ガリレオシリーズ第10弾「透明な螺旋」では、湯川教授の秘密が明かされる!東野圭吾原作の人気シリーズで2022年4月時点では最新作となる小説。今回はあらすじを簡単に紹介した上で、伏線やラストシーンなどを考察します。読者の感想もまとめますので、読む上での参考にしてみてください。
ガリレオシリーズ第10弾!東野圭吾の小説「透明な螺旋」とは
書名 | 透明な螺旋 |
作者 | 東野圭吾 |
出版社 | 文藝春秋 |
発売日 | 2021年9月3日 |
ページ数 | 304ページ |
「透明な螺旋」はガリレオシリーズ第10弾で、長編としては5作目となる小説。「ガリレオ」といえば、福山雅治さん主演のテレビドラマの印象が強いですね。また2022年には「沈黙のパレード」が映画化されると発表され、話題になっています。
「実に面白い」や「さっぱり分からない」などの、物理学教授・湯川学のミステリアスなキャラクターが強烈ですね。今作「透明な螺旋」はそんな湯川教授のある秘密が明かされるミステリー小説です。
家族がテーマとなっており、推理小説としてはもちろん、家族物語としても楽しめます。
※「透明な螺旋」は以下に当てはまる人におすすめ!
・東野圭吾原作のガリレオシリーズが好きな人
・家族愛×ミステリーの泣ける推理小説を読みたい人
・2021年話題のミステリーをチェックしたい人
3分で分かる「透明な螺旋」のあらすじ
房総沖で漂流している遺体が見つかった。被害者の同居人だった女性・島内園香と連絡が取れなくなっており、警察は彼女の行方を追う。
警視庁捜査一課係長の草薙は捜索を進めるうちに、園香と亡き母が親しくしていた絵本作家・松永奈江の存在を知る。彼女が書いた絵本の参考文献には、草薙と大学時代の同期だった大学教授・湯川学の文字があった。
上辻を殺害した犯人は?絵本作家と湯川の関係は?事件の真実が明らかになる中で、ガリレオの新たな秘密が明かされる…。
「透明な螺旋」の主な登場人物まとめ
「透明な螺旋」に登場する主な人物を整理しました。
・上辻亮太
フリーで映像制作の仕事を行う。房総沖にて遺体で発見される。
・島内園香
上辻亮太の同居人。生花店勤務。上辻の殺害事件後から行方不明に
・青山
園香が働く生花店の店長。
・岡谷真紀
園香のサークル仲間。上辻の殺害当日に園香と京都旅行していた。
・島内千鶴子
園香の母。一年半前に病死。かつて児童養護施設にて勤務
・アサヒ・ナナ
絵本作家。本名は松永奈江。園香と千鶴子に慕われていた。
・根岸秀美
銀座のママ。上辻との通話記録あり。
・草薙俊平
警視庁捜査一課係長
・内海薫
警視庁捜査一課所属の刑事
・湯川学
帝都大学の物理学科教授
「透明な螺旋」のネタバレ解説&考察まとめ
「透明な螺旋」の魅力をより深掘りするために、犯人発覚につながる伏線回収部分や、ガリレオの秘密、ラストの描写などについてまとめました。一部ネタバレとなる部分は隠していますので、最後まで読んだことがある方だけチェックするようにしましょう。
「犯人」発覚につながる伏線まとめ
ミステリー小説といえば、犯人発覚に至るまでの伏線回収が読みどころの一つですね。「透明な螺旋」の場合は、どのような伏線が張られていたのでしょうか?注意深く再読して、考察しました。
以下は、犯人や伏線回収部分の重要な情報を含んでいるので、作品を一度読んだ方だけチェックするようにしましょう。
ネタバレしていいから犯人や伏線回収について詳しく知りたい方はこちらをクリック!
結論から言うと、上辻殺害の犯人は秀美ママでした。彼女が生花店に現れた人物であったことなどがきっかけになって犯人へとたどり着くのですが、これらの伏線はそう重要でなく、読み進めるうちに犯人はすぐに想像がつくようになります。
「透明な螺旋」で工夫されているのは、犯人発覚につながる伏線というより、敢えてミスリードを生むための仕掛けにあるのです。
冒頭に描かれる「プロローグ」の章。数十年前、ある女性が経済的に子どもを育てられなくなり、児童養護施設の前に置いていきます。この子どもや親が誰かを想像しながら、読者は物語を読み進めていくことになるのですが、ここにミスリードへと誘う仕掛けがあるのです。
おそらくほとんどの読者が、絵本作家がプロローグの章にかかわってくる人物だと思ったことでしょう。しかし、実はそうではありませんでした。このあたりは次の章のガリレオの秘密の点にもかかわってくるので、そこで記述していきましょう。
「透明な螺旋」で明かされるガリレオの新たな秘密とは
「透明な螺旋」の帯には「ガリレオの愛と哀しみ」とあります。ガリレオこと湯川学教授の新たな秘密が、物語の重要な鍵になっていました。ここではこの点について深く考察していきましょう。
ネタバレしていいからガリレオの秘密について詳しく知りたい方はこちらをクリック!
絵本作家の松永奈江は湯川学の実の母親だった。湯川は松永奈江が園香と一緒に逃げていると悟ります。警察が彼女たちのもとへ行こうとした際、湯川が松永奈江に警察の動きを密告し、間一髪のところで逃げ延びることの手助けをするのです。
事件の情報を詳しく知っている人物は限られているため、草薙は二人に情報を流した内通者が湯川だと突き止めます。草薙が湯川に問い詰めたところ、湯川は二人は事件の犯人ではないために、草薙も見逃すことに。ここに草薙と湯川が長年培った信頼関係が垣間見えます。
湯川は松永奈江たちを助けた理由について、以下のように語っています。
自分なりに辿ってみたかったのかもしれません。松永奈江の人生を。彼女が何を思い、どんなふうに生きてきたかを知りたかった
引用:「透明な螺旋」本文より
また物語のラストでも、湯川はある動きをします。これも彼が家族を思う気持ちゆえでした。その点は次の章で詳しく述べていきます。
「透明な螺旋」の結末とは?愛と哀しみに溢れるラストに感動
「透明な螺旋」の結末では驚くべき真実が明かされ、思わぬラストが訪れます。どういった終わり方なのか述べた上で、筆者の考察を書き記します。
ネタバレしていいから結末(ラスト)について詳しく知りたい方はこちらをクリック!
秀美ママは千鶴子が自分の娘だと思いこみ、千鶴子の娘の園香が上辻に暴力をふるわされたと知り、復讐のために上辻を殺します。園香の幸せを願う秀美は、彼女との関係性を明かさずに、殺した動機は「園香のファンだったから」と言い切ります。
しかし実は、園香は千鶴子と秀美に親子関係が無いと知っていました。ある勘違いで、秀美は千鶴子が娘だと思いこみ、今回のような犯罪に至ったのです。
ただし、上辻が最低な人間であるのは確か。秀美が子どもを手放した罪悪感を利用して、秀美から金を巻き上げていたのです。よって結果的に上辻が死んだことで、園香は解放され幸せを手にします。
このような経緯を、湯川は全て気づいていました。真実を告げるべきか悩んでいた園香に対して、湯川は真実が明るみに出たところで誰も幸せにならないと助言します。結果的に真実は語られずに決着しました。
【筆者の考察】
悲しい嘘が連鎖して事件を起こすという流れは、東野圭吾さんの小説によく出てきますね。「正しい」ことだけを優先させる選択ではなく、誰もが幸せになるための最善の選択をするということが、ただの謎解き小説で終わらず、人間物語をしっかりと描いています。
「透明な螺旋」を読んでみた感想
ここからは「透明な螺旋」を読んでみた感想を述べていきます。まずは筆者の感想を綴った後に、SNSやレビューサイトに投稿された皆さんの感想を一部紹介していきます。
【筆者の感想】悲哀に満ちた人間物語。ガリレオとともに読者も成長していく
これまでのガリレオシリーズは、湯川先生の数学的知識をフルに使った推理や、少し謎めいたキャラクターが魅力でした。しかし今回は一転、ガリレオの人間的な部分に焦点があたり、人間物語として楽しめる作品になっています。
私(筆者)自身もかつてガリレオシリーズをよく読んでいた頃は、まだ子どもがいないサラリーマン時代でしたが、そこから歳を重ねて新たな家族ができたり、フリーになって考え方が変わったりして、作品を楽しむ感覚も変わってきたと思っています。
そういう意味では、作中のガリレオもだんだんと歳を重ねて人間らしい一面が垣間見えてきたということでしょう。しかも今回は家族がテーマということで、今しか書けない部分も大きかったのだと思います。
ガリレオとともに読者も成長を実感できると言えば大袈裟かもしれませんが、筆者は確かにそう感じました。そして何より今回の魅力は男の友情ではないでしょうか。ラストに至るまで、草薙と湯川先生の絆は強く、これまでのガリレオシリーズを読んできた者としては一層の感動を覚えました。
【みんなの感想や評価】ガリレオの内面が分かることに賛否の声
読了: 透明な螺旋 東野圭吾
ガリレオシリーズの作品。どうしようもなくクズな男が出てきたけど実際の世界にもいるんだろうなぁ。胸が痛い。湯川さんの意外な一面も見られる興味深い話だった。読み終えて納得感がある。— YUSEYA(↑) (@yuseya) May 2, 2022
Twitterでは好意的な意見が多い一方で、Amazonのレビューでは評価が別れました。
経済的理由から自らの子を手放さなくてはならなかった2人の女性の悲哀。その悲哀がこの物語に適度な奥行きを持たせている。ミステリーとしても最後まで展開を予測させない東野さんの手腕に満足。星5つです。
引用:Amazon
こちらは好意的な意見。
彼のミステリアスさが良かったのに。早々に、犯人は目星がつきますが、これガリレオじゃなくて普通の謎解き?で解決できます。
引用:Amazon
こちらはやや否定的な意見。
ガリレオのミステリアスな雰囲気や物理トリックがこれまでの魅力でしたが、そこに期待していたファンからすると、
・ガリレオのプライベートな部分が明かされてしまう
・今回は物理的なトリックは無し
なので、そこに不満が出てきたのでしょうね。
しかし「ガリレオ」初心者が、東野圭吾ファンからすると、作品自体は十分楽しめます。これまでのガリレオシリーズとはまた違った一面が見れると思って、読みだすと良いでしょう。
「透明な螺旋」が実写化(ドラマ・映画化)されたら…
ガリレオシリーズは皆さんご存知の通り、福山雅治さん主演で映像化されています。テレビドラマとして放送され、その後映画化。さらに2018年に発売されたガリレオシリーズ第9弾の小説「沈黙のパレード」も、2022年に映画化されると発表されました。
今回紹介した「透明な螺旋」もいずれ実写化されるだろうとのことで、今回は一足早くもし映像化されたら誰が主要キャストに抜擢されるのか、予想してみました。
【これまでの出演キャラ】
ガリレオシリーズでお馴染みのキャラを先にまとめます。「沈黙のパレード」にも登場する方達です。
・湯川学:福山雅治
・内海薫:柴咲コウ
・草薙俊平:北村一輝
【今回のキャスト】
・上辻亮太:賀来賢人
・島内園香:川島海荷
・青山店長:西田尚美
・岡谷真紀:小島梨里杏
・島内千鶴子:麻生祐未
・アサヒ・ナナ:吉永小百合
・根岸秀美:風吹ジュン
まとめ:「透明な螺旋」はガリレオの秘密が明かされる推理小説だった
いかがでしたか?「透明な螺旋」の特徴を以下にまとめました。
・ガリレオシリーズ第10弾
・シリーズ作品の中では、物理トリックや謎解き要素は少なめ
・ガリレオのある秘密が明かされ、人間物語が楽しめる
以上です。今回の小説もドラマや映画化が楽しみですね。それまでにぜひ原作をチェックしておきましょう!
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