3分で分かる「海岸通り」のあらすじ&ネタバレ解説・感想まとめ【第171回芥川賞候補作】

今回は、坂崎かおるさんの小説「海岸通り」のあらすじや感想を紹介。タイトルの意味や、本作の魅力、ラストシーンのネタバレ考察なども行います。筆者が個人的には第171回芥川賞の大本命だと予想している一冊です。ぜひチェックしてみてください。

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【第171回芥川賞候補作】坂崎かおるの小説「海岸通り」とは

書名 海岸通り
作者 坂崎かおる
出版社 文藝春秋
発売日 2024年7月10日
ページ数 128ページ
初出 『文學界』2024年2月号

「海岸通り」は、老人ホームで清掃員として働く「わたし」(クズミ)が主人公。「海岸通り」と名づけられたニセモノのバス停をめぐり、施設利用者の認知症患者・サトウさんや、ウガンダから来た清掃員のマリアさんなどとの交流が描かれています。

作者の坂崎かおるさんは、今、注目されている作家の一人。2020年に書いた小説「リモート」が第1回かぐやSFコンテスト審査員特別賞を受賞したほか、数々の文学賞を受賞しており、ファンタジー、ミステリー、百合といった様々なジャンルで活躍している作家です。

※「海岸通り」は以下に当てはまる人におすすめ!
・女性たちの連帯を描く「シスターフッド」の作品が好きな人
・職場での国際交流や老人介護など、現代的なテーマの作品を読みたい人
・第171回芥川賞の候補となった話題作をチェックしたい人

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3分で分かる「海岸通り」のあらすじ【※ネタバレなし※】

老人ホーム「雲母園」で清掃業務を務めるわたし(クズミ)は、利用者のサトウさんと施設内のバス停で話していた。

このバス停は「海岸通り」と名づけられているが、認知症患者のために作られた「ニセモノ」のバス停だ。そしてサトウさんはわたしのことを、息子の嫁さんのナギサさんだと勘違いしている。

ある日、ウガンダ人のマリアさんが入社してきた。マリアは行動がゆっくりだが仕事は丁寧だ。わたしは、やがてウガンダ人をはじめとした移住者が集まるコミュニティへと招待されるようになって……。

「海岸通り」のネタバレ解説&考察まとめ

ここからは「海岸通り」の魅力を深掘りするために、タイトルの意味、作品の魅力、ラストシーンのネタバレ考察などを行います。

タイトル「海岸通り」の意味とは?

タイトルの「海岸通り」が直接的なフレーズとして出てくるのは、作品の冒頭部分。主人公の「わたし」(クズミ)が、利用者のサトウと話す場面で出てくる、「ニセモノ」のバス停の名前です。

このバス停は、作品を象徴する一つの大きな仕掛けとなっており、終盤の展開でもこのバス停の存在が意味を持ってきます。

さらに評論では、この「海岸通り」について、違う意味があると評価する人もいます。『文學界 2024年3月号』の「新人小説月評」のなかで渡邊英理さんは、女性たちの連帯が作品の主題だとしたうえで、以下のように評論しています。

タイトルの「海岸」が喚起する水平線とは、この「女」という儚い者たちの水平的な関係性にちがいない。そこには、認知症患者のサトウさんも連なっているはずだ。
引用:『文學界 2024年3月号』「新人小説月評」本文より

この「女性の連帯」というテーマを踏まえて、読んでみるのもいいでしょう。

【ラストシーンのネタバレ考察】女性たちの連帯に胸を打たれる

本作のラストシーンについて考察していきます。ネタバレとなるので、作品を全て読んだ人だけ、以下チェックしてみてください。

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【ラストシーンのあらすじ】
職場の解雇を言い渡されたわたしは、辞めるまでの間にある計画を思いつく。それはサトウさんを「ホンモノ」のバスに乗せて、海岸通りへ連れていくことだ。それにはマリアさんの協力が必要で、二人でサトウさんを連れ出し、一緒にバスに乗る想像をする。

しかし、それは叶わなかった。マリアさんが職場の備品をフリマサイトで売っているのがばれたのだ。マリアさんは国へ帰るのではないかという。わたしは、マリアさんを擁護する発言をするも、職場の人には振り切られてしまう。

サトウさんが退所する日、わたしは本物のバス停でサトウさんと一緒にバスに乗り込んだ。バスは海岸を遠くに走っていたが、サトウさんは「ミサキが見える」と言い、わたしもそれに同調した。

【考察】
先ほどの章でも書きましたが、この物語は「わたし」とマリアさん、サトウさんの連帯が描かれていると感じました。

職場で不正をしていたマリアさんも、事情があったと強くかばうシーン。認知症患者のサトウさんの勘違いを訂正せずに同調するシーン。ラストのこれらの場面にもそれを象徴するシーンが見事に表現されていました。

マリアさんもサトウさんも社会的には弱い立場にあるといえます。それでもゆるやかに連帯することで、強く生きていこうとする姿勢に、筆者は胸を打たれました。

【作品の魅力】作者独特の表現やリズムがおもしろい

女性たちの連帯が大きなテーマとなっていますが、物語の細部にも魅力が光っています。作者独特の表現や文体のリズムが、おもしろさを出しているのです。

「人生で必要なのはカルシウムだよ」彼女の口ずさむ「カルシウム」は外国語というより他の星の言葉のにおいがする。
引用:「海岸通り」本文より

こういった捉え方が独特で、なおかつ共感しやすく、心に残ります。また、音の調べについての表現もよく出てきます。

うつらうつら。うつらというのはよい響きで、なぜかというと、必ず繰り返す。うつらうつら。三回は繰り返さないところも良い。うつらうつらうつら、は座りが悪いし、往って戻ってこない。
引用:「海岸通り」本文より

ぜひ、そういった比喩表現や音の調べなどにも気をとめながら読んでみてください。

「海岸通り」を読んでみた感想

ここからは「海岸通り」を読んでみた感想を書いていきます。また読者のレビューも合わせてまとめました。

【筆者の感想】小道具の設定や細部の描写が光る

冒頭の時刻表に素数が並ぶバス停が出てきたことで、まず一気に興味を持ちました。しかも、それがニセモノのバス停ということで、リアリズム小説でありながらも、作品に大きな広がりを持たせています。

女性たちの連帯をテーマにした作品ですが、筆者はここ最近「シスターフッド」を扱った作品を多く読んだり、観賞したりしており、正直やや食傷気味になっていました。それでも本作では細部の描写が光り、また新たな価値観をもって最後まで読めました。

やや地味な物語設定ではありますが、現代らしいテーマで、多くの人に共感されやすい小説だといえるのではないでしょうか。芥川賞選考会でも細部の描写の鋭さに評価が集まりそうだと思います。

個人的には今回の候補作のなかで抜きんでて好きな作品であり、できれば受賞してほしいです。

受賞予想:◯(対抗)
(全候補作を読み終えた段階でもう一度予想してみます)

【みんなの感想や評価】ラストでは泣けてきた

続いて、読者がレビューサイトやSNSに投稿した感想や口コミを紹介していきます。

まとめ:「海岸通り」は細部の描写が光るシスターフッド小説だった

いかがでしたか?「海岸通り」の特徴を以下にまとめました。

・第171回芥川賞候補作
・「ニセモノ」のバス停など小道具の設定が光る
・女性たちのゆるやかな連帯が感じられる

以上です。まだチェックしていない方は、ぜひ読んでみてください!

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