3分で分かる『我が手の太陽』のあらすじ&ネタバレ解説・感想まとめ【第169回芥川賞候補作】

第169回芥川賞候補作に選出された「我が手の太陽」(著:石田夏穂)。今回は本作のあらすじや感想を紹介した後で、作品の魅力、タイトルの意味、ラストシーンのネタバレ考察などを行います。新しいお仕事小説としても楽しめる本作、ぜひチェックしてみてください。

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【第169回芥川賞候補作】石田夏穂の小説「我が手の太陽」とは

書名 我が手の太陽
作者 石田夏穂
出版社 講談社
発売日 2023年7月13日
ページ数 144ページ
初出 『群像』5月号

「我が手の太陽」の主人公はベテラン溶接工の伊東。それまでエース級の活躍をしてきたが、突然スランプに陥ってしまい、高い自尊心の一方、衰え行く能力とのギャップに苦悩する職人の姿を克明に描いています。

石田夏穂さんは1991年生まれの女性作家。第45回すばる文学賞で佳作となった「我が友、スミス」は第166回芥川賞の候補に選出されました。そして今作「我が手の太陽」では、2度目の芥川賞候補作品となっています。

※「我が手の太陽」は以下に当てはまる人におすすめ!
・溶接工などの工事現場の仕事に興味がある人
・スランプに陥った経験がある人
・第169回芥川賞の候補となった話題作をチェックしたい人

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3分で分かる「我が手の太陽」のあらすじ【※ネタバレなし※】

事務所の別室に呼び出された伊東は、直近の欠陥率を示され、「最近、調子わるかった?」と気遣われる。勤め先のカワダ工業で溶接工のエースとして活躍してきたはずだが、伊東は自分にミスが増えてきたことを認められないでいた。

ビルの解体現場でのガス溶接の仕事なんて、本来の自分の役回りではないはずだ。恥ずべきことだと思っている伊東は、同僚に今の現場をバレたくないと思い、誤魔化そうとする。現場にいるのを通行人からみられている気がするのも、嫌な気分になるのだ。

そして、伊東をさらに不安にさせる出来事が起こる。検査員から先日行った溶接が不合格(フェール)だったと言われたのだ。

ベテラン溶接工の伊東に訪れたスランプ。プライドが高い伊東は、自分が今まで下に見ていた工事現場の仕事をどうやって続けていくのか。さらに伊東の身に起こった出来事が、彼の傲慢な自尊心をさらに高めていく……。

「我が手の太陽」のネタバレ解説&考察まとめ

ここからは「我が手の太陽」の魅力を深掘りするために、タイトルの意味、作品の魅力、ラストシーンのネタバレ考察などを行います。

溶接工の仕事の難しさがよく分かる

「我が手の太陽」は一種のお仕事小説として楽しめます。「ジョブチューン」というテレビ番組がありますが、それを見ているような感覚です。たとえば、主人公の伊東がなぜ溶接工になろうと思ったのかは、冒頭に描かれる幼少時代の思い出で伝わります。

溶接の火をライトセーバーにたとえるのが、意外と的を得ていること。火は「火らしい」ほどに、実は安全だといえること。など、その仕事に深くなじんでいるからこそ、伝わる表現があり、読者は新鮮な驚きを味わえるでしょう。

少し気になるのが、専門用語が多くて読みづらい点があるかもしれません。それでも一旦気にせず読み進めると、この言葉はこういう作業かな、この道具はこういう道具かなとある程度推測できるので、つまづかずに最後まで読み切ってみるとおおよその話の流れはつかめると思います。

タイトル「我が手の太陽」の意味とは

タイトルの「我が手の太陽」にはどのような意味があるのでしょうか。いろんな捉え方ができると思いますが、この太陽は溶接工が扱う火を例えているものだといえるでしょう。溶接工が扱う火はとても熱く、太陽を持っているかのようにイメージさせられます。

さらに「手の中の太陽」とはいわずに、「我が手の太陽」と、「我が」と強調している点が、ベテラン溶接工の自負を表しているともいえます。プライドの高さがテーマになっている小説なので、主題をよく言い表した優れたタイトルだと感じます。

また、タイトルを象徴するような場面がラストで描かれています。この点についての記述はネタバレを含むので、次の章で詳しくふれていきましょう。

ラストシーンをネタバレ考察

自尊心が強い伊東はどのようになっていくのでしょうか。ラストシーンの内容をふまえて、考察していきます。ネタバレとなるので、一度作品を読んだ人だけ以下をクリックしてみてください。

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伊東は現場でホースの配線を再確認するのを怠ったため、逆火といわれる初歩的なミスを犯してしまいます。高温の火が襲い、手に火傷を負った伊東だが、自分のミスを知られるのが嫌で、さらに現場で労災隠しがバレないように、所長と相談して、無かったことにするのです。

最後の現場の場面で、以前伊東にミスを指摘した検査員を発見します。ちなみに、この検査員は実在する人物ではなく、伊東が妄想で出現させている(もしくは実在はしているが、喋っている内容は一部が伊東の妄想である)存在ではないかと思われます。その理由は以下の通りです。

・以前ミスを指摘されたが、実際はミスしていなかった(ただし、その後に本当にミスを犯してしまう)
・その検査員を誰も見かけていなかった
・ラストシーンでは検査員が放つ言葉に「」が付いていない(ただし「汚い手で触るな」という言葉にだけは「」が付いているので、実在はしているが、勝手に妄想で喋らせているだけという見方もできる)

検査員を目の当たりにした伊東は、溶接棒を落としてしまいます。さらにこんな言葉をかけられるのです。

お前は傲慢なんだよ。自分をすごいと思うのは人の自由だが、どんな作業も馬鹿にしてはならない。そうだろ。お前は自分の仕事を馬鹿にされるのを嫌う。お前自身が、誰より馬鹿にしているというのに。
引用:「我が手の太陽」本文より

伊東には図星だったのでしょう。この言葉は溶接工に限らず、どの職場にも当てはまることかもしれません。仕事を長年続けてきた自負と、能力の衰えを認めたくない虚勢がせめぎあう心情表現に、とてもリアリティーがあると感じました。

「我が手の太陽」を読んでみた感想

ここからは「我が手の太陽」を読んでみた感想を書いていきます。芥川賞の受賞予想も合わせて行います。また読者のレビューも合わせてまとめました。

【筆者の感想】東工大出身の作家ならではの専門的な表現

溶接工の現場に関してすごく詳しいなと思って、作家プロフィールを調べてみたら、石田夏穂さんは東京工業大学を卒業されていたのですね。かなり専門的な知識が豊富に出てくるのも納得しました。

石田さんのデビュー作「我が友、スミス」は、ボディ・ビルダーについて深掘りしていましたが、この作家は一つの職業にスポットを当てて話を広げるのがうまいと感じます。取材力や探求心が素晴らしいのでしょうね。

さて、本作「我が手の太陽」は第169回芥川賞に選出されていますが、この記事を書いているのは受賞作発表前なので、予想もしておきます。

男性が自尊心と能力の衰えの狭間で苦悩する姿や、その仕事ならではの特徴をうまく記述している点、秀逸なタイトルは高く評価されそうです。また、検査員に不気味な存在感があり、その点を気に入る選考委員もいそうな感じがします。

マイナスなところでいうと、専門用語や専門的な表現が補足されずに出てくる箇所がいくつかあり、そのあたりで読みにくさを感じてしまう点でしょうか。

前回候補となった「我が友、スミス」と比較すると、軽やかなユーモアを含んでいたのと比べると、今回はそういった楽しさは薄れていますが、文学的な完成度は今回の方が高いと感じます。選考委員によって好みが分かれそうです。

最終的な予想としては、千葉雅也さんの「エレクトリック」が本命だと思うので、この作品を受賞作予想の対抗としておきます。

【みんなの感想や評価】心の葛藤に共感した

続いて読者がSNSに投稿したレビューをいくつか紹介しましょう。

まとめ:「我が手の太陽」は傲慢な自尊心の描き方が秀逸なお仕事小説だった

いかがでしたか?「我が手の太陽」の特徴を以下にまとめました。

・第169回芥川賞候補作
・ベテラン溶接工の傲慢な自尊心の描き方がうまい
・溶接の仕事の難しいところや特徴的な部分の表現が見事

以上です。まだチェックしていない方は、ぜひ読んでみてください!

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