今回は小説『虚の伽藍』(著:月村了衛)のあらすじや登場人物、感想をご紹介!タイトルの意味や作品の魅力、ラストシーンのネタバレ考察(解説)などもまとめました。仏教界の半沢直樹(?)のような本作、ぜひチェックしてみてください。
【第172回直木賞候補作】月村了衛の小説『虚の伽藍』とは
書名 | 虚の伽藍 |
作者 | 月村了衛 |
出版社 | 新潮社 |
発売日 | 2024年10月17日 |
ページ数 | 432ページ |
作者の月村了衛さんは、脚本家としてのキャリアを経て、2010年に『機龍警察』で小説デビュー。同作はシリーズ化しており、シリーズ三作目となった『機龍警察 暗黒市場』では第34回吉川英治文学新人賞を受賞しました。
『虚の伽藍』は、僧侶の志方凌玄が京都の裏社会の人物と手を組み、仏教界での出世を目指す物語です。私利私欲のために道を踏み外している上司の僧侶たちを倒し、自分なりの流儀を通して、凌玄はのしあがっていきます。
※『虚の伽藍』は以下に当てはまる人におすすめ!
・仏教界の会社組織に関心がある人
・ダークな雰囲気の「半沢直樹」的世界観をを楽しみたい人
・第172回直木賞の候補となった話題作をチェックしたい人
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3分で分かる『虚の伽藍』のあらすじ【※ネタバレなし※】
伝統仏教最大宗派の一つに数えられる「錦応山燈念寺派」の新人職員として働く僧侶・志方凌玄は、出世を重ねて実家の寺を有形無形に支援したいという野望があった。
ある日、総局が売却を決めた夜久野の土地の整地現場に赴いたところ、資料にはなかった仏堂があるのに気づく。上司に報告してもまともに取り合ってもらえず、それどころかはぐらかされる始末。
後日、凌玄はある男に声を掛けられる。それは夜久野の工事現場でふと目にした男・和久良桟人だった。和久良は凌玄に興味を示し、ともに上司の不正を追及することになる。そんな和久良から紹介されたのは、扇羽組の若頭・最上徳一だった。
自分なりの流儀のもと、京都の裏社会と手を組み、燈念寺派でのしあがっていく凌玄。己の欲望のために不正に手を染める僧侶、扇羽組と敵対する暴力団、裏の顔を持つ市役所職員などと対峙しながら、その先で得たものとは……。
『虚の伽藍』の主な登場人物まとめ
『虚の伽藍』の主な登場人物についてまとめました。
【錦応山燈念寺派】
・志方凌玄(しかたりょうげん):主人公。総局公室文書部の新人職員
・瀧川海照(たきがわかいしょう):総局内事部。凌玄の大学の同級生
・小島截善(こじまさいぜん):文書部長
・南潮寛(みなみちょうかん):総局公室長
・佐野暁常(さのぎょうじょう):統合役員会の責任役員
・塚本号命(つかもとごうめい):統合役員筆頭
【凌玄の味方となる裏社会の人物】
・和久良桟人(わくらさんじん):和倉総業社長。京都の裏社会の顔役
・最上徳一(もがみとくいち):扇羽組若頭
・氷室(ひむろ):扇羽組の若い衆。京大卒の切れ者
【凌玄の敵?となる裏社会の人物】
・藪来晋之助(やぶらいしんのすけ):ヤブライ不動産経営
・粕辺義三郎(かすべぎさぶろう):カスベ興産経営
・上田博司(うえだひろし):京都大学名誉教授
・恵那一比古(えなかずひこ):イエナハウス社
・飯降克雄(いぶりかつお):京都市役所国際企画室長
【その他の人物】
・大豊佐登子(おおとよさとこ):叡光寺住職の娘
・万代美緒(ばんだいみお):位剛院住職の娘。佐登子の友人
『虚の伽藍』のネタバレ解説&考察まとめ
ここからは『虚の伽藍』の魅力を深掘りするために、タイトルの意味、作品の魅力、ラストシーンのネタバレ考察などを行います。
タイトル「虚の伽藍」の意味とは?
タイトルにある「伽藍」とは、僧侶が集まって修行をする場所を指します。本作には煩悩にまみれ不正に手を染める僧侶が大勢出てくるので、そんな僧侶たちを揶揄している表現が「虚の伽藍」だと捉えることができるでしょう。
そんな不正を糾弾し、出世していく主人公の凌玄ですが、彼も正義の味方とは決して言い難いのも本作の特徴です。「虚の伽藍」という表現は、ラストシーンで彼が見た光景とも重なってくるのですが、それは二つ次の章の「ラストシーンをネタバレ考察」のところで詳しく述べていきます。
ダークな「僧侶版・半沢直樹」のような世界観
仏教界の会社組織の中で新人職員がのし上がっていくストーリーは、あの大人気ドラマ「半沢直樹」の世界観を彷彿とさせます。特に序盤は同じ会社組織の上司が罪を犯しており、それを断罪するさまはさながら半沢直樹のようです。
ただし、前章でも述べた通り、凌玄は闇を抱えた雰囲気をまとったヒーローという立ち位置で、だんだんとその正義感が歪んでいきます。それがラストシーンにつながっていくのですが、その点については次章で述べましょう。
『虚の伽藍』のラストシーンをネタバレ考察!
ここでは『虚の伽藍』のラストシーンについて考察した内容を記します。ネタバレとなるので、最後まで読んだ人だけ下記をクリックして読んでみてください。
ネタバレしていいからラストシーンの考察を知りたい方はこちらをクリック!
【おおまかなあらすじ】
京都での地上げ抗争に終止符が打たれ、大きな権力を手にした凌玄。後半ではお山の頂点である貫主の選挙が描かれます。最大の対抗馬となったのが、古くからの友である海照。海照には関東の暴力団がバックにつき、姑息な手段で票を売ろうとする者も現れ、混沌とするが、最終的には凌玄が総貫首の地位を獲得したのでした。
選挙に勝つために古くからの友を叩き潰し、自分に気持ちを寄せていた大豊佐登子を死に至らしめるなど、人ならざる行為のもとのし上がった凌玄。ラストは伽藍で読経するなか、幻聴が聞こえて混乱するところで終わります。
【考察】
自分なりの正義感を押し通していた凌玄ですが、最後は気が狂ってしまったような場面で終わります。仏教界の闇、のし上がることの怖さ、正義とは何かなどのテーマが集約されたラストで、いろいろ考えさせられました。
『虚の伽藍』を読んでみた感想
ここからは『虚の伽藍』を読んでみた感想を書いていきます。また読者のレビューも合わせてまとめました。
【筆者の感想】凄いところに踏み込んだ作品
仏教の世界はあまり詳しくなく、しっかりした会社組織があるということに驚きました。そこで描かれる人物像はフィクション(だと思いたい……)ですが、どの登場人物も個性的で魅力があり、ドキドキハラハラの社会派サスペンスとして引き込まれました。
特に好きだったのは、扇羽組の氷室ですね。京大卒で切れ者の一面が随所に垣間見え、肝が据わっていると感じました。意外とこういう高学歴な人の方が何を考えているか分からず、悪の道に足を踏み外したら怖い存在になるのかもしれないですね。
後半の選挙の様子もリアルで、これは実際の選挙戦でも同様のことが起こっているんじゃないかと疑いたくなりました。それにしてもここまで踏み込んで書いていること事態が、一つの偉業なんじゃないかと思います。
さて、本作は第172回直木賞の候補に選出されていますが、果たして受賞できるのでしょうか?前回候補になった『香港警察東京分室』はアクション要素がメインで人間物語が薄く評価されづらかったのに比べて、今回は仏教組織の人間が緻密に描かれており、評価は上がると思います。
ただ、いくつかの山場が登場するのですが、物語の帰結の仕方がやや類型的なこと。また、他作品と相対的に評価すると、どうしても劣ってしまうかなと感じること。このあたりが理由で、受賞はやや難しいじゃないかと予想します。
受賞予想:ー(なし)
(全候補作を読み終えた段階でもう一度予想してみます)
【みんなの感想や評価】腹の探り合いと駆け引きに引き込まれた
続いて、読者の評価やレビューをまとめました。
月村了衛『虚の伽藍』新潮社を読了。
バブル期とその崩壊後、京都に本山を置く伝統仏教の最大会派における権力闘争を描く圧巻の社会派サスペンス。
坊主、フィクサー、ヤクザ、役人たちが入り交じり政財界のオモテとウラの駆引きに心臓が休まらない。京都という独特の舞台も活き最後まで一気読み必定!— はらかず (@kazu7honyomi) December 30, 2024
虚の伽藍/月村了衛♯読了
やっぱり直木賞候補作
本格的な社会派小説でかなり好物ですお坊さんとヤクザ、バブルに地上げ
弱者を救う御仏の正しい教えとは真逆でダークな裏社会
善良だったお坊さんが悪に染まりながら魑魅魍魎との抗争に明け暮れるリアルな有様に引き込まれます pic.twitter.com/ie9UurCzD1— YONDE TARO (@kazupapa1109) December 29, 2024
月村了衛『虚の伽藍』 読了。
Netflixドラマかよ⁉︎ ってくらい期待通りに面白かったです!
組織内の派閥争い、対抗勢力とのパワーゲーム、人間どうしの腹の探り合いと駆け引き、なんかが緻密に描かれてて、読み応え満点。しかも、めちゃくちゃリアリティに溢れてる。これぞ正に月村作品です! pic.twitter.com/hkWwO2BkGP— Taiju Noda (@TaijuNoda) December 4, 2024
すんごいどろどろしたえげつないもん書かはった。
それはバブル崩壊前から始まる。
常楽我浄への道。
遠い宇宙の深淵へと、声明の旋律に酔いしれる時。
千年の村社会、京都にはびこる、”掘れば掘るほど悪鬼が湧いてくる”と。
魑魅魍魎入り乱れて、金、金、金。
引用:Amazon
『虚の伽藍』#月村了衛
帯を見ただけでワクワク🎵
腐敗した宗派を立て直すため、若き僧侶、凌玄が悪に身を投じ、魑魅魍魎との闘いの中で変貌していく…その変貌ぶりに恐ろしさを感じつつ、目が離せなくなってしまった。
古都の闇社会凄し😱
圧倒的な迫力と面白さだった✨#読了 pic.twitter.com/RArG6NKADS— 月のくまさん (@tsukikumasan) November 4, 2024
『虚の伽藍』#月村了衛
帯を見ただけでワクワク🎵
腐敗した宗派を立て直すため、若き僧侶、凌玄が悪に身を投じ、魑魅魍魎との闘いの中で変貌していく…その変貌ぶりに恐ろしさを感じつつ、目が離せなくなってしまった。
古都の闇社会凄し😱
圧倒的な迫力と面白さだった✨#読了 pic.twitter.com/RArG6NKADS— 月のくまさん (@tsukikumasan) November 4, 2024
まとめ:『虚の伽藍』は仏教界を舞台にした社会派サスペンスだった
いかがでしたか?『虚の伽藍』の特徴を以下にまとめました。
・第172回直木賞候補作(受賞予想はー:なし)
・仏教界におけるダークな半沢直樹的世界観の小説
・社会の闇へ鋭く切り込んだ作品
以上です。まだチェックしていない方は、ぜひ読んでみてください!
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