3分で分かる『乱歩と千畝─RAMPOとSEMPO─』のあらすじ&ネタバレ解説・感想まとめ【第173回直木賞候補作】

今回は『乱歩と千畝─RAMPOとSEMPO─』(著:青柳碧人)のあらすじや感想を紹介します。第173回直木賞候補となった本作のタイトルの意味や、実話との比較、ラストシーンのネタバレ考察(解説)、直木賞の受賞予想などをまとめました。

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【第173回直木賞候補作】青柳碧人さんの小説『乱歩と千畝─RAMPOとSEMPO─』とは

書名 乱歩と千畝─RAMPOとSEMPO─
作者 青柳碧人
出版社 新潮社
発売日 2025年5月14日
ページ数 384ページ

作者の青柳碧人さんは、早稲田大学教育学部卒業の作家です。「浜村渚の計算ノート」で第3回「講談社Birth」小説部門を受賞してデビューしました。同作はシリーズ化され、累計で60万部を超える人気シリーズとなっています。

『乱歩と千畝─RAMPOとSEMPO─』は、推理作家の江戸川乱歩と外交官の杉原千畝がもし出会っていたらという設定で描かれた物語です。まだ何者でもなかった二人にはともに早稲田大学出身という共通点があり、お互いに成長していく姿に読み応えがあります。

※『乱歩と千畝─RAMPOとSEMPO─』は以下に当てはまる人におすすめ!
・江戸川乱歩が活躍した頃のミステリー作家が好きな人
・杉原千畝のことをもっと知りたい人
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3分で分かる『乱歩と千畝─RAMPOとSEMPO─』のあらすじ【※ネタバレなし※】

早稲田のそば屋・三朝庵で将来の進路に悩んでいた杉原千畝は、古本屋を営む平井太郎という青年からカツ丼を分けてもらう。二人は早稲田大学の先輩と後輩だった。千畝は太郎のひょんな一言をきっかけにロシア語を勉強して外交官を目指すことになる。

一方、何事もあまり長続きしなかった太郎だが、早稲田大学卒業後に坂手島へ働きに行った際に村山隆子と知り合う。その後、上京した隆子と結婚。さらに小説が評価されはじめ、江戸川乱歩として人気作家へと成長していき……。

『乱歩と千畝─RAMPOとSEMPO─』の主な登場人物まとめ

『乱歩と千畝─RAMPOとSEMPO─』の主な登場人物についてまとめました。

平井太郎:早稲田大学を卒業後、造船所に勤務して、古本屋を営む。後に推理小説を書き始め、江戸川乱歩という作家として人気を博す

杉原千畝:早稲田のそば屋で平井太郎にかけられた一言から、外交官を目指す。後にユダヤ人を助けた外交官として有名になる

・村山隆子:坂手島で暮らしていた際に平井太郎と出会い、後に太郎の妻となる
・バロン:呼び込みの仕事をしていた外国人
・クラウディア・アポロノヴァ:杉原千畝の最初の妻となったロシア人女性
・松岡洋右:南満州鉄道株式会社筆頭理事
・横溝正史:江戸川乱歩の担当編集者を務めた後、自身も推理小説の作家となる
・菊池幸子:杉原千畝の二人目の妻。

『乱歩と千畝─RAMPOとSEMPO─』のネタバレ解説&考察まとめ

ここからは『乱歩と千畝─RAMPOとSEMPO─』の魅力を深掘りするために、タイトルの意味、作品の魅力、ラストシーンのネタバレ考察などを行います。

タイトル「乱歩と千畝─RAMPOとSEMPO─」の意味とは?

タイトルの乱歩は江戸川乱歩、千畝は杉原千畝を指しています。二人がまだ何の実績もない時に知り合い、お互いに影響を与えながら成長していく物語となっています。

ちなみにSEMPOとは、千畝の字が読みづらく「せんぽ」と呼ばれだしたことに由来しています。RAMPOとSEMPOで語呂が良いところもおもしろく、二人の出会いには何か運命的なものを感じさせますね。

『乱歩と千畝─RAMPOとSEMPO─』は実話をもとにしている?

本作は、もしも江戸川乱歩と杉原千畝が出会っていたらという架空の設定をもとに書かれた物語です。ただし、お互いに早稲田大学出身というのは事実なので、実際にどこかで出会っていてもおかしくありませんね。

また、横溝正史や松岡洋右などは実在する人物であり、後半では特に多くのミステリー作家が登場してきます。ミステリー作家がまだ駆け出しの頃の話が読めるので、ミステリー好きには特に興味をそそられるのではないでしょうか。

『乱歩と千畝─RAMPOとSEMPO─』のラストシーンをネタバレ考察!

『乱歩と千畝─RAMPOとSEMPO─』のラストシーンについて考察した内容を記します。ネタバレとなるので、最後まで読んだ人だけ以下をクリックして読んでみてください。

ネタバレしていいからラストシーンの考察を知りたい方はこちらをクリック!

【ラストシーンまでのおおまかなあらすじ】
江戸川乱歩は人気のミステリー作家となった。少年探偵団シリーズや怪人二十面相ものなど、少年少女向けの作品が特に人気となっていたが、周囲の推理作家からはそれだけでなく新しい長編小説を書いてほしいと発破をかけられることもあった。

また杉原千畝は、ユダヤ人を助けた外交官として有名になった。自分の判断に迷ったこともあったが、今の妻の幸子や前の妻のクラウディアからかけられた言葉が支えになっていた。

また太郎(乱歩)が先に亡くなり、残された立場の千畝だったが、ふと幼少期のことを思い出す。実はそば屋で会う以前にも太郎と出会っていたことに気づきそうになる場面で終わる。

【考察(解説)】
二人がお互いに影響を与えていたのはもちろん、特に千畝の場合は、二人の妻からの言葉も大きかったように感じます。一部引用しましょう。まずは前の妻のクラウディアと別れる場面から。

だったら約束して。この先何か迷うことがあったら、優しいと思う選択肢を取るのよ。あなたは、そういうふうにしか生きられないのだから。これが、旅立つ元夫に贈る、私からの言葉よ
引用:『乱歩と千畝─RAMPOとSEMPO─』本文(217ページ)より

続いて、今の妻の幸子が、納得のいく仕事じゃないといじけてみせる乱歩や千畝の姿を見て、与えた叱咤激励の言葉です。

あなた方には才能がある。そして、才能を生かせるステージに立っている。(中略)贅沢なのよ、江戸川乱歩も、杉原千畝も!
(中略)
才能はあなたたち固有の財産よ。それを磨いてきたのもあなたたちの努力。でも、ステージに立っているのは、多くの人が応援して、支えてきてくれたからでしょう?
(中略)
その人たちに応えなさい。仕事というのは、そういうものでしょう?
引用:『乱歩と千畝─RAMPOとSEMPO─』本文(250ページ)より

こうした周囲の人物の支えがあって、二人が成長していったことが分かります。こういった姿は現在に生きる者たちへの激励の言葉として通じるものがあるのではないでしょうか。

『乱歩と千畝─RAMPOとSEMPO─』を読んでみた感想

ここからは『乱歩と千畝─RAMPOとSEMPO─』を読んでみた感想を書いていきます。また読者のレビューも合わせてまとめました。

【筆者の感想】後半のミステリー作家誰でしょうクイズもおもしろい!

江戸川乱歩と杉原千畝の二人がもし出会っていたらという設定にロマンがあり、楽しく読みました。特に千畝の方は詳しく知らなかった部分が多かったので、歴史の勉強にもなり、よかったですね。

また後半に駆け出しのミステリー作家が多く登場するのですが、先にその人の素性を書いて、最後に「後の◯◯である」と種明かしをされる書き方となっています。クイズ形式のようになっていて、一体誰なのか想像しながら読むのも楽しかったです。

ちなみに、作者は早稲田大学のクイズ研究会出身とあるので、なるほどなと思いました。乱歩も千畝も早稲田大学出身なので、作者自身も運命的なものを感じていたのでしょうね。

さて、本作は直木賞の候補作に選出されています。設定の良さや、二人の成長の仕方はよく書かれている一方で、もう少し有機的に二人が絡んでほしかったという注文がつくかもしれません。史実を書いた内容がメインで、その分人間物語が少ないように感じる点も高い評価にはつながりにくいでしょうか。予想では三番手くらいにしておきます。

受賞予想:△(大穴)

【みんなの感想や評価】史実と創作のリンクが絶妙!

続いて読者がSNSやレビューサイトに投稿した感想や評価を紹介します。

千畝の最初の奥さんについてはほとんど語られていない、と作者がXのスペースで語っていました。ありえたかもしれないし、全てがなかったとも言いきれない物語。

断言できることは、グイグイ読めてしまうということ。ドラマ化の話はもう来てるでしょう、きっと。
引用:Amazon

まとめ:『乱歩と千畝─RAMPOとSEMPO─』は江戸川乱歩と杉原千畝が出会っていたらという設定で書かれた架空の物語だった

いかがでしたか?『乱歩と千畝─RAMPOとSEMPO─』の特徴を以下にまとめました。

・第173回直木賞候補作(受賞予想はー:なし)
・江戸川乱歩と杉原千畝が出会っていたらという設定がおもしろい
・駆け出しの推理作家が多く登場するので、ミステリー好きは必読!

以上です。まだチェックしていない方は、ぜひ読んでみてください!

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