2023年のミステリーランキングの3冠を獲得している推理小説『可燃物』(著:米澤穂信)。今回は本作のあらすじを簡単に紹介したあとに、ネタバレ解説を行います。犯人やトリックの考察のほか、続編・シリーズ化や映画化・ドラマ化の可能性についても言及。また筆者や読者の感想や評価をまとめました。
米澤穂信の小説『可燃物』とは
書名 | 可燃物 |
作者 | 米澤穂信 |
出版社 | 文藝春秋 |
発売日 | 2023年7月25日 |
ページ数 | 280ページ |
作者の米澤穂信さんは、これまで『満願』『王とサーカス』『黒牢城』などのヒット作を発表してきた人気推理作家。本作『可燃物』も「このミステリーがすごい!」「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」で各1位を獲得し、2023年ミステリーランキングの3冠を達成しています。
『可燃物』は群馬県警捜査一課を舞台にした警察小説。人望はないものの、優れた捜査能力を持つ葛刑事が、様々な難事件を解決していきます。表題作を含む、5編からなる短編ミステリー小説です。
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・米澤穂信さんのミステリーが好きな人
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3分で分かる『可燃物』のあらすじ【※ネタバレなし※】
『可燃物』は5編の短編からなる推理小説です。それぞれ群馬県警捜査一課を舞台としており、葛刑事が事件解決へと導いていきます。葛刑事は上司や部下から疎まれている人物ながら、優れた捜査能力を発揮し、冷静かつ大胆に行動する刑事。また、菓子パンとカフェオレを好んでいるのも特徴です。
ここからは各短編のあらすじを簡単に紹介していきましょう。なお、この章ではネタバレを含まないので、安心してお読みください。
崖の下
スキー場で遭難したとの一報が入った。捜索の末、崖の下から二人の遭難者が見つかった。うち一人、後東陵汰は頸動脈を刺され、失血死していた。犯人は一緒にいた水野正と考えられるが、意識不明の重体だ。所見に当たった葛刑事は、現場に凶器が無いことが気になっており……。
ねむけ
強盗致傷事件の容疑がかかる男・田熊が交通事故を起こした。深夜の衝突事故で、目撃者四人が田熊の信号無視を証言した。しかし葛刑事は、深夜に同じ証言が四つも集まったことに疑問を持つ。交通誘導員、コンビニ店員、大学生、医師。この四人に何かしら繋がりがあるのだろうか……。
命の恩
景勝地で人体の一部が発見された。遺体の身元は野末晴義だと判明し、捜索を続ける中で一人の男・宮田村昭彦に疑いがかかる。宮田村は娘と山で遭難した際に、野末に命を助けられた恩義があった。葛刑事は、遺体が切断されていたことや、人目にかかる場所に人体が遺棄されていたことが気にかかり……。
可燃物
ゴミ集積所の連続放火が起きた。いずれも可燃物が入ったゴミ袋が燃やされ、小火程度で終わっていた。浮かび上がる怪しい人物は三人。オイルライターを投げた若者・小河。かつて家具小売業者の倉庫が全焼した際、責任者だった大野原。ゴミ集積日前日に集積箱に煙草を差し込んだ男・宇佐。葛刑事は犯人を見つけるのには動機が重要だと考えるが……。
本物か
ファミレスにて立てこもり事件が発生した。店内に残されたのは、前科持ちの志多と思われる人物。そして店長の青戸だ。その後、逃げた店員の証言により、志多の息子がアレルギーのある食べ物を出されて怒っていたことが判明。さらに青戸との電話により志多の対応をした女性店員・湯野が殺されたと知る。志多がちらつかせた拳銃は果たして本物なのか?そして事件に隠された驚くべき真実とは……。
『可燃物』の考察(犯人や伏線、トリックについて)【※ネタバレあり※】
ここでは、『可燃物』のネタバレ考察を行います。作品の重要な部分について触れているので、一度全部読んだ人だけクリックして中身を確認するようにしてください。
崖の下
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【真相】
後東は水野の骨によって刺されていた。水野の腕は開放骨折により突き出したような杭のような形状をしていた。手術により、水野の体内に凶器が隠れたのだった。しかし、水野は指したのではなく、偶発的に刺さったと犯行を否定しており、真相は藪の中となった。
【考察】
事件捜索の際に、鑑識班長の桜井が何気なく口にした「凶器が埋まってないか……こりゃ骨だ」というフレーズ。骨=苦労という意味でしたが、実は本当に骨が凶器だったという、まさかのオチに震えました。
ねむけ
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【真相】
四人の証言は偽りだった。四人とも居眠りをしていたが、仕事中やゲーム中に居眠りをしていたのがバレるのはまずいと思い、現場近くのコンビニに駆け寄り、そこで嘘の証言が生まれたのだった。なお、真実の証言により、交通事故に関しては田熊は無実だったが、強盗致傷事件の凶器が見つかることとなった。
【考察】
筆者も昔夜勤をしていたので、居眠りがバレたくないという気持ちは分かるなぁと思いました。作品タイトルが「ねむけ」なので、そこから物語の真相にたどり着いた人も多かったのではないでしょうか。
命の恩
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【真相】
野末晴義は他殺ではなく自殺だった。宮田村は野末の息子・勝に保険金を受け取らせるべく、自分が殺したことにするために遺体を切断し、山へ捨てたのだった。自分が殺人罪に問われることになるが、そうまでしたいほど、宮田村は野末に命の恩義を感じていたようだ。
【考察】
真実が分かる過程で、宮田村は野末を刺したと言ったものの、肋骨に傷がついていないという矛盾点がひとつの鍵となりました。宮田村は恩義を感じている人物に包丁を突き刺すことができなかったのでしょうね。無情になれずに詰めが甘くなってしまった者の哀れみが感じられました。
可燃物
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【真相】
犯人は小野原だった。かつて倉庫が全焼したことに責任を感じていた小野原は、自身が警備員として働くスーパーで屋外にリサイクルボックスが置かれていることを危惧していた。そこで可燃物を燃やしてあくまで小火程度の騒ぎを起こすことで、注意喚起のためにリサイクルボックスを屋内へ移させようという狙いがあった。
【考察】
ここまでの三章は比較的早い段階で犯人が分かっていましたが、今回は誰が犯人かを推理する流れになっていました。怪しい人物が出てきてミスリードを誘ってくることもありましたが、可燃物が実は燃えにくいという点から、凶悪性がないのかなと読者が気づけるような配慮もされていたように思います。
本物か
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【真相】
立てこもりの被害者だと思われていた青戸店長が実は、立てこもりの首謀者だった。青戸は交際関係のトラブルが原因で湯野を殺したあと、偶然現場を見られた志多を脅し、被疑者のフリをさせたのだった。その可能性を十分に考えた警察が突入し、事件は最低限の被害に留まった。
【考察】
「どんでん返し」が待っている、ミステリーの王道ともいえる短編でした。ここまでの章がわりとぶっ飛んだ動機で犯行をしている傾向があったので、今回も「極悪人物でも我が子は大切なんだな」と思わせるミスリードさせるような雰囲気があったかもしれません。いずれにせよ、現場に子どもがいることで、緊張感が最後まで続くハラハラな展開になっていましたね。
『可燃物』のネタバレ解説&考察まとめ
ここからは『可燃物』の魅力を深掘りするために、作者のインタビューを交えながら作品の読みどころ、続編の可能性、映画化・ドラマ化の噂などを考察していきます。
真相がなんとなく予想できる設定
『可燃物』はミステリー初心者にもおすすめしやすい小説だといえます。文章が読みやすいのに加え、ミステリーとして比較的分かりやすい仕掛けが設定されているので、読者も読みながら真相を推理しやすいからです。
作者の米澤穂信さんもインタビューの中でこう答えています。
作品によって違いますが、10~15%くらいの読者が真相にたどり着いてくれると良いなと思っていました。
(中略)
「確かにこれは気づけたはずだった、しまった!」と思われるのが良問だと思っています。
引用:米澤穂信さん「可燃物」インタビュー 主人公は現役警部、ミステリ小説で描きたい「より大きなもの」|好書好日
物語を注意深く読んでいくと、なんとなく真相が予想できるものが多いのです。特に今作はそこまでミスリードを誘うものもなく(それはそれで「ヤラレタ~!」と爽快な気分にもなるのですが)、比較的素直に読んでいきやすい作品だと感じます。
作品タイトルにヒントが隠されているものなどもあるので、全体をよく考慮しながら、作品世界に没頭してみるのもいいでしょう。
続編・シリーズ化の可能性は?
本作は米澤穂信さんが初めて挑んだ警察小説です。警察は事件の通報が入るところなので、小説の舞台にしやすく、今後も続編を期待したくなりますね。読者からも続編を願う声が多くあります。
『可燃物』米澤穂信 #読了
今年最後の読書でした。登場人物達みんな生き生きとしていて人間として共感出来る所も多く切ない悲しい気持ちにもなりつつ魅力的な人物ばかりでした。是非、続編も出して欲しいなと思う作品でした。 pic.twitter.com/CB5Bk1UKM3— ゆう (@yuu_nana22) December 31, 2023
米澤氏初の警察小説だが、緻密で意外感のある筋運びと鮮やかな謎解きは、いつものとおり。続編も楽しみだ。
引用:Amazon
これまで米澤穂信さんの作品は〈古典部〉シリーズ、〈小市民〉シリーズ、〈ベルーフ〉シリーズ、〈図書委員〉シリーズとシリーズ化されているものも多いので、今回もシリーズ化していってほしいです。
映画化・ドラマ化の噂は?キャストも予想してみた
続編のほかに、映画化やドラマ化も期待したくなる作品ですね。米澤穂信さんの作品はヒット作が多いわりに、これまで映像化されているのが少ない印象がありますが、それは設定やミステリーの仕掛けなどが映像作品として表現しにくいというのが要因にあるのかもしれません。
そう考えると、本作は比較的映像化しやすく、短編集なので特に連続ドラマに向いていそうです。東野圭吾さんの「ガリレオ」シリーズや「新参者」シリーズなどのように、続編が出たら一気にドラマ化する可能性があります。
そう考えたときに、気になるのがキャストですよね。「ガリレオ」の湯川教授(演:福山雅治さん)、「新参者」の加賀刑事(演:阿部寛さん)のように、主役を誰が演じるのかが作品がヒットする大きなカギになりそうです。
筆者のイメージ的には、葛刑事は鈴木亮平さんあたりが適役だと思うのですが、いかがでしょうか。皆さんも思いつく人物がいたらぜひコメントで教えてください。
ちなみに葛刑事は菓子パンが好きなキャラクターなので、ヤマザキパンがメインスポンサーにつくとよいのかなと勝手に思っています。
『可燃物』を読んでみた感想
ここからは『可燃物』を読んでみた感想を書いていきます。また読者のレビューも合わせてまとめました。
【筆者の感想】短編でサクサク読める!
『可燃物』は5編からなる短編集ですが、どれもサクサクと読めるので、ミステリー初心者におすすめしやすい作品だと感じました。表題作はやや不穏な感じもするタイトルですが、全くホラー味は感じません。
個人的には最後の「本物か」が好きでした。ほかの読者の感想もみていると、表題作よりもこちらの方が好きという人もけっこういるようですね。最後までハラハラさせる展開で好きでした。
葛刑事はカフェオレと菓子パン好きという人物像でしたが、今後続編が作られていくならば、もう少し葛刑事の内面にも迫ってみた作品が増えていくといいなと感じます。こういう人間味があまりない人が、時折見せる人柄にやられてしまうことが往々にあるので。ほんと、シリーズ化してほしいなー。
【みんなの感想や評価】解けそうで解けないミステリーが絶妙
続いて、読者がSNSに投稿した感想もいくつか紹介していきます。
#読了
『可燃物』米澤穂信
余計なことは喋らず上司からも疎まれる。しかし捜査能力は卓越し彼にだけに見えている世界がある。群馬県警を舞台にした5編。
派手ではなく解けそうで解けない絶妙な謎。無個性ともいえる(カフェオレと菓子パン好きだけど)後景が逆に新しくも感じ純粋に謎を楽しめる粋。 pic.twitter.com/84sjqulAYq— nyapple (@na80016799) December 31, 2023
『可燃物』
2024年1冊目の読了本は去年のこのミス一位短編集。
群馬県警の刑事が主人公で、事件はどれも実際に起こりそうな地味なものばかりなんだけれど、なるほど謎というのはどんな場所にも潜んでいるのだなと感心しました。#読了 pic.twitter.com/X8OTIAgUig
— 水原@読書垢 (@F5yxgdUkS3EPBiX) January 3, 2024
#読了
可燃物 米澤穂信県警本部の葛警部の冷静沈着な推理が冴え渡る本格ミステリ×警察。
派手さはないけど、どのタイトルも高水準で面白かった。解けそうで解けない真相が絶妙でした。
葛警部の渋さがよかったので是非ともシリーズ化して欲しい。 pic.twitter.com/4ziKFAIZWB— すけ@読書好きになった人 (@suke_book_like) December 29, 2023
可燃物/米澤穂信 #読了
今年最後の本は米澤穂信さん『可燃物』。
あたしにしてはあまり積まずに読めた方かな。
短編集だけど、どれも面白かった!
菓子パンとカフェオレの昼食ばかりの主人公が、今までにない硬派なキャラ。
シリーズ化希望。次は長編で読みたいな。 pic.twitter.com/qYygOtkOcy— 紙屋 (@schelle_blau) December 31, 2023
まとめ:『可燃物』は葛刑事を主役とした珠玉の警察小説だった
いかがでしたか?『可燃物』の特徴を以下にまとめました。
・無愛想な葛刑事の見せる捜査能力に関心する
・慎重に読み進めて真相を予想したくなる推理小説
・続編や映画化・ドラマ化に期待したくなる作品
以上です。まだチェックしていない方は、ぜひ読んでみてください!
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