普段本を読まない人にもおすすめしやすい『#真相をお話しします』(著:結城真一郎)。今回はこの小説のあらすじと感想を紹介し、各ミステリー短編の解説も行います(ネタバレ部分は隠しています)。2023年の本屋大賞にも選ばれた本作。ぜひチェックしてみてください。
結城真一郎の小説『#真相をお話しします』とは
書名 | #真相をお話しします |
作者 | 結城真一郎 |
出版社 | 新潮社 |
発売日 | 2022年6月30日 |
ページ数 | 224ページ |
『#真相をお話しします』は、5篇の短編からなるミステリー小説。YouTuberになりたい小学生4人組(「#拡散希望」)や、パパ活している娘を気にしつつもマッチングアプリで女性と会う父親(「ヤリモク」)など、現代的なトレンドをテーマに扱った短編集です。
どれも読みやすく、普段あまり本を読まない人にもおすすめできる小説。伏線部分が分かりやすくある程度トリックが想像できそうですが、そこからさらに読者を騙そうとする仕掛けがおもしろく、発売当初から話題になっています。
※『#真相をお話しします』は以下に当てはまる人におすすめ!
・普段あまり本を読まない人
・自分でも推理をしながらミステリーを楽しみたい人
・YouTuberやマッチングアプリなどの現代的なテーマが扱われた作品を読みたい人
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3分で分かる『#真相をお話しします』のあらすじと主な登場人物まとめ【※ネタバレなし※】
『#真相をお話しします』は、5つの独立した短編からなるミステリー小説です。それぞれの短編について、ネタバレしない程度にあらすじと主な登場人物を紹介しましょう。
惨者面談
【主な登場人物】
僕=片桐(かたぎり):「家庭教師のアットホーム」の営業担当。大学生。
宮園(みやぞの):「家庭教師のアットホーム」の社長。
矢野慎一:片桐の訪問先の家主。現在は海外赴任中。
矢野真理:慎一の妻。面談で、片桐を迎え入れる。
矢野悠:慎一と真理の息子。小学6年生。
【あらすじ】
「家庭教師のアットホーム」の営業担当である僕は、新しい営業先を訪問した。宮園さんから送られた詳細によると、子どもの名前は「矢野悠」。約束の時間に到着したが、20分ほど待たされるし、親子の様子もどこか変だ。この家で何が起こっているのか…。
ヤリモク
【主な登場人物】
僕:42歳。妻子持ち。マッチングアプリで会った子をよくお持ち帰りしている。
マナ:僕がマッチングアプリでアポをとり、お持ち帰りしようとしている相手。
美雪:僕の娘。今年で大学三年生。パパ活をしている。
奈々子:僕の妻。パパ活をしている娘を心配している。
【あらすじ】
僕は娘がパパ活をしているのを心配しつつも、マッチングアプリで娘と似た子とばかり会って、よくお持ち帰りしている。今回会っているマナも、うまく事が運んでお持ち帰りできそうだ。「ヤリモク」でアプリを漁る僕の本当の目的は…。
パンドラ
【主な登場人物】
僕=翼(つばさ):以前、不妊で苦しんだ経験から、精子提供を始めた。
香織(かおり):僕の妻。以前は不妊で悩んでいた。
真夏(まなつ):僕の娘。高校2年生。快活な性格。
宝蔵寺雄輔(ほうぞうじゆうすけ):連続幼女誘拐殺人事件の逮捕者。
美子(よしこ):僕が精子提供をした女性。
翔子(しょうこ):僕が精子提供して生まれた子。現在14歳。
【あらすじ】
僕ら夫婦は以前不妊で悩んでいたが、娘の真夏が生まれて今はもう高校2年生になった。僕らは同じような悩みを持つ人の役に立ちたいと、精子提供をしていた時期があった。ある日、僕が精子提供して生まれた「正真正銘の我が子」である翔子から突然連絡が来て…。
三角奸計
【主な登場人物】
僕=桐山(きりやま):大学の腐れ縁2人とリモート飲み会をすることになった。
茂木(もぎ):大学の腐れ縁。外資系不動産ファンドの営業マン。
宇治原(うじはら):大学時代の腐れ縁。リモート会議で突然、殺意を表明した。
ミナミ:僕がマッチングアプリで知り合った女性。
有村ほの香(ありむらほのか):宇治原の婚約者。
【あらすじ】
僕は大学時代の腐れ縁2人とリモート飲み会をしていた。和やかなムードで進行していた飲み会だが、あることをきっかけに突然、宇治原が僕宛の個人チャットで<いまからあいつを殺しに行く>と送ってきた。宇治原の婚約者の存在が関係しているようだが…。
#拡散希望
【主な登場人物】
僕=渡辺珠穆朗瑪(わたなべちょもらんま):島に移り住んできた小学六年生。
立花凛子(たちばなりんこ):島生まれ島育ちの同級生。YouTuberになりたい。
桑島砂鉄(くわじまさてつ):島に移り住んできた同級生。
安西口紅(あんざいるーじゅ):通称、ルー。島に移り住んできた同級生。
田所(たどころ):殺人事件の犯人。逮捕当日、僕が会った男性と似ている。
【あらすじ】
島に移り住んできた小学生3人組と、もともと島生まれ島育ちの立花凛子の4人で僕らはYouTuberになろうと決めた。しかし、ある事件が起きてからなぜか島の人たちの態度がよそよそしい。3年後、僕はYouTube生配信で、ある真相を話し出す…。
『#真相をお話しします』のネタバレ解説&考察まとめ
ここからは『#真相をお話しします』の各ミステリーを考察した内容を記していきます。伏線回収部分などをまとめていますが、ネタバレとなってしまうので、一度作品を読んだ方で「物語の内容を復習したい」「あの伏線の意味を知りたい」「ラストをどう捉えたらいいか考察したい」という方だけチェックしてみてください。
「惨者面談」の真相をお話しします【※ネタバレあり※】
ネタバレしていいからラストや伏線の考察を詳しく知りたい方はこちらをクリック!
【物語の真相】
僕が訪問した矢野家では、既に矢野真理は殺されていた。犯人の桂田恵子が母親のふりをして、僕と接していたのだった。また息子の矢野遥と思われる人物も実は別人で、当日空き巣に入っていた子どもだった。
【主な伏線】
・新規アポなのに「今日が初めて?」と聞かれた
→初対面なら別人でも騙し通せると思った犯人の目論見(もくろみ)だった
・20分以上玄関の前で待たされた
→犯行の後処理をしている時間だった
・親子は営業担当の学歴や息子の学力などにあまり興味がないようだった
→家庭教師に興味がない=別人であることの伏線だった
・模擬学習で、矢野悠が出す答えに「110」が含まれていた
→警察に通報してほしいというメッセージだった
など。
【考察】
母親のよそよそしい反応などから、母親が別人だと見抜いた読者は多かったのではないでしょうか。しかし、子どもまで別人だと思った人は少ないはず。そこまで見抜いた読者は鋭いですねぇ。
「ヤリモク」の真相をお話しします【※ネタバレあり※】
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【物語の真相】
僕がマッチングアプリで自分の娘とよく似た女性と会うのは、性行為を意味する「ヤル」が目的ではなく、殺人を意味する「殺る」が目的だった。注意喚起して娘にパパ活を辞めてほしいという意図があったのだ。しかし、部屋には娘が無くしたはずのピアスが落ちており、マナと娘は同じグループの一味だったと分かる。
【主な伏線】
・僕がマナに明かした、お持ち帰りした回数と、連続殺人事件の被害者の数が一致していた
→僕はお持ち帰りして、その場で女性を殺していた
・娘はピアスを無くしていた
→マナを殺した後にピアスが見つかった
など。
【考察】
マナは最初から美人局(つつもたせ)目的で、僕に近づいたことが分かりますが、これはこの物語に限らず、都合よく行き過ぎたら男性陣は気をつけないといけないですね(笑)。マナが実の娘の美雪と同じグループの一味だったというオチで、娘を守るつもりが、結果的に娘に裏切られたという結末も見事でした。
※読後すぐは、娘=マナかと思っており、コメントでたくさんの指摘を受けました。コメントした方々、ありがとうございました。
「パンドラ」の真相をお話しします【※ネタバレあり※】
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【物語の真相】
美子は連続幼女誘拐殺人事件の宝蔵寺雄輔と関係を持っていて、もし妊娠していたら殺人犯の子と思われるのを避けるために、カモフラージュするために宝蔵寺とよく似た僕から精子提供を受けていた。また僕の精子提供に理解を示した妻も、実は精子提供をされていたのかもしれない。
【主な伏線】
・僕と宝蔵寺雄輔がよく似ていた
→美子が産む子が僕の産む子だと勘違いさせられるため
・美子が精子提供を受け入れるのがあまりにスムーズだった
→宝蔵寺との子だと思われぬように、一刻も早く妊娠の事実を作りたかったから
・僕の精子提供に妻が簡単に理解を示した
→妻自身も精子提供をされていたから躊躇がなかったのかもしれない
・テレビの血液型占い
→僕の血液型が違うと、娘の血液型に矛盾が生じる
など
【考察】
血液型占いが出た時に、この親子は血が繋がってないのかなとうっすらは想像できましたが、それがどうやって発覚するかまでは分からなかった人も多いでしょう。真実を敢えて探ろうとせず、自分たちが親子だと信じて疑わない父の矜恃(きょうじ)が表れたラストは爽快な描き方でしたね。
「三角奸計」の真相をお話しします【※ネタバレあり※】
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【物語の真相】
実は僕が付き合っていたミナミは、宇治原の婚約者である有村ほの香だった。宇治原は僕がそのことを知っていたかを試すために、茂木に協力してもらい、リモート飲み会を企画したのだった。ミナミは宇治原から殺されるが、僕への疑いは晴れたようだ。
【主な伏線】
・梅田の街を見渡す大パノラマという、茂木の発言
→向かい側にマンションがあるのに不自然な発言だった
・通信状態が悪いと会話が被ったりする”リモートあるある”
→宇治原の映像は録画だったため、不自然な時間帯があった
・Uber Eatsをみんなで頼んだ
→GPSアプリだけでは分からない、僕の部屋番号を宇治原が特定するため
など
【考察】
リモート飲み会の仕組みをよく応用したトリックでしたね。ただいくら腐れ縁とはいえ、大学時代の友達がそこまで手の込んだ協力をするのかなと思っちゃいました。またラストですぐに殺してしまう展開もあまりに無残な感じがして、もう少し良い終わり方はなかったかなと、少し残念な気もしました。
「#拡散希望」の真相をお話しします【※ネタバレあり※】
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【物語の真相】
僕と桑島砂鉄と安西口紅(ルー)の両親は人気YouTuberで、3人が変わった名前なのも島に移住したのもネタ作りのためだった。ルーは動画の存在を知っており、ネタ作りのために同級生を殺害した。僕は生配信でその真相を語り、ルーを殺すべきかの是非を視聴者に問いかける。
【主な伏線】
・ルーはiPhone7を見て、動画の存在をほのめかしていた
→その時、既に動画配信サービスのことを知っていた
・僕の家では、その日にあったことを話す「報告の時間」というルールがあった
→「チョモの一日」という動画コンテンツのためだった
・島の人たちの反応がよそよそしくなった
→事件により僕らが動画配信サービスのことを知るのを恐れたためだった
など
【考察】
YouTubeのネタのためならと、過度に暴走している者たちの心理を巧みに扱った良作でした。第74回日本推理作家協会賞を受賞したのも納得です。ラストシーンで視聴者に、真相を明かす場面には緊張感がありました。
『#真相をお話しします』を読んでみた感想
先程の考察部分でも感想を交えた内容を書きましたが、ここではネタバレにならない程度に『#真相をお話しします』の感想を書きます。また、読者がSNSやレビューサイトにあげた感想や評価もまとめました。
【筆者の感想】普段本を読まない人にもおすすめしやすい一冊
『#真相をお話しします』は普段本を読まない人にも薦めやすい本だと感じました。理由はいくつかあるのですが、第一に読みやすいから。難しいことばはほとんどなくスラスラ読めます。各短編は30分もあれば読了できるのではないでしょうか。
第二に今どきのトレンドやフレーズを使っていて、馴染みやすいから。YouTubeの配信、マッチングアプリ、リモート飲み会など、若い人にとっては馴染みがあるものが多く、親近感がわくと思います。
第三にミステリーとして、推理しながら読める楽しさがあるから。いかにも伏線めいた書き方があえてされてあり、読者はもしかしたら真実はこうじゃないかとある程度予想しながら読み進められるでしょう。それでも、その推理のさらに上をいくトリックを用意してくれているので、十分楽しめます。
これらの理由で、普段あまり本を読まない人に、本を読むきっかけとしておすすめしやすい一冊だと思います。読んだ人たちで考察し合うのも楽しそうですね。
【みんなの感想や評価】不穏な感じでハラハラした
#読了
『真相をお話しします』結城真一郎
ざわざわしながら読了。
なんとなく先が読め、それがまた不穏な感じでハラハラしました。 pic.twitter.com/hwK5II6bLH— ゆかり@読書📚 (@Yukari_Uka) December 25, 2022
表題の「#真相をお話しします」が一番展開が読めずに楽しむことが出来ました。
その他の話は文中に散りばめられている”違和感”からなんとなく結末が読めてくるようになっており、「あー、やっぱり!」という印象でした。
私のように「ミステリは好きだけど長編で複雑な物語だと推理しきれない!」という方におすすめしたい一冊です。
引用:Amazon
短編で区切りがあり読みすかった。
読書初心者の僕からすれば、毎度毎度おおっとなるような後半の展開に引き込まれました!次は長編のミステリーも読んでみたいなと思えたので、読書のきっかけになるんじゃないでしょうか??
引用:Amazon
#結城真一郎
『真相をお話しします』
令和のこの時代。ありそうな恐怖が詰まった短編集。特に印象的なのは一本目の「惨者面談」。他の話も、イマドキのあれこれに皮肉や警鐘が込められている気がする。#読書 #読了 pic.twitter.com/Hxojpr4qJZ— 晴 (@haru_kaffee) October 22, 2022
まとめ:『#真相をお話しします』は読書が苦手な人にも薦めやすいミステリー小説だった
いかがでしたか?『#真相をお話しします』の特徴を以下にまとめました。
・読書が苦手な人にも薦めやすいミステリー小説
・伏線が分かりやすく、推理しながら読む楽しさがある
・最新のトレンドをうまく扱って、推理小説にしている
・2023年の本屋大賞候補作
以上です。まだチェックしていない方は、ぜひ読んでみてください!
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コメント
ヤリモクに関しては、これから娘が部屋を使いたいと連絡してきているわけで、殺した人は別人だと思いますよ。
たしかにそうですね!ご指摘ありがとうございます。
ヤリモクでマナは美雪では無いです。男とマナを殺した後にピアスを見つけた時に男のスマホにMiyukiから今から使いたいとメッセが届いたので
美雪はパパ活じゃなくて美人局で金を稼いで居たという落ちです。
実際よくよく考えればいくらパパ活だって10万数十万するブランド品を山の如く買い漁るほどやりまくったら学業や日常生活に支障が出るはずですし
これが美人局だったら上前跳ねられる額にもよるけど少なくともパパ活の数倍、場合によっては10倍20倍稼げるとなると仮に一年間月数回程度でも達成できそうなので持ち物からバレるまで生活に影響無かったのも頷ける話で
更にマナはプロフィールの画像よりも幾分ふくよかに見えるというのと美雪と外見が似てるというのから化粧とかで似せた「マナ」担当がマナや美雪他複数居るとかプロフ画像は美雪本人だったり最初の「マナ」だったとかも考えられます
ご指摘ありがとうございます。
さらに深い考察までしていただき、勉強になります!
ネタバレ注意
ヤリモクはグループの一味だったというだけで本人ではないと思いますが?
ご指摘ありがとうございます!
【※ネタバレ含みます】
ヤリモクの真相ですが、マナが娘の美雪本人だったわけではなく”マナも美雪も同じ美人局のグループだった”のではないでしょうか?
過去に美雪がその部屋を使った時にピアスを無くしたんだと思いますよ!
丁寧なご指摘ありがとうございます!
修正した内容を記事に反映させていただきました。
「ヤリモク」のオチが不可解でいろいろ検索していてこちらに当たりました。
「え?娘だったってこと?それはさすがにお互い判るよね?じゃあ何なの?」と思ってましたが、美人局の同じグループの仲間だったという「オチ」だった「だけ」というのが、こちらのおかげで判り、「あーなんだ。別に深くはないのね」と納得できました。
助かりましたw
ついでに言うと、娘が「今から部屋を使いたい」と言っていて、この部屋に向かってきていてピンチってことなのかな、と思いました。
たしかに、娘が部屋に向かってきていたのかもしれないですね。
温かいコメントありがとうございます!
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