今回は第175回直木賞の候補作から受賞作を大予想!全候補作のあらすじと講評をしたうえで、受賞作を予想していきます。受賞作発表日は2026年7月15日。果たしてどの作品が受賞するのでしょうか?
そもそも直木賞とはどんな文学賞?
直木賞は大衆文学の新人〜中堅作家に与えられる権威ある文学賞です。芥川賞と同時期に発表されます。これまでの主な受賞者は、宮部みゆきさん、東野圭吾さん、池井戸潤さん、角田光代さんなど、名だたる人気作家が名を連ねています。
前回の第174回直木賞は、嶋津輝さんの『カフェーの帰り道』が受賞しました。
⇒嶋津輝さんの『カフェーの帰り道』のあらすじや感想はこちらから
第175回直木賞の候補作品を紹介
第175回直木賞の候補となったのは、以下の五作品です。(並びは作家名の順)
| 作品名 | 作家名 | 出版社 | 候補回数 |
| けんぐゎい | 朝倉かすみ | 光文社 | 三回目 |
| 見えるか保己一 | 蝉谷めぐ実 | KADOKAWA | 初 |
| 多類婚姻譚 | 凪良ゆう | 講談社 | 二回目 |
| #台所のあるところ | 原田ひ香 | 文藝春秋 | 初 |
| 青天 | 若林正恭 | 文藝春秋 | 初 |
最も多い三回目の候補となったのが、朝倉かすみさん。一回目に候補となった小説『平場の月』は最近映画化されて、話題になりました。今作『けんぐゎい』は著者初の歴史小説となっています。
二回目の候補となった凪良ゆうさんは、『流浪の月』と『汝、星のごとく』で本屋大賞を二度受賞した人気作家。前回の直木賞候補作は長編小説でしたが、今回は短編集が候補となりました。
初候補のうち、最も話題性が高いのは若林正恭さんでしょう。漫才師であり、番組MCも務める人気芸人で、自身初の小説が今回ノミネートされた『青天』。既にかなりのヒットを記録しています。
原田ひ香さんも、ドラマ化された『三千円の使いかた』をはじめヒット作を多く発表してきた作家です。また、蝉谷めぐ実さんの『見えるか保己一』は既に山本周五郎賞を受賞しており、注目を集めています。
各候補作のあらすじと講評
ここからは各候補作について、簡単なあらすじと講評をまとめました。受賞予想(◎:大本命、◯:対抗、△:大穴)を合わせてしているので、チェックしてみてください。
『けんぐゎい』朝倉かすみ(光文社)
| 書名 | けんぐゎい |
| 作者 | 朝倉かすみ |
| 出版社 | 光文社 |
| 発売日 | 2026年3月16日 |
| ページ数 | 422ページ |
・『けんぐゎい』を購入したい人はこちらから
【あらすじ】
時は江戸時代。ふゆは、奉公先で外聞が良い男に手籠めにされてしまう。酷い痘痕で悩むふゆは「圏外」と罵られて暴行され、ついには懐妊する。そこで、ある女性の産科医を訪れたことが転機となり、女性を助ける施設を作って世のためになると誓う。
【講評】
奉公先の養子である宗三郎を徹底的に悪く書き、序盤はかなり辛い描写も続くが、それが後半の主人公の生き方に繋がっていく。少し冗長に感じる場面がある点(特に前半)や、一回目に候補となった『平場の月』に比べるとやや見劣りしてしまう点が難点か。
受賞予想:◯(対抗)
『見えるか保己一』蝉谷めぐ実(KADOKAWA)
| 書名 | 見えるか保己一 |
| 作者 | 蝉谷めぐ実 |
| 出版社 | KADOKAWA |
| 発売日 | 2026年3月13日 |
| ページ数 | 352ページ |
・『見えるか保己一』を購入したい人はこちらから
【あらすじ】
幼少時に失明しながら、優れた業績を収めた学者・塙保己一。妻や幼馴染、弟子などからすると、まるで保己一が実際には見えているかのような言動を感じていた。保己一と周囲の人間を巡る、「見える・見えない」に迫った物語。
【講評】
保己一本人がどうやって成功の道を歩んでいったかという記述はあえて抑えて、周囲の人間が保己一と接する中で生まれたすれ違いや思惑などを描く。「見える・見えない」というテーマの中で、小説にしかできないことを巧みに表現していて、その力量に驚いた。
受賞予想:◎(本命)
『多類婚姻譚』凪良ゆう(講談社)
| 書名 | 多類婚姻譚 |
| 作者 | 凪良ゆう |
| 出版社 | 講談社 |
| 発売日 | 2026年5月27日 |
| ページ数 | 320ページ |
・『多類婚姻譚』を購入したい人はこちらから
【あらすじ】
現代の結婚を巡る五つの物語。実家から結婚の心配ばかりされるわたしは、同棲する恋人を連れて実家へ帰ることにした。しかし、そこにはまだ伝えていない大きな秘密があった(「Thank you for your understanding」)。ほか、計五編を収録。
【講評】
多様性への無理解ではなく、当事者本人の思考に潜む問題意識を表出させる「Thank you for your understanding」など、現代の結婚が抱える課題に向けての独自の視点が光る。ただ筆者なりの解決策や、もう一歩踏み込んだ展開を提示してほしかった。
受賞予想:△(大穴)
『#台所のあるところ』原田ひ香(文藝春秋)
| 書名 | #台所のあるところ |
| 作者 | 原田ひ香 |
| 出版社 | 文藝春秋 |
| 発売日 | 2026年5月13日 |
| ページ数 | 304ページ |
・『#台所のあるところ』を購入したい人はこちらから
【あらすじ】
台所を巡る六人の女性の物語。子どもが巣立ち、広い家に一人残された五十五歳の飯森敦子は、壊れた冷蔵庫の買い替えを検討するが…(「ままならないキッチン、ままならない人生」)など。六人の女性たちを繋ぐのは、深夜ドラマの存在だった。
【講評】
台所がテーマだけあって、料理の描写が細かくてどれもおいしそうな点が大きな魅力。BS深夜ドラマの解像度も高い。しかし、肝心のSNSで登場人物たちが感想を呟き合うシーンはもっと幅広くしていた方が、物語としても有機的に絡んだのではないだろうか。
受賞予想:ー
『青天』若林正恭(文藝春秋)
| 書名 | 青天 |
| 作者 | 若林正恭 |
| 出版社 | 文藝春秋 |
| 発売日 | 2026年2月20日 |
| ページ数 | 304ページ |
・『青天』を購入したい人はこちらから
【あらすじ】
万年2回戦止まりの高校アメフト部に所属するアリこと中村昴は、三年春の最後の大会で強豪校のエースに吹っ飛ばされて全てが終わる。放心状態のまま高校生活を過ごしていたが、あるきっかけで秋の大会に向けて復帰することになり…。
【講評】
若林正恭さんの高校時代の経験が存分に活きた青春スポーツ小説。試合中にラップのライムを引用しながら駆け上がる場面は疾走感と迫力があり、魅了された。倫理の授業を気に入った動機や、人物描写などに深みが出れば、もっと高く評価されただろう。
受賞予想:ー
第175回直木賞の大本命は蝉谷めぐ実さんの『見えるか保己一』
いかがでしたか?さとなり編集部では以下のように予想してみました。
◎(本命):『見えるか保己一』蝉谷めぐ実
◯(対抗):『けんぐゎい』朝倉かすみ
△(大穴):『多類婚姻譚』凪良ゆう
『見えるか保己一』が突出しているため、単独受賞となるかなと思います。受賞作発表は7月15日。また発表後に記事を更新いたします!
→【7月15日追記】朝倉かすみさんの『けんぐゎい』が受賞しました! 本命予想は外れましたが、対抗予想が当たった形となりました。


コメント