3分で分かる『Nの逸脱』のあらすじ&ネタバレ解説・感想まとめ【第173回直木賞候補作】

今回は『Nの逸脱』のあらすじや感想を紹介します。第173回直木賞の候補作となった本作について、タイトルの意味、ラストシーンのネタバレ考察(解説)、続編の可能性をまとめるほか、現時点での直木賞受賞予想についても言及します。

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【第173回直木賞候補作】夏木志朋の小説『Nの逸脱』とは

書名 Nの逸脱
作者 夏木志朋
出版社 ポプラ社
発売日 2025年1月22日
ページ数 250ページ

作者の夏木志朋さんは、1989年大阪府生まれの作家で、2019年に『ニキ』で第9回ポプラ社小説新人賞を受賞してデビュー。同作は2022年に『二木先生』のタイトルで文庫本として発表され、大ヒットを記録しました。

本作『Nの逸脱』は、WEBで連載された三つの作品からなる短編集。どの短編にも普通の道を逸脱する人物が描かれており、先の読めない展開が魅力の小説となっています。

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3分で分かる『Nの逸脱』のあらすじ【※ネタバレなし※】

本作は、「場違いな客」「スタンドプレイ」「占い師B」という3つの短編から成る作品です。それぞれのあらすじを簡単に紹介しましょう。

場違いな客

爬虫類ペットショップで働く20歳の金本篤は、「フトシ」と名づけたフトアゴヒゲトカゲが処分される前に、自分で飼いたいとオーナーの喜屋武に申し出る。しかし、喜屋武からは30万円かかると言われてしまう。

前日に父親から給料を持ち逃げされ、手持ちが少ない篤は、自暴自棄になりかけた夜、ある男を目撃する。それはペットショップにLEDライトだけを買いに来た謎のサラリーマン風男性だった。そこで篤はあることを思い付き……。

スタンドプレイ

西智子は、深夜に人気のない住宅地でタクシーを拾った。訝しげな運転手に対し、咄嗟に嘘の言い訳をするが、実はとんでもない行動をしでかした後だった…。

もともとは医師を目指していた智子。しかし夢は叶わず、高校の数学教師となった。しかし、反抗的な態度をとる女子生徒・安藤から智子の生い立ちや態度を非難する声があがる。さらにその帰り、電車である事態に遭遇し、そこから智子は思いがけない行動に……。

占い師B

出張占い師・坂東イリスが、依頼された場所で知り合ったのは、占い師になりたいと願う”眼鏡ボブ”の女性・秋津だった。彼女は時折”本当に”見えることがあると分かり、坂東はその瞬間を見たいと思い、彼女の申し出を受け入れることにした。

しかし、どんくさく、頭も悪い秋津。それでも実地に連れていくなどして、経験を積ませようとする。そんな中、彼女が見える場面に遭遇した坂東。それがまた二人の関係性を変え、さらに新たな展開へと進んでいき……。

『Nの逸脱』の主な登場人物まとめ

『Nの逸脱』の主な登場人物についてまとめました。

場違いな客

金本篤:主人公。爬虫類ショップ「レプルタイズ・メサ」の店員。20歳。
・喜屋武:「レプルタイズ・メサ」のオーナー
・金本篤の父親:篤からは毛嫌いされている
・謎のサラリーマン風男性:LEDライトだけを買った

スタンドプレイ

西智子:主人公。高校数学教師。もともとは医師志望だった
・安藤:智子に対し、反抗的な態度をとる女子生徒
・電車にいた女:身勝手な態度をとる迷惑な乗客

占い師B

坂東イリス:主人公。出張占い師。人間観察に優れている
・秋津:占い師志望の女。どんくさい一面がある

『Nの逸脱』のネタバレ解説&考察まとめ

ここからは『Nの逸脱』の魅力を深掘りするために、タイトルの意味、作品の魅力、ラストシーンのネタバレ考察などを行います。

タイトル「Nの逸脱」の意味とは?Nは「Normal」のこと?

本作の特徴的なタイトルについて、まずは触れていきましょう。先に「逸脱」についてですが、これは本作の大きなテーマというか、物語の展開そのものを示しています。登場人物たちが日常からどんどん逸れていき、どういった行動をしていくかが注目ポイントです。

気になるのが、タイトルにある「N」が何を示しているのかについて。本編の中で直接触れられることはありませんが、おそらくNormal(普通)のNを指しているのではないかと考えられます。

Xでも同様のことを呟いている投稿を見つけました。また、どの物語にも「隣人」がかかわってくる(部屋に忍び込むシーンがあったり、隣人がおかしな様子を気にしたり)ので、隣人を意味する「Neighbor」の頭文字からきている可能性もあります。

『Nの逸脱』のラストシーンをネタバレ考察!

それぞれの物語で予想できない展開が魅力の本作ですが、ラストシーンについて考察した内容を記します。一話目の「場違いな客」について解説していますが、ネタバレとなるので、本作を全て読んだ人だけ以下をクリックして読んでみてください。

ネタバレしていいからラストシーンの考察を知りたい方はこちらをクリック!

【ラストまでのあらすじ】
LEDライトだけを買ったリーマン風の男は、大麻を栽培していると踏んだ篤。男を尾行して家に侵入し、それをネタに金をゆすろうとする。しかし、すんでのところで怯んでしまい、逆に男から拘束されてしまう。

男は実際に大麻を育てていたと分かり、これまでの顛末を話す。会話を聞いた篤は、口止め料と称して大金を受け取り、最終的に逃れることができた。

翌日、篤はオーナーの喜屋武に、自分が動物取扱責任者になりたいこと、改めて「フトシ」を引き取りたいことを依頼する。しかし、フトシはもう既に他の者が買っていた。

篤は、育ってしまったほとんどの動物が処分されると思っていたものの、ほとんどの動物はそうではなく、育った方が売れやすくなっているなどの理由で、処分を免れていたと知る。喜屋武は、動物への愛着や責任感を見せた篤を、正社員にしてくれた。

また、最後の場面で、大麻を栽培していた男が実は警察官だったと明かされる。

【考察】
拘束されてどうなることかとハラハラしましたが、無事に解放されて安心しました。男が篤を解放する間際に話した以下の言葉が印象的です。

「すべての人間は父親から認められたがっている」
引用:『Nの逸脱』本文(68ページ)より

篤は本当の父親のことを嫌っていますが、物語終盤ではオーナーの喜屋武が父親代わりの存在になっていることが分かります。喜屋武から一人前のペットショップ店員だと認められ、よく面倒をみてもらっていると分かるシーンにうまくつながっていますね。

『Nの逸脱』の続編はある?「占い師B」はシリーズ化の期待も

『Nの逸脱』はそれぞれ一話完結ものですが、どれもその後の展開や、ほかの話も読みたくなるものばかりです。特に最後に収録された「占い師B」は、作者の夏木志朋さん自身がインタビューの中でシリーズ化した場合の構想を語っています。

もしシリーズ化するなら、一話完結のバディものみたいにできたら楽しいかなと思います。
引用:夏木志朋さん「Nの逸脱」インタビュー デビュー作が15万部のヒット。新作も「人間を深く、面白く」|好書好日

人間観察能力に優れた坂東イリスは、探偵としても能力を発揮しそうなので、個人的に推理ものにもすごく合っている気がします。二人の関係性がどうなるか、またタッグを見てみたいものですね。

『Nの逸脱』を読んでみた感想

ここからは『Nの逸脱』を読んでみた感想を書いていきます。また読者のレビューも合わせてまとめました。

【筆者の感想】短い話の中に多様なテーマが集まっている

個人的には最初に収録された「場違いな客」が好きでした。勇気がありそうで、途中で怖気づいてしまう主人公の姿が愛らしく、またずっと緊張感があり、ハラハラしながら読み進めました。ラストはそうきたか、と驚きましたね。

短い作品ですが、家族の絆、若者の成長、動物愛護、犯罪心理など、さまざまなテーマが集約されていて、それでいてまとまっているのにも感心しました。

さて、本作は直木賞の候補作となっているので、現時点(2025年6月25日時点)での受賞予想も記しておきましょう。結論からいうと、本作の受賞はやや難しいのではないかと感じます。

直木賞というと、人間の内面にもっと踏み込んだ作品が評価されやすい傾向にあり、本作はその点においてやや不利な気がします。特に二作目の「スタンドプレイ」は、やや弱いかなと。

とはいえ、次にどんな展開がくるか分からない物語はおもしろく、読者を引き込むのは事実です。直木賞で評価が集まらなくても、今後本屋大賞などで注目されていくことになるかもしれません。

受賞予想:ー(なし)

【みんなの感想や評価】読後に不思議と心が軽くなる

著者の小説は共感性羞恥に悶えたり、自分の甘えを見透かされたりと、始終張りつめていて最後まで息を継げない。
しかし読み終えた後に不思議と心が軽くなるのは、自分もまた抱える心の中の《逸脱》を主人公達が消化してくれたからかもしれない。
引用:Amazon

特にお気に入りなのが「占い師B」。秋津のような底抜けのお馬鹿キャラは単純に笑えるので好き。坂東も癖が強くて良いキャラをしていた。
引用:Amazon

まとめ:『Nの逸脱』は先の読めない展開が魅力の短編集だった

いかがでしたか?『Nの逸脱』の特徴を以下にまとめました。

・第173回直木賞候補作(受賞予想はー:なし)
・登場人物たちが逸脱していく様子がおもしろい
・続編やシリーズ化を期待したくなる

以上です。まだチェックしていない方は、ぜひ読んでみてください!

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