3分で分かる『飽くなき地景』のあらすじ&ネタバレ解説・感想まとめ【第172回直木賞候補作】

今回は小説『飽くなき地景』のあらすじや感想を紹介します。タイトルの意味、作品の魅力、作者・荻堂顕さんのインタビューをふまえた考察や、ラストシーンのネタバレ解説なども行うので、ぜひ最後まで読んでみてください。

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【第172回直木賞候補作】荻堂顕の小説『飽くなき地景』とは

書名 飽くなき地景
作者 荻堂顕
出版社 KADOKAWA
発売日 2024年10月2日
ページ数 384ページ

作者の荻堂顕さんは、『擬傷の鳥はつかまらない』で第7回新潮ミステリー大賞を受賞(投稿時の作品名は「私たちの擬傷」)して、デビュー。今回発表した『飽くなき地景』が、第172回直木賞の候補作に選出されました。

『飽くなき地景』は戦後から昭和を舞台として、土地開発を家業とする烏丸家に生まれた治道の生涯を追った物語。治道は、祖父から譲り受けた日本刀に魅せられ、家業を継ぐ父を憎みながら、生きていきます。

※『飽くなき地景』は以下に当てはまる人におすすめ!
・骨太の長編作品を読みたい人
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3分で分かる『飽くなき地景』のあらすじ【※ネタバレなし※】

僕(治道)は、祖父が所有する烏丸家の守り神でもある、粟田口久国の宝刀「無銘」に魅せられていた。

あの刀は烏丸家の守り神です。あれを守っていくのが僕の役目なんです
引用:『飽くなき地景』本文より

しかし、烏丸建設の社長を引き継いだ父の道隆が、あろうことかその刀を誰かに渡してしまう。それは渋谷の愚連隊である「松島組」の藤永という男だった。僕はその刀を取り返すために、友人の大学生でトレーニング仲間の重森とある作戦を思いつき……。

無機質なビルが建ち並んでいくのを嫌い、家業を継ぎたくないと思っていた治道。父を憎みながら生きるも、戦後復興のなかで治道はある選択をする。その後も、オリンピック、高度成長と、時が流れゆくなか、治道の生涯には常に「無銘」の存在が影響していた……。

この刀は僕の人生とともに在り続けてくれた。
引用:『飽くなき地景』本文より

『飽くなき地景』の主な登場人物まとめ

『飽くなき地景』の主な登場人物についてまとめました。

【烏丸家(からすまけ)】
僕(=治道):大学生。趣味は文学とトレーニング。祖父から刀の審美眼を受け継いでいる
道隆:治道の父。烏丸建設の社長。治道からは憎まれている
誠一郎:治道の祖父。刀剣保存協会初代会長
・誠二郎:誠一郎の弟。烏丸組の創始者
・溝端直生:治道の腹違いの兄。東京大学の建築学科に通う大学生
・温子:治道の上の姉
・陽子:治道の下の姉
・烏丸家の使用人

【その他の人物】
重森:治道と趣味が合う大学生の友人
・藤永:愚連隊「松島組」の一員。道隆から刀を譲り受ける
・石塚:刀剣保存協会理事
髙橋昭三:長距離走のオリンピック強化指定選手

『飽くなき地景』のネタバレ解説&考察まとめ

ここからは『飽くなき地景』の魅力を深掘りするために、タイトルの意味、作品の魅力、ラストシーンのネタバレ考察などを行います。本作が実話かどうかの解説をする際には、作者のインタビューも引用しているので、そちらも合わせてチェックしてみてください。

タイトル「飽くなき地景」の意味とは?

タイトルにある「地景」とは、刀を焼きいれる際に現れる模様のことを言います。本文のなかで「地景」について説明されるシーンがあるので、一部引用しましょう。

折り返し鍛錬の際に、他とは炭素の濃度や硬度が異なる部分が色味の異なる状態の鋼として表出することがあって、それが地景になるんだ。
引用:『飽くなき地景』本文より

この地景は均一ではなく、不均一である方が美徳とされており、治道にしてもそれをいたく気に入っています。そしてこの不均一を愛するということは、均一で無機質なビルを開発していく家業と対になっているのです。

家業を、とりわけ父を憎む主人公・治道がどういう生涯を送っていくかが、この作品の読みどころとなっています。

本作は実話をもとにしている?作者がインタビューで明かした事実とは

作品を読んでいくと、実在の人物や場所が登場してくるので、本作は実話をもとにしているのではないかと思っている人もいるかもしれません。この点については、作者の荻堂顕さんがインタビューの中で以下のように語っています。

安藤昇や円谷幸吉など、他にもモデルが分かりやすい人物はいますが、あくまで主題は時代ですから。丹下健三や田中角栄のように作中では喋らないキーマンは実名にし、お店も治道の大学の近くの『葉隠』や『金城庵』、あとは『渋谷ロロ』のような今はない店も含めて、現実との接点になってくれるといいなあと思って実名にしています
引用:荻堂顕氏、新作長編『飽くなき地景』インタビュー 「戦争や昭和史の当事者が少なくなる中で非当事者が誠実に語っていくことが大事」|NEWSポストセブン

といった配慮がなされていたようです。なるほど、作品にリアリティーが生まれる工夫がされていたのですね。

また、作者は同時に当事者でない者がその時代を描くのが重要だとも語っています。当時のことを想像しながら、読み進めていくとよいでしょう。

『飽くなき地景』のラストシーンをネタバレ考察!

ここでは結末部分についてまとめ、筆者が考察した内容を記します。ネタバレとなるので、まだ最後まで読んでいない方は以下をクリックせずに読み飛ばしてみてください。

ネタバレしていいからラストシーンの考察を知りたい方はこちらをクリック!

【ネタバレ込みのあらすじ】
愚連隊から日本刀「無銘」を取り返した治道は、当初は家業に関わるのを嫌がっていたが、その後烏丸建設の広報課で働き出す。そこで一人の長距離ランナー・髙橋昭三と出会い、彼をサポート。髙橋はオリンピックで銀メダルを獲得しますが、治道から譲り受けた「無銘」で自害してしまう。

悲しい運命の象徴となった「無銘」。最後には展示させるための鑑定を受け、実は贋作だったと発覚する。ではなぜ、祖父は贋作であるのにもかかわらず、この刀を大事にし続けていたのだろうか。治道はこう考えた。

祖父は現実を憎むために、幻想を愛した。
(中略)
勝手気ままに時間を進んでいく東京という土地への、祖父からの呪詛に他ならなかった。
引用:『飽くなき地景』本文より

【考察】
作品を通して、日本刀の不均一な美しさと、土地開発の均一な点が対比されています。そんななか、新たなビルに刀がモチーフとなったモニュメント(?)が作られた様を見ることで、最後の最後に融和したような図が浮かびました。終盤にこの場面を持ってくるのが美しいなと感じます。

『飽くなき地景』を読んでみた感想

ここからは『飽くなき地景』を読んでみた感想を書いていきます。また読者のレビューも合わせてまとめました。

【筆者の感想】スケール感の大きな小説

戦後から高度経済成長と長い時代を描き、さらに土地開発が進む東京の空間的な幅広さも感じられ、スケール感の大きな小説に仕上がっているなと感じました。序盤の愚連隊とのやりとりは緊張感がありつつも、筆が滑らずに抑えめに丁寧に書いていることで、じっくり読める作品になっているのではないでしょうか。

初めて読む作家でしたが、これまでの作風を見ていると、『ループ・オブ・ザ・コード』が「ポスト伊藤計劃」と称されるなどSFの要素も評価されているようなので、次はそういった作品も読んでみたいですね。

さて、本作は第172回の直木賞の候補作にも選出されています。まだ執筆時点ではこの一作しか読み終えていませんが、かなり完成度が高い作品なので有力作だと言えそうです。全体的に書いている内容に比べてやや分量が多いのが気になりますが、細部も丁寧に描かれているのはマイナスよりもプラスだと評価されやすいのではないでしょうか。

受賞予想:◎(大本命)
(全候補作を読み終えた段階でもう一度予想してみます)

【みんなの感想や評価】東京の景観と歴史に思いを馳せた

続いて、読者の感想や評価をまとめました。

特に芸術に興味を持っている読者には、何かしら共感したり心に響くものがあるのではないか。
前作のように短文を重ねてリズムよくドライブしていく文章とは異なり、一文一文とても丁寧に書かれていて、文字を手の指でなぞっていくくらいのペースで読み進めると、意味がすっと腹落ちていくように思う。
情景も、人物の心のうちも、読者の心に鮮やかに再生される、そういう文章だった。
引用:Amazon

まとめ:『飽くなき地景』は日本刀と土地開発の対比が優れた小説だった

いかがでしたか?『飽くなき地景』の特徴を以下にまとめました。

・第172回直木賞候補作(受賞予想はー:なし)
・祖父から譲り受けた日本刀「無銘」の存在が強い
・地景の不均一な美しさと、無機質な土地開発の対比がすばらしい

以上です。まだチェックしていない方は、ぜひ読んでみてください!

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