今回は「丹心/まごころ」(著:仁科斂)のあらすじや感想を紹介。タイトルの読み方や意味、登場人物の紹介、ラストシーンのネタバレ考察(解説)、読者の口コミレビュー評価、芥川賞の受賞予想などをまとめました。
【第175回芥川賞候補作】仁科斂の小説「丹心/まごころ」とは
| 書名 | 丹心/まごころ |
| 作者 | 仁科斂 |
| 出版社 | 新潮社 |
| 発売日 | 2026年7月15日 |
| ページ数 | 192ページ |
| 初出 | 『新潮』2026年4月号 |
作者の仁科斂さんは、「さびしさは一個の廃墟」で新潮新人賞を受賞し、作家デビュー。イギリスのオックスフォード大学を卒業し、現在は東京大学大学院に在籍しながら、多摩美術大学芸術学科の非常勤講師も務めています。
第175回芥川龍之介賞の候補に、仁科斂(にしな・れん)さんの「丹心(まごころ)」(新潮4月号掲載)が選ばれました。選考会は7月15日(水)です。… pic.twitter.com/6XWQ1QZFWp
— 新潮社出版部文芸 (@Shincho_Bungei) June 10, 2026
「丹心/まごころ」は、建築家で大学教授の鹿野川が、中国の資産家令嬢Qから美術館設計を依頼されるところから始まる物語です。指導学生のレンが中国へ渡り、次第に美術館建築の裏に隠された陰謀が分かっていきます。
※「丹心/まごころ」は以下に当てはまる人におすすめ!
・建築を扱った純文学作品を読みたい人
・文学で日中関係を表現する作品を味わいたい人
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3分で分かる「丹心/まごころ」のあらすじ【※ネタバレなし※】
大学教授で建築家の鹿野川航のもとに、中国の資産家令嬢・Qから一件の知らせが届いた。建築途中で頓挫した廃墟マンション(爛尾楼)の代わりに、美術館を設計してほしいという依頼だ。
中国で美術館を建てることは、建築家としての意義が大きいと考えた鹿野川は依頼を引き受け、中国語もできる指導学生のレンを中国へと送る。
しかし、廃墟マンションにはまだ住んでいる人がいて、立ち退きが必要であった。立ち退き要員として青幇(ヤクザのような存在)がいるが、暴力沙汰を避けたいレンは、一歩退いて見ている。
さらに、美術館設計の依頼にはある陰謀も隠されていた。レンは次第にその陰謀に巻き込まれ始める。一方、日本で大学教授として働く鹿野川にも変化が訪れていき……。
「丹心/まごころ」の主な登場人物まとめ
「丹心/まごころ」の主な登場人物についてまとめました。
・鹿野川航
都内某総合大学建築学科教授。五十二歳。建築家としての師匠は磯崎新。鈍感な一面がある。
・レン
鹿野川の指導学生。中国へ行った当初は周囲の人を警戒していたが、やがて打ち解けていく。
・Q
中国の資産家令嬢。ラブブが好きで、わりと身勝手な性格。鹿野川からすると、恐ろしく美人。
・Qの父
ほぼ無から財を成し、上水道局長やイチゴ農園経営者にまで上りつめた。酒に酔うと自慢しがち。
・鹿野川の妻
四十歳。妊娠してつわりに苦しめられていたが、つわりが無くなると活発になった。
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「丹心/まごころ」のネタバレ解説&考察まとめ
ここからは「丹心/まごころ」の魅力を深掘りするために、タイトルの意味、作品の魅力、ラストシーンのネタバレ考察などを行います。
「丹心/まごころ」のタイトルの意味は?
タイトルの「丹心」は「まごころ」という読み方で、ある詩に出てくるフレーズです。作中、この詩を紹介する場面で、以下のように説明されます。
〈人生自古誰無死 留取丹心照汗青〉
どうせ人間は死ぬのだから、せめて生きているうち、まごころを以て歴史を照らそう。
引用:「丹心/まごころ」本文より
中国での美術館建築が大きなテーマですが、本件を依頼してきたQ女史をはじめ、その父親、そして対応にあたった指導学生のレンはそれぞれ胸の中に思惑を秘めています。
そんななか、大学教授であり、建築家の鹿野川だけが「丹心」を持って建築と向き合っているようにも読めます。
誰が「丹心」を持っているのかという点に注目して読み進めていくのもよいでしょう。
中国の流行や文化事情、建築学の専門分野なども盛りこむ
本作の主な舞台は中国。中国では「トイストーリー3」で悪役だった「ロッティ」が爆発的人気を得ていたり、「ラブブ」は本物だけが価値があったり、と中国での流行事情を示しながら物語を構築しています。
また、建築の分野においても、「斗栱」という柱の上に十字の肘木を設置する工法の説明が出てきて、この工法が物語全体において大きな意義を持っています。このように専門分野の知識や知恵が、小説を作る重要な要素となっているのが特徴です。
「丹心/まごころ」のラストシーンをネタバレ考察(解説)
ここでは、「丹心/まごころ」のラストシーンについて考察(解説)した内容を記します。
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【ラストシーンまでの大まかなあらすじ】
美術館には後々にリゾートホテルを建設するという陰謀があり、立ち退きの際も暴力が使われるなど、紆余曲折あった。鹿野川が中国へやってきて、迎えた着工式で事件が起こる。ドローンが飛んできて警告してきたのだ。
それまで状況をよく理解していなかった鹿野川だが、とにかく誠意を見せるのが大事だと思い、土下座する。その姿勢に周囲は驚き、結果的に丸く収まる。そして、無事に美術館が建築され、開館を迎えたのだった。
【考察(解説)】
鹿野川は建築の歴史の深さを知ったうえで、建物は上下の関係である「タテモノ」ではなく、これからは横の関係を重視すべきだという考えを持っていました。また、誠実に向き合うことで事態を乗り越えるという信念がありました。
そんなあまりにまっすぐな姿勢が、人々の思惑が交差する中国において有効だったのでしょう。タイトルの意味合いもまっすぐに反映されたクライマックスでした。
「丹心/まごころ」を読んでみた感想
ここからは「丹心/まごころ」を読んでみた感想を書いていきます。また読者のレビューも合わせてまとめました。
【筆者の感想】序盤からの伏線も効いている
冒頭で中国から送られてきた手紙に「陰謀」っぽい言葉があると感じるなど、序盤から丁寧に伏線も張られていて、物語の構築の仕方がうまいと感じました。
何より鹿野川のまっすぐで時にどんな性格が愛らしくて好きです。建築学に対してはとても真摯ですが、奥さん以外の人間をしっかり女性として見ているところなども、なんだか人間らしくていいなと思いました。
本作はデビュー作の新潮新人賞受賞作「さびしさは一個の廃墟」と、登場人物が重なるそうです。鹿野川がどういった描かれ方をしているのか、こちらも合わせて読んでみたくなりました。
本作は芥川賞の候補作に選出されていますが、建築分野の知識を小説世界にうまく当てはめつつ、日中関係にも踏み込んでいる点が高く評価されそうです。
一方で、終盤シーンで窮地を乗り越えたシーンについて本当にそれで万事解決するのかという疑問が出るかもしれません。
受賞予想:◯(対抗)
【読者の口コミレビュー】現代中国の負の部分をユーモラスに描く
続いて、読者がSNSに投稿した口コミレビューを紹介します。
仁科斂「丹心」 #読了
「まごころ」とは、と読みながらも読み終わってからも考えてしまう。
ついこの前中国の作家の小説を読んだけど、日本と近いようで遠いし似てるようで違うところもいっぱいあるなと感じる。
寧波の博物館に行ってみたい。
第175回芥川賞候補作。 pic.twitter.com/bcVgRNJYCA
— マヤ@文学淑女 (@Mayaya1986) June 22, 2026
『丹心(まごころ)』仁科斂(2026上期芥川賞候補)読了!
中国・寧波での美術館設計を依頼された建築家と、現地に居座る住民立ち退きを進行させる教え子…
現代中国の負の部分を半ばユーモラスに描いたところは面白かった…
人間の善意としたたかさが展開していきます^^#丹心#仁科斂#芥川賞候補— 松本ひろみ (@kochanoato1215) June 21, 2026
仁科斂「丹心(まごころ)」新潮・4/芥川賞候補作#読了
骨太の建築小説と云えばそれまでなのだが、(わりかし自分好みの)タフな文体が、現代の我々にも接続していくテーマを包含し、眼前に新しい景色を打ちたてる。
歴史・夢・ロマン・情。どれも自分を刺戟するものばかりでとても楽しめた。— みちゃえる (@mic_hael_73) June 30, 2026
『新潮』2026年4月号、仁科斂「丹心」 #読了
私が中国文化に詳しくないせいか、正直あまり理解できなかった…!でも、レンの事情通なところとか、建築の依頼ってこうやって進んでいくのかなとか知れて面白かった!あまり読んだことのない内容の本だったので新鮮でした🌇 pic.twitter.com/Qjrf3TvEYd
— 青山はら (@penguin_aoyama) June 20, 2026
まとめ:「丹心/まごころ」は中国の美術館設計から始まる物語だった
いかがでしたか?「丹心/まごころ」の特徴を以下にまとめました。
・第175回芥川賞候補作(受賞予想は◯:対抗)
・大学教授で建築家の鹿野川のピュアで鈍感な人物像が魅力
・建築の専門知識や中国の流行文化事情をうまく落とし込んでいる
以上です。まだチェックしていない方は、ぜひ読んでみてください!
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