3分で分かる「踊れ、愛より痛いほうへ」のあらすじ&ネタバレ解説・感想まとめ【第173回芥川賞候補作】

今回は「踊れ、愛より痛いほうへ」(著:向坂くじら)のあらすじや感想を紹介。第173回芥川賞の候補作となった本作について、タイトルの意味やラストシーンのネタバレ考察(解説)などをまとめたほか、芥川賞の受賞予想も行いました。

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【第173回芥川賞候補作】向坂くじらの小説「踊れ、愛より痛いほうへ」とは

書名 踊れ、愛より痛いほうへ
作者 向坂くじら
出版社 河出書房新社
発売日 2025年6月24日
ページ数 136ページ
初出 『文藝』2025年春季号

作者の向坂くじらさんは、詩人やエッセイスト、ポエトリーリーディングを行うユニットとしても活動し、注目されている作家です。2024年に初めて発表した小説「いなくなくならなくならないで」は第171回芥川賞の候補作となりました。

「踊れ、愛より痛いほうへ」は、理不尽なことがあると頭が割れる少女・アンノが主人公。自分のバレエのために妹を中絶させた母親に違和感を持ち、やがて自宅の庭でテントを張って家族と離れた生活をするようになります。

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・愛とは何かを深く考えたい人
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3分で分かる「踊れ、愛より痛いほうへ」のあらすじ【※ネタバレなし※】

幼い頃からバレエを習っていたアンノは、自分に納得ができないことがあると、頭が割れることがあった。ある日、親戚の子から自分の母親が妹を身ごもっていたにもかかわらず、アンノがいるために、中絶していたことを知る。

お母さんはなんてやさしくないことをしたんだろう。わたしのために、生まれなかった子どもを産まないなんて、なんて怖いことだろう。そうして、自分は、なんとかして生まれなかった子どもにやさしくしてやりたいと思った。けれど、そのやりかたがわからない。
引用:「踊れ、愛より痛いほうへ」本文より

アンノはバレエの発表会で、理不尽だと感じた大人への反抗心からか、本番で一切踊らなかった。母親からは失望されて、アンノはそれを機にバレエを辞める。

以降、アンノに対して、母はいろんなジャンルの家庭教師をつけるようになる。しかし、アンノはどの先生のことも好きにはなれない。それに父は、家に来る家庭教師たちを毛嫌いしている。

アンノはフリースクールで葉山という突飛な発想をする男の子と出会う。高校になってからフードデリバリーの仕事をはじめた。葉山と揉めたとき、母親から意に沿わない対応をされて、また頭が割れたアンノは、家の庭にテントを張り、そこで生活を続けるようになる。

さらに、インターネット上でできた恋人の祖母である、あーちゃんとの出会いも、アンノに大きな影響を与えていく。アンノが行く先にはどんな未来が待っているのだろうか……。

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「踊れ、愛より痛いほうへ」のネタバレ解説&考察まとめ

ここからは「踊れ、愛より痛いほうへ」の魅力を深掘りするために、タイトルの意味、作品の魅力、ラストシーンのネタバレ考察などを行います。

タイトル「踊れ、愛より痛いほうへ」の意味とは

本作の冒頭は、アンノが踊るシーンではじまります。また、そのシーンはラストシーンともつながっていくのです。つまり、作中を通して「踊る」という行為は重要なテーマを持っており、それがどのような意味を持つのか考えながら読むと、本作の見方が深まるかもしれません。

アンノは幼い頃にバレエを習っています。しかし、母との確執や、周囲の大人への反抗心のようなものが芽生え、アンノは発表会で一切踊らないという暴挙に出ます。そこからラストの踊る場面まで、主人公の心理状態を丁寧に辿って読んでみるとよいでしょう。

愛より痛いほうへは一体どこなのか? なぜ踊るのか? 作中に答えが明示されているわけではありませんが、一人ひとりの読者の捉え方により、それは変わるのではないでしょうか。

ラストシーンのネタバレ考察(解説)

続いて、ラストシーンについて考察した内容を記します。ネタバレとなるので、最後まで読んだ人だけ以下をクリックして中身をチェックしてみてください。

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【ラストまでのおおまかなあらすじ】
アンノは明宏と別れてからもあーちゃんの家に度々訪れていたが、あーちゃんは立ち退きのため、家を去ってしまう。また、アンノ自身も、住処をしていた庭を駐車場にすると知らされ、立ち退きを要求されてしまう。

ある日、あーちゃんが亡くなったことを母から知らされたアンノは、告別式へと出かけた。しかし、アンノが家を出ている最中に庭のテントが撤去されてしまう。告別式の帰りにそのことを知ったアンノは、そのまま橋へと向かい、その場で踊り出した。

【考察(解説)】
ラストの踊るシーンは、冒頭のシーンと重なるところがあり、なぜ彼女が踊ったのかについては読者の想像に委ねている部分が大きいと感じます。

解釈の一つとして、失った自分の妹の分まで、懸命に生きようとする姿が、アンノの踊りに表れていると言えるかもしれません。現実との葛藤を受け入れてどうにかしなければならない、しかし何をしていいか分からない、そんな苦悩が感じられるような気がします。

「踊れ、愛より痛いほうへ」を読んでみた感想

ここからは「踊れ、愛より痛いほうへ」を読んでみた感想を書いていきます。また読者のレビューも合わせてまとめました。

【筆者の感想】細部の詩的表現が光る

作者の向坂くじらさんは、詩人として活動していることもあり、細部の詩的表現が優れているなと感じました。また序盤で、踊りの発表会のシーンは、一切踊らないと決めた子どもたちの震えが伝わってきて、臨場感がありました。

特に、印象に残ったのは終盤で、母親がアンノに喪服を着させる場面。黒のパンプスを履いたために、母より身長が高くなったというシーンなどは、親子愛に加えて、生きる成長と死への転落を象徴的に表しているように感じ、ため息が出るくらい好きでした。

本作は芥川賞の候補作にも選出されていますが、上記のように詩的な表現や優れた場面描写を評価する声が集まりそうです。一方で、愛を焼夷となぞらえたのが、果たして効果的かどうかといった、作品テーマとの向き合い方という点で、評価が分かれるかもしれません。

受賞予想:◯(対抗)

【みんなの感想や評価】愛と痛みについて深く考えさせられる

続いて、読者がSNSにあげた投稿やレビューをいくつか紹介しましょう。

まとめ:「踊れ、愛より痛いほうへ」は詩的な表現が光る小説だった

いかがでしたか?「踊れ、愛より痛いほうへ」の特徴を以下にまとめました。

・第173回芥川賞候補作(受賞予想は◯【対抗】)
・詩人としても活動している作家ならでは細部の描写が光る
・なぜ踊るのかという意味を考えながら読むとさらに楽しめる

以上です。まだチェックしていない方は、ぜひ読んでみてください!

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