「悪い血」(著:鈴木涼美)の気になるあらすじや感想を紹介。さらに、タイトルの意味や、ラストシーンのネタバレ考察(解説)、読者の口コミレビュー、芥川賞の受賞予想含めた評価についてもまとめました。
【第175回芥川賞候補作】鈴木涼美の小説「悪い血」とは
| 書名 | 悪い血 |
| 作者 | 鈴木涼美 |
| 出版社 | 文藝春秋 |
| 発売日 | 2026年7月7日 |
| ページ数 | 128ページ |
| 初出 | 『文學界』2026年6月号 |
作者の鈴木涼美さんは、慶應義塾大学在学中にAV女優として活動したり、卒業後は日経新聞の記者として働いたりと、特殊な経歴が話題の作家です。著書に『「AV女優」の社会学』や『身体を売ったらサヨウナラ』などがあり、小説も多く発表しています。
7/7発売のもうひとつの新刊『悪い血』。Amazonページにも書影が出るようになりました。レバーみたいなお花が素敵。
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「悪い血」は、妊婦検診を受けて血液を採取された主人公の「私」が、血液検査の結果を恐れて、こっそり血液を取り戻しに向かう物語です。夜の街や病院を歩くなか、過去の水商売の記憶や奔放に生きてきた自分への自戒の念が押し寄せてきます。
※「悪い血」は以下に当てはまる人におすすめ!
・水商売を経験したことがある人
・妊婦の不安な気持ちを知りたい人
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3分で分かる「悪い血」のあらすじ【※ネタバレなし※】
脇の甘い避妊で妊婦となってしまった私は、病院の検診で血を抜かれた。彼と会ってご飯を食べた日の夜に、ふと産院の処置室に残してきた血液のことがどうしても気になってしまう。
夜の世界で働き、奔放に生きてきた私は、その血液を奪還するために、ビジュー付きのサンダルを履いて、産院へと向かう。階段を降りていく時、私の脳内には過去の様々なできごとが思い起こされるのだった…。
「悪い血」の主な登場人物まとめ
「悪い血」の主な登場人物についてまとめました。
・私(=葵):本作の主人公。水商売に入り浸り、奔放に生きてきた。妊婦検診で抜かれた血液を取り戻しに行く。
・義人:葵の彼氏。ワインショップの店長兼ソムリエ。妊娠した葵の身体を労わる。
・麻子:恋人同士が友人だったことをきっかけに仲良くなった十年来の悪友。卵子を凍結している。
・葵の父:エンジニア一筋の学究肌。葵に対して、書物を盛んに薦めてきた。
・美玖:葵の中学時代の悪友。妊娠していた際に事故で亡くなった。
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「悪い血」のネタバレ解説&考察まとめ
ここからは「悪い血」の魅力を深掘りするために、タイトルの意味、作品の魅力、ラストシーンのネタバレ考察などを行います。
「悪い血」のタイトルの意味は?
「悪い血」とは、主人公の葵が妊娠検査で採取された血液を意味しています。葵は、これまで水商売に入り浸り、私生活でも奔放な日々を送ってきました。妊娠検査でHIVや性病などの病気が判明する恐れがあるため、「悪い」と表現しています。
あらすじでも紹介しましたが、葵は産院に忍び込み、血液を取り戻そうとします。階段を降りていくなかで、過去の様々なできごとが去来していき、現実と過去が入り混じる世界観が特徴の小説です。
性の価値観や死生観にまで踏み込んだ世界観
葵の追想には、夜の世界で生きてきた彼女の様々なエピソードがちりばめられています。風俗で接客していた際の経験や、少女時代に道端で話しかけられ性的な行為に誘われたことなどは、遠い世界のできごとのようで実は身近に感じられる人も少なくないかもしれません。
また、中学時代の悪友が妊娠していた際に事故で亡くなったことを思い出し、自分自身も彼女への責任を感じています。この件は葵の父も心配しており、死生観や親子の関係性にまで踏み込んで描かれている点が読みどころです。
「悪い血」のラストシーンをネタバレ考察(解説)
ここでは、ラストシーンについて考察(解説)した内容を記します。ネタバレ込みとなるので、大丈夫な人だけ以下をクリックして読んでみてください。
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【ラストシーンまでの大まかなあらすじ】
結局、葵は血液を取り戻さずに産院を出て、連絡をとっていた麻子と落ち合った。悪い血だと思って気になっていることや、過去に自分の周りで命を落とした人もいることなどを、麻子に打ち明ける。そして、このまま子どもを産んでいいのか不安に思っていることも。
麻子は、今の状況を受け入れるしかないといった主旨のアドバイスをしてくれる。明け方、葵は股の間から何かが流れ出たのを感じる。もし、赤ちゃんが流れていたとしても、このまま生まれてきたとしても、流れに身を任せて考えようといった気持ちになっていた。
【考察】
大きな結論は出ませんが、たしかに妊婦になるというのは想像を遥かに超えているので、うまく受け止められないというのが実情でしょう。
過去の悪いできごとも去来して不安になるなか、今の状態をありのままに受け入れてみようという決断は、父や悪友の存在が大きいと感じました。
「悪い血」を読んでみた感想
ここからは「悪い血」を読んでみた感想を書いていきます。また読者のレビューも合わせてまとめました。
【筆者の感想】鈴木涼美さんにしか書けない世界観
著者の鈴木涼美さんは、高名な親のもとに生まれ、エリートコースを進むなか、大学在学中にAV女優としての活動も行うなど、破天荒な生活を送ってきた人です。本書もそんな彼女の経験に裏打ちされたエピソードや考えが表現されていると感じました。
本書は芥川賞の候補にも選出されていますが、過去二作の方がテーマ性が強かったのに対し、今回は妊娠・血液という一つのテーマはあるものの、親子関係や死生観などにも及び、包含的な世界観を孕んでいるように思います。
このあたりを筆者の成長とみるか、やや世界観が薄まったとみるかで、評価が分かれそうです。相対的な評価では、小砂川チトさんの「ゾンビ回収婦」が頭一つ抜けている印象があるので、ダブル受賞の可能性があるかどうかというところでしょうか。
受賞予想:△(大穴)
(全候補作を読み終えた段階でもう一度予想してみます)
【読者の口コミレビュー】妊娠のありようを静かな筆致であぶり出す
続いて、読者がSNSに投稿した口コミレビューをいくつかまとめました。
文學界6月号『悪い血』、とてもよかった。自分の暗い過去に向かって伸びる階段をひとりで降りつづけてしまう夜が私にもあって、そんなときは「悪い女友達」の存在がかなり重要、と再確認した。小説がその役割を担ってくれるときも多々ある。
鈴木涼美さんは読書エッセイ『娼婦の本棚』も大好き。 pic.twitter.com/x1NGMgsRyj— 週末書房 (@weekendbooks_) May 24, 2026
「悪い血」(『文學界2026年6月号』文藝春秋) #読了
夜の世界を生きた女性が、妊婦健診で採取された血液を取り戻すために病院へ向かう。道中、さまざまな時間を行き来しながら彼女の半生が語られる。身体や心、人間関係、流れや選択。すべてをゆさぶる“妊娠”のありようを静かな筆致で抉りだす。すき。 pic.twitter.com/LJaqKClRbZ— 茄子のおひたし (@iteuka11) June 18, 2026
鈴木涼美「悪い血」#読了
妊娠して検査するために採血された茜。しかし自分がこれまで父の言うことも聞かず高校中退して風俗嬢や金持ちの愛人などと奔放に生きてきて性病もあるかもしれないので深夜に産院まで血を取り戻しに行くのだが…。僕も自分が幸せになる権利がないとよく思うから刺さりました。 pic.twitter.com/OYOuNolmSH— つかっちゃん@純文学ユーチューバー(小説『存在しない川』や書評集『現代純文学1000冊』など販売中) (@book_tsukatsu) June 25, 2026
106・文學界2026年6月号
鈴木涼美さん『悪い血』#読了#文芸誌小説若い頃に水商売や風俗をやっていたことで
性病か何かにかかったまま放置してきたのではないかと思ってきて妊娠。
妊婦健診で採血したが、その血を取り戻したくなって深夜に病院まで歩いていく。めっちゃ良かった。麻子いい奴。 pic.twitter.com/KSWnmzd8bx
— 夏しい子@文芸誌に掲載された小説を1000作品読みます (@natusiiko) June 9, 2026
まとめ:「悪い血」は奔放に生きてきた妊婦の内面に迫った小説だった
いかがでしたか?「悪い血」の特徴を以下にまとめました。
・第175回芥川賞候補作(受賞予想は△:大穴)
・妊娠を通じて、性の搾取や死生観などに思考を巡らせる物語
・悪友や父親とのやりとりが心に残る
以上です。まだチェックしていない方は、ぜひ読んでみてください!
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