3分で分かる『秘色の契り 阿波宝暦明和の変 顛末譚』のあらすじ&ネタバレ解説・感想まとめ【第172回直木賞候補作】

今回は『秘色の契り 阿波宝暦明和の変 顛末譚』(著:木下昌輝)のあらすじや感想を紹介します。タイトルの意味や作品の魅力、ラストシーンのネタバレ考察などもまとめたほか、直木賞の受賞予想も行っています。ぜひ最後まで読んでみてください。

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【第172回直木賞候補作】木下昌輝の小説『秘色の契り 阿波宝暦明和の変 顛末譚』とは

書名 秘色の契り 阿波宝暦明和の変 顛末譚
作者 木下昌輝
出版社 徳間書店
発売日 2024年11月1日
ページ数 392ページ

作者の木下昌輝さんは、これまで多くの歴史小説を発表してきた人気作家。オール讀物新人賞を受賞した『宇喜多の捨て嫁』でデビューし、同作は直木賞候補作にも選出されました。これまで三作品が直木賞の候補となり、今作で四度目の候補となっています。

『秘色の契り 阿波宝暦明和の変 顛末譚』は、徳島藩の藩主を継いだ風変わりな人物・蜂須賀重喜の改革を巡る顛末を、物頭の柏木忠兵衛の視点で描いた話。新法に反対する家臣団や、悪事を企む元盗賊の商人などとの奮闘を交えて描かれています。

※『秘色の契り 阿波宝暦明和の変 顛末譚』は以下に当てはまる人におすすめ!
・あまりスポットが当たっていない歴史をテーマにした小説を読みたい人
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3分で分かる『秘色の契り 阿波宝暦明和の変 顛末譚』のあらすじ【※ネタバレなし※】

藩主が急逝した徳島藩は、三十万両の借財があり、このままでは立ち行かなくなる。そこで藩の物頭である柏木忠兵衛は、新たな藩主の候補となる佐竹岩五郎と出会う。岩五郎は、町人のように飄々とし、政には興味がないという変わり者だった。そして、その男が徳島藩十代藩主・蜂須賀重喜となった。

重喜が明君なのか暗君なのかわからない。
今、確かなのはーーー
妙な男が藩主になった。
ただ、それだけである。
そして、それで十分だと思った。
引用:『秘色の契り 阿波宝暦明和の変 顛末譚』本文(51,52ぺージ)より

しかし、藍師株についてある事件が起き、それをきっかけに忠兵衛は重喜に対して忠義を示す。そして、こう語るのだ。

殿と一緒にやりたいのです
(中略)
殿と苦楽を味わいたいのです
引用:『秘色の契り 阿波宝暦明和の変 顛末譚』本文(105ぺージ)より

次第に政に前向きになっていった重喜は、藩を救うために大胆な改革案を打ち立てる。しかし、新規を嫌悪し、旧態依然を好む家老たちはその案に反対する。さらに、元盗賊の商人・金蔵もある計画を企てていて……。

『秘色の契り 阿波宝暦明和の変 顛末譚』の主な登場人物まとめ

『秘色の契り 阿波宝暦明和の変 顛末譚』の登場人物については、本書の本編が始まる前に見開き一ページで「人物表」が入っているので、そちらを確認しながら読み進めてみるとよいでしょう。

また、作者の本人が、作中の人物についての詳しいプロフィールをXで投稿しているので、そちらもぜひ合わせてチェックしてみてください。

『秘色の契り 阿波宝暦明和の変 顛末譚』のネタバレ解説&考察まとめ

ここからは『秘色の契り 阿波宝暦明和の変 顛末譚』の魅力を深掘りするために、タイトルの意味、作品の魅力、ラストシーンのネタバレ考察などを行います。

タイトル「秘色の契り 阿波宝暦明和の変 顛末譚」の意味とは?

タイトル後半部分における「阿波」は徳島藩のこと。「宝暦」と「明和」はどちらも元号を指し、当時に徳島藩で起きた改革の顛末について記したということを意味しています。

前半の「秘色の契り」についてですが、まずこの「秘色」とは藍のきれいな青い色合いのことを指しています。藍師株についてのある事件が、忠兵衛と重喜の絆を強くするきっかけとなっており、これがラストに至るまで重要な要素となってくるのです。

リーダー像や仕事の在り方を考えるきっかけにもなる

徳島藩の改革をテーマにした話ですが、本作は現代社会にも通じるリーダー論や社会での在り方の勉強にもなるでしょう。特に以下のセリフはリーダーとしての心得にふさわしい格言だといえます。

「改革で大切なのは、人の心よ」
引用:『秘色の契り 阿波宝暦明和の変 顛末譚』本文(278ぺージ)より

さらに、もう少し踏み込んで以下のようにも語っています。

「改革でまずなさねばならぬのは、人の心を変えることだ」
引用:『秘色の契り 阿波宝暦明和の変 顛末譚』本文(278ぺージ)より

正しい改革をしても人の心がついてこなければ、やがて廃れるとも話しており、これは今の政治や社内改革にも当てはまることでしょう。

このような視点で本作を読むと、学びがさらに深まるのではないでしょうか。

『秘色の契り 阿波宝暦明和の変 顛末譚』のラストシーンをネタバレ考察!

ここからは、『秘色の契り 阿波宝暦明和の変 顛末譚』のラストシーンについて考察します。ネタバレとなるので、最後まで読んだ人だけ以下をクリックして確認してみてください。

ネタバレしていいからラストシーンの考察を知りたい方はこちらをクリック!

新法について推し進めようとする重喜と、それだけは反対する家老たちとの間で、板挟みにあっていた忠兵衛。結論として新たな案として藍の市を開催することを提案する。

結果的には、重喜は隠居して、志半ばで一線を退くことになった。しかし、忠兵衛が提案した藍の市は数年後に実現。「藍大市」として開催されたのだった。

【考察】
当時の改革頓挫はネガティブなニュアンスで語られることが多いように思いますが、本作では希望を示したラストで少し救われました。当時の生きにくさや改革の難しさを示しつつも、託された想いが最後に成就したことは感慨深いです。

『秘色の契り 阿波宝暦明和の変 顛末譚』を読んでみた感想

ここからは『秘色の契り 阿波宝暦明和の変 顛末譚』を読んでみた感想を書いていきます。また読者のレビューも合わせてまとめました。

【筆者の感想】あまり描かれることのなかった時代を取り上げている

徳島藩の改革についての話で、これまであまり描かれてこなかったトピックを深掘りして一つの物語を作り上げている点がまず凄いと感じました。着眼点がいいですね。以前、直木賞候補となった木下昌輝さんの小説『敵の名は、宮本武蔵』では宮本武蔵の敵側の視点から物語を紡いでいたりと、この作家はアイディアがユニークで面白いと感じます。

それでいて、ストーリーが巧みで、途中のエピソードも興味深いものも多く、夢中になって読みました。商人との戦いが中盤での一つの山場となりますが、終盤でもう一つ盛り上がりを残しているという構成も良かったです。

さて、本作は第172回直木賞の候補作に選出されています。果たして受賞するのでしょうか。予想してみましょう。

これまで三度直木賞の候補となり、今回で四度目。過去の候補作と比べて、個人的には今作が最も好きな小説で、選考委員でもその成長ぶりを評価する声が多くあがるのではないでしょうか。

先にも書きましたが、これまであまり描かれてこなかった時代のエピソードを題材にし、果敢に挑戦していること。物語の構成や、巧みなエピソードなど、高く評価されそうです。ほかにも推している作品があるので、本命とはいきませんが、対抗として予想します。二作受賞もあり得るかもしれません。

受賞予想:◯(対抗)
(全候補作を読み終えた段階でもう一度予想してみます)

【みんなの感想や評価】〜〜

続いて読者がSNSやレビューサイトに投稿した感想や評価を紹介します。

江戸中期の徳島、歴史の流れとして押さえていない地域、時代で落としどろこを知らない面白さがありました。
登場人物の個性と未熟さ共にリアリスティックで「ほんとにこうだったんでは…」と思わされます。
勝った、負けたというよりは「そういう感じになったんだねぇ」というような落ち着いた読後感は木下作品の魅力です。
引用:Amazon

まとめ:『秘色の契り 阿波宝暦明和の変 顛末譚』は徳島藩の改革を題材にした歴史小説だった

いかがでしたか?『秘色の契り 阿波宝暦明和の変 顛末譚』の特徴を以下にまとめました。

・第172回直木賞候補作(受賞予想はー:なし)
・徳島藩の改革をテーマにした歴史小説
・リーダー像や社会での在り方の教材にもなる一冊

以上です。まだチェックしていない方は、ぜひ読んでみてください!

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