尾崎世界観「母影(おもかげ)」のあらすじ・感想まとめ【第164回芥川賞候補作】

有名バンド・クリープハイプのヴォーカルとして活躍する尾崎世界観さんの「母影(おもかげ)」が第164回芥川賞候補作の候補になったことが話題になっています。そこで今回は彼の小説を早速読んでみた筆者があらすじや読みどころを徹底解説。読者の評判や感想もまとめてみました。最後に芥川賞を受賞するかどうかの予想も載せてます。最後までぜひ読んでみてください。

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尾崎世界観のプロフィール

尾崎世界観(おざき せかいかん)さんはバンド・クリープハイプ(CreepHyp)のギター・ヴォーカル担当。代表作としては映画『脳内ポイズンベリー』の主題歌「愛の点滅」や、ドラマ『そして、誰もいなくなった』の主題歌「鬼」があります。

音楽活動以外に作家としての活動も積極的で、2016年に小説『祐介』(文藝春秋)を発表。半自伝的な小説であり、尾崎世界観さんのこれまでの生い立ちや売れないバンドマンの生活を描いた作品となっています。

また雑誌『文藝春秋』では「本の話 WEB『1分書評』」を連載中。従来の批評家による書評とは一風変わった、世界観さんならではの視点と平易な日本語でのレビューが特徴で、読みやすく面白いと評判です。

「母影(おもかげ)」は第164回芥川賞候補作に選出される

尾崎世界観さんが「新潮 2020年12月号」に寄稿した小説「母影(おもかげ)」が、第164回芥川賞候補作に選出されました。純文学の新人賞である芥川賞は、ここ最近でいうとお笑い芸人のピース・又吉直樹さんが受賞したことで話題になりましたね。

音楽家でいえば、大衆文学である直木賞の候補にセカイノオワリのSaoriが本名の「藤崎彩織」名義で出した「ふたご」が選ばれましたが、それ以来のビッグニュースとなりました。


尾崎世界観さん本人もSNS上で喜びの声をあげています。

「母影(おもかげ)」のあらすじとは

「母影」は小学校低学年の少女からみた物語。母子家庭で学校に友達がいない主人公は、毎日学校帰りに母が勤めるマッサージ店に訪れます。カーテンの向こうで影しか見えないけれど、母親が怪しげなマッサージを行っていることが伝わってきます。

少女には詳しいマッサージの内容は分かっていません。お客さんが「ないの?」と言ったら何かを探していると思い、「いっていい」と言ったら何かを言おうとしていると捉えるのです。ただその場の雰囲気や聞こえる音から、そこでは「恥ずかしいこと」が行われているということに段々と気づき始めます。

「母影」にはマッサージ店での母と子のやりとりだけでなく、学校での子どもたちの言動や、同級生の男の子との交わりなど、様々な要素が入り組んだ物語になっています。

「母影(おもかげ)」の読みどころ4つ

「母影」は分かりやすい起承転結がある作品ではありません。その分、読者によっては様々な捉え方ができ、読みどころも多いです。ここでは筆者が感じる、「母影」の読みどころを解説します。

カーテンをモチーフとした的確な場面描写

カーテンごしに母親の影を追った描写がとにかくすばらしいです。マッサージ店だけでなく、母とたまたま行った洋服店の試着室でも同じような場面に遭遇します。主人公はカーテン越しに母親に対して本音をぶつけます。

「いつもお店で何やってるの?」
「変なことしてるでしょ」

母親はごまかしますが、カーテンごしだからこそ本音で母の気持ちを探ろうとする描写は、幼い子どもごころをよく表していると感じます。

カーテンの向こうから、お母さんの声が私の声を追いかけてきた。私たちの声がこんなに近くなったのは久しぶりだった。私たちのあいだにはときどきこうしてカーテンがあって、だから、私たちはときどきこうして見えない。
(「新潮」2020年12月号 151ページ)

カーテンを隔てて近くなる2人の関係性。とても美しい場面描写で引き込まれました。

子どもの視点から見た、大人の汚さやずる賢さ

マッサージ店を訪れるおじさんたちが自分の欲望を露わにするのが、カーテン越しに伝わります。中でも特に汚らわしい人物が、主人公が通う学校の担任の先生です。

担任の先生は母親の良くない噂を聞きつけ、マッサージ店を訪れます。「噂が本当なら学校でも厳しい対処を取らなければならない」と述べながら、「あるかどうか」を確認した後に自身もマッサージを受けるのです。

主人公はマッサージの実態を正確には分かっていないながらも、強い嫌悪感を覚えます。このように「母影」ではずる賢い大人の言動が、無邪気な子どもの視点から炙り出されます。主人公が無垢な性格である分、性根の腐った汚い大人との対比が鮮やかです。

大人の世界に振り回される、繊細な子どもたちの心情

主人公に「死ねです」といつも罵ってくる男の子がいます。そんな男子と主人公は銭湯で再会します。男子は股の部分を隠して恥ずかしそうにしているのですが、周囲の大人たちは「こらっ、普通に歩きな」と注意したり、「まったく生意気なんだから」と呆れたりしています。

子どもの繊細な感覚を大人たちは無視している、という描写を主人公の視点から相対的に見せているのが見事です。いつもはクラスでいきがっていた男子でも、大人たちの前では無力なのですね。

なお、この場面で男子がお腹の下に何を隠しているのか主人公が気になる、心理描写が物語後半の重要な伏線になっています。

母親と同じことを繰り返してしまう、悲しい運命

先ほどの銭湯での出来事の後、男性のお腹の下に何があるか気になっていた主人公。ある時男子のおじいさん(痴呆が進んでいる)と出会い、彼がお股にあるものは何か、服を脱がして確かめようとします。

その様子を男子のお母さんに見つかり、注意されます。「親が親なら子も子ってことだね」と非難されるのです。このように結果的に母親と同じようなことを繰り返してしまう描写は、田中慎弥さんの芥川賞受賞作「共喰い」に共通するテーマ。悲しい運命を感じます。

「母影(おもかげ)」の評判は?

「母影」は優れた観察眼や、的確な場面描写が高く評価されました。ミシマガジンでの「今年の一冊座談会」では単行本化されていないにもかかわらず、作品が選出されています。

面白いのは、本作で描く希望は、光ではなく「影」なんですよね。影に希望がある。いや、希望になる可能性を秘めている。そして、その影を映し出す存在が、カーテン。このカーテンがとてもおおきな存在感をもって描かれています。
引用:みんなのミシマガジン

YouTubeでは芥川賞作家の羽田圭介さんが観察眼の鋭さを褒めています

「死ねです」が深読みされないための工夫、というのは羽田さんならではの指摘ですね。また、Twitterにも評価する声がありました。


「母影(おもかげ)」は芥川賞を受賞できる?ズバリ大予想!

第164回芥川賞の選考会は2021年1月20日に行われます。ここでは選考会前に、「母影」が果たして芥川賞を受賞するかどうか、ズバリ予想します。

現時点で、宇佐見りんさんの「推し、燃ゆ」しかまだ候補作を読んでないのでなんとも言えないですが…現時点では可能性は低いでしょう。

純文学的な作品で様々な視点から読め味深い作品となっています。ただ全体的にどれも中途半端な感じがあって、母と子の関係性、学校での子ども同士の関係性、大人と子どもの理不尽な関係性など、どれも思わせぶりなところで消化不良になっている気がします。この点が芥川賞にとっては不利に働くのではないでしょうか。

まとめ:「母影(おもかげ)」は幼い子の巧みな心理描写が魅力的!

いかがでしたか?「母影(おもかげ)」のあらすじや魅力をまとめました。第164回芥川賞の発表を楽しみに待ちましょう!本記事は、発表後にまた更新する予定です。

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【追記:芥川賞発表後】「母影(おもかげ)」は芥川賞惜しくも受賞ならず

2021年1月20日に第164回芥川賞の選考会が行われ、宇佐見りんさんの「推し、燃ゆ」が受賞作になりました。尾崎世界観の「母影」は受賞を逃しました。選考委員の島田雅彦さんによると、少女の視線で描いたことの是非が議題に挙げられ、どうしても大人の目線が介在していて馴染めなかった、などとマイナス評価されました。

尾崎世界観さんは今回の結果を受け、残念がる一方で「小説が好きだ」と述べ、今後の意気込みをTweetしました。

これからの活躍に期待したいところですね。

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