3分で分かる「家庭用安心坑夫」(小砂川チト)のあらすじ&ネタバレ解説・感想まとめ【第167回芥川賞候補作】

「家庭用安心坑夫」は現実と妄想が入り混じる作品!今回はこの小説のあらすじを紹介した上で、作品の主張やタイトルの意味などをネタバレ解説します。さらに筆者の感想や読者の評価をまとめた後に、芥川賞が受賞できるかどうかの予想も書いていますので、最後までぜひ読んでみてください。

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小砂川チトの小説「家庭用安心坑夫」とは

書名 家庭用安心坑夫
作者 小砂川チト(コサガワチト)
出版社 講談社
発売日 2022年7月11日
ページ数 128ページ

今回紹介する「家庭用安心坑夫」は、第65回群像新人文学賞の受賞作。選考委員の町田康さんからは「絶望的成長小説」と称されるなど、高い評価を受けました。さらにデビュー作品でありながら第167回芥川賞の候補作にも選出されました。

「家庭用安心坑夫」は、東京で暮らす女性・小波が、父とおぼしき人物(その実体は坑夫を模したマネキン人形!)に会いに行く話。現実の中に小波の妄想が入り込む物語で、人間の根源的恐怖を追求した作品となっています。

※「家庭用安心坑夫」は以下に当てはまる人におすすめ!
・不思議な味わいの純文学作品を読みたい人
・日常に潜むホラー的恐怖を感じたい人
・芥川賞候補作となった話題の本をチェックしたい人

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3分で分かる「家庭用安心坑夫」のあらすじ【※ネタバレなし※】

日本橋三越の柱に、秋田の実家に貼ったけろけろけろっぴーのシールを発見したひとりの女性。デパートのアナウンスで呼び出しを受けたその女性・藤田小波は、その場から逃げ出す。彼女の後をつけるように時折姿を現すのは、小波の父とおぼしき人・尾去沢ツトムだった。

尾去沢ツトムは、秋田の実家近くにあった廃鉱山を転用したテーマパークにある、坑夫を模したマネキン人形のうちの一体だ。藤田小波は幼い頃に母から、そのマネキン人形が父親だと言われて育った。

渋谷のスクランブル交差点、モデルルームの寝室ゾーン、リビングゾーン、キッチンゾーン…。度々自分の前に現れるツトムを冷たくあしらった小波は、そのことを後悔する。そして小波は決意する。夫に内緒でツトムに会いに行くことを…。

「家庭用安心坑夫」のネタバレ解説&考察まとめ

「家庭用安心坑夫」は現実の中に妄想が入り込んだ小説で、一読して作者の主張がわかりづらいと感じた人もいたでしょう。そこでここでは主題を考察すると共に、筆者が気づいたこの作品の魅力を解説します。

一部ネタバレとなりそうな箇所は隠していますので、一読された方だけチェックしてみてください。

「家庭用安心坑夫」のタイトルの意味とは

まずは「家庭用安心坑夫」というタイトルの意味から考えていきましょう。作品を読めばすぐに分かりますが、この坑夫というのは作中の「尾去沢ツトム」を指しています。藤田小波にとって、父とおぼしき人である存在です。

尾去沢ツトムはマネキン人形のうちの一体なのですが、まるで生身の人間のように現れます。東京のモデルルームでは生活臭を伴った人間のように描かれており、読者は小波のフィルターを通して彼がいじらしい存在だと思えてきます。

まさしく家庭における安心できる存在として、ツトムは描かれています。しかしなぜその必要があるのでしょうか?筆者は作品を読み進めていく内に、作者が用意したあるメッセージに気づきます。次の章で詳しく述べていきましょう。

「家庭用安心坑夫」のラストから作品の主題を読み解く

「家庭用安心坑夫」の主題を読み解く上で、まずは詳しいあらすじについておさらいしておきましょう。とりわけ結末部分を中心にまずはまとめました。ネタバレとなるので、大丈夫な方だけ以下をクリックして読んでください。

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夫に内緒でツトムに会いに行った小波には、ある目論みがありました。それは別のマネキン人形と交換して、ツトムを家に持ち帰ること。交換する際にてんやわんやしながらも、無事に持ち出すことに成功します。

家に帰り、ツトムと鍋を囲んで団らんする小波。しかししばらくして、小波はツトムのことを不気味に思い始めます。そして翌日、小波はツトムを実家に置き去りにするのです。

小波はたぶんずっと、潜在的に、これを望んでいたのだと思っていた、
(中略)
自分が父にされたのとおなじように、ツトムをあの家に置き去りにしてやらねばならなかったのだ。
引用:「家庭用安心坑夫」本文より

ラストの場面では東京の家に帰ろうとした際、小波が夫の顔を思い出せなくなります。小波は父を置き去りにした報いでそうなったのだと悟ったところで、物語は終わります。

最後はなぜそうなったのか、いろんな捉え方ができる作品です。読者がどう捉えるかは自由ですが、ここではあくまで一つの参考として、筆者が感じた点を述べます。

作者はあらゆる人物をトレースされる存在として描いています。

・尾去沢ツトム:様々な坑夫を模したマネキン人形のうちの一体
→小波は他のマネキンと交換して、ツトムを持ち帰ろうとする

・尾去沢ツトム:小波の父とおぼしき人
→他の人からもお供えしており、別の母子との家庭を持っていたとも妄想される

・小波自身:東京から秋田の実家へと戻ってきた
→実家でうずくまっているところを小波自身が目撃する

・小波の夫:ラストでは小波が夫の顔を思い出せなくなる
→思い出そうとすると、ツトムの同僚の人形の顔ばかり浮かんでくる

つまり作中で描かれる人物は誰ひとり確かな存在ではなく、他の誰かに成り代わる存在として描かれているのです。作者は家族という一つの確かなものを再構成しようと思い、この小説を書いたのではないでしょうか?

最後に、物語の中の一節を抜粋します。ここに作者の主張が強く表れている気がしました。

小波は、いまこの景色というのがまるで自分に属するものだとは思えず、見知らぬ誰かの人生を借りてきたものであるような気がした。見覚えのない景色、馴染みのない匂い、なにもかもが自分の人生のなかの記憶ではないような気がして、誰かと人生を取り違えてしまったような気がして、だからなぜいまこのようなところにいるのか、まったく分からなかった。
引用:「家庭用安心坑夫」本文より

「家庭用安心坑夫」の魅力はユーモラスな擬音語・擬態語と独特の色彩感覚

「家庭用安心坑夫」の魅力の一つは、ユーモラスな擬音語・擬態語にあります。この点は群像新人文学賞の選考委員の柴崎友香さんも指摘していました。一部紹介しましょう。

・セロセロといやな音を立てていた
・だんぎだんぎと一段飛ばしで駆け上がっていく
・ドツドツと拍動する胸
・じん、じん、じん、という足音

他ではあまりみたことのない表現ですね。しかし不思議な趣のあるこの小説の中では、しっかりと馴染んでいる気がします。

また独特の色彩感覚も、本書の魅力だと感じました。

・まがまがしい色合いの瑞雲
・燃え盛る炎の色合いの絵
・水色のソフトクリーム
・水色ときみどり色のあいだの作業服
・靴下はクリスマスめいた赤色
・円形プール内部の水はミルクがかかったエメラルドのみず色

など、風景描写において、極彩色の表現となっている箇所が多いことに気づきます。本書は登場人物の妄想が入り込んだ小説ですが、その中でも鮮やかな色合いをまとった日常のおどろおどろしさのようなものが感じられます。

「家庭用安心坑夫」を読んでみた感想

ここからは「家庭用安心坑夫」の感想をまとめました。まずは筆者の感想を書き、次に読者の評価やレビューを紹介します。

【筆者の感想】敢えて第三人称で歪んだ妄想を入り込ませる挑戦が凄い!

「家庭用安心坑夫」は第三人称で書かれた小説ですが、物語の序盤で登場人物の姿が明らかにされていくように描かれている点など、とてもうまいなぁと感じました。

日本橋三越でけろけろけろっぴーのシールを見つけた女性は名前を明かされずに、一人の匿名の女性として現れます。そこからデパートのアナウンスで、フジタサナミという人物名が明らかにされます。

さらに最初の章では、デパートで働く人物によってサナミの印象が語られるのですが、その表現は三者三様です。曖昧なまま人物像のまま表現され、読者はこの藤田小波が信用できない人物だと思われることになります。

このような表現や構成がとても巧みだと感じました。作者の小砂川チトさんは今回文芸誌の新人賞でデビューした人物ですが、新人離れした実力を持った作家だと感心させられました。

ちなみに第三人称で書いている点については、群像新人文学賞の選考委員である古川日出男さんは強く否定しており、一人称で語るべきだったと述べています。ただ私は個人的には敢えて三人称を使うことで、作品の世界をより幅広くしているのではないかと感じた次第です。

【みんなの感想や評価】不穏な空気の世界観に引き込まれた!

続いて読者の感想や評価をまとめました。

どんどん引き込まれていきますね!

まだ未読の方は「肉の乗り物」という表現がどこで登場するか、楽しみにして読んでみてください。

現実か虚構か敢えて分からないようにして書いている点が、優れています。

小波の言動は一見めちゃくちゃなようでいて、実は理にかなっているのかもと思えてしまうところに感心させられます。

「家庭用安心坑夫」は芥川賞を受賞できる?ズバリ大予想!

「家庭用安心坑夫」は第167回芥川賞の候補作に選ばれていますが、この記事を書いている現時点ではまだ受賞作の発表は行われていません。そこでここでは、本作が芥川賞を受賞できるかどうか予想してみます。

今回の芥川賞の受賞大本命は、年森瑛さんの「N/A」です。圧倒的な作品で受賞は間違いないと思います。問題は二作同時受賞の作品が出るかどうか。出るとすれば第一候補となるのが、「家庭用安心坑夫」ではないでしょうか。

一読して主題が分かりづらい作品ではありますが、作品としての魅力は深く、読み応えがあります。筆者の感想でも述べたとおり、第三人称の書き方、作品の導入の仕方が素晴らしく、独特の擬音語・擬態語の表現や、鮮やかな色彩感覚を表現している点なども高評価です。

最近では第158回芥川賞の選考会において、若竹千佐子さん「おらおらでひとりいぐも」と石井遊佳さん「百年泥」の二作がどちらも文芸誌の新人賞受賞作でありながら、芥川賞を受賞した経歴があります。今回も同様に新人賞受賞作品が同時受賞となる可能性は十分高いと言えます。

受賞予想:◯(対抗)

第167回芥川賞を予想した記事を読んでみる

まとめ:「家庭用安心坑夫」は現実と妄想が入り混じる恐ろしい作品だった

いかがでしたか?「家庭用安心坑夫」の特徴を以下にまとめました。

・現実に妄想が入り混じるホラー要素のある小説
・独特の擬音語・擬態語の表現や、鮮やかな色彩感覚が素晴らしい
・第167回芥川賞の候補作(受賞予想は◯:対抗)

以上です。まだチェックしていない方は、ぜひ読んでみてください!

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