3分で分かる「ひらいて」(原作)のあらすじ&ネタバレ解説・感想まとめ

2021年秋に公開が予定されている映画「ひらいて」。山田杏奈主演で高校生の甘酸っぱくも狂気が感じられる問題作として、公開前にして早くも話題になっています。そこで今回はこの作品の原作に注目。「蹴りたい背中」で芥川賞を受賞した綿矢りさ著作の原作「ひらいて」について、あらすじをまとめました。いろんな読み方がされやすい本小説の魅力についてネタバレ解説付きでお送りします。また読者の感想も紹介しますので、映画を見る前にまずチェックしてみては?

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「ひらいて」の原作は綿矢りさ「蹴りたい背中」以来の高校生青春もの

書名 ひらいて
作者 綿矢りさ
出版社 新潮社
発売日 2015年2月1日 (Kindle版)
ページ数 141ページ

「ひらいて」は単行本が2012年7月に発売。初出しは「新潮」2012年5月号でした。作者の綿矢りささんといえば、「蹴りたい背中」で史上最年少で芥川賞を受賞した人気作家。昨今は「こじらせ系女子」の書き手として、特に女性から大きな支持を得ています。

今作「ひらいて」は高校を舞台にした恋愛小説。高校生の恋愛や人間関係を扱った作品は、あの「蹴りたい背中」以来です。綿矢りささんの小説はいつも一筋縄ではいかない展開になるのですが、それは今作でも同様です。不思議で狂気すら感じる、本小説の息つく間もない展開にきっと引き込まれるでしょう。

※「ひらいて」は以下に当てはまる人におすすめ!
・高校生の屈折した恋愛模様が好きな人
・「蹴りたい背中」が好きだった人
・映画「ひらいて」が気になっている人

「ひらいて」の簡単なあらすじ【ネタバレなし】

主人公の高校三年生である私・木村愛は、高校一年生の頃から同じクラスの男の子・西村たとえのことが気になっている。ある日、夜の学校に忍び込んだ際に、たとえの引き出しの中から手紙を見つける。そこにはたとえと同学年の女子・新藤美雪との親密そうなやりとりが綴られていた。

美雪は糖尿病の患者でいつも注射針を持ち歩いている。私はなぜかたとえの間男になるべく、美雪に近づく。好きな男の腹いせと言えども、なぜこうなってしまったのか。自分でも制御できないまま、私はだんだんと美雪と接近していく…。

【※ネタバレあり※】「ひらいて」の詳しいあらすじ【前半部分】

以降、詳しいあらすじについて、前半・後半に分けて書きます。

※以下、ネタバレ部分となるので、大丈夫な方だけクリックして読んでください。※

ネタバレしていいからさらに詳しいあらすじを知りたい方はこちらをクリック!

私はある日、美雪が体力を使い過ぎて倒れたところを目撃する。朦朧とした意識の彼女に対し、私は口移しでジュースをあげた。美雪は回復したが、私は気分が高揚して妙な感覚に陥る。

すっかり美雪と仲良くなった私は、美雪に好きな人がいるか聞く。美雪はたとえと付き合っている旨を明かす。美雪は「私たちは好きっていうより、きょうだいに似た感覚」だと話す。また彼女はキスもエッチもまだしていないと告白する。

先日の口移しが美雪のファーストキスだったのだ。私は美雪ともう一度キスしようと提案する。美雪はやんわりと拒否するが、私は強引に美雪と口づけする。私自身、女と唇を合わせていることに生理的な嫌悪感を抱くものの、やめようと思わない。彼女を逃さないと、強く思う。

私は文化祭の準備でたとえと2人きりになる。2人の共同作業で絵を完成させていく。私は2人きりでいられる時間があと少しだと感じ、美雪からたとえとの関係を知ったこと、私がたとえを好きなことを思いきって告白する。しかしたとえからの答えは「ごめん」だった。

私がたとえに告白したことを、美雪はまだ知らないようだ。私は美雪にさらに接近し、ついにセックスをする。最初は動揺して拒んでいた美雪だっがた、次第に受け入れ、最後には「うれしい」と発する。

私とたとえで完成させた絵が評価され、2人は賞状をもらった。ひょんなきっかけでたとえとのツーショット写真を撮ってもらったが、先日の美雪との出来事が蘇り、罪悪感を抱く。今、私は手に入らない苦しみを強く感じている。

私は美雪と交わった後に、こっそり美雪の携帯を使ってたとえを無人の教室へと呼び出す。私は裸になってたとえの席に座り、豆千代紙で鶴を折った。そしてたとえと強引な流れでキスをした。たとえは怒り、「おれたちの領域に踏み込んでくるな」と忠告する。

【※ネタバレあり※】「ひらいて」の詳しいあらすじ【後半部分】

続いて、後半部分です。

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私は美雪に呼び出された。美雪は私とたとえとの顛末を全く知らなかった。それどころか、美雪の方から私と美雪の関係をたとえにちゃんと伝えようと切り出される。そこで私はたとえを好きだったために、美雪に近づいたと白状する。美雪は本心が分からない私を警戒し、「出て行って」と言い放つ。私は美雪の心が閉じてしまったことを悲しく思う。

それから時が経ち、美雪が私に手紙を届けてくれた。そこにはこう綴られていた。

ほんのひとときでも、心を開いてくれたのであれば、私はその瞬間を忘れることはできません。
引用:「ひらいて」本文より

私は美雪と再会した。一度キスをした後、美雪はたとえの父が荒れて大変だと言う。2人でたとえの家に向かった。たとえは家の惨状を美雪に知られたくなかったと言うが、美雪はお互いに何も隠さずに心を開くことが大事だと諭す。そして美雪は、たとえは私にも心を開くべきだと伝える。

父親が現れて、たとえは襲いかかろうとする。私と美雪でたとえを押さえつける。たとえの代わりに私がたとえの父親を殴り、3人で逃げ出した。その後、たとえは過去について明かした。

後日、私はホームルーム中に、たとえが私を見つめているのを感じた。たとえのもとに行き、ひざまずいた。たとえは私の頭に手を置き、許してくれたようだ。私は教室を抜け出し、美雪のもとへ行き「愛してる」と囁いたあとで、遠くの街へ行こうと電車に乗る。無邪気な野球帽の少年が、折り鶴を開いた後のしわくちゃの千代紙を見つめていた。私は「ひらいて」とつぶやいた

「ひらいて」のネタバレ解説|作品を読み解くためのポイント4つを解説

「ひらいて」のあらすじだけでは、作品の魅力が伝わりきれません。ここではさらに本作を読み解くための4つのポイントを解説します。

好きな人の真男に!私の複雑な想いの変化とは?

「ひらいて」は思春期真っ只中の高校生3人の複雑な恋心が描かれます。特に主人公の私(愛)は、たとえと美雪と深い関係にあると知り、そこから歪な心情へと変化していきます。主人公の心境の変化をまとめました。

ネタバレしていいから、私の心境の変化を知りたい方はこちらをクリック!

私はたとえの彼女である美雪に急接近します。なぜそうなったのか、私自身も分かっていません。

なぜたとえへの恋心が流れに流れて、美雪の接近にまで変質したのか、自分でも分からない。
引用:「ひらいて」本文より

しかし私の中で確実に、美雪への純粋な興味が芽生えていました。
・たとえが彼女のどんな点に惹かれたか?
・たとえとどんな言葉を交わしているのか?
・2人に私が入り込む隙があるのか?

上記は本文の中で書いてある内容です。しかしこれ以降は私の心情について明確な記述はあまり出てきません。読者の読み取り方によって、私の心境を察してほしいという書き方になっています。よって様々な読み方ができるでしょう。

・私はたとえが美雪を好きな気持ちを追体験したかった?
・たとえの彼女を寝取って困らせ、それを口実にして近づきたかった?
・自分の恋がうまくいかないからただ2人の関係を破壊したかった?
・たとえが愛している美雪と繋がれば、間接的にたとえと私が繋がると思った?

美雪と深く交わった後に、私はこう語っています。

自分で招いた事態だったが、私はすでに自分の状況や複雑さについていけなくなっていた。
引用:「ひらいて」本文より

「ひらいて」を読み解くには「目」の描写に注目しよう!

「ひらいて」では「目」が印象的に書かれています。瞳の色、眼差し、視線などの書き方が、登場人物たちの心理を巧みに表しています。いくつか引用しましょう。まずは冒頭。

彼の瞳。凝縮された悲しみが、目の奥で結晶化されて、微笑むときでさえ宿っている。
引用:「ひらいて」本文より

作者の綿矢りささんは、芥川賞作品「蹴りたい背中」でも印象的な書き出しを高く評価されており、本作も冒頭の描写が秀逸です。この書き方だけで、主人公が彼(たとえ)に夢中になっている様が読み取れます。

以降はネタバレを含むので、大丈夫な方だけクリック!

私が美雪とキスをした後。たとえと2人きりで文化祭の準備に取り掛かろうとした際の描写がこちら。

文化祭の準備日に、たとえが来たのを見つけて、私の心は躍り上がった。でも目が野良猫のように光るのを悟られないために、彼をほとんど見ずにさっと目を伏せた。
引用:「ひらいて」本文より

私は自分自身の目を野良猫と表現しています。美雪と近づいた罪悪感や、野蛮な雰囲気が漂う比喩表現です。

そしてラストに近い、教室での場面。

教室で、たとえが私に物言いたげな視線を送ってくる。
(中略)
怯えがちらつく彼の瞳は、私に話しかけて来ない。
引用:「ひらいて」本文より

そして、私は彼に話しかけます。このとき話題に出たのもやはり「目」についてです。

「私、たとえ君のためだったら、両目を針で突けるよ。その代わり失明しても、一生見捨てずに、そばにいてね。どう、これで美雪より私を好きになれる?」
引用:「ひらいて」本文より

私のたとえへの歪な感情がピークになる瞬間です。やはり作品の重要なモチーフとして「目」が機能しています。

最後に、ラストの場面から。電車の中で出会った少年についての描写です。

まばらなまつ毛をした彼は、茶色い動物的な瞳でいっしんに窓の外の景色を見つめ、目新しいものを見つける度に、近くの席に座る母親の方へふり返った。
引用:「ひらいて」本文より

私とは違う、まだ純粋無垢な少年を見事に描いています。他にも作品の随所に「目」がモチーフとなった記述が出てきます。その点に注意しながら、読み進めていきましょう。

リアリティーがあり美しい、官能的な場面描写

綿矢りささんは「ひらいて」刊行に際してのインタビューの中で、以下のように語っています。

『夢を与える』という小説でちょっとエッチなシーンを書いたとき、ぜんぜんだめだと言われたんですね。悔しいなという気持ちがあって、だから、すごい情熱をもって、もう下手とは言わせないというぐらいの意気込みで――下手なんですけど――ぐーっと歯を食いしばって書きました(笑)
引用:インタビューバックナンバー | 波 -E magazine Nami-|Shincho LIVE!(新潮ライブ!)| 新潮社のデジタルコンテンツライブラリー

例えば、以下。

美雪も無我夢中で私にしがみつき、二人で真っ白にくだけた。
引用:「ひらいて」本文より

上記は抽象的な書き方ですが、他にももっと大胆かつリアリティーのある描写が出てきます。物語における重要な場面でもあるので、ぜひ本文を読んでその世界観を堪能してください。

作品タイトル「ひらいて」の意味とは?ラストの場面描写から読み解く

作品タイトル「ひらいて」とはどういう意味なのでしょう?ラストの場面描写から読み解きます。

ネタバレしてもいいので、題名の意味を知りたい方はクリック!

ラストの場面で、私は無邪気な野球帽の少年と出会い、「ひらいて」と呟きます。本心をなかなか話せず、心を閉ざしがちな高校時代。

・好きな人がいるのに、歪な形でしか愛情表現できない私
・愛している人がいるのに、家族の問題など全てを明かせないたとえ
・幼い頃からの病気のために、周囲の目を気にして高校生活を送る美雪

それぞれ境遇の違う3人ですが、全員がうまく自己表現できずに苦しんでいます。そんな3人への祈りに似た感情が、最後の「ひらいて」という呟きに込められているのかもしれません。

SNSに寄せられた「ひらいて」の感想まとめ

最後にSNSに寄せられた、「ひらいて」の感想ツイートをいくつか紹介します。

この投稿をしているのは、大学生。年代が近い読者のリアルな意見ですね。

三角関係だと「ドロドロ」しやすいのですが、確かにこの作品に限って言えば「綺麗な三角関係」だという方がしっくりきます。

映画化されるキャストの方をイメージしながら再読したら、また違った読み方になるかもしれませんね。

また感想ではありませんが、作品中の一節を抜き取って投稿しているものが多くありました。それだけ印象的な描写が出てくる作品だと言えますね。

映画「ひらいて」は2021年10月22日ロードショー!

「ひらいて」は実写映画化され、2021年10月22日にロードショーを迎えます。予告はこちら!

主演は山田杏奈さん。インタビューで主人公の気持ちを理解するのが難しく苦労したと語っていますが、それだけ真正面から登場人物と向き合って演技したのだと伝わってきます。いろんな読み方ができる原作だけに、映画ではどのような世界観となっているか、楽しみながら観覧しましょう。

まとめ:「ひらいて」は高校生の屈折した恋愛模様が特徴の青春小説だった!

いかがでしたか?「ひらいて」の特徴を以下にまとめました。

・好きな男の彼女を急接近!複雑な三角関係を描く
・高校生の屈折した恋心を描く!心情変化に注目
・実写版映画も楽しみな作品

以上です。映画が気になっている方はぜひ、まず原作を手にとってみてください。

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