今回は『恋とか愛とかやさしさなら』のあらすじや感想を紹介。一穂ミチさんの直木賞受賞第一作となる本作のタイトルの意味、ラストシーンのネタバレ考察(解説)、ドラマ化や映画化の可能性などについても言及します。
【2025年本屋大賞候補作】一穂ミチの小説『恋とか愛とかやさしさなら』とは
書名 | 恋とか愛とかやさしさなら |
作者 | 一穂ミチ |
出版社 | 小学館 |
発売日 | 2024年10月30日 |
ページ数 | 240ページ |
作者の一穂ミチさんは、2024年に短編集『ツミデミック』で第171回直木賞を受賞した作家です。過去に出版した『スモールワールズ』と『光のとこにいてね』はそれぞれその年の本屋大賞3位を獲得しており、本作も2025年の本屋大賞の候補作となりました。
『恋とか愛とかやさしさなら』はプロポーズされた翌日に、その恋人が盗撮で捕まるところから物語が大きく動き出します。取り残された主人公の新夏はフリーのカメラマンとして活動していますが、それを機に恋人の犯罪や自分の職業について向き合っていく物語です。
※『恋とか愛とかやさしさなら』は以下に当てはまる人におすすめ!
・カメラで写真を撮るのが好きな人
・恋人がもし性犯罪者となった場合どうすべきかについて考えたい人
・2025年本屋大賞の候補となった話題作をチェックしたい人
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3分で分かる『恋とか愛とかやさしさなら』のあらすじ【※ネタバレなし※】
『恋とか愛とかやさしさなら』は二編の短編から成る作品です。それぞれ簡単にあらすじを紹介します。
恋とか愛とかやさしさなら
フリーの写真家として活動する関口新夏は、5年交際を続けた彼氏の神尾啓久からプロポーズを告げられた。しかし、その翌日に啓久が盗撮をして警察に捕まったと連絡を受ける。信じたくなかったが、本人は罪を認めたという。
なぜ、彼は盗撮をしたのだろうか? 本人はその理由を「出来心」だと言うが……。彼を許してこのまま結婚してもいいのだろうか。別れるべきだろうか。そもそもなぜ新夏は、啓久の気持ちをそこまでして推し量ろうとするのだろうか……。
恋とか愛とかやさしさより
新夏と別れ、日々を過ごしていた啓久は、ある日駅で女性から声をかけられる。それは盗撮の被害女性だった小山内莉子だった。家に来てもいいと言ってくる莉子から逃げるようにして、啓久はその場を去る。
その後、莉子と連絡を取り合うようになり、彼女は親が撮影・編集するYouTubeで性的な目で見られる対象となっていることを知る。啓久は莉子の行く末を心配すると同時に、自分が過去の罪とどう向き合うかについても考えていく。
『恋とか愛とかやさしさなら』のネタバレ解説&考察まとめ
ここからは『恋とか愛とかやさしさなら』の魅力を深掘りするために、タイトルの意味、作品の魅力、ラストシーンのネタバレ考察などを行います。
タイトル「恋とか愛とかやさしさなら」の意味とは
本作のタイトルが作中に出てくる場面があるので、まずはそれを引用しましょう。
恋とか愛とかやさしさなら、打算や疑いを含んでいて当然で、無垢に捧げすぎれば、時に愚かだ幼稚だと批判される。なのに「信じる」という行為は、ひたすらに純度を求められる。
引用:『恋とか愛とかやさしさなら』本文(100~101ページ)より
これは盗撮を犯した後でも啓久のことを好きで、どうにか信じたいと思う新夏の気持ちを表現している箇所です。この場面に象徴されるように、物語全編を通じて、啓久に対する新夏の苦悩が描かれています。
また、実は本編は改題されており、初出『STORY BOX(2022年12月号)』の段階でのタイトルは「Put your camera down」でした。新夏がフリーのカメラマンであるという職業柄、カメラや写真に例えた箇所がよく出てきます。そういう意味では、写真が好きな人にとっても、読み応えのある小説でしょう。
『恋とか愛とかやさしさなら』のラストシーンのネタバレ考察!結末の意味とは
『恋とか愛とかやさしさなら』のラストシーンについて考察します。ネタバレとなるので、本作を全て読んだ人だけ以下をクリックして読んでみてください。ここでは表題作の短編について、解説しています。
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【おおまかなあらすじ】
新夏は啓久に元性犯罪者の集いへ参加するよう薦めるが、本人からは拒絶されるなど、ぎくしゃくしながら関係を続けている。
ある日、新夏はラブホテルの電車を模した部屋へ啓久を連れていく。そこで啓久にセーラー服を着させて、新夏が盗撮の真似事をするのだ。さらに、そのままの格好で啓久を駅まで歩かせる。そういった一連の出来事のなかで様々な心情の変化が訪れ、一旦は二人の仲は修復したように思われた。
後日、二人が電車に乗っている時に、カメラのシャッター音に過剰に反応してしまった新夏。その表情を見た啓久は、彼女を心の底から傷つけたと反省する。そして二人は別れを迎えたのだった。
【考察・解説】
結局、別れてしまう二人ですが、それでも新夏が啓久の気持ちを知ろうと必死に動いていたのが伝わりました。カメラを職業としている新夏にとっては、性犯罪を犯した彼氏と向き合うのに加えて、自分自身がなぜカメラ(写真)にこだわるのかといったところにも向き合っていましたね。
別れが訪れる場面は、そんな自分の生きる術となっているカメラが、「出来心」で犯罪に使われたことに対しての許せない気持ちが顔を出してしまったのかもしれません。このあたりをどう捉えるかは、読者の想像に委ねているように思われます。
『恋とか愛とかやさしさなら』は映画化・ドラマ化される?
『恋とか愛とかやさしさなら』は映画化やドラマ化に期待したくなる作品です。これまで一穂ミチさんの作品は、アニメ化や実写ドラマ化されたことはありますが、まだ映画化には至っていません。本作で初めて映画化される可能性もありますね。
もし映画化されるなら、『悪人』『怒り』『流浪の月』など性犯罪(もしくはそれに近いもの)をテーマとした原作を見事に映像化した李相日監督あたりが手掛けるとなると、良い作品が生まれる予感がします。
現時点(2025年4月)ではまだ実写化の噂はありませんが、もし情報が入ったら更新する予定です。
『恋とか愛とかやさしさなら』の感想やレビューまとめ
ここからはSNSやレビューサイトに寄せられた『恋とか愛とかやさしさなら』の感想をまとめました。
#読了 「恋とか愛とかやさしさなら」 #一穂ミチ
誰もが思うであろう「自分ならどうする?」という問い。答えが出ないし出せない。愛=信じるではない、と薄情な感情にもなった。好きだから別れるのか、好きだから別れないのか。似ているようで全然違うものだ。苦しかった。#読書好きな人と繋がりたい pic.twitter.com/aMyqpIoTbO— ふーちゃん (@fuuuuwriter) March 23, 2025
『恋とか 愛とか やさしさなら』
罪の大きさとか動機とかそういうことを聞きたいんじゃない。それが『出来心』から生まれたのであれば、いつまたその『出来心』が現れるのか。自分も他人も結局ずっと根底では信用できなくなる恐ろしさ。
「盗撮する人」と思われ続ける人生とは。#一穂ミチ#読了 pic.twitter.com/puo2IiEdV3— さちか (@theory1979) March 29, 2025
現実にもきっとありそうなリアリティのある本でした。女側、男側視点でそれぞれ読めたので余計にどちらに感情移入するか、ページをめくる度に入れ替わったりしました。
引用:Amazon
#読了
恋とか愛とかやさしさなら/一穂ミチ
お互いがそれぞれの眼差しで世界を見られたら、こんなに言葉を費やさなくて済むのに〜というような表現
があり、実際はそんなこと無理だし
言葉を尽くしてもわかってもらうことも相手をわかることも出来ないし…喉に何か詰まるような苦しさでした。でも好き。 pic.twitter.com/hzvKu82NEq— きさ@読書垢 (@IoDGY0AmSH27004) March 21, 2025
まとめ:『恋とか愛とかやさしさなら』は恋人の犯罪やカメラを巡る物語だった
いかがでしたか?『恋とか愛とかやさしさなら』の特徴を以下にまとめました。
・2025年本屋大賞候補作
・盗撮を犯した彼氏とどう向き合うかを考えさせられる
・生業としているカメラとどう向き合うかを考えさせられる
以上です。まだチェックしていない方は、ぜひ読んでみてください!
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