今回は『Nの逸脱』のあらすじや感想を紹介します。第173回直木賞の候補作となった本作について、タイトルの意味、ラストシーンのネタバレ考察(解説)、続編の可能性をまとめるほか、現時点での直木賞受賞予想についても言及します。
【第173回直木賞候補作】夏木志朋の小説『Nの逸脱』とは
| 書名 | Nの逸脱 |
| 作者 | 夏木志朋 |
| 出版社 | ポプラ社 |
| 発売日 | 2025年1月22日 |
| ページ数 | 250ページ |
作者の夏木志朋さんは、1989年大阪府生まれの作家で、2019年に『ニキ』で第9回ポプラ社小説新人賞を受賞してデビュー。同作は2022年に『二木先生』のタイトルで文庫本として発表され、大ヒットを記録しました。
【第173回 直木賞候補作が決定】業界大注目の新人作家・夏木志朋の話題作『Nの逸脱』が候補作に選出されました! https://t.co/aBEte3RAVU pic.twitter.com/FWKlj2U5w0
— PR TIMESエンタメ (@PRTIMES_ETM) June 12, 2025
本作『Nの逸脱』は、WEBで連載された三つの作品からなる短編集。どの短編にも普通の道を逸脱する人物が描かれており、先の読めない展開が魅力の小説となっています。
※『Nの逸脱』は以下に当てはまる人におすすめ!
・退屈な毎日から抜け出したいと思っている人
・先の読めない展開にハラハラドキドキしたい人
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3分で分かる『Nの逸脱』のあらすじ【※ネタバレなし※】
本作は、「場違いな客」「スタンドプレイ」「占い師B」という3つの短編から成る作品です。それぞれのあらすじを簡単に紹介しましょう。
場違いな客
爬虫類ペットショップで働く20歳の金本篤は、「フトシ」と名づけたフトアゴヒゲトカゲが処分される前に、自分で飼いたいとオーナーの喜屋武に申し出る。しかし、喜屋武からは30万円かかると言われてしまう。
前日に父親から給料を持ち逃げされ、手持ちが少ない篤は、自暴自棄になりかけた夜、ある男を目撃する。それはペットショップにLEDライトだけを買いに来た謎のサラリーマン風男性だった。そこで篤はあることを思い付き……。
スタンドプレイ
西智子は、深夜に人気のない住宅地でタクシーを拾った。訝しげな運転手に対し、咄嗟に嘘の言い訳をするが、実はとんでもない行動をしでかした後だった…。
もともとは医師を目指していた智子。しかし夢は叶わず、高校の数学教師となった。しかし、反抗的な態度をとる女子生徒・安藤から智子の生い立ちや態度を非難する声があがる。さらにその帰り、電車である事態に遭遇し、そこから智子は思いがけない行動に……。
占い師B
出張占い師・坂東イリスが、依頼された場所で知り合ったのは、占い師になりたいと願う”眼鏡ボブ”の女性・秋津だった。彼女は時折”本当に”見えることがあると分かり、坂東はその瞬間を見たいと思い、彼女の申し出を受け入れることにした。
しかし、どんくさく、頭も悪い秋津。それでも実地に連れていくなどして、経験を積ませようとする。そんな中、彼女が見える場面に遭遇した坂東。それがまた二人の関係性を変え、さらに新たな展開へと進んでいき……。
『Nの逸脱』の主な登場人物まとめ
『Nの逸脱』の主な登場人物についてまとめました。
場違いな客
・金本篤:主人公。爬虫類ショップ「レプルタイズ・メサ」の店員。20歳。
・喜屋武:「レプルタイズ・メサ」のオーナー
・金本篤の父親:篤からは毛嫌いされている
・謎のサラリーマン風男性:LEDライトだけを買った
スタンドプレイ
・西智子:主人公。高校数学教師。もともとは医師志望だった
・安藤:智子に対し、反抗的な態度をとる女子生徒
・電車にいた女:身勝手な態度をとる迷惑な乗客
占い師B
・坂東イリス:主人公。出張占い師。人間観察に優れている
・秋津:占い師志望の女。どんくさい一面がある
『Nの逸脱』のネタバレ解説&考察まとめ
ここからは『Nの逸脱』の魅力を深掘りするために、タイトルの意味、作品の魅力、ラストシーンのネタバレ考察などを行います。
タイトル「Nの逸脱」の意味とは?Nは「Normal」のこと?
本作の特徴的なタイトルについて、まずは触れていきましょう。先に「逸脱」についてですが、これは本作の大きなテーマというか、物語の展開そのものを示しています。登場人物たちが日常からどんどん逸れていき、どういった行動をしていくかが注目ポイントです。
気になるのが、タイトルにある「N」が何を示しているのかについて。本編の中で直接触れられることはありませんが、おそらくNormal(普通)のNを指しているのではないかと考えられます。
Nの逸脱/夏木志朋
NはNORMALのN…なのかな
逸脱というか私は”こだわりが強い人達”という風に受けとった
人の内面の切り取り方が上手いなと感じる
特に『占い師B』!凄く面白かった
坂東のキャラ隙がない…すごい観察眼だ
手のひらの上でクルクルされたい pic.twitter.com/nkJMQsHGAC— あも@読書垢 (@twitersan4) May 11, 2025
Xでも同様のことを呟いている投稿を見つけました。また、どの物語にも「隣人」がかかわってくる(部屋に忍び込むシーンがあったり、隣人がおかしな様子を気にしたり)ので、隣人を意味する「Neighbor」の頭文字からきている可能性もあります。
『Nの逸脱』のラストシーンをネタバレ考察!
それぞれの物語で予想できない展開が魅力の本作ですが、ラストシーンについて考察した内容を記します。一話目の「場違いな客」について解説していますが、ネタバレとなるので、本作を全て読んだ人だけ以下をクリックして読んでみてください。
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【ラストまでのあらすじ】
LEDライトだけを買ったリーマン風の男は、大麻を栽培していると踏んだ篤。男を尾行して家に侵入し、それをネタに金をゆすろうとする。しかし、すんでのところで怯んでしまい、逆に男から拘束されてしまう。
男は実際に大麻を育てていたと分かり、これまでの顛末を話す。会話を聞いた篤は、口止め料と称して大金を受け取り、最終的に逃れることができた。
翌日、篤はオーナーの喜屋武に、自分が動物取扱責任者になりたいこと、改めて「フトシ」を引き取りたいことを依頼する。しかし、フトシはもう既に他の者が買っていた。
篤は、育ってしまったほとんどの動物が処分されると思っていたものの、ほとんどの動物はそうではなく、育った方が売れやすくなっているなどの理由で、処分を免れていたと知る。喜屋武は、動物への愛着や責任感を見せた篤を、正社員にしてくれた。
また、最後の場面で、大麻を栽培していた男が実は警察官だったと明かされる。
【考察】
拘束されてどうなることかとハラハラしましたが、無事に解放されて安心しました。男が篤を解放する間際に話した以下の言葉が印象的です。
「すべての人間は父親から認められたがっている」
引用:『Nの逸脱』本文(68ページ)より
篤は本当の父親のことを嫌っていますが、物語終盤ではオーナーの喜屋武が父親代わりの存在になっていることが分かります。喜屋武から一人前のペットショップ店員だと認められ、よく面倒をみてもらっていると分かるシーンにうまくつながっていますね。
『Nの逸脱』の続編はある?「占い師B」はシリーズ化の期待も
『Nの逸脱』はそれぞれ一話完結ものですが、どれもその後の展開や、ほかの話も読みたくなるものばかりです。特に最後に収録された「占い師B」は、作者の夏木志朋さん自身がインタビューの中でシリーズ化した場合の構想を語っています。
もしシリーズ化するなら、一話完結のバディものみたいにできたら楽しいかなと思います。
引用:夏木志朋さん「Nの逸脱」インタビュー デビュー作が15万部のヒット。新作も「人間を深く、面白く」|好書好日
人間観察能力に優れた坂東イリスは、探偵としても能力を発揮しそうなので、個人的に推理ものにもすごく合っている気がします。二人の関係性がどうなるか、またタッグを見てみたいものですね。
『Nの逸脱』を読んでみた感想
ここからは『Nの逸脱』を読んでみた感想を書いていきます。また読者のレビューも合わせてまとめました。
【筆者の感想】短い話の中に多様なテーマが集まっている
個人的には最初に収録された「場違いな客」が好きでした。勇気がありそうで、途中で怖気づいてしまう主人公の姿が愛らしく、またずっと緊張感があり、ハラハラしながら読み進めました。ラストはそうきたか、と驚きましたね。
短い作品ですが、家族の絆、若者の成長、動物愛護、犯罪心理など、さまざまなテーマが集約されていて、それでいてまとまっているのにも感心しました。
さて、本作は直木賞の候補作となっているので、現時点(2025年6月25日時点)での受賞予想も記しておきましょう。結論からいうと、本作の受賞はやや難しいのではないかと感じます。
直木賞というと、人間の内面にもっと踏み込んだ作品が評価されやすい傾向にあり、本作はその点においてやや不利な気がします。特に二作目の「スタンドプレイ」は、やや弱いかなと。
とはいえ、次にどんな展開がくるか分からない物語はおもしろく、読者を引き込むのは事実です。直木賞で評価が集まらなくても、今後本屋大賞などで注目されていくことになるかもしれません。
受賞予想:ー(なし)
【みんなの感想や評価】読後に不思議と心が軽くなる
『Nの逸脱』 2025年
ポプラ社 夏木志朋 276p#読了
3篇の中短編集。超変態ワールド村田沙耶香さんとは違う今村夏子さん似の雰囲気を感じました。血がドバドバ出る場面は皆無なのに読み進むごとにこの人狂ってる感が増していくのが堪らなくいいです。変態でない方には強いお酒が必須の一冊。酔う。 pic.twitter.com/Z7wwnB16Kq— ネコのヨーセー (@nekonoyosei) May 22, 2025
著者の小説は共感性羞恥に悶えたり、自分の甘えを見透かされたりと、始終張りつめていて最後まで息を継げない。
しかし読み終えた後に不思議と心が軽くなるのは、自分もまた抱える心の中の《逸脱》を主人公達が消化してくれたからかもしれない。
引用:Amazon
特にお気に入りなのが「占い師B」。秋津のような底抜けのお馬鹿キャラは単純に笑えるので好き。坂東も癖が強くて良いキャラをしていた。
引用:Amazon
55:Nの逸脱/夏木志朋 #読了
三編からなる短編集。二木先生でも思ったけどどれも爽やかなんて物とは真逆で完全に普通から逸脱した人達の話なのに何故か最後はみんな前を向いて歩いていくような姿が浮かぶ爽やかな読後感で今作も面白かった!「場違いな客」が一番好み。喜屋武さん良いよ。 pic.twitter.com/hStomVZKYw
— ゆ@読書垢 (@yunnbook) March 22, 2025
【Nの逸脱】夏木志朋
#読了
3話のオムニバス。
日常から逸脱したちょっとした犯罪行為。人間だから魔が差す事もあるし、それがどう転がるか分からない面白さ。
予想とは全然違う方向に転がる話にびっくりしたけど面白かった✨ラストもクスッとできて好き😂 pic.twitter.com/r0ocviPKiq— ちえざる@読書 (@araara2037103) June 2, 2025
まとめ:『Nの逸脱』は先の読めない展開が魅力の短編集だった
いかがでしたか?『Nの逸脱』の特徴を以下にまとめました。
・第173回直木賞候補作(受賞予想はー:なし)
・登場人物たちが逸脱していく様子がおもしろい
・続編やシリーズ化を期待したくなる
以上です。まだチェックしていない方は、ぜひ読んでみてください!
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