宇佐見りん「推し、燃ゆ(おしもゆ)」のあらすじ・感想まとめ【第164回芥川賞受賞作・2021年本屋大賞候補作】

オタクが市民権を得るための小説がここに誕生!?今回は、宇佐見りんさんのデビュー2作目となる小説「推し、燃ゆ」(おしもゆ)を特集します。推しが炎上した一件を受け、ファンである主人公の生活は大きく変わる、という作品。あらすじや見どころ、読者の感想をまとめました。また、本作は第164回芥川賞の候補にも選ばれています。受賞発表前に、受賞するかどうかの予想も含めて書いていきます。

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宇佐見りんのプロフィール


宇佐見りんさんは2020年時点で年齢21歳。大学在学中に応募した小説「かか」で文藝賞を受賞してデビューしました。(なお同時受賞となった、遠野遥さんは第163回芥川賞を受賞)

デビュー作の「かか」は、野間文芸新人賞、三島賞にもノミネート。野間文芸新人賞の方は惜しくも受賞を逃しましたが、三島賞で見事受賞。同賞の最年少受賞となりました!

授賞式の様子を投稿しているTweetがこちら。

若くして才能を評価された宇佐見りんさん。これからが楽しみな作家です。

「推し、燃ゆ」は第164回芥川賞候補作に選出される


「かか」の次に発表した作品が「推し、燃ゆ」。初出しは文藝2020年秋号でしたが、すぐに単行本化された作品です。編集部の期待が表れていますね。

そんな矢先、舞い込んできたのが、第164回芥川賞候補入りのニュースです。バンド・クリープハイプのメンバー・尾崎世界観が候補入りしたことで、そちらの方が話題先行していますが、宇佐見りんさんの候補入りも十分な話題性があります。

前回の遠野遥さんが平成生まれ初の芥川賞作家となりましたが、宇佐見りんさんももちろん、平成生まれ。19歳の綿矢りささんと20歳の金原ひとみさんが芥川賞W受賞となりましたが、宇佐見りんさんが今回受賞すれば、その次に若い年齢での受賞となります。

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「推し、燃ゆ」のあらすじとは

まずは、あらすじから。

主人公は16歳で高校2年生のあかり。彼女には熱狂的に推している人物がいます。男女混合グループ・まざま座で一番人気のメンバー・上野真幸です。ある日、彼がファンを殴ってしまい、炎上してしまいます。

あかりは放心状態になってしまい、病院に行き何かしら精神疾患もしくは発達障害を思わせる、診断を受けます。彼女はバイト先でもうまく仕事をこなせず、学校でも浮いた存在でしたが、今回の推し炎上事件を受けてさらに社会にうまく適合できなくなります。

暴力事件の影響で、推しの上野は人気投票において1位から最下位に転落。あかりは自分の推しとしての支援活動が足りなかったからだと後悔します。そしてあかりの行動はさらにエスカレート。さらに騒動の最中、推しが行ったある行動により、物語は加速していきます。

「推し、燃ゆ」の読みどころ3つ

次に、「推し、燃ゆ」の読みどころを大きく3つに分けて、解説していきます。

誰にも理解されにくい推しの心情をストレートに書ききったところ

作品の本題でもある部分です。

推しは命にかかわるからね
引用:「文藝」2020年秋号 10ページ

とあるように、主人公たちにとって、推しの言動全てが自分たちの全てにかかわってきます。今回のファンを殴った炎上騒動は当人だけではなくファンの間でも大問題で、毎日不安に襲われるのです。

しかし、なぜここまでファンたちは推しに入れ込むのか?決して両思いにはなれないような関係性であるにもかかわらず。一般的に理解され難いファン心理について、作者はインタビューで以下のように答えています。

思い思われる、双方向的な関係を結ばなくていいことの効用が大きいんです。(中略)『今は見られたくない、受け入れようとさえされたくない』という現実がある。そんなとき、推しは『私』を見ないから、透明になれるんです。好かれるような自分じゃないかも、という恐怖から自由になれる
引用:「推し」が炎上したら。新しい人間関係の可能性示した小説『推し、燃ゆ』 | ハフポスト

作品内でも主人公が感慨を述べています。

携帯やテレビ画面には、あるいはステージと客席には、そのへだたりぶんの優しさがあると思う。相手と話して距離が近づくこともない、あたしが何かをすることで関係性が壊れることもない、一定のへだたりのある場所で誰かの存在を感じ続けられることが、安らぎを与えてくれるということがあるように思う。(中略)一方的ではあるけれどあたしはいつになく満ち足りている。
引用:「文藝」2020年秋号31ページ

ただし実際に付き合うとまではいかなくても、彼からの愛情を求めているのは事実。作品内で主人公は推しの存在をこう捉えています。

未来永劫、あたしの推しは上野真幸だけだった。彼だけがあたしを動かし、あたしに呼び掛け、あたしを許してくれる
引用:「文藝」2020年秋号 21ページ

「推し、燃ゆ」は主人公が推しに対して抱く想いを一つずつ丁寧にすくって描いた作品です。今、熱狂的に推しているアイドルがいる読者の方は大きく共感できるのではないでしょうか。またそういう気持ちがない方でも、オタクの方々がどんな気持ちで推しを応援しているのか、理解するのに十分な小説だと思います。

SNSを通じたファン同士の交流から見える、人と人との新たな距離感

ファン同士は主にSNSを通じて、交流しています。SNS上でのファンの「生態」は面白く、読んでいて非常に興味深いです。

同じ真幸くん推しのいもむしちゃんに返信する。彼女は日によって<はらぺこいもむし><いもむし生誕祭><イモムシ@傷心中>などとアカウント名を変えていて、今はさつまいもとゲジゲジの絵文字が並んでいる
引用:「文藝」2020年秋号 20ページ

こういったアカウント名をころころ意味なく変えるのも、よく特徴を捉えているなぁと思います。

彼らにはSNS独自の言語が存在しています。特徴的なのは、やや物事を大袈裟に表現したフレーズが多いこと。自分が作り上げた世界と、現実の世界とを切り分けているから出る言葉なのでしょうか。一部、作品の中から引用します。

<今日も目の保養です生まれてきてくれてありがとうございます>
引用:「文藝」2020年秋号 39ページ

 

<待って私も髪染めたばっかなんだけど 運命かもしれん笑>
引用:「文藝」2020年秋号 39ページ

 

<今日も地球は丸いし仕事は終わんないし推しは尊い>
引用:「文藝」2020年秋号 23ページ

 

<中途半端に陰キャなので沈黙><勇者>
引用:「文藝」2020年秋号 23ページ

また実生活ではズタボロになっていく、主人公がネット社会ではしっかり者だと思われているところも面白いです。現実社会とネット社会の隔たりに注目して読んでみるのも面白いですよ。

主人公・あかりが落ちこぼれていくくだり

坂口安吾の「堕落論」や太宰治の「人間失格」、最近で言うと芥川書作家の西村賢太さんの作品などに特徴的な落ちこぼれていく人間模様が好きな人にもおすすめです。推しに肩入れし過ぎるあまり、主人公のあかりはどんどん落ちぶれていきます。

ここから多少のネタバレになりますが、主人公の落ちぶれ具合は本当にひどいです!高校生なのに原級留置を言い渡されて退学しちゃうし、母親は狂って体調を崩すし、母の実家でも疎まれた存在になっちゃうし。けっこう救いようがないし、最後には自死を想像させるようなシーンも出てくる(ただし捉え方によっては自己破壊の精神とも言える)のですが、あながち一言で「絶望」とは言えないのは、主人公が推しから生きるエネルギーをもらえているからでしょうか。

実際に最後には

這いつくばりながら、これがあたしの生きる姿勢だと思う
引用:「文藝」2020年秋号54ページ

と強い力をみなぎらせています。最後に一つの「救い」を描いていると思われますが、これを「希望」と捉えるか「絶望」と見なすかは読者の判断に委ねられています。

「推し、燃ゆ」の評判は?口コミ評価レビューまとめ

既に単行本化されている「推し、燃ゆ」の評判は上々です。SNSにあがっている口コミをまとめました。

AKB48の横山由依さんのTweetです。彼女は「推される」側の人ですが、この作品を高く評価していますね。

「推し、燃ゆ」は芥川賞を受賞できる?ズバリ大予想!

現時点で筆者はまだ3作品(他は尾崎世界観さんの「母影」と砂川文次さんの「小隊」)しか読んでいませんが、その中では最も可能性が高いと感じます。「推し」の言動に翻弄されるファンの哀切を正確かつ強烈に描いているのは評価されるのではないかと。

ただし、選考委員にこの世界観がどれだけ理解されるか、というのが気がかりです。現代独特の考え方だし、どう受け入れられるのか。もし受賞に至らなかったとしても、選考委員が彼女の文学性をどう評価するのかは気になりますね。

※尾崎世界観の「母影」の紹介記事はコチラをチェック!

まとめ:「推し、燃ゆ」はオタクの気持ちを代弁した新世代小説だった!

いかがでしたか?「推し、燃ゆ」は推しに翻弄される主人公の生き様が切実な小説でした。

・推しに対する価値観
・オタクたちの世界観
・現代を生きる若者の姿

を知る上で、重要な一冊になってくるでしょう。第164回芥川賞の発表が楽しみですね!

※「推し、燃ゆ」は既に単行本化されています。気になる方はぜひ手にとってみてください。

【追記:芥川賞発表後】「推し、燃ゆ」が第164回芥川賞を受賞!

1月20日に行われた第164回芥川賞選考会において、宇佐見りんさんの「推し、燃ゆ」が見事に受賞しました!選考委員の島田雅彦さんが講評で「言葉が鮮やか」や「文学偏差値が高い」などと激賞。21歳の若い才能が高く評価されました。

本人はスピーチにて思ってたよりも早い年齢での受賞にやや戸惑いの声もあげていましたが、しっかりと自分の軸を持って今後も作家活動を続けるとの抱負を述べました。今後の宇佐見りんさんの活動に注目しましょう。

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コメント

  1. […] ※尾崎世界観の「母影」の紹介記事はコチラをチェック! ※砂川文次の「小隊」の紹介記事はコチラをチェック! […]

  2. […] はい、宇佐見りんの「推し、燃ゆ」です。若い作家の作品ですが、これが受賞すると思います。 ※宇佐見りんの「推し、燃ゆ」の紹介記事はコチラをチェック! […]

  3. […] ※尾崎世界観の「母影」の紹介記事はコチラをチェック! ※宇佐見りんの「推し、燃ゆ」の紹介記事はコチラをチェック! […]

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