何ができるわけでもないと実感させられもする
すごい衝撃作だった…!一気読み😌 pic.twitter.com/c2hfx0dSPr
— フラチキ (@Furatiki1523) September 29, 2021
みなさん、「多様性」について深く考えさせられたと述べています。
まとめ:「正欲」は多様性について深く考えさせられる問題作だった!
いかがでしたか?「正欲」の特徴を以下にまとめました。
・朝井リョウさんの作家生活10周年を記念した書き下ろし小説
・柴田錬三郎賞受賞作&2022年本屋大賞候補の有力作
・多様性のあり方を深く考えさせられる社会的メッセージの強い作品
以上です。朝井リョウさんのファンはもちろん、初めて朝井さんの作品に触れる方もぜひチェックしてみてください。
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