就活をテーマにしたミステリー「六人の嘘つきな大学生」。2022年本屋大賞の候補作になった、この小説の魅力に迫ります。簡単なあらすじ紹介や、伏線部分のネタバレ解説、感想などをまとめました。ぜひ最後まで読んでみてください!
浅倉秋成の小説「六人の嘘つきな大学生」とは
書名 | 六人の嘘つきな大学生 |
作者 | 浅倉秋成 |
出版社 | KADOKAWA |
発売日 | 2021年3月2日 |
ページ数 | 301ページ |
「ブランチBOOK大賞2021」大賞を受賞!人気作家・伊坂幸太郎氏が「2021年に読んだミステリーベスト1」だと激賞し、さらには2022年本屋大賞にまでノミネート。今、かなり話題になっている小説が「六人の嘘つきな大学生」です。
本作は、就活をテーマにしたミステリー小説。就活中の不安定な学生たちの心理を巧みに利用しており、同じ経験をした人たちには特に物語に入り込みやすいでしょう。意外な形で伏線が回収され、爽やかなラストへと着地する本作をまだ読んだことがない方は要チェックです!
※「六人の嘘つきな大学生」は以下に当てはまる人におすすめ!
・就活での集団面接に違和感を抱いた人
・伏線が巧みに回収されるミステリ小説を味わいたい人
・本屋大賞候補になった話題作をチェックしたい人
3分で分かる「六人の嘘つきな大学生」のあらすじ
大学生・波多野祥吾はスピラリンクスの最終選考へ進んだ。採用担当の鴻上さんから、最終選考は「グループディスカッションを行い、結果次第では全員合格」と言い渡された。波多野ら最後まで残った6人の大学生たちは交流を深めるために、定期的に会うように約束する。
お互いのことを知り、全員で合格しようと決起会を兼ねた飲み会をした帰り、6人のもとへメールが届く。そこには最終選考でグループディスカッションをして、自分たちで合格者を1人だけ選ぶように、指針を変更した旨が書かれていた。
突如の変更に6人のもとに不穏な空気が広がる。そして迎えたグループディスカッション当日。議論が進む中、会議室の隅に封筒が落ちているのに気づく。その封筒の中には「◯◯は人殺し」という告発文と共に、6人の秘密が晒された写真が同封されていた…。
「六人の嘘つきな大学生」の登場人物まとめ
「六人の嘘つきな大学生」に登場する主な人物を整理しておきましょう。その人物の簡単な特徴を記します。グループディスカッションでの告発により最終選考に進んだ六人はそれぞれ別の顔があると発覚するのですが、ネタバレとなるのでここでは伏せておきます。
【最終選考に進んだ六人の大学生】
・波多野祥吾
立教大学経済学部。
散歩サークルに所属。嶌衣織のことが気になっている
・嶌衣織
早稲田大学社会学部。
プロントでバイトしている。波多野とは二次面接で一緒になり顔見知りだった
・九賀蒼太
慶應義塾大学総合政策学部。
知性と爽やかさを併せ持つ好青年。リーダーシップがあり、口癖は「フェア」
・袴田亮
明治大学。
大柄な学生。高校では野球部キャプテンで、今はボランティアサークル代表
・矢代つばさ
お茶の水女子大で国際文化を学ぶ。
キレイ美人。ファミレスでバイトしている。人脈が豊富
・森久保公彦
一橋大学。
縁なしめがねをかける。口数は少ないが、野心は強い
【スピラリンクス】
・鴻上さん
人事部長
・楠見さん
スピラ役員
・鈴江真希
若手社員
【その他】
・波多野芳恵
波多野祥吾の妹
・相楽ハルキ
薬物中毒が発覚した歌手
「六人の嘘つきな大学生」のネタバレ解説
「六人の嘘つきな大学生」を読むと、様々な伏線が回収されていくところに、爽快な気分を味わえます。しかし、一度読んだけど伏線回収部分やラストの着地がよく分からなかった、作品をもう一度復習したいという方もいるでしょう。ここではそんな方たちに向けて、伏線部分の考察や解説を行います。
ネタバレを含むので、クリックしないと読めないようにしています。まだ作品を全部読んでいない人は、作品の面白さが半減してしまうので、ここはクリックせずに読み飛ばしてくださいね!
「合格者」は誰だった?選出までの投票の流れまとめ
まずは物語の肝心のテーマである、グループディスカッションの「合格者」が選ばれるまでの過程を抑えておきましょう。
ネタバレしていいから「合格者」について詳しく知りたい方はこちらをクリック!
グループディスカッションでは30分ごとに投票するシステムを設け、その合計得票数で「合格者」を選ぶようになりました。各投票の経過を以下の表にまとめます。()内はそれまでの合計得票数です。
回数 | 波多野 | 嶌 | 九賀 | 袴田 | 矢代 | 森久保 |
1回目 | 1票 (1票) | 1票 (1票) | 2票 (2票) | 2票 (2票) | 0票 (0票) | 0票 (0票) |
2回目 | 1票 (2票) | 1票 (2票) | 3票 (5票) | 0票 (2票) | 1票 (1票) | 0票 (0票) |
3回目 | 2票 (4票) | 2票 (4票) | 1票 (6票) | 0票 (2票) | 0票 (1票) | 1票 (1票) |
4回目 | 2票 (6票) | 2票 (6票) | 1票 (7票) | 0票 (2票) | 1票 (2票) | 0票 (1票) |
5回目 | 5票 (11票) | 1票 (7票) | 0票 (7票) | 0票 (2票) | 1票 (2票) | 0票 (1票) |
6回目 | 0票 (11票) | 5票 (12票) | 1票 (8票) | 0票 (2票) | 1票 (2票) | 0票 (1票) |
【時系列の流れ】
1回目の投票→袴田が告発される→
2回目の投票→九賀が告発される→
3回目の投票→矢代が告発される、森久保が封筒を置く場面を発見される→
4回目の投票→波多野が封筒処分を促す→
5回目の投票→波多野だけアリバイがなく「犯人」だとされる→
6回目の投票→嶌が「合格者」に選出される
序盤は好青年の九賀に票が集まりますが、告発文の封筒が発見され、だんだんと告発内容が明らかになるにつれて状況が変わります。終盤で波多野が合格者に決まりかけますが、封筒を置いた犯人だと疑われて信頼を失うことに。最終的には嶌が「合格者」に選出されました。
「犯人」発覚につながる伏線まとめ
「合格者」と同じくらい、読者が気になったのが封筒を置いた「犯人」は誰か?ということ。
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グループディスカッションでは「犯人」はアリバイの無い波多野だと特定されます。しかし小説後半で犯人は波多野ではなかったと発覚。後半の主人公である「合格者」の嶌が犯人を探します。
結論からいうと、「犯人」は九賀でした。動機は人間の表面的な部分でその人の将来を決めてしまう就活の構造自体への復讐。そして波多野は実は九賀が犯人だと気づいていたのでした。(その後、波多野は病死)
犯人特定に至るいくつかの伏線を記します。
・犯人が写真撮影したとされる当日のアリバイが無いのは波多野だけだった
→大学のキャンパスが当初思っていた場所とは異なり、移動時間のことを考えると1日では撮影が難しかった。つまり当日の犯行という考えそのものが誤り。波多野は濡れ衣だった。
・お酒に詳しくなかった九賀
→波多野の告発に使われた写真に違和感があり、犯人はお酒に詳しくない者と目星がついた。九賀は決起会でコーラを頼んでいた。
判断材料としては少し弱いですが、嶌は九賀と直接会って犯人だと自供させます。
まさかの結末!ラストに登場した「ヨウイチ」とは誰のこと?
ラストはどうなったのか、こちらも伏線回収部分を含めて解説します。
ネタバレしていいからラストについて詳しく知りたい方はこちらをクリック!
グループディスカッションで別の顔を告発された六人。本の帯に「ここにいる六人全員、とんでもないクズだった」とあるが実はこれもミスリードを誘う伏線となっていました。実は六人はそれほど悪人ではなかったのです。それがラストに呈示されます。
逆に波多野には悪い一面が最後の最後に垣間見えます。人間の性格には裏表があると、作者は伝えたかったのでしょう。
ラストで読者が気になったのかもしれないのが「ヨウイチ」なる人物の存在。波多野が幼少時代に貸していたゲームソフトに書かれていた名前です。あれ、もしかしたらヨウイチって今までどこかに出てきてたっけと不安になった方もいたでしょう。
結論からいうと、私が調べた限りでは「ヨウイチ」なる人物はそれまでに登場していません。つまり彼が誰かについては物語には重要な意味がないと言えます。ただし私が見逃しているだけの可能性もあるので、違う考察を持っている方は教えてください。
もしかしたら波多野という人物の幼少時代を綴る、続編やスピンオフ作品に繋がる可能性はあります。ヨウイチが主人公の小説が生まれたら、この作品に関わっているかもしれないので、頭の片隅に置いておきたいですね。
「六人の嘘つきな大学生」を読んでみた感想
ここからは「六人の嘘つきな大学生」を読んでみた感想を述べていきます。まずは筆者の感想を綴った後に、SNSやレビューサイトに投稿された皆さんの感想を一部紹介していきます。
表の顔をどう見せるか?に着目した究極の心理戦と推理の読み合いが面白い
まず舞台設定が良いですね。就活の集団面接という人から見られる場を設定していることで、自然と嘘をつきやすくなる状況になっています。途中で私は朝井リョウさんの直木賞受賞作「何者」を思い出しました。「何者」も就活に励む学生たちの裏の顔をSNSの裏垢というツールを使って、巧みにあぶり出していました。
誰が犯人か、六人がどんな裏の顔を持つのか、だんだんと発覚していくところは緊張感がありました。まるで人狼ゲームで狼を探っていく感じ。個人的に人狼が大好きなので、六人の心理戦にのめり込みました。
伏線を回収していく後半の展開にまた感心させられました。ネタバレとなるので詳しくは書けませんが、爽やかな着地となり安心しました。ただ主人公の波多野だけは少しかわいそうでしたね。何もそこまでしなくても…と。もっと別の終わり方がなかったのか、と少し惜しく感じました。
SNSに寄せられたみんなの感想まとめ
続いてレビューサイトやSNSに投稿された感想をいくつか紹介します。
浅倉秋成さん『六人の嘘つきな大学生』を読みました。
就活小説としてもミステリとしても素晴らしく、予想外の展開の連続に一気読みでした。終盤の怒涛の伏線回収と希望のあるラストがすごくよかったです。
装丁も素敵。 pic.twitter.com/KBB9f0BE7w
— 真下みこと (@mikoto_mashita) March 4, 2021
六人の嘘つきな大学生/朝倉秋成
就活がテーマな時点で絶対自分の好みだと思って買った。
6人の就活生たちが、色んなタイプのエリートと分類分けしたような感じ!「いたな〜こんな人」って、その言動に共感しながら読みました。
展開が特殊で、新鮮な感覚を味わえた!ラストも気分良く終われる👏#読了 pic.twitter.com/o9XfGRPRd9— ido (@ido_well87) February 19, 2022
#読了
六人の嘘つきな大学生/浅倉秋成とても面白かったです!
チームとして内定を目指していた6人が突如内定1人を決める蹴落とし合いに…
6人分の告発文が入った封筒が出てきて議論はとんでもない展開に!
ラストまで読んでとても評判な理由がわかりました✨ pic.twitter.com/HUCL0jQEee— ここあ (@417KoKoa) October 1, 2021
日本独自の奇妙な仕組み「就職活動」を題材に、見事な展開のミステリでした。密室の心理戦で話は二転三転し、読んでいる途中で何度も犯人予想が裏切られ、読者である自分まで疑心暗鬼になりながら一気読みしました。伏線回収も見事。
全体的にはエンターテイメント感が強い作品ですが、単に謎解きだけでなく、就職活動や採用試験への皮肉やメッセージも込められています。私は共感する部分が多かったのですが、そこは立場によって意見や感想が分かれるかもしれません。
引用:Amazon
最終選考まで勝ち上がった六人の優秀な大学生が内定を得るために心理戦を繰り広げる
波乱のミステリー小説、、、と思いきや後半に展開が大きく変わり、サスペンス要素から
全てが疑心暗鬼になる。
その人間不信状態&着地点予測不能状態から、最終的にはオールクリアに伏線を回収した
爽快ストーリーとなっている。(いい意味で)何度も裏切られます。間違いなく。
引用:Amazon
「六人の嘘つきな大学生」が実写化(ドラマ・映画化)されたら…
「六人の嘘つきな大学生」がもし実写化されたらどんな映像作品になるのでしょうか?ここでは出演者を予想してみました。またラジオドラマ化しているので、そちらの情報も合わせて紹介します。
映像化された際のキャストを予想してみた
小説に出てくる登場人物の特徴からキャストを予想してみました。主人公の波多野は北村匠海、波多野が思いを寄せる女子大生は純粋無垢な印象から杉咲花あたりが適任ではないでしょうか。
密室で若者が推理しあう展開は、「十二人の死にたい子どもたち」と似ており、キャストも近い人選になってしまいました。若い世代はブレイクしてくる俳優が多いので、新たな才能が抜擢される可能性もあるでしょう。
・波多野祥吾:北村匠海
・嶌衣織:杉咲花
・九賀蒼太:佐野勇斗
・袴田亮:新田真剣佑
・矢代つばさ:玉城ティナ
・森久保公彦:井阪郁巳
「六人の嘘つきな大学生」がNHK FMでオーディオドラマに!
【おしらせ】いよいよ本日午後9時15分から「六人の嘘つきな大学生」のオーディオドラマがスタートいたします。ご興味のある方はぜひに。
1月17日(月)~1月21日(金)
1月24日(月)~1月28日(金)
(全10話)
午後9:15〜 NHK・FM https://www.nhk.or.jp/audio/html_se/se2022002.html— 浅倉秋成 (@akinari_asakura) January 17, 2022
「六人の嘘つきな大学生」がNHK FMにてオーディオドラマになりました。2022年1月下旬に全10回放送されました。出演者は以下。
【出演者】
奧野壮 土村芳
東啓介 福田薫 清水美沙 菅原ゆうき
鹿瀬ハジメ 平山咲彩 日榮ハルカ 藤沢としや
引用:NHK FM
小説とは少し違った味わいで楽しめる内容だったようです。
まとめ:「六人の嘘つきな大学生」は就活をテーマにした推理小説だった
いかがでしたか?「六人の嘘つきな大学生」の特徴を以下にまとめました。
・2022年本屋大賞候補作
・就活のシステムを巧みに応用した推理小説
・伏線回収が素晴らしく爽快なミステリー
以上です。就活を経験した人なら当時の思い出を懐かしく読めるはず!ぜひ手にとってみてください。
コメント
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こんなんばっかだなぁ
好きだった相沢先生もエンタメに振り切って売れちゃうし
売れそうなの書かないと食ってけないんだから嫌な時代やね