第168回芥川賞の候補作に選ばれた「ジャクソンひとり」(著:安堂ホセ)。今回はこの小説のあらすじと感想をまとめた上で、作品の魅力を深掘りするためにタイトルの意味やラストの場面などのネタバレ考察も行います。圧巻のデビュー作!未読の方はチェックしてみましょう。
安堂ホセの小説「ジャクソンひとり」とは
書名 | ジャクソンひとり |
作者 | 安堂ホセ |
出版社 | 河出書房新社 |
発売日 | 2022年11月16日 |
ページ数 | 160ページ |
「ジャクソンひとり」は第59回文藝賞の受賞作。作者の安堂ホセさんは以前にも応募作が文藝賞の最終候補となったことがあり、今回の選考で満を辞しての受賞&デビューとなりました。しかもいきなり第168回芥川賞の候補に選ばれています。
「ジャクソンひとり」は、ブラックミックスのゲイの男性・ジャクソンが主人公。自分とよく似た男性が出演するポルノ動画が出回り、あらぬ噂を立てられたジャクソンが、見た目の良く似た四人と復讐劇を計画する話です。
※「ジャクソンひとり」は以下に当てはまる人におすすめ!
・機転の効いた痛快な復讐劇を読みたい人
・デビュー作にして芥川賞候補となった話題作をチェックしたい人
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3分で分かる「ジャクソンひとり」のあらすじ【※ネタバレなし※】
フィットネスセンターでマッサージスタッフとして働くジャクソン。ある日、食堂であらぬ噂話をされてしまう。その原因は自身が着ているロンTに書かれたQRコードを辿った先にあった。
リンク先の動画では、ジャクソンとよく似た黒人男性が、凌辱的なSMプレイをしていた。自分とは別人であるにもかかわらず、周囲はその見た目でもってジャクソン本人が出演しているものだと認識しているようだ。
憤りを覚えるジャクソンのもとに、よく似た4人が集まった。全員がゲイである4人はジャクソンと同じような被害を受けていた。そんな4人はラブホテルで、ある計画を思いつく。似たような見た目を逆手にとり、それぞれが身代わりとなって復讐するのだ…。
「ジャクソンひとり」のネタバレ解説&考察まとめ
「ジャクソンひとり」の魅力をさらに深掘りするために、ここからはタイトルの意味や作品のおもしろさ、ラストシーンの解釈などを考察した内容を書いていきます。ネタバレとなる部分は隠しているので、一度作品を読んだ方だけチェックするようにしましょう。
タイトル「ジャクソンひとり」の意味とは
タイトルの「ジャクソンひとり」は、物語の主題に大きくかかわってくる意味合いを持っています。ジャクソンという人間は「ひとり」しかいないにもかかわらず、見た目が似ていると他のブラックミックスの男性も一緒くたにされてしまうという偏見があることに起因しています。
物語は、ジャクソンが自分とよく似たブラックミックスの男性四人で、復讐劇を企てます。このあたりが痛快で本作最大の読みどころなので、それは次の章で詳しく書いていきましょう。
これまでになかった痛快な復讐劇がおもしろい
ジャクソンは自分とよく似たブラックミックスのゲイの男性四人と、復讐劇を計画します。それは四人がそれぞれ身代わりとなって、その人物の復讐を成し遂げることです。
四人の男性は
・ジャクソン
・ジェリン
・エックス
・イブキ
それぞれがまず服を入れ替えて、計画を遂行します。ジャクソンの復讐相手は、食堂であらぬ噂を突きつけてきた、スポーツチームのキャプテン。ジャクソンの服を借りたジェリンは無事に復讐を成し遂げられるのでしょうか…?
入れ替わっている際に、警察から身分証の提示を要求されるなど、いくつかの危機もあり、スリル満点の復讐劇となっています。ぜひこれは作品を読んで、味わってみてください。
ラストシーンをネタバレ考察
痛快な復讐劇が行われていく中、迎えたラストシーンは衝撃的でした。ここでは、ラストシーンについて考察した内容を書きます。
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最後はブラックミックスたちを監視する者のアジトに乗り込んだ四人。件の動画を拡散するきっかけとなったのが、マサヒトという日本人だったと分かります。彼らはブラックミックスたちを監視する裏稼業があり、ゲイの黒人は一番いいエサだと思われていたのです。
四人はそんなマサヒトを殺害し、逃亡します。また同じような見た目の自分たちは捕まらないと思いつつも、本当に逃げきれるのか不安も感じています。
この終わり方を受けて、読者の皆さまはどう感じたでしょうか?エンターテインメントとしてはおもしろいですが、文学作品としてみればやり過ぎだという意見もあります。個人的に筆者はこの終わり方をするならば、その後どうなるかを描いた続編が書かれてもいいと思います。
「ジャクソンひとり」を読んでみた感想
ここからは「ジャクソンひとり」を読んだ筆者の感想と、読者の評価やレビューをまとめていきます。
【筆者の感想】四人の意識が統一していく様がおもしろい
もともとは孤独を感じていたジャクソン含む、ブラックミックスの四人組が復讐劇を遂行する中で結束していく様が読んでて心地よかったです。四人が入れ替わりを思いついたのが、最初悪口を言いながら見ていた「君の名は」というのがまたおもしろいですね。
もともとはバラバラな考えをもった四人が入れ替わったりする中で言動も似てくる点や、敢えて誰が誰だか分からないように書いている箇所も、うまいなと思いました。(選考会では敢えてかどうかまでは分からないという意見もありましたが…)
作者の安堂ホセさんは、『文藝冬号』掲載のインタビュー(島本理生さんとの対談)の中で、次作も既に書いていると語っていました。今作で大きなインパクトを残した彼が、次はどんな作品を生み出してくれるのか、とても楽しみです。
【みんなの感想や評価】四人の復讐劇がおもしろい
安堂ホセ『ジャクソンひとり』#読了
おそらく書かざるを得なくて書かれた作品の一つ。
文体はサラッとしてるし152ページしかないのにガッツリと没入した。
個人と属性と眼差しと権力勾配と無力感と寄り添いと拒絶と期待と諦めと、もっともっと。作者さんの次回作はひとまず買うと思う。 pic.twitter.com/VzAltsqtID
— ヨーニーチョル (@KIiHKX8e8LIViIt) January 14, 2023
ジャクソンひとり/安堂ホセ #読了
アフリカのどこかと日本のハーフでゲイらしい、という雑な噂を流されるジャクソン。 似た見た目を利用し、仲間と入れ替わることで繰り広げられる復讐劇が面白かった。その見分けの付かなさがラストの混沌にも繋がっていてめちゃくちゃ上手い。二作目早く読みたい
— きぃ📚☕️ (@k_bookb) January 17, 2023
あなたが暮らしてるのは醜悪な世界で、関係ないと思っているかもしれませんが実はあなたもその構成員なんですよ、、ってずーっと耳元で囁かれているかのような小説でした。って書くと読みたくなるかもしれませんがめちゃくちゃ面白いので読まないと損です。
引用:Amazon
黒人とのハーフでゲイの青年・ジャクソンの物語。
生きづらい日本社会と彼らを見分けられない日本人への皮肉が痛烈。
独特の文体ながらテンポよく軽快で読みやすいけれど、途中、誰の視点なのか分からなくなる。
もしかして意図的なのか。
新しい感覚でした。#ジャクソンひとり #安堂ホセ #読了 pic.twitter.com/elXfQOk3OV— クワトロ (@quattro543) January 16, 2023
まとめ:「ジャクソンひとり」はブラックミックスの男性たちの痛快な復讐劇が魅力の小説だった
いかがでしたか?「ジャクソンひとり」の特徴を以下にまとめました。
・第168回芥川賞候補作
・痛快な復讐劇が魅力
・早くも次作を読みたいという声多数
以上です。まだチェックしていない方は、ぜひ読んでみてください!
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