3分で分かる「あくてえ」(山下紘加)のあらすじ&ネタバレ解説・感想まとめ【第167回芥川賞候補作】

「あくてえ」(著:山下紘加)は悪態をつく祖母の姿や、主人公とのやりとりが面白くて痛快な介護小説でした!今回はこの作品のあらすじや読んだ上での感想をご紹介します。作品の魅力をより深掘りするためのネタバレ解説も行っています。

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山下紘加の小説「あくてえ」とは

書名 あくてえ
作者 山下紘加
出版社 河出書房新社
発売日 2022年7月15日
ページ数 176ページ

今回紹介する「あくてえ」は、『文藝2022年夏号』に掲載されました。その後、第167回芥川賞の候補作に選出。各地で話題になり、2022年7月15日に単行本化が決まりました。

「あくてえ」は、90歳の祖母と母と過ごす小説家志望の「あたし」が主人公。体調がすぐれないものの、頑固ですぐに悪態をついてくる祖母とあたしのやりとりが痛快な、ヘビイな日常を描いています。

※「あくてえ」は以下に当てはまる人におすすめ!
・頑固な老人を介護しながら、同居生活をしている人
・どこか笑える介護小説を読みたい人
・第167回芥川賞候補作となった話題の本を読みたい人

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3分で分かる「あくてえ」のあらすじ【※ネタバレなし※】

19歳のあたし(ゆめ)は、90歳のばあちゃんと母のきいちゃんと三人で暮らしている。あたしは祖母のことを本人には「ばあちゃん」と呼びながらも、陰では「ばばあ」と呼んでいる。ばばあは不倫した自分の息子(=あたしの親父)以外は肯定しておらず、悪態ばかりついてくるから憎たらしい存在だからだ。

そんなばばあに、あたしもついそのまま反抗して悪態をつき、いつも押し問答ばかりだ。間に入る母のきいちゃんは、気弱でいつもばばあの世話焼きばかりしている。なかなかヘビイな日常を送るあたしには、夢があった。小説家になりたいという夢が…。

「あくてえ」のネタバレ解説&考察まとめ

ここからは「あくてえ」の魅力をさらに深掘りするために、一部ネタバレを交えながら解説していきます。ネタバレ部分は一応隠していますが、この作品自体は別にネタバレしたところで作品の魅力が損なわれるものではありません。作品をさらに楽しく読むための、一つの参考になさってください。

タイトルの「あくてえ」とは甲州弁で「悪態」の意味

タイトルの「あくてえ」とは、甲州弁で「悪態」という意味です。あたしとばばあの悪態のつきあいが痛快で、押し問答のやりとりを面白く読めます。

ティッシュを節約するために、ばばあは二枚重ねのティッシュを一枚にして詰め替え作業をしているのですが、それを嫌がるあたしがばばあと言い合うシーンなど、日常の些細な出来事をきっかけにバトルが勃発します。

さらにそれを止める、母がとても気弱なんです。この母がいるから、三人の関係が絶妙なバランスで成り立っているのかもしれません。まずはこのばばあとあたし、そして母の三人のやりとりや関係性に注意して読んでみましょう。

気弱な母、自己中心的な親父、軽薄な彼氏…あたしの周囲の人物像に注目

ばばあとあたしの存在感が強いですが、周りの人物もなかなかのクセ者揃いです。まずは母のきいちゃん。気弱で優しそうな人柄の母ですが、なんでも許してしまうところが、逆に周囲の人物を苦しめてしまっているのでは?と思わせてしまいます。

そんな母から逃げ出した親父は、とても自己中心的でご都合主義。本来はばばあは親父の実母なので親父が面倒を見るべきなのに、そうはいきません。しかもばばあが倒れて入院しているところを訪れた際の、発言がいちいち鼻につくのです!それはぜひ読んでからのお楽しみで。

また家族以外の人物として登場するのが、彼氏の渉。こちらも一見良さそうな人物ですが、だんだんとヤバイ一面が垣間見えます。終盤で描かれるある場面では、渉の行動によってあたしが生物そのものに嫌悪を膨らませるような事態になるのです。

このように、ばばあとあたし以外の人間の人物像にも注意して読むと、さらに楽しめるでしょう。

「あくてえ」のラストの思わぬ展開を徹底考察

ヘビイな日常を送るあたしですが、ラストは思わぬ展開が起こり、物語は唐突に幕を閉じます。そんな結末場面を詳しくみていきましょう。

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ラストは、日頃の疲れで母がダウンし、あたし一人でばばあの面倒を見る展開になります。ばばあの口に針金が突き刺さるトラブルが起き、また一悶着起きます。なんとか事なきを得ますが、やはりまたばばあが悪態をついてくる始末。そこであたしは以下のように思うのです。

あたしが書く小説は必ず終わりを迎えるし、良くも悪くも決着がつくのに、現実はそうではない。ずっと続いていくのだ。優しくしようと穏やかな気持ちで思った直後に殺したいほどの憎しみが襲ってくる。
引用:「あくてえ」本文より

あたしは小説家志望ですが、現実はそううまくいかないと悟ります。そしてこれからもヘビイな日常は続いていくのだと予感させられる場面で、物語は終わります。

作者の主張はなんだったのでしょうか。読者の想像により様々な解釈がされると思いますが、小説では語れない現実の過酷さを言いたかったのでしょう。小説内には直接的には救いは書かれていません。

しかし小説内に救いを求めず、自分で呑み込んで立ち向かうしかないという、一種メタ的な思考そのものが、この小説にはテーマとしてあるのかもしれません。この小説の登場人物と同じようにヘビイな日常を送る人たちにとっては、それは絶望のようでいて、一つの勇気になるのではないでしょうか。

「あくてえ」を読んでみた感想

ここからは筆者が「あくてえ」を読んでみた感想や、読者の評価・レビューなどを紹介します。

【筆者の感想】出てくる人物たちがみんな憎たらしい…

「あくてえ 」が掲載された『文藝2022年夏号』の特集は「怒り」。まさしく怒りをテーマに据えた、エネルギー値の高い小説で圧倒させられました。

息苦しい展開が続くと、どうしても希望を求めてしまうのですが、出てくる人物たちがどれも頼りなく、また別の憎たらしさが生まれるのです。気弱で優しい人柄の母も一見良い人そうで、実はこんな母がいるからこんな家族になってしまったのではないかと思えてしまいます。

私自身、山下紘加さんの作品は初めて読みましたが、友人からとても面白いと言われて気になってました。今回は老人を介護する小説家志望の若者を中心に描いていますが、人物を詳しく造形できる作家さんなのだと感じました。

山下さんの他の作品に、大食いチャンピオンの女性を描いた「エラー」という小説があるので、そちらも読んでみたいと思います。

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【みんなの感想や評価】おばあさんのキャラが強烈だった!

ラストの着地の仕方には驚いてしまいますね。

このおばあさんはしばらく忘れられそうにないです。

親父はことごとく憎むべき存在として書かれていましたね。

敢えて熱帯夜の蒸し蒸しとした時に、読んでみたいです。

「あくてえ」は芥川賞を受賞できる?ズバリ大予想!

「あくてえ」は第167回芥川賞の候補作に選ばれています。この記事を書いている段階ではまだ芥川賞の発表前なので、ここではこの作品が受賞できるかどうか予想してみようと思います。

結論からいうと、今作での受賞は難しいのかと思います。相対的な評価で今回の芥川賞は、新人作家の二作が抜けているからです。特に年森瑛さんの「N/A」は、文學界新人賞を満場一致で受賞したという触れ込み通り、かなり完成度の高い作品でした。

「あくてえ」は憎たらしい人物像がよく描けていますが、いがみ合う関係性を描くだけで終始している点がマイナス評価されてしまいそうです。気弱な母に意外と存在感があり、そちらの人物像をもっと深掘りして描く方が、作品としてもっと飛躍するのではと感じました。

受賞予想:ー

第167回芥川賞を予想した記事を読んでみる

まとめ:「あくてえ」は祖母の悪態が面白くて痛快な介護小説だった

いかがでしたか?「あくてえ」の特徴を以下にまとめました。

・祖母とあたしの悪態の付き合いが面白い!
・祖母とあたし以外の周囲の人物像にも注目
・第167回芥川賞候補作(受賞予想はー)

以上です。まだチェックしていない方は、ぜひ読んでみてください!

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