3分で分かる『ツミデミック』のあらすじ&ネタバレ考察・感想まとめ【第171回直木賞受賞作】

今回は『ツミデミック』のあらすじや感想を紹介します。第171回直木賞受賞作となった本作について、タイトルの意味や、ラストシーンのネタバレ考察、一穂ミチさんの作家インタビューをふまえた作品の魅力などをまとめました。

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【第171回直木賞受賞作】一穂ミチの小説『ツミデミック』とは

書名 ツミデミック
作者 一穂ミチ
出版社 光文社
発売日 2023年11月22日
ページ数 276ページ

『ツミデミック』は、コロナ禍の現代を舞台とした6篇の短編からなる小説です。先が読めない世の中で生きる人々の物語の背景には、犯罪の影が浮かびあがります。

作者の一穂ミチは稀代のストーリーテラーとして注目される作家です。過去に『スモールワールズ』と『光のとこにいてね』が直木賞の候補作に選出されており、本作でついに直木賞を受賞しました。

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・コロナ禍で生きづらさを感じていた人
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見事本作で直木賞を受賞した一穂ミチさんですが、直木賞の候補入りした過去作も、同時に本屋大賞の候補作に選出されるなど、人気・実力ともに評価されています。

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3分で分かる『ツミデミック』のあらすじと主な登場人物【※ネタバレなし※】

『ツミデミック』は六篇の短編からなる小説です。ここでは各章のあらすじを簡単に紹介し、主要な登場人物についてもまとめました。

違う羽の鳥

夜の路上で居酒屋の呼び込みバイトをやっている優斗は、ある日派手な女性から声をかけられ、仕事が終わったら食事をしようと誘われる。人生初の逆ナンに疑心暗鬼にある優斗だが、女性が名乗った「井上なぎさ」という名前からある過去の記憶を呼び起こし……。

【主な登場人物】
及川優斗(おいかわゆうと):大阪出身の20歳。大学中退で居酒屋の呼び込みバイトをしている
・井上なぎさ(いのうえなぎさ):大阪出身。派手な身なりをしている。優斗に声をかける

ロマンス☆

百合は四歳の娘のさゆみと歩いているとき、自転車に乗ったフードデリバリーサービスのイケメンとすれ違う。心にトキメキを覚えた百合は、それからこっそりフードデリバリーを頼み、あのイケメンと再会しないかと心待ちにしているが……。

【主な登場人物】
百合(ゆり):休職中の主婦。ミーデリの男性に興味を抱く
・さゆみ:百合の4歳の娘
・雄大(ゆうだい):百合の夫。32歳美容師
・大石耕平(おおいしこうへい):百合の隣に住む小学四年生
・耕平くんママ:噂話が好き

憐光

気づいたら松の木の下にいたあたしは、十五年前の豪雨災害で死んでおり、どうやら幽霊になってしまったようだ。そのまま家へ帰ろうとすると、親友のつばさや、当時担任だった杉田先生を見つけた。そして明かされる十五年前の真実とその後の運命とは……。

【主な登場人物】
・あたし<松本唯(まつもとゆい)>:15年前に豪雨被害で死んで幽霊となった
・登島つばさ(としまつばさ):あたしの親友。久々に杉田先生と再会する
・杉田先生(すぎた):44歳元教師。高二の時の担任。

特別縁故者

なかなか新しい仕事が見つからない恭一は、自堕落な日々を送っていた。そんな中、息子の隼が近所のじいさんにお世話になったことがきっかけで、そこへ何度か通うことになった。恭一はそのじいさんの特別縁故者になり、大金を受け取ることを目論むが……。

【主な登場人物】
卜部恭一(うらべきょういち):求職中で自堕落な日々を送っている男
・隼(しゅん):恭一の息子。小学一年生
・朋子(ともこ):恭一の妻。夫に厳しくあたる
・佐竹(さたけ):近所のじいさん。とっつきにくい印象がある

祝福の歌

十七歳の娘が妊娠したことに頭を抱えている達郎は、実家の両親からお隣さんの様子が変だと相談される。近々子供を産む様子だった奥さんだが、いつになっても子供を産んだ気配はないようだ。

【主な登場人物】
達郎(たつろう):五十二歳。娘に甘い一家の主。音痴で妻に注意される
・美津子(みつこ):達郎の妻。義母との関係があまり良くない
・菜花(なのか):達郎の娘。十七歳で妊娠し、子供を産むつもりでいる
・達郎の母:達郎にお隣さんの相談をする。美津子からは認知症を疑われる
・近藤鈴香(こんどうすずか):達郎の母のお隣さん。以前は子供を産む様子だったが……

さざなみドライブ

この三年間、コロナ禍の出口の見えない焦燥感に苦しまされた僕たち。よく晴れた土曜日に、僕は待ち合わせをしていた。SNSを通じて知り合った、年齢も性別もバラバラの僕らの奇妙なドライブが始まった。

【主な登場人物 ※人物名は全てSNSのアカウント名※】
・僕:SNSでのアカウント名は「キュウリ大嫌い
・マリーゴールド:ストールの女
・あずき金時:サングラスをかけた中年の男
・毛糸モス:眼鏡の少女
・動物園の冬:今回のドライブの発起人

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毎回受賞作が話題になる直木賞。ドラマ化もされた池井戸潤さんによる『下町ロケット』や人気ミステリー作家・米澤穂信さんによる『黒牢城』、読み応えが迫力ある『テスカトリポカ』などは、Amazonが展開するサービス・Audibleにて配信されています。

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・『下町ロケット』(著:池井戸潤)
・『黒牢城』(著:米澤穂信)
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・『ファーストラヴ』(著:島本理生)

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『ツミデミック』のネタバレ解説&考察まとめ

ここからは『ツミデミック』の魅力を深掘りするために、タイトルの意味、作品の魅力、ラストシーンのネタバレ考察などを行います。作者のインタビュー内容もふまえてまとめました。

タイトル「ツミデミック」の意味は?主題は「コロナ禍における犯罪」

タイトルの「ツミデミック」とは、「罪」とパンデミックをかけた造語です。本作はどの物語も背景に罪がテーマとしてあり、そんな犯罪心理がだんだんと登場人物の心の内で拡大させていくような描き方がされています。

閉塞感が生まれたコロナ禍の現代ならではの犯罪心理ともいえ、それが本作の大きな見どころになっています。そこには以下のような作者の思いが反映されているようです。

もともと私は、自分がなんの犯罪にも手を染めずに生きているのはただの偶然じゃないかって思っているんです。犯罪する人、しない人っていうのは本当に微妙なグラデーションで、「こんなはずじゃなかったのに、あれ?」って人が多いんじゃないかなって。
引用:一穂ミチさん「ツミデミック」インタビュー コロナ禍の犯罪描いた短編集「あの3年間を書いておいてよかった」|好書好日

ただの小説の傍観者ではなく、物語のなかで罪を犯した当事者に自分もなり得るかもしれないという、恐怖さえも感じる小説となっています。

ラストはハッピーエンド?バッドエンド?結末をネタバレ考察

本作は六篇の独立した短編からなりますが、どれもどのような結末を迎えるか、ハラハラしながら読み進めていくことになるでしょう。

詳しいネタバレは避けますが、結論からいうとハッピーエンドになる物語もバッドエンドになる物語もどちらもあります。バッドエンドになる作品はイヤミスのような味わいが感じられるでしょう。

ここでは本作の最後に収められている「さざなみドライブ」について、ラストシーンのネタバレ考察をしてみましょう。こちらはハッピーエンドとなり、最後に希望が感じられる作品です。

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ドライブはSNSで自殺志願者を集め、集団自殺するのが目的だった。しかし、主催した毛利(アカウント名は「動物園の冬」)からすると、さらに恐ろしい目的があった。

『死にたくない人間』を死なせたかったんじゃないかな。上げて落とす、みたいな。死にたがってる人間を集めて、対話をさせて、自殺は苦しいってアピールして、やめとこうかって思いとどまらせてからやるの。せっかく死ぬのやめたのに、わけわかんなくて、怖くて、悔しいでしょ。それを眺めてたかったんじゃない?
引用:『ツミデミック』266ページより

毛利の目的に気づいたストールの女が、なんとか集団自殺の偽装を食い止めます。最終的に小説家志望の主人公と、また生きていたら会えるかもという淡い希望を見せ、結末となりました。ラストの終わり方がよかったですね。

西日に照らされ、車は走る。冴えない苦しみの日々に帰るためのドライブ。この山道がどこまでも折れ曲がって続けばいいのに、というかなわない願いを乗せて、ごきげんな速度で。
引用:『ツミデミック』266ページより

【考察】
目的が集団自殺だと分かった段階で、最後はみなが改心して終わるというオチだろうなと思いきや、最後にもう一仕掛けしているのが、企みとして秀逸でした。また、影を引きずりつつも前向きになろうとしている主人公の心理描写も無理やり感がなくていいなと感じました。

『ツミデミック』はドラマ化・映画化される?

『ツミデミック』は今後、ドラマ化や映画化される可能性はあるのでしょうか。今のところ、一穂ミチさんの作品はアニメ化やPV化はされているものの、ドラマや映画にはなっていません。

本作はコロナ禍の現代をテーマとしており、ハラハラするような展開はドラマや映画に向いていると思います。どれも物語の内容が違うので、もし映像化されるなら、ドラマだと「世にも奇妙な物語」あたりがふさわしそうです。特に冒頭の「違う羽の鳥」なんかピッタリだと思います。

今後、ぜひ映像化もされていってほしいですね。

『ツミデミック』を読んでみた感想

ここからは『ツミデミック』を読んでみた感想を書いていきます。また読者のレビューも合わせてまとめました。

【筆者の感想】自分も罪を犯した当事者になりそうな恐怖

フードデリバリーサービス、給付金詐欺、SNSで人々が集まる行為など、コロナ禍で閉塞感を感じる今だからこそ描ける物語です。一歩間違えれば、自分も罪を犯した者の当事者になるのではないかという恐怖を感じながら最後まで読み終えました。

個人的にはイヤミスは苦手な部類なのですが、本作だとただ嫌な感触が残って終わるのではなく、独特の苦みが後まで残る(パクチーのような味わい?)という形で、寧ろ好みだと感じました。

一穂さんはこれで三度目の直木賞候補ですが、過去の候補作は短編、長編ときて、今回は短編。個人的には前回の長編で受賞してほしいと思っていましたが、惜しくも受賞ならず。ただ、今回で見事に受賞となり、喜ばしい限りです。できれば、前回の作品もぜひチェックしてみてください。

一穂ミチさんの前回の候補作『光のとこにいてね』のあらすじをチェックしてみる

【みんなの感想や評価】六篇全てに味わいがある

続いて読者がレビューサイトやSNSにあげた口コミを紹介します。

コロナ禍で日常が変化せざるをえなかった人々をきりとった短編集。
6編の短編それぞれに趣が違いますが、どれも読みやすく、世界観に没入してしまいました。
一穂ミチさんの短編集のなかでもピカイチだと思います。
特に「特別縁故者」と「祝福の歌」が好きです。
おすすめです!
引用:Amazon

まとめ:『ツミデミック』はコロナ禍の犯罪をテーマにした短編小説集だった

いかがでしたか?『ツミデミック』の特徴を以下にまとめました。

・第171回直木賞受賞作
・コロナ禍の現代をテーマとして「犯罪」が重要なテーマとなる
・イヤミスのような味わいもハッピーエンドのような希望もある個性的な短編集

以上です。まだチェックしていない方は、ぜひ読んでみてください!

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