今回は「ゾンビ回収婦」(著:小砂川チト)のあらすじや感想を紹介。タイトルの意味や、ラストシーンのネタバレ考察(解説)、読者の口コミレビュー評価、芥川賞の受賞予想などをまとめました。
【第175回芥川賞候補作】小砂川チトの小説「ゾンビ回収婦」とは
| 書名 | ゾンビ回収婦 |
| 作者 | 小砂川チト |
| 出版社 | 講談社 |
| 発売日 | 2026年7月9日 |
| ページ数 | 192ページ |
| 初出 | 『群像』2026年5月号 |
作者の小砂川チトさんは、2022年に「家庭用安心坑夫」で群像新人文学賞を受賞。同作は芥川賞候補作にも選出されました。また、「猿の戴冠式」では二回目の芥川賞候補となり、2026年に発表した「ゾンビ回収婦」では三度目の芥川賞候補となっています。
芥川賞候補に小砂川チトさん(盛岡市出身)「ゾンビ回収婦」 https://t.co/uSxbwiNLqM
— 講談社文庫 (@kodanshabunko) June 10, 2026
「ゾンビ回収婦」は、AIに仕事を奪われ失職した女性の「わたし」が主人公。VRゲーム空間でNPC(ノンプレイヤーキャラクター)として、ゾンビを回収する業務を行うなかで、思いもよらない展開が起きていく物語です。
※「ゾンビ回収婦」は以下に当てはまる人におすすめ!
・ヒトならざる者の視点から描かれる不思議な世界観を体感したい人
・AIと人との関わりについて深く考えたい人
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3分で分かる「ゾンビ回収婦」のあらすじ【※ネタバレなし※】
AIに仕事を奪われ失職した「わたし」は、VRゴーグルをはめてゲームの世界へと入った。ホテルを舞台にしたゲーム空間で「わたし」はNPC(ノンプレイヤーキャラクター)として掃除婦の仕事を請け負うこととなった。
主な任務は、ゾンビの回収だ。他のプレイヤーに襲撃されて木端微塵となったゾンビを回収していく。そんななか、ゾンビの腕に謎めいたフレーズが刻まれているのを見つけたり、クマのぬいぐるみにカウンセリングを受けたりしていき……。
「ゾンビ回収婦」の主な登場人物まとめ
「ゾンビ回収婦」の主な登場人物についてまとめました。
・わたし:本作の主人公。AIに仕事を奪われた後、ゲームのNPCとして掃除婦(ゾンビ回収婦)の役割を担う。
・わたしの夫:妻と同様にAIに仕事を奪われた後、一人で演奏旅行と称して家を出ていく。
・アラスカ:臆病な非戦系のゾンビ。
・ミーシカ・コソラープィ:アドバルーン監視員かつ小型固定翼機管制官。
・クマ:医師役としてゲームキャラ達のカウンセリングを行う。
・グッドニュース:先代の掃除婦
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「ゾンビ回収婦」のネタバレ解説&考察まとめ
ここからは「ゾンビ回収婦」の魅力を深掘りするために、タイトルの意味、作品の魅力、ラストシーンのネタバレ考察などを行います。
「ゾンビ回収婦」のタイトルの意味は?
タイトルだけを見ると、ホラーのようなイメージを持たれるかもしれませんが、本作はそういった怖さを煽ってくるような作品ではありません。ただ、本作で出てくるゾンビは「あなたたち」と表記されるため、不特定多数の得体の知れない雰囲気は感じられるでしょう。
タイトルの「ゾンビ回収婦」とは、主人公の30代女性である「わたし」が、VRゲームのNPCとして請け負う役割を指しています。木っ端みじんとなったゾンビを回収していくなかで、意外な展開が待ち受けているという、物語です。
ヒトならざる者の視点から紡ぐ自由自在な書き方が魅力
作者の小砂川チトさんはこれまでもヒトならざる者の視点から書いた物語を発表してきました。今作もゲームのNPC、そしてクマのぬいぐるみ、AIといったように、ヒトならざる者の視点から、現実の世界をあぶり出す意欲作となっています。
VRゲームという虚構の世界において、リアリティーの強い世界が浮かび上がり、随所に鋭い描写が光る作品です。基本的な視点は主人公の「わたし」ですが、物語が進むなかで、非戦系のゾンビやゲームの作り手が出てくるなど、多角的な見方ができるでしょう。
「ゾンビ回収婦」のラストシーンをネタバレ考察(解説)
ここでは、「ゾンビ回収婦」のラストシーンについて考察(解説)した内容を記します。ネタバレが大丈夫な人だけ下記をクリックして読んでみてください。
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【結末までの大まかなあらすじ】
「わたし」は非戦系のゾンビが気になり、彼に「アラスカ」と名づけるほどだった。しかしやがてそのアラスカも戦に出るようになって、無残に殺されてしまう。「わたし」はそのことにとても心を痛めるのだった。
また、ゾンビに書かれたフレーズは、ゲームの作り手がゾンビたちにただの数値ではなく、個体ごとに「人格の素になる言葉」を与えたいという想いから生まれたものだった。
「わたし」は、約10日間ほとんど何も飲み食いしていない状態でゲームに没頭していた。そこに母が乗り込み、無理やり娘を助け出す。気づいた時には「わたし」は病室へ運ばれていたが、意識を回復するにつれて現実の方が虚構のような世界だと感じていくのだった。
【ラストシーンの結末(考察)】
最後は、現実と虚構の境目が分からないというなかで過ごしていきます。現実にいる人物たちの方が「NPC」のような存在だと錯覚するのです。
そのなかで「わたし」が気づいたのは、生まれてから感じていた「呪い」と、その救済だったのではないでしょうか。
「ゾンビ回収婦」を読んでみた感想
ここからは「ゾンビ回収婦」を読んでみた感想を書いていきます。また読者のレビューも合わせてまとめました。
【筆者の感想】虚構から現実世界の問題点をあぶり出す
小砂川チトさんの作品は個人的に好みで、特にデビュー作の「家庭用安心坑夫」が気に入っているのですが、本作はそれに比べてよりスケール感が大きく、作者自身が設定した高いハードルに挑戦している意欲作だと感じました。
AIに仕事を奪われるといったところから端を発し、ゲーム内での自分自身もAIのような役割を全うしている点。さらに、非戦系のゾンビに名前を付けて自己成長を期待させるといった、AIと対極の人間側の思惑をトレースしている点。
こういった点を反映させることで、虚構のなかに現実世界の問題点をあぶり出す手法が見事でした。今作は芥川賞候補作に選出されていますが、こういった力量を高く評価する選考委員は多いのではないでしょうか。
受賞予想:◎(大本命)
(全候補作を読み終えた段階でもう一度予想してみます)
【読者の口コミレビュー】AI時代における人間への救いの書
続いて、読者がSNSに投稿した口コミレビューをいくつか紹介しましょう。
芥川賞候補作
小砂川チト「ゾンビ回収婦」(群像・5)#読了「今」自分が立つ「ここ」が根本から掘り返され、読み手のわたしも真っ逆さまに現実と仮想の裂け目に落ちてゆく。
一息吸ってそのまま吐ききるかのように繰り出される絶え間ない思考の連なり。できるなら一気読みがおすすめです。— みちゃえる (@mic_hael_73) June 20, 2026
面白かったな〜!
どこが境になっているのか…
よく分からなくなってくるのが楽しい。労働とはなんだ?って考えさせられた。
今後も同じように仕事が出来るかなんて、
分からないからどこか共感してしまう。『ゾンビ回収婦』
小砂川チト著/群像2026年5月号 pic.twitter.com/pVlZCjaU5U— こと (@book_koto) June 15, 2026
小砂川チトさんのゾンビ回収婦読みました。
AI時代における人間への救いの書。
私にはグサグサ刺さりまくりの内容でずっと涙が…読むの一作目だけど普通にこれが受賞だと思う😭過去作も本当に好きだし受賞してたくさん描いて欲しいです。 pic.twitter.com/EgUMxpoYWz— りま@読書 (@rima_reading) June 14, 2026
小砂川チト『ゾンビ回収婦』は単行本(収録)にはならないかな。前作の『家庭用安全坑夫』が三人称で書かれていたことに疑問が呈されているというのは初めて聞いた。あれは三人称で微妙な視点の切り替えをやりながら書いているから面白いし、終盤に効果が出るのであって、全編一人称なんかで書いたらつ…
— 🕊️🍋鴻巣友季子(『小説、この小さきもの』) (@yukikonosu) May 19, 2026
まとめ:「ゾンビ回収婦」は虚構から現実世界を浮かび上がらせる作品だった
いかがでしたか?「ゾンビ回収婦」の特徴を以下にまとめました。
・第175回芥川賞候補作(受賞予想は◎:大本命)
・ヒトならざる者の視点から描く世界観が秀逸
・随所に鋭い描写も光る
以上です。まだチェックしていない方は、ぜひ読んでみてください!
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