今回は鈴木結生さんの小説「ゲーテはすべてを言った」をピックアップ。芥川賞を受賞した本作のあらすじや感想を紹介するほか、タイトルの意味や作品の魅力、ラストシーンのネタバレ考察などをまとめました。
【第172回芥川賞受賞作】鈴木結生の小説「ゲーテはすべてを言った」とは
書名 | ゲーテはすべてを言った |
作者 | 鈴木結生 |
出版社 | 朝日新聞出版 |
発売日 | 2025年1月15日 |
ページ数 | 200ページ |
初出 | 『小説トリッパー』2024年秋号 |
作者の鈴木結生さんは、「人にはどれほどの本がいるか」で「第10回林芙美子文学賞」の佳作を受賞。本作「ゲーテはすべてを言った」はデビュー二作目の小説で、『小説トリッパー』2024年秋号に掲載されました。
本作は、ゲーテ学者の博把統一が家族団欒で訪れたイタリア料理店のティー・バッグに書かれたゲーテの名言を見つけるところから始まります。馴染みがない言葉の出典を調べるために奔走する、アカデミックな冒険譚です。
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・ゲーテに興味がある人
・哲学者の考え方や日常について知りたい人
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3分で分かる「ゲーテはすべてを言った」のあらすじ【※ネタバレなし※】
ゲーテ研究の第一人者とされる学者の博把統一は、家族で訪れたイタリア料理店でティー・バッグに「Love does not confuse everything, but mixes.」と書かれたフレーズを見つける。ゲーテの言葉とされているが、統一にはそのフレーズに馴染みがなかった。
統一はその言葉を「愛はすべてを混淆せず、渾然となす」と日本語に直してみる。かつて統一は、あらゆる言葉をゲーテが言ったと捉えて、旧友と面白がっている時期があった。しかし、この言葉だけはなかなかしっくり来ない。
統一はこの名言を単に、「ゲーテがすべてを言った」で片付けることはできない、と思ったのだった。
引用:「ゲーテはすべてを言った」本文より
統一はこれまでのゲーテの研究を振り返りつつ、恩師ともいえる学者や、有望な生徒とのやりとりを踏まえて、この名言の出典元を調べていくのだった。
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「ゲーテはすべてを言った」のネタバレ解説&考察まとめ
ここからは「ゲーテはすべてを言った」の魅力を深掘りするために、タイトルの意味、作品の魅力、ラストシーンのネタバレ考察などを行います。
タイトル「ゲーテはすべてを言った」の意味とは
タイトルの「ゲーテはすべてを言った」は、直接的には登場人物の統一が旧友と行っていたある遊びを意味しています。
名言を引用するとき、それが誰の言った言葉か分からなかったり、実は自分が思い付いたと分かっている時でも、とりあえず『ゲーテ曰く』と付け加えておくんだ。何故なら、『ゲーテはすべてを言った』から
引用:「ゲーテはすべてを言った」本文より
さまざまなフレーズを発した後に、「ゲーテ曰く」と付け加えるとそれっぽくなるというのです。ベルリンの壁が壊れた歳の万歳の掛け声や「ベンツよりホンダ」などのフレーズもゲーテが言ったことにして、二人は面白がります。
「ゲーテはすべてを言った」という言葉はまず、青春時代の遊戯の象徴のような、言うなれば魔法の呪いのような意味合いを持っていたわけだ。
引用:「ゲーテはすべてを言った」本文より
しかし、これは学者になっていく統一にとっては、一種の呪いのようにもなっていくのです。多くの言葉を残したゲーテについて研究すること、そしてそれをメディアでどう発言するか。こういった場面で統一は苦しめられていくことになります。
「ゲーテはすべてを言った」という言葉を苦々しく思い出し、それが何度も繰り返されるにつれ、思い出すことすら忘れた。魔法の呪いは回り回って、今や統一の身を蝕む呪いと化していた。
引用:「ゲーテはすべてを言った」本文より
哲学の解釈の仕方や、中盤からの思わぬ展開が面白い!
本作は哲学自体がテーマというより、学者が研究や日常で哲学とどう向き合うかがテーマの物語となっています。ゲーテについての言葉が多く、事前知識があるとより楽しめるのでしょうが、そこまで詳しくなくても作品の大筋は追うことができます。
ゲーテの名言と思われる「Love does not confuse everything, but mixes.」の出典を調べるのが、大きな軸となってわりとなだらかに物語は進行していきます。そんな中でも、統一が尊敬する然紀典という人物が終盤で大きな事件を起こす(ある事実が発覚する)という場面が出てくるなど、展開もあり楽しめるでしょう。
ラストシーンをネタバレ考察!本作の主題とは
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【おおまかなあらすじ】
統一は哲学について解説する番組に出演した際に、まだ出典の確証が得ていなかったにもかかわらず、ゲーテの言葉として「愛はすべてを混淆せず、渾然となす」を紹介した。
収録直後は自分の発言を後悔していた。しかし、のちにその言葉はある名言サイトからの引用だと分かる。そしてその言葉の出所を調べるうち、妻がはまっている庭師のYouTuberのもとへ送られた手紙に端を発していたことが判明するのだ。
ラストは家族で統一の番組での発言を見るシーンで終わる。統一は自分の発言を受けて、こう捉えるのだ。
自分の言葉を決して信じ切れていない男の語る言葉を聞きながら、その言葉を信じてやることができた。何故なら、その言葉は本当だったからだ。
(中略)
そう信じるとすれば、言葉はどれも未来へ投げかけられた祈りである。
引用:「ゲーテはすべてを言った」本文より
【考察】
言葉と向き合い続けた統一。盗用と捏造で告発された大学教授・然紀典や、終盤で娘の彼氏と発覚した優秀な学生・紙屋綴喜などとのやりとりもふまえてたどり着いた境地は美しく、きれいな帰結だと感じました。
哲学にそこまで興味を示していなかった妻が、最後に面白がっていたという何気ない終わり方も、なんだかほっこりしていていいなと思います。
「ゲーテはすべてを言った」を読んでみた感想
ここからは「ゲーテはすべてを言った」を読んでみた感想を書いていきます。また読者のレビューも合わせてまとめました。
【筆者の感想】個性的なキャラクターの配置や繋がりが面白い
哲学小説というと、堅苦しい文章が続き、読みにくいという印象がどうしてもあります。しかし本作は比較的読みやすく、特に展開が増えた終盤以降は夢中になって読みました。
本作の魅力の一つが個性的な登場人物たち。まず学者の妻が哲学にそれほど興味がないという設定がいい!結果的に妻に少しでも興味を持ってもらうための一人の男の健気な努力のようにも見え、出典元を調べる旅を応援したくなる気持ちが湧いてきました。
登場人物たちがそう繋がってくるのか、とやや出来すぎな気もしますが、それはストーリーテリングの妙だと言ってもいいでしょう。個人的には重大なスキャンダルが発覚してもふてぶてしい態度をとる人物の姿も清々しくて、いっそう気持ちよかったです。
【みんなの感想や評価】出典元を探す旅は潔癖であってほしいと願った
続いて読者がSNSに投稿した感想やレビューをいくつか紹介しましょう。
鈴木結生「ゲーテはすべてを言った」 #読了
ゲーテが言ったとされる未確認の名言の出典を探す、「カール・レーフラー騒動」をモチーフにしたアカデミック冒険譚。
学者一族の気取った暮らしぶりが憎ったらしくておもしろい。
第172回芥川賞ノミネート作 pic.twitter.com/r1Uc9XO7Hw— 村上歩き|読書垢 (@aruki_murakami) January 4, 2025
小説トリッパー2024年秋号にて
鈴木結生さん『ゲーテはすべてを言った』#読了インターネットで出自の分からない文章を引用出来てしまう時代だからこそ
主人公のゲーテの言葉の出典元を探す旅は潔癖であってほしいと感じた。
それと比べると娘の感覚は軽いが嫌な感じはしなかった。 pic.twitter.com/8DXaBbVucd— 夏しい子 (@natusiiko) December 9, 2024
鈴木結生さん「ゲーテはすべてを言った」を読んだ。さすがに凄すぎる一作。正直に言うと、恥ずかしながら作品中に出てくる固有名詞たちの殆ど知らない。でもこの小説の本筋と信じる言葉がわかる。
宮崎智之さんの文芸時評の評を読み直したけども、気持ちいいくらいに合致する。— 鳥山まこと (@toriyama007) November 15, 2024
鈴木結生『ゲーテはすべてを言った』読んだ。おもしろかった!ゲーテ学者が見たことのないゲーテの名言と出会い出典を求めていくお話。序盤が退屈というポストも見かけて覚悟して読んだけどずっとおもしろかった。お話の造りがすごい。
— nakatasio (@nakatasio) December 30, 2024
まとめ:「ゲーテはすべてを言った」は名言の出典元を巡る冒険譚だった
いかがでしたか?「ゲーテはすべてを言った」の特徴を以下にまとめました。
・第172回芥川賞受賞作
・名言の出典元を巡る冒険譚に引き込まれる(特に後半は展開が大きい)
・登場するキャラが個性的で繋がりも面白い
以上です。まだチェックしていない方は、ぜひ読んでみてください!
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