第171回芥川賞を予想!「サンショウウオの四十九日」が本命か

第171回芥川賞の選考会が2024年7月17日に行われます。今回は事前に候補作を全て読んだうえで、どの作品が受賞作になるか大予想。各作品のあらすじを簡単に紹介したあとに、講評し、最終的に予想作品を発表します。

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そもそも芥川賞とはどんな文学賞?

芥川賞は日本を代表する文学賞の一つ。年に2回(1月と7月)選考会が行われています。対象となるのは、新人作家の純文学作品。日本文学振興会が主催しています。これまでの主な受賞者は石原慎太郎、村上龍、松本清張、小川洋子、川上弘美などです。

お笑い芸人の又吉直樹さんが「火花」で受賞した際は大きな話題となりました。また第164回芥川賞受賞作となった宇佐見りんさんの「推し、燃ゆ」が、好きなアイドルを推している者の心情を表していると高く評価され、2021年で最も売れた小説となりました。

「推し、燃ゆ」のあらすじをチェックしてみる

最新回の第170回芥川賞は九段理江さんの「東京都同情塔」が受賞。小説の中で、建築家の主人公が生成AIとやりとりする場面などが描かれ、話題となりました。

「東京都同情塔」のあらすじをチェックしてみる

第171回芥川賞受賞予想|

第171回芥川賞の候補となったのは、以下の五作品です。(並びは作家名の順)

作品名 作家名 掲載誌 候補回数
サンショウウオの四十九日 朝比奈秋 『新潮』五月号
転(てん)の声 尾崎世界観 文學界六月号 二回目
海岸通り 坂崎かおる 文學界二月号 二回目
いなくなくならなくならないで 向坂くじら 文藝夏季号
バリ山行 松永K三蔵 群像三月号

唯一二回目の候補となったのが、尾崎世界観さん。人気バンド・クリープハイプのボーカルを務める人物で、小説「母影」が過去に芥川賞候補となりました。

初候補の中で、最も実績がある人は、朝比奈秋さんといえるでしょう。これまで三島由紀夫賞、野間文芸新人賞といった純文学の新人賞を受賞しており、やっと芥川賞でも候補になったかという実感があります。

他にも、主に詩人として活躍してきた向坂くじらさん、ミステリー、百合などジャンルレスに描いてきた坂崎かおるさん、群像新人文学賞優秀作でデビューし二作目となる松永K三蔵さんなど、バラエティー豊かなラインナップとなっています。

各候補作のあらすじと講評

ここからは芥川賞候補になった各作品のあらすじを紹介します。また各作品の講評も合わせて行います。

「サンショウウオの四十九日」朝比奈秋(『新潮』五月号)

【あらすじ】
杏と瞬は、体は一つだが、脳は二つ。結合双生児として日々を送ってきたわたしと私は、陰陽魚を見て自分たちはサンショウウオのようだと思う。父の若彦は、伯父・勝彦の胎児内胎児として生まれてきたが、やがて勝彦が死を迎える。わたしと私はどうなるのだろう?

「サンショウウオの四十九日」のあらすじを詳しくチェックしする

【講評】
著者は医師だが、医学的な記述は最小限に抑え、結合双生児の「わたし」と「私」の思考を巡る描写が中心に描かれている。二人の思考が交じりあう様子や、伯父の死を通じて死生観が展開されていくところが秀逸で、上質な小説を読んだという印象だ。

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「転(てん)の声」尾崎世界観(『文學界』六月号)

【あらすじ】
バンドボーカルの以内右手は、自分の声がうまく出ないことと、世間の声という二つの声に苦しめられてきた。転売ヤーの地位が優位となった世界で、自分のことを転売してもらい、プレミアムが付くことを望むが……。

「転(てん)の声」のあらすじを詳しくチェックしする

【講評】
転売が優位になった世界という設定が見事で、世間の声の書き方もリアリティがあった。自分を転売してほしいと縋る前半部分が特に良かったが、後半の特に無観客ライブあたりの展開になったところで読者を置いてけぼりにしている感がある。また、風景描写も欲しい。

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「海岸通り」坂崎かおる(『文學界』二月号)

【あらすじ】
老人ホームの清掃員として働くクズミは、認知症患者のサトウさんと施設内にある「ニセモノ」のバス停「海岸通り」で待ち合わせする。新しく働き出したウガンダ人女性のマリアさんとクズミは、ある計画を思いつき……。

「海岸通り」のあらすじを詳しくチェックしする

【講評】
個人的に最も好きだった作品。ニセモノのバス停がモチーフとして効いている、また、時刻表に素数が並んでいる点や、独特のオノマトペについての表現など、細部の描写の鋭さも光る。また、女性たちの連帯も心強く、好印象が残った。

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「いなくなくならなくならないで」向坂くじら(『文藝』夏季号)

【あらすじ】
時子のもとへ、いきなり死んだはずの朝日から電話がかかってきた。そして始まった二人の共同生活。実家に帰って両親とも一緒に過ごすようになった。しかし月日が経つなかで、朝日の存在が疎ましくなり、時子は彼女を追い出そうと画策するが……。

【講評】
幽霊が家に住みすくという不穏な空気の前半から、共存と自立をテーマになかなか抜けられない現実の重さを描いた後半という展開が秀逸。息が詰まるような後半の展開にのれるかどうかで賛否が分かれそうだ。

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「バリ山行」松永K三蔵(『群像』三月号)

【あらすじ】
転職先では人付き合いを重視しようと決めた波多は、会社の山岳部に参加した。そこで同僚の妻鹿さんが、道なき道を突き進むバリ山行をしていると知る。会社が揺れる中、自分の流儀を押し通す妻鹿さんに、波多はバリ山行に同行することになり……。

「バリ山行」のあらすじを詳しくチェックしする

【講評】
バリ山行のシーンは迫力があり、臨場感を楽しめた。藪の中を突き進むシーンは、勇気を与えられる。ただ、会社のごたごたに揉まれながらも自分の流儀を尽くすシーンとバリ山行の対比が、やや安直というか、分かりやす過ぎたかもしれない。

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受賞予想:大本命は朝比奈秋さん「サンショウウオの四十九日」か

全作品の講評をふまえ、今回の芥川賞の受賞を予想をすると、本命は朝比奈秋さん「サンショウウオの四十九日」。個人的には坂崎かおるさんの「海岸通り」を推したく、二作受賞の可能性も十分あると感じました。

◎(本命):朝比奈秋「サンショウウオの四十九日」
◯(対抗):坂崎かおる「海岸通り」
△(大穴):向坂くじら「いなくなくならなくならないで」

受賞作発表は7月17日。また発表後に記事を更新いたします!

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