2021年に映画公開されて話題の「キネマの神様」。今回は原田マハさんによる原作のあらすじを紹介します。映画と違うストーリーなので、映画だけを見た方や映画を見る前に気になっている方はぜひチェックしてみてください。詳しいあらすじや結末については隠しコマンド(クリックしないと見えない)にしています。
原田マハの小説「キネマの神様」とは
書名 | キネマの神様 |
作者 | 原田マハ |
出版社 | 文藝春秋 |
発売日 | 2011年5月10日(文庫本) |
ページ数 | 331ページ |
2021年に山田洋次監督により映画化された「キネマの神様」。もともとは志村けんさんが出演予定だったことも話題になりました。今回はそんな映画の原作である、原田マハ著の小説について、詳しく紹介していきます。
原田マハさんはキュレーターということで、美術をテーマに扱った小説が多いですが、今作のメインテーマは「キネマ(映画)」!小説内でも多くの映画が紹介されているので、映画好きの方は特に要チェックです。
※「キネマの神様」は以下に当てはまる人におすすめ!
・とにかく映画が大好きな人
・映画だけでなく何かに熱中した経験がある人
・原田マハさんの美術関連以外の著作を読みたい人
【※ネタバレなし※】「キネマの神様」の簡単なあらすじ
私(円山歩)は、大手の再開発会社でシネコンの設計を担当する。無類の映画好きの私は意気込むも、社内での人間関係がうまくいかずに辞めてしまう。父は大病を患い、手術を受けて回復するも元来のギャンブル好きで多額の借金がある。自分や家族の今後が不安だ。
そんな父はもともと映画が大好きだった。小さな頃から映画に魅せられ、名画座のテアトル銀幕支配人の寺林新太郎(テラシン)とは親しい仲である。父は映画館には「キネマの神様」がいると信じている。
ある日、父が映画雑誌の老舗・映友社の運営するブログに私の映画評論を投稿した。すると映友社からその評論に感激したと連絡が入り、そのままの成り行きで私は映友社で働くことになった。
しかし映友社の売り上げは年々赤字。私には起死回生の一撃を期待されていそうだ。さらに編集長の高峰さんからは、引きこもりの息子を助けてくれないかとまさかのお願いをされる。私は父のギャンブル依存症をどうにかしなくてはと思っているのに。
父は映友社ブログに映画評論を続け、だんだんとギャンブル好きから脱却するようになる。ブログの管理人は高峰さんの息子・興太だ。そんな折、謎の人物・ローズ・バッドから父の映画評論から真っ向から反論されて…。
映画愛好家の私、父、映友社で働く人々、テアトル銀幕の支配人のテラシン。映画への並々ならぬ愛が、映画を、家族を、救えるのか?最後には思わぬ展開に…。映画への愛が起こした奇跡の物語がここにある。
「キネマの神様」の主な登場人物
詳しいあらすじを紹介する前に、本小説に登場する主な登場人物について整理しました。
【円山家】
・円山歩:主人公。大手会社を退職し、その後に映友社で働き始める
・円山郷直:歩の父。通称ゴウさん。映画好きだが、ギャンブル依存症の一面も
・円山歩の母
【映友社関連】
・高峰好子:映画雑誌「映友」編集長
・田辺:映友社編集者
・江藤:映友社経理の女性
・新村穣:「映友」編集者
・高峰興太:高峰のひとり息子。かなりのネット通
【その他】
・柳沢清音:歩のもと同僚。退社してアメリカへ渡る
・寺林新太郎:テアトル銀幕の支配人。通称テラシン
・バーブ馬場:有名な映画評論家
・川野辺潤:歩のもと同僚
・ローズ・バッド:匿名ブロガー
【※ネタバレあり※】「キネマの神様」の詳しいあらすじ
簡単なあらすじの最後の方で出てきた、父の映画評論への反論。この父(ブログ上ではゴウさん)とローズ・バッドの熱い映画評論の応酬が、物語の重要なキーとなります。
また、物語中盤で描かれる、もと同僚の柳沢清音との約束もラストへの伏線となっています。清音は「歩(私)が一番好きな映画を、一番好きな映画館で見ること」を約束しようと言います。この約束がラストでどう果たされるのか、その点も注意しながら読み進めるとよいでしょう。
※ネタバレ部分は隠しコマンドになっています。※
ゴウさんとローズ・バッドの映画評論の応酬が過熱して…
父(ゴウさん)が投稿するブログは「キネマの神様」と題され、映画好きの男が映画に対する熱い気持ちを「キネマの神様へ報告」する形として綴られていました。ブログを見た、私のもと同僚の清音から、「キネマの神様の英語版」を作らないかと提案されます。
しかしこれにより、物語は大きく動き出します。英語版の「キネマの神様」を見た、ローズ・バッドなる人物から、ゴウさん投稿への熱い反論が寄せられたのです。2人の映画評論の応酬が、老舗の映画雑誌編集社・映友社に思わぬ風を送り込みます。
ネタバレしていいからさらに詳しいあらすじを知りたい方はこちらをクリック!
2人の熱い映画評論の応酬に反応した人々が大勢いて、サイトへのアクセス数が跳ね上がる。そこで映友社は大手会社からの広告収入も決まり、順調かと思われた。
しかし名画座を営む親友のテラシンから、テアトル銀幕を閉じることにしたと聞き、父は落ち込む。しばらくブログ更新が途絶えるが、思いきってローズ・バッドにテアトル銀幕の現状を救いたい旨を相談する。
この投稿にブログ読者は支持を表明する。しかし同時にテアトル銀幕を閉めるきっかけとなったシネコン設立への批判意見も続出。映友社へ広告を出すのが決まっていた大手会社が、このシネコン設立にかかわっていたため、映友社は思わぬ危機を迎える。
テラシンが支配人を務める名画座・テアトル銀幕の存続は?
思わぬ危機を迎えた映友社。
・映友社は危機をどう乗り越える?
・テアトル銀幕の存続は?
・ローズ・バッドからの返信は?
この3つに着目して、読み進めていきましょう。
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テアトル銀幕の窮状を訴えてから、なかなかローズ・バッドの返信が来ないと待ちわびていたある日。ローズ・バッドはアメリカの生放送番組で姿を見せる。なんとローズ・バッドの正体は伝説の映画評論家、リチャード・キャバネルだった。
キャバネルはテアトル銀幕の存在意義を述べ、その一方でシネコンの良さも示し、両方の映画館が共存すべきだと訴えた。こうして世論のシネコン設立批判は下火となり、テアトル銀幕は存続、シネコンは無事設立という流れができた。映友社としても危機を乗り越えた。
一番好きな映画を一番好きな映画館で!感動の結末とは
最後は、結末へと至る場面について解説します。感動のラストに注目です。
ネタバレしていいから結末(ラスト)を知りたい方はこちらをクリック!
ローズ・バッド(キャバネル)からなかなか返信が来ない。実はキャバネルは末期がんを患っていた。キャバネルは映画愛好家のゴウさんと交流できたことで、まっすぐに映画に向き合う気持ちを思い出したと告白。最後に手紙で好きな映画についてこう語った。
私の人生最良の映画。それは、君が人生最良だと思っている、あの映画だ。
引用:「キネマの神様」292ページ
最後は一番好きな映画館=テアトル銀幕で、映画を見る。
・私
・父
・母
・清音
・映友社の4人
・興太
・テラシン
と、物語にかかわった人物勢揃いだ。好きな人物たちと映画を見る喜び。作品では以下のように記されています。
私は、そっと父を見た。大好きな映画を観る直前に射しこむ光が、その顔を他のかに照らしている。
会場を埋め尽くす、ひとりひとりの顔。ぜんぶ、見てみたい気持ちになる。どの顔にも、同じ光が射しているはずだ。
引用:「キネマの神様」299ページ
ここで見た一番好きな映画は「ニューシネマパラダイス」である。ただし、小説内では作品名を敢えて紹介してない。冒頭のシーンについて描写する程度だ。これは読者がそれぞれの一番好きな映画を思い浮かべてほしいという、作者の配慮があるのかもしれない。
映画「キネマの神様」は原作と違う!愛好家ではなく作り手から見た物語が中心
映画「キネマの神様」は原作と違ったストーリーになっています。主な違いを以下にまとめました。
【原作】
主人公:歩(映画雑誌社で働く編集者)
物語:映画愛好家から見た物語
【映画】
主人公:ゴウさん(かつての映画助監督で現在は落ちぶれている)
物語:映画の作り手から見た物語
原作の内容を踏まえながらも、全く違った物語になっていると言えます。ゴウさんとテラシンはかつて同じ撮影所で働いたという設定で、若き頃のゴウさん(菅田将暉)の話と、現在のゴウさん(沢田研二)の話が同時に描かれています。
映画監督・山田洋次にしか書けない脚本・ストーリーになっています。なお、この映画版を受けて、原田マハが再度書き上げた「キネマの神様ディレクターズ・カット」が発売されています。原作と映画の違いを感じながら、読み進めるとまた新たな発見ができるでしょう。
SNSに寄せられた「キネマの神様」(原作)の感想まとめ
ここでは原作の「キネマの神様」を読んだ方の感想をいくつか紹介していきましょう。
「キネマの神様」を読んだ。
あのシーンを一人、自宅で読んでいてよかった。
涙が出た。まさに名画を見たかのように。映画にあまり詳しくなくても楽しめる小説。
詳しければ尚更楽しめるはず。映画を是非とも劇場で見たいと思わせる、
著者の筆致が素晴らしい! pic.twitter.com/V6MV0Rp5Xr— Ruri (@ruridorama) April 6, 2020
本日の読書 27
キネマの神様 原田マハ
映画は旅 観るものを別世界へ連れ出してしまう
今まで読んだ原田さんの作品でNo 1だ~‼️💕
素敵な展開にページをめくる手が止まらない✨
映画好きの方必読☺️#読了#読書記録 pic.twitter.com/ibU9f8Agnl— ねむりひめ (@Lucky_bamboo15) July 10, 2021
原田マハさんの「キネマの神様」を読んだ時から
まだ見ていないこの映画を見たいと思っていた。過ぎてみれば人生は短く儚い。
だからこそ平凡でも様々な愛おしい瞬間が煌めいて
見える。音楽にも趣があり、見終わった後しばらく余韻に
浸っていたい映画だった。— Ruri (@ruridorama) June 12, 2020
感動の声ばかりですね。小説を読んでから、いろんな映画を見たくなった方も。小説で紹介されている映画を見た後に、また「キネマの神様」を読むと感じるところが変わってくるかもしれません。
まとめ:「キネマの神様」は映画愛溢れる小説だった!
いかがでしたか?「キネマの神様」の原作についてまとめました。
・映画愛好家による愛溢れる小説
・映画への愛が家族や映画業界を救う希望溢れる作品
・原作と映画は全く違うストーリーで楽しめる
以上です。映画を見て気になったけど、まだ原作を読んでない方はぜひチェックしてみてくださいー!
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