第173回直木賞を予想!『逃亡者は北へ向かう』が大本命か

今回は第173回直木賞の候補作から受賞作を大予想!全候補作のあらすじと講評をしたうえで、受賞作を予想していきます。受賞作発表日は2025年7月16日。果たしてどの作品が受賞するのでしょうか?

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そもそも直木賞とはどんな文学賞?

直木賞は大衆文学の新人〜中堅作家に与えられる権威ある文学賞です。芥川賞と同時期に発表されます。これまでの主な受賞者は、宮部みゆきさん、東野圭吾さん、池井戸潤さん、角田光代さんなど、名だたる人気作家が名を連ねています。

最新回の第172回直木賞は、伊与原新さんの『藍を継ぐ海』が受賞という結果になりました。

⇒伊与原新さんの『藍を継ぐ海』のあらすじや感想はこちらから

第173回直木賞の候補作品を紹介

第173回直木賞の候補となったのは、以下の六作品です。(並びは作家名の順)

作品名 作家名 出版社 候補回数
ブレイクショットの軌跡 逢坂冬馬 早川書房 二回目
乱歩と千畝─RAMPOとSEMPO─ 青柳碧人 新潮社
嘘と隣人 芦沢央 文藝春秋 二回目
踊りつかれて 塩田武士 文藝春秋
Nの逸脱 夏木志朋 ポプラ社
逃亡者は北へ向かう 柚月裕子 新潮社 三回目

最多の三回目の選出となったのが、柚月裕子さんの『逃亡者は北へ向かう』。『孤狼の血』などのヒット作を発表してきた柚月さんの小説で、東日本大震災を彷彿とさせる震災が起きた直後の殺人事件をテーマにしたクライムサスペンスとなっています。

二回目の候補となったのが、芦沢央さんの『嘘と隣人』と逢坂冬馬さんの『ブレイクショットの軌跡』。芦沢央さんの作品は刑事・平良正太郎シリーズの最新作で、秋からはWOWOWでドラマ化が決定しています。また、逢坂冬馬さんはデビュー作の『同志少女よ、敵を撃て』が本屋大賞を受賞した話題の作家です。

初候補のなかで、最も知名度が高いのは塩田武士さんでしょう。これまで『罪の声』や『騙し絵の牙』などの映画化もされたヒット作を残しています。また、夏木志朋さんは2020年にデビューしたばかりの若手作家。青柳碧人さんの『乱歩と千畝─RAMPOとSEMPO─』は今回で唯一の歴史小説となっています。

各候補作のあらすじと講評

ここからは各候補作について、簡単なあらすじと講評をまとめました。受賞予想(◎:大本命、◯:対抗、△:大穴)を合わせてしているので、チェックしてみてください。

逢坂冬馬『ブレイクショットの軌跡』(早川書房)

書名 ブレイクショットの軌跡
作者 逢坂冬馬
出版社 早川書房
発売日 2025年3月12日
ページ数 584ページ

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【あらすじ】
1台のブレイクショットという車を通じて、さまざまな人の運命が変わっていく物語。サッカー友だちだった桐山修悟と後藤晴斗は、それぞれの父親に起きた悲劇をどう乗り越えていくのか。

『ブレイクショットの軌跡』のあらすじを詳しく読んでみる

【講評】
構成の妙が光る作品。さまざまなところに配置した伏線を回収しており、その手腕には感心させられる。多くのテーマを昇華しているが、それを逆に詰め込み過ぎと評する選考委員がいるかもしれない。

受賞予想:◯(対抗)

青柳碧人『乱歩と千畝─RAMPOとSEMPO─』(新潮社)

書名 乱歩と千畝─RAMPOとSEMPO─
作者 青柳碧人
出版社 新潮社
発売日 2025年5月14日
ページ数 384ページ

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【あらすじ】
早稲田のそば屋で、平井太郎と杉原千畝は出会った。その頃はまだ何者でも無かった二人だが、千畝は太郎のひょんな一言から外交官を志し、一方の平井はその後、人気の推理作家・江戸川乱歩となっていく。

『乱歩と千畝─RAMPOとSEMPO─』のあらすじを詳しく読んでみる

【講評】
江戸川乱歩と杉原千畝がもしも出会っていたらという、設定がまずおもしろい。また、二人を支えた妻の存在がとても印象に残った。ただ史実に関する記述が多い一方で、人間ドラマを書いている部分が少なく感じるところがややマイナスか。

受賞予想:△(大穴)

芦沢央『嘘と隣人』(文藝春秋)

書名 嘘と隣人
作者 芦沢央
出版社 文藝春秋
発売日 2025年4月23日
ページ数 256ページ

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【あらすじ】
穏やかな隠居生活を送っている元刑事の平良正太郎だが、現在も隣人のトラブルに巻き込まれる。また過去に自分が対応した事件を振り返ってみると、人間らしい生活を送っている今だからこそ気づけるところもあった。

『嘘と隣人』のあらすじを詳しく読んでみる

【講評】
元刑事という設定に独自性があり、興味深く読んだ。ただ、せっかくの設定を活かしきれていないと感じることもあり、隠居生活を送っている主人公ならではの気づきや新たな見方が増えるとおもしろいと感じる。

受賞予想:ー

塩田武士『踊りつかれて』(文藝春秋)

書名 踊りつかれて
作者 塩田武士
出版社 文藝春秋
発売日 2025年5月27日
ページ数 480ページ

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【あらすじ】
不倫報道の末にSNSでの誹謗中傷などにより自殺した芸人。週刊誌による暴言テープの流出で表舞台を去った伝説の歌姫。二人を転落させた原因を作り出した者たちの個人情報を晒して逮捕された男には、二人との意外な共通点があった。

『踊りつかれて』のあらすじを詳しく読んでみる

【講評】
冒頭で誹謗中傷をした者への制裁が加えられ、小説冒頭は魅力的な指摘がなされ、期待させられた。しかし、SNSの闇をついて行く物語かと思った反面、後半は伝説の歌姫の過去を辿っていく場面がほとんどを占めていて、肩透かしを食らった気分になった。

受賞予想:ー

夏木志朋『Nの逸脱』(ポプラ社)

書名 Nの逸脱
作者 夏木志朋
出版社 ポプラ社
発売日 2025年1月22日
ページ数 250ページ

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【あらすじ】
爬虫類のペットショップで働く金本篤は、LEDライドだけを買いに来た男を不審に思い、跡をつけていく。金に困っていた篤は、その男の弱みを握り、金をむしり取れないかと思うが……(「場違いな客」)を含む、3篇の短編から成る小説

『Nの逸脱』のあらすじを詳しく読んでみる

【講評】
3篇の短編のうち、「場違いな客」が最も好きな物語だった。ハラハラさせられる展開で、家族の絆や犯罪者心理をうまくちりばめており、可能性を感じさせる。一方、「スタンドプレイ」はやや魅力に乏しく、作品ごとにばらつきがあるのが気になった。

受賞予想:ー

柚月裕『逃亡者は北へ向かう』(新潮社)

書名 逃亡者は北へ向かう
作者 柚月裕子
出版社 新潮社
発売日 2025年2月27日
ページ数 384ページ

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【あらすじ】
東北の大震災の直後に、二つの殺人事件を起こして、北へと逃亡している青年。不遇の人生を送ってきた逃亡者はどこへ向かうのか。娘を震災で亡くして犯人を追う刑事、行方不明となった息子を探している男が行きついた先にあったものとは?

『逃亡者は北へ向かう』のあらすじを詳しく読んでみる

【講評】
震災の惨さと、逃亡劇の緊張感が合わさった傑作。犯人の苦悩に加えて、追う刑事側も心に葛藤を感じながら任務にあたっており、いろいろと考えさせられる。冒頭の方で刑事と犯人の接点をもう少し濃くした方がよかったかもしれないが、トータルで総合力を感じる作品。

受賞予想:◎(大本命)

第173回直木賞の大本命は柚月裕子さんの『逃亡者は北へ向かう』

いかがでしたか?さとなり編集部では以下のように予想してみました。

◎(本命):柚月裕子『逃亡者は北へ向かう』
◯(対抗):逢坂冬馬『ブレイクショットの軌跡』
△(大穴):青柳碧人『乱歩と千畝─RAMPOとSEMPO─』

受賞作発表は7月16日。また発表後に記事を更新いたします!

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