今回は乗代雄介さんの小説「二十四五」のあらすじや感想を紹介。タイトルの意味や作品の魅力、ラストシーンのネタバレ考察などもふまえて、第172回芥川賞を受賞するかどうかの予想も合わせて行います。
【第172回芥川賞候補作】乗代雄介さんの小説「二十四五」とは
書名 | 二十四五 |
作者 | 乗代雄介 |
出版社 | 講談社 |
発売日 | 2025年1月16日 |
ページ数 | 121ページ |
初出 | 『群像』2024年12月号 |
作者の乗代雄介さんは「十七八より」で群像文学新人賞を受賞してデビュー。著者は、ロングセラーの「旅する練習」を含め、これまで四度芥川賞の候補作に選出されており、今作「二十四五」で五度目の候補となっています。
「二十四五」は語り手である「私」が、弟の結婚式で訪れた仙台にて、五年前に亡くなった叔母と巡りたかった場所を回るという話です。小説家としてデビューした「私」は、家族・旧友との再会などを通じて、過去の叔母との記憶を往復させていきます。
※「二十四五」は以下に当てはまる人におすすめ!
・亡くなった人との思い出が忘れられずモヤモヤしている人
・優れた風景描写の作品を読んでみたい人
・第172回芥川賞の候補となった話題作をチェックしたい人
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3分で分かる「二十四五」のあらすじ【※ネタバレなし※】
弟の結婚式のために仙台を訪れた私には、もう一つ別の目的があった。それは五年前に亡くなった叔母と回るはずだった場所を巡ること。弟からは「それって楽しいの、悲しいの」と聞かれ、私はうまく答えられないでいた。
結婚式で、私は新郎である弟のエスコート役に任命された。「文学賞をとって小説家デビューした」と紹介される。私は空席になった自分の席を見て思うのだ。
五年前に死んだのが私の方だったら?
引用:「二十四五」本文より
小説家でありながら、自分の作品が誰かに読まれたことを知りたくない、私。叔母との過去の思い出、家族や旧友との出会い、東日本大震災での記憶などを通じ、仙台での三日間が過ぎていく…。
「二十四五」のネタバレ解説&考察まとめ
ここからは「二十四五」の魅力を深掘りするために、タイトルの意味、作品の魅力、ラストシーンのネタバレ考察などを行います。
タイトル「二十四五」の意味とは
タイトルの「二十四五」というのは、ずばり語り手である「私」の年齢を指しています。曖昧にぼかしているところが、いろんな解釈ができそうですね。「私」という人物が自分自身のことをつかめていない不確かさのようなものを表しているようにも思えます。
また、作者の乗代雄介さんのデビュー作が「十七八より」なので、そのつながりも感じます。ただタイトルが似ているだけでなく、登場人物にも深い関連があるのです。この点は次章で詳しく述べていきましょう。
主人公・阿佐美景子シリーズの最新作!他作品とのつながりは?
本作の語り手である「私」の名前は、作品中盤で明かされます。「私」の名前は「阿佐美景子」。乗代雄介さんが好きな人にはすぐにピンとくるでしょう。あの、阿佐美景子がまた登場しています。
もはやシリーズものといっていい作品となっており、「阿佐美家サーガ」とも呼ばれています。阿佐美景子が登場した作品を、発表年順に並べてみました。
・「十七八より」(デビュー作)
・「未熟な同感者」
・「最高の任務」
・「フィリフヨンカのべっぴんさん」
デビュー作の「十七八より」でも、語り手と叔母との対話がテーマとなっており、叔母の存在が大きな意味を持っていることが分かります。
今作が気に入った人は、ぜひ他の「阿佐美家サーガ」シリーズも読んでみてください!
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ラストシーンのネタバレ考察!
ここではラストシーンの内容も踏まえて、本作の主題を考察していきます。ネタバレとなるので、最後まで読んだ人だけ以下をクリックしてみてください。
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景子は仙台へ行く列車の車内で声をかけられた平原夏葵と、仙台滞在三日目を過ごすことにしました。古墳を巡り、結婚式の写真を見た夏葵は、「Jupiter」を歌って思いを伝えます。そしてこう言うのです。
人って、変わっていくじゃないですか。変わる前も変わった後のことも大体わかったら、それは友達です。大人になると新しい友達ができないのは、そもそも人は大人になると変わらなくなるから。変わる自分を人に見せなくなるから
引用:「二十四五」本文より
それは、相手が死んだ場合でも、「大体わかる」という気持ちになるのだから、友達という関係を続けられると言います。景子はその言葉を聞いて、亡くなった叔母との関係をまた振り返るのです。
【考察】
大人になって友達になるというのは、意外と難しいなと感じることが筆者にもあります。そう考えると、この夏葵の言葉はストレートに胸に響くものがありました。亡くなった者とも友達になれるという考え方は、気持ちを楽にさせてくれそうです。
「二十四五」を読んでみた感想
ここからは「二十四五」を読んでみた感想を書いていきます。また読者のレビューも合わせてまとめました。
【筆者の感想】登場人物たちの心理を反映させた風景描写が秀逸
乗代さんの作品は、特に風景描写が素晴らしいなといつも思います。それが如実に出ていた「旅する練習」からのファンで、今作でも同じ思いになるところがありました。
特に印象的だったのが、終盤の景子と夏葵が古墳を巡るシーン。少し引用しましょう。
私たちが来たのとはべつの大きな出入口の方へ坂を下っていく親子連れが目についた。飛行機の音がかすかに響き始めると、幼い男の子は振り返って空を見上げた。つられて空を探すと、梢の間を斜めにすべる機体が見えた。
引用:「二十四五」本文より
こういう子どもの無邪気な目線と雄大な空の対比が素晴らしく、それは終盤の夏葵のふるまいにも重なっていくところがあります。
さて、本作は第172回芥川賞の候補作に選出されています。五回目の候補なのでそろそろ受賞してほしい気持ちもありますが、果たしてどうなのでしょうか。
結論からいうと、受賞はやや難しい気がします。以前にも言いましたが、乗代さんは直木賞の方が向いていそうです。風景描写に魅力があるので「旅する練習」のような旅をメインとした長編で、幼い主人公の成長を描くと、直木賞で評価されやすい作品になるのではないでしょうか。
受賞予想:ー(なし)
(全候補作を読み終えた段階でもう一度予想してみます)
【みんなの感想や評価】生きてほしいより、もっと強い祈り
続いて、読者の方の評価やレビューをまとめました。
乗代雄介さん「二十四五」(群像12月号)
叔母のいない世界で書く、その心情に言葉にならないこみあげるものがあった。書かれていない叔母の思いがしみてくる。
生きてほしいより、もっと強い祈り。ずっと景子に残り続ける。何度も何度も読み返したい、色々な感情でいっぱいになる美しく優しい作品。 pic.twitter.com/TtEwuT3cA0— 書店員マリ (@MacchiatoMari) November 8, 2024
名古屋も過ぎた。新大阪までまもなく。
『群像』掲載、乗代雄介さん「二十四五」読了。期待していた、緊張もしていた。乗代さんの作品はどれもぐいぐい読まされるし、感嘆するけど自分はいつもほんのすこしだけ引っ掛かりを抱くことがあった。本作、とても美しかった。冒頭、『違国日記』が出て驚く。 pic.twitter.com/N4n84ubnxd— 朝日出版社 酒部(サケブ) (@asahipress_sake) November 10, 2024
芥川賞候補作、乗代雄介『二十四五』面白かった!
これは単行本出たら買うぞ^ ^でもね、個人的に思うのは乗代さんってすでに多くの作品を書かれているベテラン作家だと思っているので、芥川賞の対象の作家になるのかなと疑問もないではない。。
— フェネギー (@NOREN_WAKE) December 13, 2024
まとめ:「二十四五」は語り手と死んだ叔母の関係を綴る物語だった
いかがでしたか?「二十四五」の特徴を以下にまとめました。
・第172回芥川賞候補作【受賞予想はー(なし)】
・阿佐美景子を語り手とした阿佐美家サーガの最新作
・語り手と亡くなった叔母との関係性に注目
以上です。まだチェックしていない方は、ぜひ読んでみてください!
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