映画好きなら絶対におすすめしたい小説「スタッフロール」。今回は、特殊造形とCGの世界で働く2人の女性を主人公にした本作のあらすじを紹介。作品の魅力をネタバレ解説し、筆者の感想や読者の評価をまとめました。直木賞受賞予想も行っているので、最後までチェックしてみてください。
深緑野分の小説「スタッフロール」とは
書名 | スタッフロール |
作者 | 深緑野分 |
出版社 | 文藝春秋 |
発売日 | 2022年4月13日 |
ページ数 | 469ページ |
「スタッフロール」は、特殊造形とCGという、デジタルとアナログの相反する世界で働く2人の女性が主人公の小説。作品作りに尽力しながらも、スタッフロールに名前が無かったクリエイターに光をあてます。
特殊造形を使った映画「2001年:宇宙の旅」や「スター・ウォーズ」、CGを初めて導入した映画「トロン」など、映画好きにはグッとくる映画が引き合いに出されます。読者はこれまでの映画史を振り返りながら、登場人物たちの成長を追うことができます。
最新刊『スタッフロール』(文藝春秋)、本日発売です!長編は一年半ぶりです。
1946年にアメリカで生まれたマチルダは、幼少期に見た影絵と父の友人の勧めをきっかけに映画の世界、とりわけ特殊造形に魅入られ、自身もやがてハリウッドの特殊造形師となる。しかしやがてCG技術の足音が聞こえてきて… pic.twitter.com/xYjYw7VMp6— 深緑野分 (@fukamidori6) April 13, 2022
作者の深緑野分さんは、これまで「戦場のコックたち」や「ベルリンは晴れているか」で直木賞候補に。今作「スタッフロール」でも3回目の直木賞の候補となり、注目を集めています。
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3分で分かる「スタッフロール」のあらすじ【※ネタバレなし※】
父の友人から「ハリウッドは夢の製造工場だよ」と教えられ、映画業界に興味を持った少女・マチルダ。父からは「映画に夢を見るな」と言われるが、親元を離れやがて特殊造形師として活躍するようになる。
マチルダはスタッフロールに自分の名前がクレジットされることで、親から安心されたいと思う。しかし映画界にはCGの技術が台頭してきて、マチルダはその事実を受け入れられずに…。
ロンドンでCGクリエイターとして活動するヴィヴィアンは、世間からは実力を認められながらも、アカデミー賞において落選し、今一つ自分の実力を信じ切れないでいる。そんな折、彼女の所属する会社が、映画「レジェンド・オブ・ストレンジャー」のリメイクを担当することになった。
「レジェンド・オブ・ストレンジャー」はマチルダが造形した怪物Xが登場する映画だ。マチルダがCGを嫌っていたことを知ったヴィヴィアンは、作品のCG化に戸惑う。そんな彼女のもとにマチルダの関係者たちの影がちらつき始め…。
特殊造形というアナログの世界と、CGというデジタルの世界。2つの世界で苦悩しながらも活躍してきた2人の女性に訪れる、愛と真実の物語とは?
「スタッフロール」のネタバレ解説&考察まとめ
ここからは「スタッフロール」の魅力をより深掘りするために、一部ネタバレを含みながら作品を解説していきます。ネタバレ部分は隠しているので、
映画好きにはたまらない!作品で登場する映画を一部紹介します
「スタッフロール」は特殊造形とCGをテーマに扱っており、実際に存在する映画が多数登場してきます。映画の撮影秘話や存在意義などのエピソードが紹介されているので、映画好きにとってはたまらない小説になっています。登場する映画を一部表にまとめました。
【特殊造形が関連する映画】
映画名 | 公開した年 |
猿の惑星 | 1963年 |
2001年:宇宙の旅 | 1968年 |
タワーリング・インフェルノ | 1974年 |
スター・ウォーズ | 1977年 |
【CGが関連する映画】
映画名 | 公開した年 |
トロン | 1982年 |
トイ・ストーリー | 1995年 |
ローグ・ワン | 2016年 |
シン・ゴジラ | 2016年 |
登場人物たちは、映画の制作にかかわる人物ばかりですが、同時に映画好きな一面があります。彼女たちが制作側の視点からどう作品を捉えているかを知れるので、映画好きにとってはとても読み応えがあるでしょう。
特殊造形やCGの技術について深く知れる
本書は特殊造形師のマチルダと、CGクリエイターのヴィヴィアンの二つの章から成り立ちますが、どちらも詳しい制作現場の話が入ってます。特にCGの分野は、かかわる人物たちがどう役割分担され、どのように映像化されるかなど詳しい記述があります。
CGの世界に興味がある人には、かかわる人がどんな仕事をしているのか知るのにとても役立つでしょう。専門用語が多いですが、丁寧に説明されているので読みやすいです。また仕事をする上での醍醐味や苦悩などもしっかり描かれているので、一つのお仕事小説として楽しめます。
タイトル「スタッフロール」の意味と、ラストで訪れる感動とは?
タイトルの「スタッフロール」とは、映画の最後に流れるスタッフ一覧が書かれたエンドロールのこと。今回取り扱ったテーマが裏方の分野であるため、制作に携わった人が映画のスタッフロールにクレジットされるかどうかは重要な意味を持ちます。
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このスタッフロールに自分の名前がクレジットされなかったことを悲しんでいたマチルダ。しかし「レジェンド・オブ・ストレンジャー」がリメイクされた際に、スタッフロールにしっかり自分の名前がクレジットされます。ラストはCG制作を手掛けたヴィヴィアンがマチルダとそのスタッフロールを見るシーンで終わります。
マチルダの苦悩は、スタッフロールに自分の名前が出なかったこと。CGの世界を受け入れられなかったこと。この2つに原因がありました。結末ではこの2つに決着がついたと思われるような書き方で、ハッピーエンドを迎えたと言って良いでしょう。
「スタッフロール」を読んでみた感想
ここからは「スタッフロール」を読んだ上での筆者の感想、及び読者のレビューや評価を紹介します。
【筆者の感想】全ての映画好きへの愛情を感じる小説
「スタッフロール」には映画制作にかかわる人たちが多く登場します。彼らには映画への並々ならぬ想いがあり、ときに議論で激しくぶつかり合います。映画好きならではのこだわりや偏愛が伝わってきて、こういう言い合いはたしかによくしているよなぁと思いました。
参考文献をみて、作者の深緑野分さんの取材量の多さに驚かされました。深緑野分さんはこれまで戦場を舞台にした小説などを発表されてきましたが、その時もよく調べているなと感心しました。今回もその取材の多さに、作者の作品に対する熱量が伝わってきました。
私自身、映画を最後まで見ずにスタッフロールの部分を飛ばすことがありました。この小説をきっかけに、裏方への配慮や敬意を持って最後までスタッフロールをじっくりみようかなと思います。
【みんなの感想や評価】
深緑野分『スタッフロール』文藝春秋を読了。
映画の本編が終わった後のスタッフロール。そこに名前が刻まれることがなくとも多くの情熱もった人が携わっている。特殊造形師として活躍したマチルダとCGアニメーターのヴィヴ。
ギフトに恵まれながらも激動の半生を読み最後の一文に目頭熱く余韻に浸る。— はらかず (@kazu7honyomi) June 30, 2022
ラストの一文を読んで、もう一度読み返してみるとまた感動が押し寄せるでしょう。
才能の有無、仕事環境の優劣、廻りの思惑、思い通りにならないことの方が多い人生と仕事。
そんな中でも、毎日働くって本当にすごいこと。
すべての悩めるクリエイターに、すべての働く人によんで欲しい、今の時代に必読の作品です。
引用:Amazon
CGの世界だけじゃなく、クリエイティブな仕事をする人にはきっと刺さる部分があると思います!
「スタッフロール」は直木賞を受賞できる?ズバリ大予想!
「スタッフロール」は第167回直木賞の候補に選ばれています。この記事を書いている段階では、まだ受賞作発表前です。ここではこの作品が直木賞を受賞するかどうか予想してみましょう。
クリエイターの苦悩や成長がよく描かれていて、アナログとデジタルという相反する世界で活躍する二人の姿が対照的に出てくるのも良いです。一定の評価はされる作品でしょう。
ただし構成の点で不満を言う選考委員はいるかもしれません。連載時はマチルダとヴィヴィアンの章を交互に発表していたのですが、単行本化された際もそちらの構成の方が良かったと判断されるかもしれません。
また直木賞ではどうしても海外を舞台にした小説は認められにくい点があります。前回候補になった「戦場のコックたち」でも、日本人が海外の戦争を描いたという点を評価する声がある一方で、否定的な意見が目立ちました。
今回もニューヨーク、ロンドンなど海外が舞台の作品。登場人物も一人日本人が出てくるくらいで、ほとんどが外国人です。この点が少し評価されにくいと感じました。
⇒受賞予想:ー
まとめ:「スタッフロール」は映画の舞台裏がよく分かる小説だった
いかがでしたか?「スタッフロール」の特徴を以下にまとめました。
・特殊造形とCGの世界で活躍する女性2人が主人公の話
・映画への愛情が伝わってくる力作
・第167回直木賞候補作(受賞予想はー)
以上です。まだチェックしていない方は、ぜひ読んでみてください!
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