3分で分かる「氷柱の声」(くどうれいん)のあらすじ&ネタバレ解説・感想まとめ【第165回芥川賞候補作】

歌人として活躍するくどうれいんさんの初小説「氷柱の声」。盛岡在住の作家が東北大震災からの十年間について書いています。震災にあったさまざまな人の声に耳を傾けるのが一つのテーマであるこの作品。あらすじについてネタバレにならない範囲までと、ラストまでの詳しい部分とに分けてまとめました。まだ読んでない方はネタバレなしの部分だけ見て、残りは一度読んだ方の復習という意味で書いています。また作品の魅力解説や、感想もまとめていますので、最後までぜひ読んでみてください。

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くどうれいんの小説「氷柱の声」とは

書名 氷柱の声
作者 くどうれいん
出版社 講談社
発売日 2021年7月9日
ページ数 130ページ

短歌、俳句、エッセイなどさまざまな分野で活躍する、くどうれいんさんが初めて小説に挑んだのが、今回紹介する「氷柱の声」。初めてとは思えないほどのクオリティーで、読者のみならず、書評家や小説家たちの間でも高い評価を受けています。

主人公の私が東北大震災で被災してその後の十年間を描きます。被災者という立場で自分に何ができるかを問い続ける主人公。同じ被災者という立場ながらも、被害の状況やその後の境遇がそれぞれ違う者たちと交流することで、震災とどう向き合うかについて答えを見つけていきます。

※「氷柱の声」は以下に当てはまる人におすすめ!
・くどうれいんさんの短歌や俳句などが好きで、はじめての小説も楽しみにしている人
・震災十年を経て、改めて震災とどう向き合うべきか考えたい人
・詩的表現の効いた軽やかかつメッセージ性の強い小説を読みたい人

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3分で分かる「氷柱の声」のあらすじ【※ネタバレにならない範囲で※】

盛岡市の高校に通う私(加藤伊智花)は、三年生になって迎える最後の絵画コンクールに向けて、滝の絵を納得いくまで描いていた。しかしその最中、東北大震災が起こる。ライフラインが止まる生活を強いられたが、家族は全員無事であった。

去年の全国コンクールで優秀賞を受賞した私は、復興支援の一環で絵を描くように依頼される。本当に大変な思いをした人に比べて被害が少なかった私が、何ができるかと考え消極的ではあったが、絵を完成させる。

完成した絵について取材が入るが、タイトルに込めたメッセージの意味を問われるだけで、絵自体を評価されなかったことを悲しむ。また懸命に描いた滝の絵も震災を想像させる内容だから評価されなかったかと思い、落ち込んでしまう。

私はそれから10年、被災者の自分には何ができるのか、自分よりも大きな被害にあった被災者とどう向き合うべきか、を問い続ける。医者を志すもあるきっかけで目標を変えた大学生・トーミや、震災の傷を抱えて蝋燭の炎に恐怖を覚える中鵜や、震災で姉を亡くした後に広告代理店に就職した松田などと出会う中で、人びとの声を紡いでいく

【※ネタバレあり※】「氷柱の声」のラストまでの詳しいあらすじ

※※以降はネタバレを含みます!ネタバレしていいからラストまで詳しく知りたい方はこちらをクリック!

2016年。私は医学部に在学するトーミと知り合う。トーミは震災時に「大人が何も役に立てない」無力な姿を嘆き、自分は医者になることを決意し猛勉強した。そして無事に医学部に合格し、精力的に被災ボランティアを行った。

しかしトーミは、医師を志す動機が震災による受動的なものだと思い、悩み始める。そんな折、教授から「本当に美しい努力だ」と言われてショックを受け、大学を辞めてしまう。自分が本来やりたかったことをやるために渡米を決意する。自分の生きる選択に不安になったトーミを、私は抱きしめてあげた。

私は大学の同期の中鵜と交際していた。中鵜は蝋燭の炎を極端に怖がる。震災の五年後に彼が綴ったブログには、当時の震災の記憶を「忘れない」と切実な想いを綴っていた。それからしばらくして行った石巻で、彼は夕焼けの海を避けていた。「明るいものが消えるのを見るのが苦手」だと明かす中鵜に、私は「戻ってくるから大丈夫だよ」と優しく接した。

その後、私はフリーペーパーを制作する会社に就職した。震災の特集を組む際に、頑張る女性を取材することになった。高校生の頃に取材されて嫌な気分になった経験がある私は、どうやったら誠意のある記事を書けるか悩む。そこで先輩社員のセリカから「とにかく自分が読みたいものを書けばいい」とアドバイスされ、吹っ切れる。

私は、海の写真をインスタグラムに投稿する葵さんにコンタクトをとった。葵さんは実は震災にまつわるゆるキャラをデザインした実績もあったが、「この誌面をできるだけ正直なものにしたい」という想いを受けて、そのことは伏せてあくまで写真家としての活動にのみ着目した記事を作成した。セリカの助言もあり、この記事が震災特集のメインになった。

2020年。セリカから松田という男を紹介される。松田は震災で姉を亡くした後に、広告代理店に勤務していた。しかし上司から「震災でちやほやされて」と言われ、被災者だから社会貢献の一環で自分は入社できたのかもしれないと思い、ショックを受けて辞職する。

何を言っても「きれいごと」扱いされる松田だが、そんな自分の境遇を半ば嘆きつつも、自分だから言えることがあるはずだと述べる。そんな松田の真っ直ぐな発言に、私は自分が恥ずかしくなってしまう。

2021年。私は久々にトーミと連絡をとる。トーミは「希望の子ども」を演じていた苦しい状況から脱却し、今だからこそ自分なりに震災の苦しさを発信する大切さを感じている。そんなトーミの想いに共感した私は、再び絵を本格的に描くと決める。

編集部の面々から絵を褒められ嬉し泣きした私は、窓の外にある氷柱から水滴が落ちるのを見つける。もうすぐ春がやってくる。

「氷柱の声」のネタバレ解説|タイトルの意味や高評価の理由

「氷柱の声」は純文学作品としては比較的わかりやすいストーリーなので、あまり解説すべきことはないかもしれません。ここではタイトルに込められた意味や、作品が高評価を受ける理由について深堀りしていきます。

タイトルにある「氷柱の声」とは?どんな意味?

タイトルにある氷柱は、ラストの描写に出てきます。ラストの描写を一部引用します。少しだけネタバレを含むので、非表示にしています。気になる方は下記をクリックしてください。

※※以降はネタバレを含みます!ネタバレしていいからタイトルの意味を詳しく知りたい方はこちらをクリック!

ラストの氷柱についての描写は以下。

窓の外には立派な氷柱が並んでいた。太いものや、細いものや、長いものや、短いもの。さまざまに違った氷柱はみな透き通って春の光を通し、静かに水滴を落としはじめていた。春だ。
引用:「群像2021年4月号」172ページ

ここでいう氷柱は被災者たちのことですね。家族を失うなど大きな被害を受けた者、いまだに傷跡を負っている者。さまざまに違った氷柱は、被害状況が違う者たちの境遇を表しています。そんな中で、氷柱に通ってくる春の光は希望の象徴。「透き通って」というのは、自分の言うべきことを全てさらけ出していいという筆者の温かな眼差しが感じられます。

「氷柱の声」が高く評価される理由の一つは、詩的な文章が効果的だから

くどうれいんさんの初小説となった、「氷柱の声」は読者のみならず、書評家や小説家たちからも高く評価されています。「群像2021年5月号」における創作合評において、今作の魅力の一つは詩的で美しい文章にあるとレビューされています。

もともと歌人として活動してきた作家ならではの強みが垣間見えます。例えば、小説の書き出しの一文。

白い絵の具の上にさらに白を重ねながら息を、す、と止めて筆を走らせる。
引用:「群像2021年4月号」172ページ

「す、」の一文で、独特の緊張感が伝わってきます。

また、ひらがなの使い方が特徴的です。本来は漢字で書きそうなところを敢えてひらがなを使うことにより、やわらかなイメージを持たせています。

松田のまっすぐなまなざしに、身動きが取れなくなってしまった。いままでの自分が全部恥ずかしかったような気がしてきて、私もワインを飲み干す。
引用:「群像2021年4月号」165ページ

真っ直ぐ→まっすぐ
眼差し→まなざし
今まで→いままで

と重要な意味を持つフレーズについて、ひらがな表記を意識的に施しています。このへんの企みが見事だなと感じます。

SNSに寄せられた「氷柱の声」の感想まとめ

「氷柱の声」には「読んでよかった」と素直な感想を投稿する読者が多くいます。一部になりますが、紹介しましょう。

他の第165回芥川賞の候補作品と比較してレビューしている内容も。受賞予想は厳しいとしながらも、候補作の中では一番面白かったという声が多いです。

まとめ:「氷柱の声」は詩的表現がうまい新感覚の震災小説だった!

いかがでしたか?「氷柱の声」の特徴を以下にまとめました。

・歌人として活躍するくどうれいんさんの小説デビュー作品
・震災とどう向き合うか、被災者がどう震災について発信すべきかを問う
・詩的表現が効いた美しい小説

以上です。震災という重いテーマにもかかわらず、軽やかに読める小説なので、まだ読んでない方はぜひチェックしましょう。

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