第175回芥川賞の選考会が2026年7月15日に行われます。今回は事前に候補作を全て読んだうえで、どの作品が受賞作になるか大予想。各作品のあらすじを簡単に紹介したあとに、講評し、最終的に予想作品を発表します。
そもそも芥川賞とはどんな文学賞?
芥川賞は日本を代表する文学賞の一つ。年に2回(1月と7月)選考会が行われています。対象となるのは、新人作家の純文学作品。日本文学振興会が主催しています。これまでの主な受賞者は石原慎太郎、村上龍、松本清張、小川洋子、川上弘美などです。
お笑い芸人の又吉直樹さんが「火花」で受賞した際は大きな話題となりました。また第164回芥川賞受賞作となった宇佐見りんさんの「推し、燃ゆ」が、好きなアイドルを推している者の心情を表していると高く評価され、2021年で最も売れた小説となりました。
最新回の第174回芥川賞は、「時の家」(著:鳥山まこと)と「叫び」(著:畠山丑雄)がW受賞となりました。
第175回芥川賞受賞予想|「ゾンビ回収婦」が本命か
第175回芥川賞の候補となったのは、以下の五作品です。(並びは作家名の順)
| 作品名 | 作家名 | 掲載誌 | 候補回数 |
| ゾンビ回収婦 | 小砂川チト | 『群像』五月号 | 三回目 |
| 悪い血 | 鈴木涼美 | 『文學界』六月号 | 三回目 |
| 丹心(まごころ) | 仁科斂 | 『新潮』四月号 | 初 |
| ソリティアおじさんがいた頃 | 村司侑 | 『文學界』五月号 | 初 |
| アンチ・グッドモーニング | 八木詠美 | 『文藝』春季号 | 初 |
小砂川チトさんは三度目の候補。人ならざるものを視点にした小説が特徴的な作家で、群像新人文学賞を受賞したデビュー作「家庭用安心坑夫」で最初の候補となり、高い評価を獲得していました。
同じく三度目の候補となるのが、鈴木涼美さん。慶應義塾在学中にAV女優として活動したり、卒業後に経済新聞の記者として働いたりといった、ユニークな経歴の持ち主。メディアへの露出も多い作家です。
初候補となる村司侑さんの作品は、文學界新人賞受賞作。八木詠美さんは、太宰治賞を受賞したデビュー作が海外で翻訳され、話題となりました。仁科斂さんは新潮新人賞を受賞した作家で、今回の候補作がデビュー二作目です。
各候補作のあらすじと講評
ここからは芥川賞候補になった各作品のあらすじを紹介します。また各作品の講評も合わせて行います。
「ゾンビ回収婦」(『群像』五月号)
【あらすじ】
AIに仕事を奪われた「わたし」は夫が残したVRゲームの中に入り、NPCのゾンビ回収婦としての任務を全うする。ゾンビに書かれた謎めいたフレーズが気になるなか、非戦闘系のゾンビやカウンセリングをするクマのぬいぐるみなども出てきて……。
【講評】
AIに仕事を奪われた主人公が、ゲームの中でまるでAIのような動きをトレースすることで、現実と虚構の歪みを見事に表現していく。作者が自ら課した高いハードルに対して挑戦していき、一つの到達点へと導いてくれる良作だと感じた。
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「悪い血」(『文學界』六月号)
【あらすじ】
図らずも妊婦となってしまった「私」は、妊婦検診で採血した血液のことが気になる。夜の世界を渡り歩いたふしだらな私の血は、きっと悪い血なのかもしれない。夜、私は病院に忍び込み、血液を奪い返しに行こうとするのだが……。
【講評】
現代と過去が交差する展開となるなかで、主人公が内省する過去の記憶は、単なる性的な仕事に従事していたものから、死生観や親子関係を伴うものへと変化していく。それだけに、選考会の場ではもう一歩踏み込んでほしいと注文してくる委員もいそうだ。
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「丹心(まごころ)」(『新潮』四月号)
【あらすじ】
大学教授で建築家の鹿野川のもとへ、中国の資産家令嬢Qから美術館を設計してほしいという依頼が届く。鹿野川は指導学生のレンを中国へ行かせるが、美術館建設の裏にはある陰謀が隠されていた。
【講評】
中国の人民たちが抱える欲望を表面化させ、当地の流行や文化事情も踏まえて、独特の疑念に塗れた世界をうまく表現していた。主人公の人柄も惹きつけるものがあるが、終盤の肝心な場面での行動とそれに伴う結果が選考委員にどう評価されるかがポイントだ。
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「ソリティアおじさんがいた頃」(『文學界』五月号)
【あらすじ】
味噌屋に勤める「わたし」は、一昨年に定年退職した黒野田さんが亡くなったと知る。会社にいた頃、ソリティアおじさんと呼ばれていた彼の記憶を思い出しながら、わたしは彼の通夜へと向かう。
⇒「ソリティアおじさんがいた頃」のあらすじを詳しくチェックしする
【講評】
京都弁を交えた饒舌な語りでぐいぐいと読ませる力が大きな魅力。ソリティアおじさんの記憶は、ぐだぐだと生きる主人公の同棲相手とリンクしていき、最後は主人公のある行動に帰着する。うまくまとまっているが、逆にそれが瑕疵となるかもしれない。
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「アンチ・グッドモーニング」(『文藝』春季号)
【あらすじ】
表向きにはポジティブな魅力を伝える会社で働く「わたし」は、私生活も仕事に侵されて、不眠に悩まされる。そんななか、オンライン講義との奇妙なやりとりから、不思議な世界へと引きずり込まれていき……。
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【講評】
ポジティブを謳う会社の嫌な一面がこれでもかこれでもかと書かれていて、かなりリアリティーがありました。最後が夢オチのような展開になってしまった点や、登場人物が消化不良な点などが、少しマイナスに評価される可能性があります。
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受賞予想:大本命は小砂川チト「ゾンビ回収婦」か
全作品の講評をふまえ、今回の芥川賞の受賞を予想をすると、本命は小砂川チトさんの「ゾンビ回収婦」です。ダブル受賞があるとすれば、:仁科斂さんの「丹心(まごころ)」あたりでしょうか。
◎(本命):小砂川チト「ゾンビ回収婦」
◯(対抗):仁科斂「丹心(まごころ)」
△(大穴):鈴木涼美「悪い血」
受賞作発表は7月15日。また発表後に記事を更新いたします!


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