2022年7月から始まる月9ドラマの原作「競争の番人」(著:新川帆立)をあなたはもう読みましたか?今回はこの小説のあらすじや人物相関図、感想などをまとめました。作品の魅力をより深く知ってもらうために一部ネタバレありの考察もしています。ぜひ最後まで読んでみてください。
新川帆立の小説「競争の番人」とは
書名 | 競争の番人 |
作者 | 新川帆立 |
出版社 | 講談社 |
発売日 | 2022年5月11日 |
ページ数 | 352ページ |
2022年4月から綾瀬はるかさん主演で人気の月9ドラマ「元彼の遺言状」の原作でデビューした新川帆立さんの最新作(2022年5月時点)が、今回紹介する「競争の番人」です。こちらも早くも2022年7月より放送の月9ドラマで実写化されることが決まっており、早くも話題になっています。
【拡散頂けると嬉しいです】
『競争の番人』(講談社)本日発売です。公正取引委員会を舞台にしたお仕事ミステリーです。これぞエンタメ!と信じるものを書きました。デビュー2年目の勝負作です。講談社さんの社是「おもしろくて、ためになる」を体現したような作品。多くの方のお手元に届きますように! pic.twitter.com/xtOcedjNNR— 新川帆立 (@hotate_shinkawa) May 8, 2022
今回、舞台となるのは公正取引委員会。聞いたことはあっても、何をしているのかイマイチイメージしづらい部署ですが、ミステリー要素やアクション要素がある、極上のエンターテインメントに仕上がっています。
※「競争の番人」は以下に当てはまる人におすすめ!
・公正取引委員会を舞台にした小説を読みたい人
・男女のバディものを読みたい人
・話題のドラマの原作をチェックしたい人
3分で分かる「競争の番人」のあらすじ【※ネタバレなし※】
公正取引委員会に勤める白熊楓は、東大を首席で卒業したエリート・小勝負勉とともに、ウェディング費用のカルテル疑惑があるホテル三社を調査することに。しかし、その矢先にホテル社長が刺される殺人未遂事件が発生。ただし、それは序章に過ぎなかった。
ホテル社長に圧力をかけられ立入検査を拒否されたり、新たに下請けの花屋へのいじめ疑惑を調査することになったりと、白熊と小勝負の二人の凸凹コンビは課題にぶつかりながらも真相へと近づいていく…。
【人物相関図】「競争の番人」の主な登場人物まとめ
「競争の番人」に登場する人物を、下記の人物相関図にまとめました。
なお、物語が進むにつれて、ホテル社長・安藤正夫を刺した犯人が明らかになるなど、意外な繋がりが見えてきます。それは作品を読む上での楽しみにしておきましょう。
「競争の番人」のネタバレ解説&考察まとめ
ここからは「競争の番人」の魅力をさらに深掘りしていきましょう。本作の主題や、ホテル社長の安藤を刺した犯人発覚に至るまでの伏線、さらにはラストの展開から続編の可能性などを考察していきます。
一部ネタバレとなる箇所があるので、その点はクリックしないと読めないようにしています。一度作品を読んだ方だけチェックするようにしましょう。
作者が語る公正取引委員会を舞台にした意義やタイトルの意味とは
公正取引委員会が題材として選んだ小説は珍しいですよね。なぜこのテーマを選んだのしょうか?そもそも公正取引委員会とはどんな仕事をしている場所なのか、想像がつきにくいですよね。その説明から始めましょう。
公正取引委員会とは独占禁止法を所管する機関。談合やカルテルなどの一部の企業だけが不当な利益を得るような取り決めを禁止し、企業間で適切な競争が生まれるように管理する役割があります。本書のタイトル「競争の番人」は、まさしく公正取引委員会の存在意義を的確に表しています。
「競争の番人」が初掲載された「小説現代」に、作者・新川帆立さんのインタビューが載っており、公正取引委員会を舞台に選んだ意図を語っていました。
・「正義が悪を倒す」という主題を追求できる
・警察のように調査・解明・摘発をできるので、新たな警察小説としても書ける
・警察よりも立場が弱い分、弱い人たちがどうやって戦うかに見どころがある
以上のような理由があります。また作者自身がもともと法律家なので、専門知識を下敷きにしてよく書かれています。とはいえ、小説自体は堅苦しいものではなく、あくまでエンタメ要素が強い物語になっています。この辺りの一見小難しいテーマをポップに昇華しているのが、作者の新川帆立さんの才能だと思います。
犯人発覚に至るまでの伏線を丁寧に解説
ここからは本作のミステリー部分をさらに深掘りしていきましょう。白熊と小勝負がカルテル疑惑の調査を追う中で、発生したホテル社長・安藤の刺傷事件。その犯人が判明するまでの伏線をまとめました。ネタバレとなるので、犯人の正体を知っている方だけ以下チェックするようにしましょう。
ネタバレしていいから犯人や伏線について詳しく知りたい方はこちらをクリック!
ホテル社長の安藤を刺した犯人は、ホテル天沢Sのウェディング部門長である碓井でした。碓井は安藤と手を組んで、談合関係者をゆすって一儲けしようと企んでいました。しかし安藤が裏切ったことにより、その怒りで安藤を襲ったのでした。
カルテル疑惑が安藤刺傷事件に大きくかかわっているため、そこから事件が解決していくという流れですが、犯人が碓井だと分かるための直接的な伏線はほぼありません。(筆者が気付いてないだけかもしれないので、もしお気づきの点があればコメントで教えてください)
ただし、本書では真犯人が分かるための伏線というより、別の人物が犯人だと思わせるようなミスリードのための伏線がしっかり効いていました(筆者もついつい作者の企みに引っ掛かり、その人物が犯人だと思い込んでしまったのです)。
犯人だとミスリードを誘い込まれる人物は、豊島美月です。美月を犯人だとミスリードさせるための伏線には以下のようなものがありました。
・自殺した父と安藤の繋がりが明らかになる
→美月が安藤を殺す動機が浮かび上がる
・美月はバレー部レギュラーで高身長
→男性かと思われる身体的特徴が当てはまる
・安藤刺傷事件の翌日、一時的に行方不明になる
→敢えて詳しく書かないことで逆に怪しいと思わせる
以上です。皆さんは騙されませんでしたか?
白熊と小勝負のやりとりや、白熊の内面的成長も見どころ
ホテル三社のカルテル疑惑を追うのに加え、本書では他にも注目したい点がいくつかあります。
まずは、白熊と小勝負の凸凹コンビの活躍ぶり。真逆と言ってもいい性格の2人が、だんだんと協力して真相究明していく様は面白いです!定番のバディものとして楽しめることでしょう。
次に、見どころなのが主人公・白熊の内面的成長ぶり。白熊は結婚を考える彼氏や、過保護な親との付き合いにも振り回され、さらにはかつて談合疑惑の聴取のうちに対象者を自殺させてしまったことへの後悔の念にも苦しめられていました。
白熊ちゃんは、本当に欲しいものは手に入らないんです。いいところまでは行くけれど、最後には負けてしまう。
(中略)
セカンドベストの、思い通りにならない人生をどう生きていくか、という悩みを背負ってほしかった。読者の皆さんも、共感してくれるところはあるんじゃないでしょうか。
引用:「小説現代2021年12月号」新川帆立インタビュー79ページより
白熊がどのように生きる決断をしていくのか?カルテル疑惑の決着とともに、彼女の内面的成長も感じられる小説に仕上がっています。
ラストの思わぬ展開から続編の可能性を考察
「競争と番人」の結末を振り返り、続編の可能性を考えました。こちらもネタバレとなるので、最後まで読んだ方だけ以下をクリックしてください。
ネタバレしていいから結末や続編の可能性について詳しく知りたい方はこちらをクリック!
談合を行っていた雲海をはじめ、カルテル関係者を一斉摘発してめでたく結末を迎えました。白熊は九州事務所への異動が決まり、ラストは白熊の送別会の場面で終わります。最後には、事件を共に追ってきた小勝負と白熊のささやかな心温まるやりとりが描かれました。
「競争の番人」はエンタメ要素満点でまだまだ読みたくなる物語であり、公正取引委員会を舞台にした小説はまだ描かれるべきものが多いと思うので、シリーズ化を望む声は多いでしょう。そこで続編がもし出たらどういう展開になるか、予想してみました。
【続編の可能性を考察】
・白熊と小勝負に恋愛感情が芽生える?
→バディものにさらなる変化が?しかし二人の関係はこのままつかず離れずくらいが良い気もします
・九州へ異動し、暴力団絡みの案件を追うことに?
→「虎狼の血」シリーズのような血なまぐさい演出も?空手が強い白熊の活躍に期待したいです
「競争の番人」を読んでみた感想
ここからは「競争の番人」を読んだ上での筆者の感想や、読者の評価・レビューなどをまとめました。
【筆者の感想】正義とは何かを考えさせられる極上エンタメ!
正義が悪を倒す、いわゆる勧善懲悪ものは昔から誰もが好むジャンルですよね。「水戸黄門」にしても「半沢直樹」にしても普遍的な人気を誇る作品には、同様の構図が成り立っています。そして本作でもそんな王道のストーリーによって、作品が作りあげられています。
安定感のあるエンタメ小説において、さらに面白く読めるのが、主人公が「正義とは何か?」を常に自問自答している点です。主人公の白熊が勤める公正取引委員会でのあり方そのものについても考えさせられます。そんな時、一つの答えを導いてくれたのが、本書に登場してくる甲賀佐知子という人物のセリフです。
人に押しつけていいものだけを正義と呼ぶのよ。
引用:「競争の番人」本文より
甲賀佐知子は公正取引委員会で女性初の委員長となった人物。この引用だけだと伝わりづらい部分があると思うので、ぜひ作品全体を通じて読んでみて、このセリフの意味を改めて考えてみてください。
また気が早いかもしれませんが、2023年の本屋大賞の候補作に選ばれそうな気がします。2022年本屋大賞にかすりもしなかったことを作者の新川帆立さんが少し嘆いていらっしゃったので、今回は取り上げられるといいなと思います。
【みんなの感想や評価】
記事執筆時で、まだ小説が発売されたばかりなので、Amazonのレビューはまだ投稿されておらず、TwitterなどのSNSでも投稿が少ない状況です。皆さんの感想が届きましたら、またこの章を更新いたします。
「競争の番人」は杏主演で2022年7月から放送の月9ドラマ化決定!
坂口健太郎&杏が月9ドラマでW主演‼️
原作は4月期月9ドラマの原作者・新川帆立、待望の最新刊📕✨
ドラマ史上初めての公正取引委員会を舞台にした凸凹バディのエンタメ・ミステリー🧐
是非お楽しみに✨#競争の番人 #フジテレビ #月9#坂口健太郎 #杏 #夏ドラマ #公正取引委員会 pic.twitter.com/5WhLaJD60Q— 【公式】『競争の番人』フジテレビ7月月9 (@kyoso_fujitv) May 15, 2022
「競争の番人」は2022年7月より月9において、女優の杏さん主演でドラマ化が決定しています。2022年4月〜放送の月9ドラマ「元彼の遺言状」に続き、2期連続で新川帆立さん原作の作品がドラマ化されるという、異例のできごとです。
相棒の小勝負を演じるのは坂口健太郎!他キャストも予想してみた
2022年5月10日時点で、「競争の番人」のキャストで判明しているのは、主演の杏さんと坂口健太郎さん。杏さんが白熊楓役、坂口健太郎さんが小勝負勉役になります。他のキャストはまだ発表されていませんが、現時点で誰が演じるか予想してみました。
※キャストが発表されたので、更新しました。→後の名前が本キャストです。
桃園千代子:矢田亜希子→小池栄子
風見慎一:安田顕→大倉孝二
本庄:檀れい→寺島しのぶ
豊島浩平:駿河太郎
豊島美月:祷キララ
徹也:市原隼人
甲賀佐知子:夏木マリ
安藤正夫:國村隼
天沢雲海:吉田鋼太郎
長澤俊哉:山崎樹範
碓井健司:ムロツヨシ
政岡:小林薫
石田正樹:賀来賢人
石田七瀬:MEGUMI
青柳:須賀健太
皆さんはどの俳優さんをイメージしましたか?7月からのドラマも楽しみですね。
ドラマ「競争の番人」はロケ地は北関東の地方都市?
ドラマ「競争の番人」のロケ地が気になるところですが、まだ公式には発表されていません。SNSなどの情報もまだ出てきていないので、こちらは分かり次第更新します。
公正取引委員会の内部の様子は、テレビ局の局内にスタジオを組むか、古い洋館を利用して撮影されるかと思います。ちなみに同じフジテレビで人気ドラマだった「HERO」で登場した東京地方検察庁城西支部は、東京都中央区にある三井本館が利用されました。
またカルテル容疑がかかるホテル三社は、原作では北関東にあるという設定でした。都会すぎるといくつものウェディング会場があり趣旨と合わなくなるので、人口10万〜20万人程度の市が選ばれるのではないかと思います。
まとめ:「競争の番人」は正義感溢れる極上エンタメだった
いかがでしたか?「競争の番人」の特徴を以下にまとめました。
・白熊と小勝負の凸凹コンビの活躍ぶりが面白い
・正義とは何か?を考えさせられる極上エンタメ
・弱い立場の人を丁寧に描いている小説
・2023年の本屋大賞候補として有力作?
以上です。ぜひドラマ化される前に本小説をチェックしてみてくださいー!
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