今回は『踊りつかれて』のあらすじや感想を紹介。塩田武士さんによる第173回直木賞候補作である本作について、タイトルの意味やラストシーンのネタバレ考察(解説)、映画化やドラマ化の可能性などについて、まとめました。ぜひ最後まで読んでみてください。
【第173回直木賞候補作】塩田武士の小説『踊りつかれて』とは
| 書名 | 踊りつかれて |
| 作者 | 塩田武士 |
| 出版社 | 文藝春秋 |
| 発売日 | 2025年5月27日 |
| ページ数 | 480ページ |
作者の塩田武士さんは、『盤上のアルファ』で第5回小説現代長編新人賞を受賞して、2011年に作家デビュー。これまで映画化された『罪の声』や『騙し絵の牙』、本屋大賞の候補作となった『存在のすべてを』などの話題作を発表してきました。
『踊りつかれて』は、不倫報道の末に誹謗中傷を受けて自殺した芸人と、週刊誌による暴言テープの流出で表舞台から姿を消した歌手の過去を辿るうちに、彼らの復讐と称してネットで個人情報を晒した男との接点が浮かび上がっていく物語です。
※『踊りつかれて』は以下に当てはまる人におすすめ!
・SNSでの誹謗中傷について考えたい人
・昭和の音楽業界に興味がある人
・第173回直木賞の候補となった話題作をチェックしたい人
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3分で分かる『踊りつかれて』のあらすじ【※ネタバレなし※】
芸人・天童ショージが不倫報道を受けてSNS上で誹謗中傷を受けて自殺へ至ったこと。歌手・奥田美月の暴言テープが流出し、表舞台から去ってしまったこと。
この2つの出来事を受けて、「踊りつかれて」というブログの著者「枯葉」が「宣戦布告」を行った。その内容とは、匿名性にかこつけて2人を追い詰めた者たちの個人情報を晒して、復讐するというものだ。
ブログの著者「枯葉」は、程なくして見つかり身柄を確保された。逮捕されたのは、音楽プロデューサーの瀬尾正夫。そんな瀬尾は弁護士に、天童の中学時代の同級生だった久代奏を指名してきた。
依頼を受けた奏は、天童や美月の過去を調べ始める。関係者を取材していくうちに、彼らの知られざる生い立ちが分かっていき……。
『踊りつかれて』の主な登場人物まとめ
『踊りつかれて』の主な登場人物についてまとめました。
・天童ショージ:芸人。不倫報道の末、誹謗中傷を受けて35歳で自殺。本名は天童昇士
・奥田美月:元歌手。週刊誌による暴言テープの流出がきっかけで表舞台から姿を消した
・瀬尾政夫:ブログ「踊りつかれて」の著者(「枯葉」名義)。音楽プロデューサー
【告発された者】
・山田健:永修大学3年生。YouTubeで天童の自殺現場から実況中継した
・牧村志保:歯科医の女性。35歳。Twitterで誹謗中傷した
・小谷義昭:元週刊誌の記者。68歳。美月の暴言テープを流出させた
・藤島一幸:永修大学広報課勤務。天童と中学の同級生。Twitterで虚偽の投稿をした
【山城法律事務所】
・山城新伍:社長。芸能人と同姓同名
・久代奏:弁護士。民事が専門。天童と中学の同級生
・青山勝治:弁護士。刑事弁護を得意とする。45歳
【天童の関係者】
・静香:天童の妻
・三橋:天童のマネージャー
・児島光男:天童が所属する芸能事務所の社長
【美月の関係者】
・八神幸太郎:美月とのツーショットを撮られた俳優
・池田啓太:瀬尾の音楽仲間
・佐藤篤:歌謡バーを経営
・戸部京一:サウンドエンジニア
・加藤達也:元ランキング・テンのプロデューサー
・氷室誠:美月が付き合ってた俳優
・小池崇:元「歌声ヒットステージ」のプロデューサー
『踊りつかれて』のネタバレ解説&考察まとめ
ここからは『踊りつかれて』の魅力を深掘りするために、タイトルの意味、作品の魅力、ラストシーンのネタバレ考察、映画化やドラマ化の可能性についての言及などを行います。
タイトル「踊りつかれて」の意味とは?
本書のタイトル「踊りつかれて」は、瀬尾が管理するブログの名前です。あらすじでも紹介しましたが、このブログで天童ショージや奥田美月を苦しめた者たちへの復讐が宣戦布告されました。
ただ、このタイトルは、本書を読み進めていくうちに別の意味も重なってきます。美月の過去をさかのぼっていく内に登場するのです。ネタバレとなるので書きませんが、その点にも留意して読み進めていくとよいでしょう。
『踊りつかれて』のラストシーンをネタバレ考察!
『踊りつかれて』のラストシーンについて、考察した内容を記していきます。ネタバレとなるので、本書を全て読んだ人だけチェックするようにしてみてください。
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【ラストシーンまでのあらすじ要約】
奏は、天童と美月の過去を調べていくなかで、2人及び瀬尾と接点があると気づく。美月の悲惨な状況を救おうと尽力した柴原恭二という弁護士がいたが、その息子が天童ショージだった。
美月と瀬尾がつながるきっかけとなった別府で、二人は久々に再会する。瀬尾は自分がこれまでやってきたことが間違いではなかったと思い、彼女がずっと待っていてくれたことに深く感動するのであった。
【考察】
物語中盤からはほとんどが、美月の隠された過去に迫っていきます。こういった作中の人物の生涯に深く入り込んでいき、ラストへの感動と結びつける手法は、作者の塩田武士さんの得意とするところ。話題作の『存在のすべてを』でも共通する構成となっていました。
個人的には、冒頭で描かれたSNSの闇についてもっと深く踏み込んでほしかったのですが、そっちに行くのかと少し残念な気持ちでした……。ただ、SNSでは決して分からない生涯を小説で描きたかったのだと言われると、寧ろうまく対比しているといえるかもしれません。
『踊りつかれて』は映画化・ドラマ化される?
本作はスケール感のある小説なので、映像化してみてもおもしろそうですね。特に塩田武士さんの小説は、小栗旬さん主演の「罪の声」や大泉洋さん主演の「騙し絵の牙」が映画化されているので、同じようにまた映画化されるのではないかと期待したくなります。
美月の過去を辿るシーンは昭和の音楽業界についても描かれるので、当時のことを知る人にとっては懐かしい気持ちにもなれるでしょう。懐かしい映像なども交えて再現されると、より注目されそうですね。
執筆時点ではまだ映画化もドラマ化も決まっていませんが、もし決定したらまた内容を更新したいと思います。
『踊りつかれて』を読んでみた感想
ここからは『踊りつかれて』を読んでみた感想を書いていきます。また読者のレビューも合わせてまとめました。
【筆者の感想】SNSの闇についてもっと知りたかった
冒頭でSNSでの誹謗中傷を糾弾する内容が書かれていたので、SNSの闇を深く追っていく物語かと思っていましたが、そうではなく天童と美月の過去を深掘りしていく話がメインでした。自分が勝手に期待してしまっただけかもしれませんが、そこは正直少し残念でした。
ただ、美月の壮絶な過去を知っていくうちに、弁護士である奏が成長していくところや、ラストの美しいシーンへつながっていくところは良かったです。また、特に章の最後で、続きがどうなるか気になるような繋ぎの文を挟んでいくところが、ストーリーテラーとしての手練れを感じました。
直木賞の受賞予想も併せてしたいのですが、個人情報を晒された者たちが置き去りにされて物語が終わってしまっている感じがして、そこに注文がつきそうな感じがします。直木賞の選考会では、あまり票は集めないのではないでしょうか。どちらかというと、これまでにも何度か候補に選出されているように、本屋大賞で評価を集めそうな作家だと思います。
受賞予想:ー(なし)
【みんなの感想や評価】情報社会の恐ろしさを感じる
続いて読者がSNSやレビューサイトに投稿した感想や評価を紹介します。
感情的かつ露悪的な序章の『宣戦布告』。これはSNSの匿名性への警鐘。
『正しさ』を盾に、自らは安全圏の中から他者を誹謗中傷して充足感を得る現代の危うさを描く。情報化社会の恐ろしさを肌で感じる作品。
直木賞候補2作目にして凄いものを読んでしまった。#寝読部 pic.twitter.com/5Bwo3zaodk
— なな (@uminoshirabe) June 25, 2025
直木賞にノミネートされた塩田武士さんの『踊りつかれて』は、芸人への誹謗中傷がメインテーマのひとつになっていて、お笑いの世界に世の中の常識が過度に適用される「不条理」が描かれているので、お笑いファンの方にもオススメです。 pic.twitter.com/HdxpCvWHpb
— 編集者の阪上 (@hanjouteiooba) June 12, 2025
ネット社会の功罪は重大な問題。某県では、ネットの攻撃が何人もの命を奪い、今も県全体が揺れ続けている。しかし、そんな「今」しか通用しない物語ではなく、普遍的な人間の業と気高さを両方描いていると思う。
引用:Amazon
塩田武士『踊りつかれて』
誹謗中傷で死を選んだ人気芸人。週刊誌の記事で姿を消した歌姫。加害者達は二人を追い詰めたとして個人情報を晒され被害者になる。今だからこそ読むべきでしたね、これは。腐った性根の自分がSNSを使ってることを考えさせられてしまった。直木賞発表は再来週。楽しみ。#読了 pic.twitter.com/j85aYHaSVH— にしざわまさし (@ni40723ma) July 5, 2025
まとめ:『踊りつかれて』は表舞台を去った歌姫の過去を巡る物語だった
いかがでしたか?『踊りつかれて』の特徴を以下にまとめました。
・第173回直木賞候補作(受賞予想はー:なし)
・SNSの誹謗中傷を行った者が制裁を受けるセンセーショナルな作品
・美月の壮絶な過去が明かされるところは圧巻!
以上です。まだチェックしていない方は、ぜひ読んでみてください!
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