伊坂幸太郎『逆ソクラテス』のあらすじ・感想・ネタバレ解説まとめ【2021年本屋大賞候補作】

先入観で決めつける者たちへの復讐劇!今から人生の大逆転を考えたい、人たちにとってはぴったりな名言連発の短編集がここにあります。今回は伊坂幸太郎さんの小説『逆ソクラテス』に注目。あらすじや感想をまとめる他、伏線がどう回収されるかのネタバレ解説や、読みどころについて詳しく考察した内容も載せます。ぜひ最後まで読んでみてください。

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『逆ソクラテス』はどんな小説?

書名 逆ソクラテス
作者 伊坂幸太郎
出版社 集英社
発売日 2020年4月30日
ページ数 276ページ

先入観や決めつけをする者たちに立ち向かう小学生たちの逆転劇!

人気作家・伊坂幸太郎さんによる短編小説集『逆ソクラテス』。今作も伊坂ワールド炸裂!伏線を散りばめて回収するエンターテインメント性。主人公の小学生たちが逆境に立ち向かう、冒険性。全編を通して読むと見えてくる、各章での奇跡的なつながり

今作は以下の方たちに特におすすめです。

・話題の新作として読みたい、伊坂ワールドが好きな読者
→今回も伊坂さんは裏切りません!

・短編集でサクサク読めるので、伊坂幸太郎の作品に初めて触れる人
→話題の伊坂さんの小説読みたいけど、いきなり長い作品は…と身構えている人にはピッタリ!

・先入観で決めつける人に抵抗があり、人生の大逆転を目論む人
→活躍する小学生たちに勇気をもらえますよ!

・自分自身が先入観でいろいろ決めつけてしまっていると感じる人
→自戒の意味を込めて。自分がつまらない人間にならないために。

・読書感想文の課題本を探している小学6年生
→テーマがはっきりしているので書きやすいです。ただ低学年には難しいので、6年生あたりに。主人公が同じ小学生だというのもポイント。

2021年本屋大賞候補に選出される

伊坂幸太郎さんといえば、本屋大賞の常連ですね。第1回〜第4回まで連続でノミネートされ、第5回に候補となった『ゴールデンスランバー』で見事に本屋大賞(第1位)を受賞しています。今作『逆ソクラテス』でも受賞すれば2度目の本屋大賞受賞となります。(これまでに恩田陸さんも本屋大賞を2度受賞しています。)

この記事を書いているのが、2021年3月前半です。2021年の本屋大賞の発表は4月14日なので、その日を楽しみに待ちたいところですね。

ちなみに文学賞でいうと、『逆ソクラテス』は柴田錬三郎賞を受賞しています。同賞は集英社が主宰する文学賞で、これまでに角田光代さんの『紙の月』や吉田修一さんの『横道世之介』なども受賞しています。

『逆ソクラテス』のあらすじとは【※多少のネタバレあり※】

まず『逆ソクラテス』のあらすじについて。5つの短編からなる短編集なので、各章について分けて紹介しますね。ネタバレまでOKな方は「※ここからはネタバレあり※」以降も読めば結末まで書いてます。知りたくない方は読み飛ばしてください。

「逆ソクラテス」

プロ野球中継でナイスキャッチをした選手が、小さなガッツポーズのような仕草をした。両手で顔を洗うようにしてこすり、その後に指を二つ突き出す不思議な動きだ。

僕(加賀)は小学生の頃のある出来事を思い出していた。担任の久留米にバレないようにしたカンニングだ。安斎からもらった紙を草壁に渡す。美人の同級生・佐久間も協力してくれた。

もう一つ思い出すのは美術館での出来事だ。僕は安斎と協力して、美術館の絵と他の絵を入れ替えようとしていた…。

※ここからはネタバレあり※
僕らがなぜこのようなことをしたのか?きっかけは「いろんなことを決めつける」久留米先生への反発だ。久留米先生は人を先入観で判断するところがあり、事実クラスメイトの草壁はそういった先生の態度がきっかけでクラスメイトからも馬鹿にされている。

完璧な人間はいつはずないのに、自分は完璧だ、間違うわけがない、何でも知ってるぞ、と思ったら、それこそ最悪だよ。昔のソクラテスさんも言ってる(28ページ)

久留米先生はソクラテスの逆の人間だ。そこで僕と安斎は久留米先生の先入観をひっくり返すために、あらゆる仕掛けを考える。その想いを美人の佐久間に伝えると、協力してくれることになった。

カンニングでは草壁に良い点数を取らせることで先生を驚かせる狙いがあったが、それだけでは大きな効果は無かった。そこで美術館の絵画を持ち出し、「有名画家の絵を、草壁の絵だと思わせる」ことをした上で、その絵を貶す久留米先生に事実を打ち明け焦らせる企みを思いつく。しかし実際はかなり無茶な作戦で、計画は頓挫する。

そこで思いついたのが、不審者出没の噂を利用した「噂作戦」だ。佐久間が不審者を目撃し、その場を草壁が救出したという設定である。事前に「佐久間が不審者を目撃した、そして誰かに助けられた」という噂だけを流し、教室でみんなが集まり「誰かが助けた」と話題になった時に佐久間が意味深な目配せをする。そこには拳に包帯を巻いた草壁がいて、先生を含めたみんなが彼を見直すきっかけになった。

さらに極め付けの出来事として生まれたのが、プロ野球選手による野球教室での一件だ。僕と安斎は隙をうかがってプロ野球選手と話し、草壁に対して「君はなかなかの素質があるよ」と言ってもらうよう懇願する。選手は困惑してしまう。

野球教室で見せた草壁のフォームはどこか弱々しかった。久留米先生は「草壁、女子じゃないんだから、何だそのフォームは」と呆れた声を出し、周囲もそれに同調する。それに対して安斎はついに普段思っていたことを言い放つ。 「何をやっても駄目みたいな言い方はやめてください」と。

プロ野球選手は草壁に対し、もう一回スイングを促し、さらに野球が好きなのかを問う。「はい」と頷いた草壁に対し、具体的なアドバイスをした結果、素振りが良くなる。その上で「中学に言ったら野球部に入ったらいいよ」と勧めた上で「君には素質があるよ」と言葉する。

久留米先生は草壁に「おまえ、本気にするんじゃないぞ」「あくまでもお世辞だからな」と言う。草壁は先生に対して、こう言い切った。

「僕は、そうは、思いません」(59ページ)

それはかつて安斎が決めつけをしているクラスメイトにも言い放った、真っ直ぐな言葉だった。

僕は草壁にもしプロ野球選手になったら、テレビに向かって合図を出すように伝えた。それは両手で顔を洗うようにしてこすり、その後に指を二つ突き出すポーズだ。

スロウではない

僕(司)と悠太は2人とも足が遅く、どうしたら速く走れるのか考える。『ドラゴンボール』に出てくるピッコロのように、重いマントを脱いだら本当の力を発揮する場面を空想する。

自分のどこかに隠れたスイッチがあり、押した途端に邪魔な殻が剥げ落ち、母万能の僕が現れないものかと夢想したくなる。(68ページ)

そんなある日、高城かれんが転校してくる。彼女は五十メートル走で、典型的な運動のできない子の走り方を披露した。クラスの中心人物であり運動ができる渋谷亜矢は、自分のポジションが奪われることはないと安堵する。逆にクラスでいつも暗い顔をして一人きりでいる村田花は、自分と同じ境遇の友達ができると内心喜んでいる。

クラス対抗の選抜リレーでは、各クラスで二チームを選出することになっている。一チームは走るのが得意なメンバーを集めたAチームであり、渋谷亜矢も入っていた。もう一チームはくじ引きで選ぶことになり、僕と村田花が選ばれてしまった…。

※ここからはネタバレあり※
Bチームの練習には悠太や高城かれんが付き添っている。しかしそこに、渋谷亜矢が「遅いと目立っちゃうけど、大丈夫?」と不安を煽ってくる。さらに彼女は高城かれんに「前の学校でいじらめれて逃げてきたんでしょ」と、母親経由で聞いた噂を言い放つ。

僕たちは担任の磯憲に、高城かれんがかつていじらめれっ子だったのか、確認する。磯憲はハッキリと答える代わりに、こう言った。

転校してきて、やり直そうとしているんだったら、やり直させてやりたくないか(82ページ)

高城かれんは、みんなが速く走れる方法を考えて提案してくれた。一人一人に合った走り方を考案して、実際僕たちのタイムは速くなる。

迎えた運動会当日。運動会が終わった後に、僕らは職員室に行って泣いていた。悔しくて抗議する僕たちを磯憲はなだめ、トランプ占いをする。村田花に「未来のおまえは笑ってる」「おまえがこのまま大人になればそれでいい」とアドバイスする。

リレーで何が起こったのか?村田花が負傷し、走れなくなっていた。急きょ走る順番を入れ替え、アンカーに出てきたのは高城かれんだった。三位の位置でバトンを受け取った彼女は、ぐんぐんと加速し一位の渋谷亜矢を追い越していった。僕たちは彼女の姿を、かつて夢想した「ピッコロがマントを脱いだ感じだ」と思う。

負けず嫌いの渋谷亜矢が、登録されている選手と違う児童が走ったことについて先生たちに抗議した。その結果、僕たちは失格となった。そこで「気持ちの問題」が生じたため、職員室に抗議へ行ったのだった。

運動会の後、高城かれんを取り巻く空気が少し変わった。しかし彼女は変わらず村田花と仲良くしていた。

ある日、渋谷亜矢が高城かれんのアクセサリの中身を無理やりいじくり出した。さらに中身を踏みつけた。しかし実はその中身には渋谷亜矢の写真が入っていた。高城かれんは渋谷亜矢がそうすることを予想していたのだった。

高城かれんは転校前の学校で自分が威張ってクラスの中心人物になって周りを傷つけていたこと、渋谷にもそんな気持ちを理解してほしいと説いた。以前、磯憲が言った「転校してきて、やり直そうとしているんだったら、やり直させてやりたくないか」の願いが叶った形となった。

物語は今と未来とを往復しながら展開する。未来のシーンでは、大人になった僕が当時の担任だった磯憲と会話している。当時の出来事を回想していく中で、真実が分かる構造となっている。最後に、未来では悠太と村田花が結婚したことが明かされる。

非オプティマス

クラスメイトの騎士人たちは授業中にわざとペンケースを落として、久保先生を困らせている。久保先生は大学を卒業したばかりで、まるで元気がない。

転校生の保井福生はいつも安い服を着ている、どこか掴めないキャラクターだ。ある日、児童公園で僕(翔太)は、彼に話しかける。彼は映画「トランスフォーマー」に登場する司令官オプティマスを例に出し、今の自分の姿は「世を忍ぶ仮の姿」だと言う。

公園にはもう一人の同級生、潤がいてこっそり泣いていた。親と言い合いになったと言う潤。福生は潤に「親だって人間だ」と諭す。

人間が完璧じゃないってことも知ってるだろ。腹が立ったり、困ったり、悩んだりする。(116ページ)

※ここからはネタバレあり※
騎士人の久保先生に対する嫌がらせは相変わらずだ。休み時間に騎士人が僕に話しかけてきた。騎士人の父親がイベントを企画しているらしく、その知らせだった。僕は帰ってそのことを父に報告すると、「おまえ、騎士人くんと仲良くしておくといいかもしれないぞ」と言われた。

僕たちは偶然、久保先生の同級生だという女性と知り合う。彼女と話していく内に、久保先生には今と違った一面があると知る。かつての久保先生は教育熱心で、体罰はなぜいけないのか、法律で決められていないことはどうやって守らせるべきか、なども一生懸命考えていたという。

給食の時、女子生徒から「先生の恋人って死んじゃった、って本当ですか?」と久保先生へ問いかける。騎士人が言わせた質問だったが、久保先生はみんなの前で二年前に事故で恋人を亡くしたことを、淡々と伝える。

僕たちは久保先生が潤の家に訪問しているところを見かける。潤の父は、潤に怒鳴ったことを後悔していた。実は彼には忘れられない記憶があった。それは二年前。自分の荷物を拾ってくれた女性が車に轢かれ、自分は怖くて逃げ出したという。

自分の息子には私のような人間にはなって欲しくないと思うが余り、過剰に怒ることがある、と。潤の父の涙まじりの告白を聞いた久保先生は、「そんな風に、ずっと気にしているなんて、それだけでも、立派だと思いますよ」と必死に絞り出すようにして答えた。

その日以来、久保先生は変わった。どこかしっかりした雰囲気になった。

学校公開の授業参観でも、また騎士人たちがペンケースを落とす嫌がらせをしている。強く注意しない久保先生に対し、保護者からもっと厳しく指導するようクレームが入る。そこで久保先生がチョークを黒板のところに置き、手を軽く叩いてから、この件についてみんなで考えようと提案する。

久保先生はつらつらと話し出す。その中で久保先生が主張したのは「人間関係において最も重要なのは評判」、「相手を見て態度を変えるような人になってほしくない」ということだ。

最初の印象とか、イメージで決めつけていると痛い目に遭う。だから、どんな相手だろうと、親切に、丁寧に接している人が一番いいんだよ。(163ページ)

授業後、福生は騎士人に授業の邪魔をするのを辞めるよう忠告する。騎士人はそれを否定し、逆に福生の安っぽい服をどうにかしろと馬鹿にしてくる。すると騎士人の父親が、福生の父親を見て頭を下げ始めた。実は福生の父親は、騎士人の父親が働く会社のクライアントだったのだ。

アンスポーツマンライク

小学生の僕(歩)たちはバスケの試合で、残り一分で三点差を追っていた。いつも良いところで決める駿介がシュートを決め、あと一点差。コーチの磯憲は僕たちにこう言っていた。

次のプレイで試合の流れが変わると信じたら、その時はやってみろ。それはギャンブルじゃなくて、チャレンジだ。(176ページ)

しかし僕はほとんど何もできずに、時間が過ぎてしまう。僕はいつも肝心な時に動けない。「一歩踏み出せない歩君」と揶揄されたほどだ。最後追いつけないと思った駿介が苦し紛れに、アンスポーツマンライク(スポーツマンらしくない)ファールをしてしまう。

※ここからはネタバレあり※
五年後。高校生になった僕たちは、かつてのバスケ部のメンバー同士再会する。僕たちが偶然立ち寄った公園で、怪しい男を発見する。ここ最近ニュースになっていた通り魔事件の犯人らしく、男は刃物をリュックサックから引っ張り出した。僕たちは協力して男を取り押さえるが、やはり僕だけが何もできず茫然と立っていた。

事件後、僕たちは癌で入院中の磯憲の元へお見舞いに行った。僕らの誰かが犯人を「あんな異常者」と言うと、そうやって簡単に切り捨てるのは良くないと嗜める。どう接するべきか答えを見つけたら、教えてくれとも言う。

かつてのバスケ部をOB訪問した僕ら。その時、不審者が侵入し、銃を発砲し出す。その不審者とは、以前に僕たちが取り押さえた通り魔事件の犯人だった。男は僕たちに復讐をしに来たのだった。

公園で取り押さえた者の中で、その時何もできなかった僕だけが誰だかバレていない。今回こそはと意気込む僕は、男の注意を逸らしている隙に、チームメイトへバスケボールをパスして、さらに男へと突っ込む。銃を構えたところへチームメイトがボールを激突させ、落下させる。

事態は良くなったと思ったが、犯人が子どもを人質にとってしまう。絶体絶命のピンチだったが、束の間駿介が男の足に飛び込み、取り押さえに成功する。

取り押さえた後、磯憲の言葉を思い出した僕らは、男がなぜ犯罪を犯そうと思ったのか聞き出そうとする。そこでなぜか、バスケを辞めていた駿介がもう一度バスケのプロ選手を目指すと、男に呼びかけるようにして言うのだった。

最後に駿介は冗談まじりに、男の足を引っ掛けたことを「アンスポ」だったと言う。僕は鼻で笑いつつも、アンスポの定義を思い出し、そのことを男に伝えたくなったと思う。

もしアンスポーツマンライクファウルだったら、相手はフリースローが与えられた上で、さらにリスタートの権利がもらえる。(227ページ)

逆ワシントン

クレーンゲームの攻略法についてまとめた京樹(ニックネーム:<教授>)の自由研究が、保護者からのクレームのために取り下げられた。クラスメイトの僕(謙介)と倫彦はショックに思う。

僕たちは学校を休んだ靖の家に、プリントを届けに行った。靖が学校を休んだ理由が「腹痛」というのが、気にかかっている。靖の家に行ったら、父が明らかに挙動不審な動きをしていたのも、気になった。

僕が家族と夕食をとっていると、「みんなに認められる方法」の話題になった。母はこう言った。

ちゃんと謝る、とかも大事でしょ。悪いことをしたら謝る、って意外にできないから。あの、ワシントン大統領だって、桜の木を切ったことを正直に言って、褒められたわけだし(239-240ページ)

※ここからはネタバレあり※
母はいじめのことになると、力説しやすい。過去には毛筆で悪口を書いたいじめがあった時に、みんなの前で注意したことがある。いじめた側といじめられた側が将来出会って立場が逆転するケースなどもある、と忠告した。

僕と倫彦は、靖が父から虐待されているのではと疑っている。倫彦は靖に痣ができていたのを見ていた。靖の部屋を覗いて確認できればいいと考えた僕らは、ある方法を思いつく。

僕たちは<教授>をゲームセンターに呼び出し、クレーンゲームをする。もう少しで景品が取れそうという段階で、持ち金が尽きる。もうダメかと思っていたが、お金が落ちているのを発見する。

母の言葉でワシントンの所業を知っていた僕は、お金が落ちていたことを店員に正直に申告する。店員はワシントンの逸話を「創作」だと言うが、僕らは信じられずにいる。店員は正直な僕らに100円を渡し、そのお金で結局景品をゲットする。

景品は小型のドローンだった。僕らはそれを飛ばして、靖の部屋を覗こうとする。しかしすぐにバレて、靖の父親と直接対峙することに。ズバリ虐待のことを聞いたら、全てが僕たちの勘違いだったと分かる。

誤解が解けた後、僕たちはドローンを飛ばして遊んだ。遊ぶうちにドローンがあらぬ方向へ飛んでしまい、原付バイクを停めた男の人のところへ行った。正直に謝れば許してくれると思った僕だが、バイクの男はしつこく延々と怒ってきた。

実際は当たっても危なくもなかったようだが、男はかなりしつこく怒っている。その時母が救いの手を出してくれる。母は自分の車にドローンが当たったという設定で、僕らを怒り出してそのまま連れ去ってくれた。

母は僕がちゃんと謝ろうとしたことを褒めてくれた。ワシントンの話は作り話かもしれないが、僕は母の一言に素直に泣いてしまった。

僕と母は家電量販店へテレビを買いに行った。そこで会った店員の様子がおかしい。テレビに映るバスケの試合を見て、感動して泣いている。どうやら活躍したバスケ選手は「アンスポーツマンライクファウル」で出てきた駿介であり、店員は更生した元通り魔事件の犯人だと思われる。

『逆ソクラテス』の読みどころ4つ

ここまであらすじを紹介してきましたが、ここからは読みどころについて解説します。

これからの人生に活きてくる、名言の数々

先入観で決めつける者たちに反抗する、人生の大逆転劇を描いた『逆ソクラテス』。人生の真理へと触れていく中で、登場人物たちから発せられる名言の数々は、今後の生き方を指し示してくれます。

あらすじのところで紹介した内容とも一部重複しますが、ネタバレにならない範囲で少し紹介しましょう。

完璧な人間はいつはずないのに、自分は完璧だ、間違うわけがない、何でも知ってるぞ、と思ったら、それこそ最悪だよ。昔のソクラテスさんも言ってる(28ページ)

→本小説のメインテーマですね。自分は完璧じゃないと思い、謙虚に思いながら生活することが大事だと教えてくれます。

最初の印象とか、イメージで決めつけていると痛い目に遭う。だから、どんな相手だろうと、親切に、丁寧に接している人が一番いいんだよ。(163ページ)

→常に親切に丁寧に接しておけば、巡り巡ってきっと良いことが起こるはずです!

ちゃんと謝る、とかも大事でしょ。悪いことをしたら謝る、って意外にできないから。あの、ワシントン大統領だって、桜の木を切ったことを正直に言って、褒められたわけだし(239-240ページ)

→大人になればなるほど、素直に謝ることができなくなりますよね。過ちを犯しても、すぐに謝る姿勢を身につけておきたいです。

伏線を散りばめて回収するエンターテインメント性

伊坂幸太郎さんの真骨頂が、伏線回収ですね。読み込むと、意外な伏線が隠されていることもあるので、1度読むだけじゃなくて読み返したくなります。

表題作の「逆ソクラテス」の冒頭での野球中継シーンもそうですね。舞台が小学校になってどう繋がってくるかと思って読み進めていく内に、ラストでその理由が明かされます。

登場人物たちがちょっとでも不思議な動作をしたり、場面描写で何かしらの違和感を抱いたりしたら、伏線である可能性が高いです!この伏線がどう回収されるのだろうか、と考えながら読んでいくと、楽しい読書体験となりますね。

主人公の小学生たちが逆境に立ち向かう、冒険性

本作は全編小学生の少年たちが主人公です。小学校という狭い社会組織で、少年たちがどう成長していくかが読みどころ。

ゲームセンターに行くのすら禁止されている中で、ゲームセンターに進入したらどうなるか?
→警察に見つかりやばい展開になりそうだが、そんな時ある意外な人が現れて…(「非オプティマス」)

クラス内のいじめにどう立ち向かうか?
→足が速い、遅いで出来上がったヒエラルキーにどう対処するか?転校生がある、逆転劇を生むことに…(「スロウではない」)

また大人たちの姿が大きく見える小学生の頃に。大人たちの等身大の姿に迫って行く場面も見逃せません。先生も一人の人間だと気づくシーンに、少年たちの新たな発見があります。

全編を通して読むと見えてくる、各章での奇跡的なつながり

物語の伏線は短編内で回収されることもあれば、全編を通してみると見えてくるものがあります。詳しくはネタバレになるので、先ほどのあらすじ紹介を見てもらえれば。

ネタバレにならない程度で分かりやすいところでいうと、先生の磯憲が「スロウではない」と「アンスポーツマンライク」に登場します。時系列が少しずれているので、磯憲の生き様が少し垣間見えるような作りになっているのが、面白いです。

最後に収められた「逆ワシントン」では、終盤に出てくる登場人物が他の章とシンクロする場面があります。最後までぜひ読んでみてください!

『逆ソクラテス』の感想は?口コミ評価レビューまとめ

みんなの『逆ソクラテス』の感想を集めてみました。ぜひ参考にしてみてください。

読んで「すっきりした!」「爽快な気分になった」という感想が多かったです。

作家・伊坂幸太郎のプロフィール

最後に伊坂幸太郎さんのプロフィールをまとめます。また『逆ソクラテス』が気に入った方に、他におすすめしたい伊坂さんの著作を紹介しますね。

伊坂幸太郎さんは1971年5月生まれの小説家です。東北大学法学部卒業してからは、SE(システムエンジニア)として働きながら執筆活動をします。2000年に『オーデュボンの祈り』で第5回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞して、デビューしました。

出世作は『ラッシュライフ』や『重力ピエロ』。『陽気なギャング』はシリーズ化され、熱烈な作品のファンがいます。

伊坂幸太郎さん公式サイトはこちらから

『逆ソクラテス』が気に入った方に、筆者が真っ先におすすめしたいのは『チルドレン』。同じ短編集であり、少年が主人公の小説では同様の爽快感や謎解きミステリーの楽しさを味わえます。未読の方はぜひ!

まとめ:『逆ソクラテス』は大人にも子供にも読んで欲しい名作だった!

いかがでしたか?『逆ソクラテス』は小学生が主人公の小説なので、同世代の子供達はもちろん、先入観で頭がねり固まってしまった大人たちにも読んで欲しい小説でした。伊坂ワールドの真骨頂である伏線回収のエンターテインメント性だけでなく、ハラハラとした冒険ストーリーや、今後の生き方で活きてくる名言の数々など、様々なところで役立つ一冊だと言えます。

気になった方はぜひ読んでみてください。

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