今回は「貝殻航路」(著:久栖博季)のあらすじや感想などを紹介します。タイトルの意味や、作品の魅力、ラストシーンのネタバレ考察(解説)、芥川賞受賞予想を含めたレビュー、読者の口コミ評価などもまとめました。
【第174回芥川賞候補作】久栖博季の小説「貝殻航路」とは
| 書名 | 貝殻航路 |
| 作者 | 久栖博季 |
| 初出 | 『文學界』2025年12月号 |
作者の久栖博季(くずひろき)さんは、北海道生まれの小説家です。2021年に「彫刻の感想」で第53回新潮新人賞を受賞して、作家デビュー。2024年には「ウミガメを砕く」で第37回三島由紀夫賞の候補に選出されました。
【お知らせ】
今月発売の「文學界」に新作小説「貝殻航路」が掲載されています。2年以上、ほとんど毎日この作品と向き合ってきました。
どうぞよろしくお願いします。
◆
「貝殻航路」
光の消えた灯台、あの日帰ってこなかった父――霧に滲む釧路の街で、わたしは痛みと空白の記憶を結ぶ— 久栖博季 (@kuzuhiroki) November 7, 2025
「貝殻航路」は、北方領土の貝殻島を望む、根室の街で育った「凪」が主人公。結婚を機に移り住んだ釧路で、貝殻島にある灯台や、かつてロシアに拿捕された父との記憶を時折思い出しながら送る日々を描いています。
※「貝殻航路」は以下に当てはまる人におすすめ!
・北方領土問題に興味がある人
・風景描写の優れた作品を読みたい人
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3分で分かる「貝殻航路」のあらすじ【※ネタバレなし※】
わたし(凪)は、結婚を機に釧路へと引っ越してきた。アイヌの血をひく夫のあめみやは、放浪癖があり、しばらく家を出ている。わたしはしばしば貝殻島の灯台のことを思い出す。北方領土にあるため、壊れても修理に行けない灯台だ。
それは時々思い描く空想の白い灯台とは似ても似つかない朽ちた灯台で、いつからかわたしは、父さんの墓標だと思うようになった。
引用:「貝殻航路」本文より
漁師をしていた父さんは、漁に出ていた時にロシアに拿捕されてしまった過去があり、それからロシアを異常に憎むようになり、やがて認知症を患った。
わたしはあめみやの妹の夕希音とドライブをするなどの日々を送るなかで、北海道の土地に感じる「空白」や、過去の記憶の「痛み」を思い出していく……。
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「貝殻航路」のネタバレ解説&考察まとめ
ここからは「貝殻航路」の魅力を深掘りするために、タイトルの意味、作品の魅力、ラストシーンのネタバレ考察などを行います。
タイトル「貝殻航路」の意味とは
タイトル前半部分の「貝殻」とは、貝殻島を指しているものと思われます。北方領土に属しており、陸から望めるもののたどり着けない場所です。貝殻島にある灯台が物語の象徴として描かれています。
また、後半部分の「航路」は、たどり着けなくなったことで、そこまでの道筋を想像するしかない、という気持ちが込められているのではないでしょうか。貝殻島の近海でロシアに拿捕されて父の記憶も絡み、社会情勢だけでは語られない複雑な物語を作り上げています。
「空白」について描いた静謐な記述が魅力
本作のなかには、いくつも「空白」として描かれる記述がみられます。広大な北海道における土地の余白のようなもの、北方領土として宙ぶらりんとなっている場所、父との過去の記憶など。想像する余地の大きな部分について、筆者は丁寧な筆致や巧みな比喩表現を用いて描いています。
そういった静謐な記述に注意しながらじっくり読んでみると、読後感が変わってくるのではないでしょうか。
ラストシーンのネタバレ考察(解説)
ここではラストシーンについて、考察(解説)した文章を書いていきます。ネタバレとなるので、結末が分かっても大丈夫な人だけ下記をクリックして読んでみてください。
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【ラストシーンまでの大まかなあらすじ】
父さんが亡くなり引き取りに行くも、わたし(凪)は遺骨をしばらく車の後部座席に置いたままでいた。根室に戻り、貝殻島の灯台を見に行くと、そこには夕希音がいた。貝殻島の灯台が修復されたと知り、見に来たのだという。
それから二人で、かつてわたしが住んでいた家の跡地を訪れる。また、海を眺める場面で物語は終わる。
海の上をこちらに向かってかすかな光が通った気がした。それは一本の航路を示しているように見えた。光の航跡を引いて一隻の船が戻ってくる。
(中略)
細くかすかな光をまぶたの裏側に浮かべて、あの船の航跡を探してみようか。
引用:「貝殻航路」本文より
【考察】
本作は、貝殻島の灯台が物語の象徴となっていて、父との記憶と重ね合わせて描かれています。終盤に朽ちた灯台が修復されたと明かされる場面は、凪と父との関係が一区切りついたことを意味しているともとれます。
それまでは「航路」は、過去から現在までの道筋をほのめかしていましたが、結末での「航路」に関する記述は、現在から未来までの道筋を示しているようでもあります。
「貝殻航路」を読んでみた感想
ここからは「貝殻航路」を読んでみた感想を書いていきます。また読者のレビューも合わせてまとめました。
【筆者の感想】優れた風景描写に感動
初めて読む作家でしたが、文章が非常に緻密で好感を持ちました。流れるような風景描写のなかに確かな記述が見えてきて、大人の文章を読んだと楽しめました。特に「空白」の描き方が秀逸で、夕希音と訪れる動物園の場面も印象に残りました。
北方領土問題について書いていますが、登場人物の心の塞ぎ具合とリンクさせることで、重苦しい現実を突きつけているととれます。こういった書き方も他にはないもので、独自の良さを感じました。
本作は第174回芥川賞の候補作に選出されているので、受賞予想もしてみましょう。これまで候補作4作品を読んできましたが、個人的には最も好きな作品で受賞してほしい気持ちが強いです。確かな風景描写や、主題の扱い方がうまく、一定の成功を収めていると思います。
ただ、昨今の芥川賞では、記述困難な世界への挑戦や専門的な分野での巧みな物語などが評価されやすく、文章のうまさだけだとあまり評価対象とならないのが、難しいところです。ただ、個人的な思い入れも込めて、本命予想としておきます。
受賞予想:◎(本命)
(全候補作を読み終えた段階でもう一度予想してみます)
【みんなの感想や評価】寂寥感溢れる中で僅かな温もりを感じる
続いて、読者がSNSに投稿した口コミレビューを紹介します。
「貝殻航路」久栖博季(『文學界』2025・12)
芥川賞候補作。道東の霧、還らない国土、人の気配のない町、夫の不在、父の記憶と寂寥感溢れるなかで、灯台の灯のように僅かな温もりが残る読後感だった。壊れやすい貝殻と、限りある命が遺した骨が重なって、自分の航路に思いが及ぶ。短いが按配良い作品。 pic.twitter.com/h6YTWgts0q— muuugi (@muuugi4) December 24, 2025
久栖博季さん『貝殻航路』を読みました。変に技巧に頼るでもなく、文章そのものの力ですーっと吸い込まれるような物語でした。人の心の拠り所になるような、人生の錨になってくれるような灯台のような場所、それがどんなもので、誰のものであれ、誰にでも必要だと思いました。#芥川賞 #久栖博季 pic.twitter.com/CU7RdYcXHZ
— あやか『ゆずのネコ耳ブンガク日和』 (@HkSYI9Ndq032427) December 24, 2025
貝殻航路 久栖博季 #読了
芥川賞候補作。漁師だった父さん。北方領土の貝殻島の灯台は明るかった…。そんな父さんは特別養護老人ホームに入所し、生涯を終えた。わたし(凪)は夕希音の車に乗り込み、壊れたナビの代わりにグーグルマップを使って…。ロードムービー…。結びに希望を見出すはずだ。 pic.twitter.com/p4Y9lFiB52
— JADE@読書垢 (@sakurasaku3113) December 20, 2025
「貝殻航路」久栖博季 文學界12月号
読了。いい作品だ。語り手の女性(凪さん)の情緒がすごく伝わってきた。読んでいてP29あたりでは泣けてきたよ。読み手は、語り手の内面と共にラストまで併走できました。「銀色の涙」とクルマを表現しているように、若干センチメンタルな世界観ではあった。… pic.twitter.com/EG1nyvno8D— 落合伴美→ばんび(山本) (@hazakurano) December 17, 2025
まとめ:「貝殻航路」は貝殻島の灯台が物語の象徴となっている小説だった
いかがでしたか?「貝殻航路」の特徴を以下にまとめました。
・第174回芥川賞候補作(受賞予想は◎:本命)
・北方領土の問題を、家族間の心の問題とリンクさせて描く
・「空白」の描き方を含め、風景描写が秀逸
以上です。まだチェックしていない方は、ぜひ読んでみてください!
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