第168回芥川賞の候補作「開墾地」(著:グレゴリー・ケズナジャット)。今回はこの小説のあらすじと感想をまとめました。また作品を深掘りするために、タイトルの意味、本作が実話なのか?ラストシーンのネタバレ考察などを、解説します。
グレゴリー・ケズナジャットの小説「開墾地」とは
書名 | 開墾地 |
作者 | グレゴリー・ケズナジャット |
出版社 | 講談社 |
発売日 | 2023年1月26日 |
ページ数 | 96ページ |
作者のグレゴリー・ケズナジャットさんは、アメリカ出身の作家。高校時代に日本語に興味を持ち、大学卒業後に英語指導助手として日本へ。その後、10年間を京都で過ごし、2021年に発表した『鴨川ランナー』で第2回京都文学賞を受賞しました。
「開墾地」は、日本に留学したアメリカ国籍の学生が主人公。血の繋がっていない父はイランを出てアメリカで育ち、自身は英語と日本語の隙で、故郷がどこなのか、自分はこれからどうすべきかを思案する話です。
※「開墾地」は以下に当てはまる人におすすめ!
・故郷について深く考えたいと考えている人
・古川真人さんの『背高泡立草』が好きな人
・芥川賞候補となった話題作をチェックしたい人
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3分で分かる「開墾地」のあらすじ【※ネタバレなし※】
日本文学科を卒業、修了し、博士論文を提出したラッセルは、サウスカロライナに一時帰郷していた。指導教員から「修了後は故郷へ帰るか」と問われたラッセルはその場で結論を出せず、回答を保留にしている。
血の繋がっていないラッセルの父は、イランを出てアメリカへと渡ってきた。ラッセルはペルシャ語の歌を聞きながら、父の半生を想う。そして、母語と日本語の隙にいると感じる、アメリカ国籍の自分の故郷は、果たしてどこなのだろうか…。
「開墾地」のネタバレ解説&考察まとめ
ここからは「開墾地」の魅力を深く知るために、作品のテーマ、類似する作品との関連性
などを考察します。芥川賞候補作となっているので、受賞の可能性があるかどうかについても言及してみましょう。
「開墾地」は作者の実話?
作者のグレゴリー・ケズナジャットさんの出身は、サウスカロライナ。そして父親はイラン出身。10年にわたる日本での留学生活を経ています。ここまで書くと、本作の主人公のプロフィールと共通していることは一目瞭然。つまり、本作は作者の経歴が反映された小説なのです。
ちなみに、第2回京都文学賞を受賞した『鴨川ランナー』も実話をもとにした小説でした。作者の特殊な経歴が作品に生かされているのですね。
そう考えると、第168回芥川賞の候補作となった作品は、井戸川射子さんの作品を除き、ほぼ全てが作者自身の経歴が反映されたものばかり。作者のプロフィールと照らし合わせながら楽しむと、より作品の魅力が伝わってくることでしょう。
芥川賞受賞作「背高泡立草」と対比するとおもしろい
「開墾地」では敷地内の葛を焼き払うシーンが描かれています。葛は自身のアイデンティティーを取り囲むようにして育つ障壁のような効果を持っているのですが、こういった描写はある作品を彷彿とさせます。
それが古川真人さんの著作『背高泡立草』です。『背高泡立草』も、主人公が故郷へ帰った際に生家の周囲に育つ植物があり、それを刈り取るシーンが描かれていました。このあたりの共通点を退避させながら、読むとまたおもしろいでしょう。
『背高泡立草』は第162回芥川賞を受賞した作品です。となると、今回の芥川賞選考会では当時の選考委員もまだ多く残っており、作品を引き合いに評価する方が出てきそうだと感じます。選考会では不利に働いてしまいそうです。
「開墾地」を読んでみた感想
ここからは「開墾地」を筆者が読んだ感想、及び読者のレビューのまとめを行います。
【筆者の感想】単純に文章がうまい
第一に感心したのは、文章が上手ということです。作者は高校時代に日本語と出会ったらしいですが、そこからここまで上達するものなのでしょうか。やはり日本語に相当な関心があり、さらに並々ならぬ努力があったことでしょう。
作品の内容にかんしては、主人公の故郷について思案する心情が登場人物の言動や風景描写によく表れていると感じました。葛が日本語だと知ったことへの衝撃を伝えているのがリアルでした。たまにそういう発見ってありますよね。
作者はこれまで自身の経歴を活かした作品を発表しているようですが、次作はどういったものになるのでしょうか。次作も楽しみです。
【みんなの感想や評価】故郷とは何か考えさせられた
『開墾地』グレゴリー・ケズナジャット
母語、あるいは言語のもつ不条理な支配力から逃れるには、生まれ育った土地から離れ、言語と言語の狭間で生きるしかない。
葛は土地と向き合うこと、事実に向き合うことの象徴として描かれているのかと思う。
故郷とはなんだろう?と考える。#読了 #開墾地 pic.twitter.com/lNsxtzaHQo— 西高東低 (@_____pooq_____) January 10, 2023
#読了
グレゴリー・ケズナジャット「開墾地」
群像 2022年11月号第168回芥川賞候補作品
留学先の日本から、アメリカ南部の実家に帰省した主人公。家と庭の手入れに熱心なイラン出身の養父
母国と外国。違う言語、文化が重なりずれる。どちらでもない自分が生きていく場所
いい作品で面白かった pic.twitter.com/TtubFmgnXg— かまぼこ@読書 (@IbqQm) December 17, 2022
グレゴリー・ケズナジャット「開墾地」#読了
日本に留学中のラッセルは父のいるアメリカのサウスカロライナに帰郷。父は元々イラン生まれでギリシャ語を母語として話していた。
今の自分に重ねながら葛に覆われる家と庭を眺めつつ「故郷とは何か」を考える。アメリカ版『背高泡立草』って感じがした。 pic.twitter.com/84GXB0jn5D— つかっちゃん読書垢@純文学ユーチューバー (@book_tsukatsu) December 30, 2022
群像 グレゴリー・ケズナジャット 開墾地 #読了
あんまハマらなかった。ルーツ+サーガ。アメリカ版背高泡立草。「食い違っているのはむしろ行間にある何か」 pic.twitter.com/ZDa63Xvhqp— RNオンリー・イエスタデイ (@onlyyest) October 26, 2022
#読了
『開墾地』日本に住むラッセルは、実家のサウスカロライナに帰省する。父はイランの出で、ペルシャ語の音楽を聴くのが日課。ラッセルは母語の英語を檻のように感じ、苦しくなる。
私は言葉=日本語しかないので、考えたこともない視点だらけで興味深く、面白かった。故郷って何だろうね。 pic.twitter.com/KNNj3f15Uj
— えび (@amama_ebi) January 15, 2023
まとめ:「開墾地」は故郷とは何かを問う快作だった
いかがでしたか?「開墾地」の特徴を以下にまとめました。
・第168回芥川賞候補作
・作者自身の経歴が色濃く反映された作品
・故郷とは何かを問う小説
以上です。まだチェックしていない方は、ぜひ読んでみてください!
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